中西智佐乃のレビュー一覧
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ネタバレ本当になんとなく見つけて手にとって、帯を見て、読んだら苦しい気持ちになるだろうなあと思って、それでも読んで、案の定そうなった。
38歳実家暮らし・非正規雇用の環が、ネグレクト気味のシングルマザーの妹・由梨の息子・公彦の保育園の送り迎えをしたり面倒を見たりしているという話。38歳の娘に門限を強いる両親も頭がおかしいのだが、それから抜け出せない環もどうかしてしまっている。幼い子供を一人家に置いて男に会いに行く由梨もいかれている。個人的には環の父親の一人称が「僕」なのも無性に嫌だった。外面だけは取り繕っている感じが一人称と口調から滲み出ている。ろくでもない登場人物たちを脳内で並べて、つい「だれが一番 -
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橘の木に導かれていく一家の不穏な空気に、引き込まれて一気読み。
狂ったように子供を欲する女たちの熱量をそのまま受け取り、恵実の手によって子供を授ける橘の木。
その禍々しいエネルギーは、一家を翻弄し、一家の精気を吸い取っていく。
子供も授かりたい、授からねば自分の存在が無くなってしまう!という底知れぬ女性たちの熱量を小説にうまく取りこんで、人間の禍々しさと物言わぬ植物の不気味さが絡み合って、なんとも気持ち悪ーい世界を作り上げている。
なんで、子どもを産む事って,オカルトチックになってしまうんでしょう。
そういうノリはなんだかなぁと思ってるけど、小説にすると面白いですね。 -
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願いも恨みも幸福も。
ぐるぐる巻きで駆け抜ける、
女と家と木の一生。
こんなけ面白い騒動が、
圧倒的な耳のよさ、堂々たる文章で語られて、
こんなんもう、たまらんわ
川上未映子氏
第38回三島賞受賞作
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以前、同賞を受賞した「オールグリーンズ」が良くて。
本作も気になっていたのですが、
くたくたに疲れた金曜に立ち寄った書店で見つけ、
思わず手に取りました。
表紙からしてとても不穏。
今の私は仕事で精神がザワザワしてるため、
読めるか不安でしたが。
全く -
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初読みの作家さん。初の単行本で、3作目となる「狭間の者たちへ」及び新潮新人賞を受賞した1作目の「尾を喰う蛇」の2篇を収録している。
表題作は通勤電車で女子校生の“匂い”を嗅ぐ男が主人公。来店型保険会社で店長を務め、妻も子もある四十男がなぜ……という問いに明確な答えはない。家庭でも社会でも一定の責任を負わされたことが耐えられず、安易な逃げに走ってしまったのか。
「尾を喰う蛇」は、総合病院に介護福祉士として勤める男が、越えてはいけない一線でもがく姿を描く。タイトルが象徴する意味は“悪循環”だろうか。
どちらも閉塞感に満ちた作品で心がひりついた。それでも読み応えはあった。今後も追いかけたい。 -
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仕事と家庭のストレスから痴漢行為に走る男性を描いた表題作と、病院で介護職に就いていてストレスから次第にある患者を虐待するようになる男性を描いた『尾を喰う蛇』の2作品を収録している。
いやー辛い話だった。どちらの作品も、Twitterとかで女性蔑視思想を垂れ流してそうな有害な男性性を持つ男が主人公で、やってることは本人には自覚が乏しいけど完全なる悪なんだけど、仕事の過酷さ(休めない、ノルマ、介護職の苦労の半端なさ)があって、そういう状況では冷静さや思いやりを持って周囲に対応するのはそりゃ無理だよね…と思ってしまう。半端ないストレスがかかりいっぱいいっぱいになったとき、人は心と身体のどちらかが壊れ -
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キモくて金のないオッさん問題。
もう一歩進めると、「能力」もないオッさん問題。
生まれ落ちたら、そこにしか辿りつかない人を、人はどんな罪で磔るのか。
「被害者」はどんな道理と筋で、それを告発、断罪できるのか。
「キモい」。それはイヤな気分だろう。
しかしそこに刃を向けることを許したら、後はグラデーション。どこまで許すかを本当に線引きできるものは存在しない。
男性の生きづらさ、女性の卑怯さ、というような、今の時代、politicalに日の光を当ててはいけないことになっていることがらに向き合う佳作。
この問題を女性筆者が作品にしたことに、相互理解や協力の萌芽を感じた。
しかし。
男女、と -
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『橘の家』を読んで、家族と家のつながりについて深く考えさせられました。物語に描かれる橘の家は古く落ち着いた雰囲気を持ちながら、そこに暮らす人々はそれぞれ悩みや秘密を抱えています。しかし、日常の会話や小さな出来事を通じて少しずつ心を通わせ、家族の絆を確かめ合う姿が印象的でした。
特に主人公が「家はただ住む場所ではなく、心が戻れる場所だ」と感じる場面が心に残りました。私も普段、家を当たり前の存在として意識していませんでしたが、この本を読んでからは家族がいるからこそ家が成り立つのだと気づきました。また、代々受け継がれてきた習慣や思い出が「家族の証」となり、未来へとつながっていくことにもあらためて価