中西智佐乃のレビュー一覧

  • 橘の家

    Posted by ブクログ

    家の庭の
    橘の木の不思議な力の媒介者として
    人々の欲と業をただ一身に浴び続けるだけの
    主人公の半生が不憫でやるせなかった。
    他者に喜びをもたらす一方
    搾取され、抑圧され
    自分や家族はどんどん壊れていく…
    女と家にとって子どもとはなんだろう。
    男にとって女はただ
    欲望のひとつにすぎないのだろうか。
    なぜ人は子孫繁栄を願うのだろう。
    そんな答えの出せない問いを
    考えずにはいられなかった。

    0
    2025年08月28日
  • 狭間の者たちへ

    Posted by ブクログ

    痴漢文学。とても面白く読めた。通勤電車内の女子高生のニオイをかいで、『元気をもらう』中年男性が主人公。その電車内で痴漢仲間?との出会いもあり。気の毒な状況の主人公で同情してしまう感じもしたが、最後は・・・。痴漢はあかん。

    0
    2024年01月05日
  • 狭間の者たちへ

    Posted by ブクログ

    中年男性が陥りそうな普遍的な苦悩。
    女性である私にも何かを突きつけられているように感じてとても辛かった。
    男性的な衝動と暴力性は誰の中にも眠っているのかもしれない。元気をもらっているだけ、仕方がなかった。そうやって自己欺瞞の末、行動に移すか移さないかには天と地の差があるけれども。

    女性著者が描いたというところもすごいと思った。

    0
    2023年08月05日
  • 狭間の者たちへ

    Posted by ブクログ

    家庭や職場でのストレスのはけ口を
    満員電車の女子高生とか
    介護が必要な老人とか弱者に求め
    ゆっくりと静かに常軌を逸脱していく
    男の狂気にぞっとした。
    どんなに頑張っても報われず
    誰にも分かってもらえない
    孤独な現実から逃れるように
    妄想の世界へ入り込み
    どんどん異常をきたし、人が離れても
    自分で自分を追い詰めている事実に
    気づけないことが恐ろしかった。

    0
    2025年10月23日
  • 狭間の者たちへ

    Posted by ブクログ

    人間の加害欲と被害者意識をここまで書くのがすごい
    安泰な社会生活を送れるのは自分の自制はもちろんで、加えて周りからの承認や暖かい思いやりなど心あるコミュニケーションなんだと考えさせられる
    でもそれを作り上げるのも自分であるわけで卵が先か鶏が先か
    尾を喰う蛇については、職場の雰囲気がリアルなのはさすが
    でも自分の職業倫理的に反する部分が多々あるので共感も肯定もできない
    その前で留まるのがプロだし小沢を諌める堀内でありたい
    それこそがテーマなのかもしれないけど、これに理解を示してはいけない

    0
    2025年09月23日
  • 長くなった夜を、

    Posted by ブクログ

    はじめましての作家さん
    救いがない!でもこういうのが読みたかった
    普通に暮らしていたはずなのに、子連れで出戻ってきた妹と暮らすようになり少しずつ歯車が狂っていく
    甥っ子の存在は癒しかと思いきや、あらたな生贄
    同僚やスナックママの気遣いがリアルな距離感でいい

    0
    2025年09月21日
  • 橘の家

    Posted by ブクログ

    不思議な力が宿るとされる橘の木と、その木に飜弄される家族の話。終始不穏な空気感が漂う。
    どうしても子供が欲しい。
    女性達の切実な願いと、その熱量の全てを引き受けさせられた主人公の恵美が不憫でならなかった。

    0
    2025年09月05日
  • 長くなった夜を、

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    本当になんとなく見つけて手にとって、帯を見て、読んだら苦しい気持ちになるだろうなあと思って、それでも読んで、案の定そうなった。
    38歳実家暮らし・非正規雇用の環が、ネグレクト気味のシングルマザーの妹・由梨の息子・公彦の保育園の送り迎えをしたり面倒を見たりしているという話。38歳の娘に門限を強いる両親も頭がおかしいのだが、それから抜け出せない環もどうかしてしまっている。幼い子供を一人家に置いて男に会いに行く由梨もいかれている。個人的には環の父親の一人称が「僕」なのも無性に嫌だった。外面だけは取り繕っている感じが一人称と口調から滲み出ている。ろくでもない登場人物たちを脳内で並べて、つい「だれが一番

    0
    2025年09月02日
  • 橘の家

    Posted by ブクログ

    (こういう言い方をすると性差別と言われかねませんが)
    女性作家の作品――特に純文学系の方の作品を読むと、起承転結の「転」が上手くないものが多く思います。この作品も、そこが惜しい

    0
    2025年08月26日
  • 橘の家

    Posted by ブクログ

    橘の木に導かれていく一家の不穏な空気に、引き込まれて一気読み。
    狂ったように子供を欲する女たちの熱量をそのまま受け取り、恵実の手によって子供を授ける橘の木。
    その禍々しいエネルギーは、一家を翻弄し、一家の精気を吸い取っていく。

    子供も授かりたい、授からねば自分の存在が無くなってしまう!という底知れぬ女性たちの熱量を小説にうまく取りこんで、人間の禍々しさと物言わぬ植物の不気味さが絡み合って、なんとも気持ち悪ーい世界を作り上げている。

    なんで、子どもを産む事って,オカルトチックになってしまうんでしょう。
    そういうノリはなんだかなぁと思ってるけど、小説にすると面白いですね。

    0
    2025年08月24日
  • 狭間の者たちへ

    Posted by ブクログ

    読み終えた。身体の中によどんだ空気がたまっている気がして、大きく息を吐いた。
    「狭間の者たちへ」「尾を喰う蛇」のどちらの主人公も、今にも壊れてしまいそうなところをギリギリでなんとか持ちこたえていた。
    二人が叫び出すのはもう間近だと思う。

    0
    2025年08月06日
  • 橘の家

    Posted by ブクログ

    ----------------------------------
    願いも恨みも幸福も。
    ぐるぐる巻きで駆け抜ける、
    女と家と木の一生。
    こんなけ面白い騒動が、
    圧倒的な耳のよさ、堂々たる文章で語られて、
    こんなんもう、たまらんわ
    川上未映子氏

    第38回三島賞受賞作
    ----------------------------------
    以前、同賞を受賞した「オールグリーンズ」が良くて。
    本作も気になっていたのですが、
    くたくたに疲れた金曜に立ち寄った書店で見つけ、
    思わず手に取りました。

    表紙からしてとても不穏。

    今の私は仕事で精神がザワザワしてるため、
    読めるか不安でしたが。

    全く

    0
    2025年06月29日
  • 長くなった夜を、

    Posted by ブクログ

    ページ数少ないのに、ずっしりと重い。
    そりゃ、こんな育て方されても逆らえず、ずーっと従い続けていたら、どこかで歪みは出てくるよね。妹みたいに反発出来たら楽だったのに。親身になってくれる同僚がいて、そこだけが救い。

    0
    2025年06月03日
  • 長くなった夜を、

    Posted by ブクログ

    とてつもなく暗い。精神状態の悪い時には読まない方が良い。しかしながら一気読みしてしまう筆致には感心してしまう

    0
    2025年05月16日
  • 長くなった夜を、

    Posted by ブクログ

    親の教えという毒によってじわじわと精神を破壊されていく人間の様を見られる作品。
    二人称視点ならではの読み心地で、気づけばのめり込むように読んでました。

    0
    2025年05月09日
  • 狭間の者たちへ

    Posted by ブクログ

    初読みの作家さん。初の単行本で、3作目となる「狭間の者たちへ」及び新潮新人賞を受賞した1作目の「尾を喰う蛇」の2篇を収録している。
    表題作は通勤電車で女子校生の“匂い”を嗅ぐ男が主人公。来店型保険会社で店長を務め、妻も子もある四十男がなぜ……という問いに明確な答えはない。家庭でも社会でも一定の責任を負わされたことが耐えられず、安易な逃げに走ってしまったのか。
    「尾を喰う蛇」は、総合病院に介護福祉士として勤める男が、越えてはいけない一線でもがく姿を描く。タイトルが象徴する意味は“悪循環”だろうか。
    どちらも閉塞感に満ちた作品で心がひりついた。それでも読み応えはあった。今後も追いかけたい。

    0
    2024年02月28日
  • 狭間の者たちへ

    Posted by ブクログ

    仕事と家庭のストレスから痴漢行為に走る男性を描いた表題作と、病院で介護職に就いていてストレスから次第にある患者を虐待するようになる男性を描いた『尾を喰う蛇』の2作品を収録している。
    いやー辛い話だった。どちらの作品も、Twitterとかで女性蔑視思想を垂れ流してそうな有害な男性性を持つ男が主人公で、やってることは本人には自覚が乏しいけど完全なる悪なんだけど、仕事の過酷さ(休めない、ノルマ、介護職の苦労の半端なさ)があって、そういう状況では冷静さや思いやりを持って周囲に対応するのはそりゃ無理だよね…と思ってしまう。半端ないストレスがかかりいっぱいいっぱいになったとき、人は心と身体のどちらかが壊れ

    0
    2023年09月24日
  • 狭間の者たちへ

    Posted by ブクログ

    キモくて金のないオッさん問題。
    もう一歩進めると、「能力」もないオッさん問題。
    生まれ落ちたら、そこにしか辿りつかない人を、人はどんな罪で磔るのか。
    「被害者」はどんな道理と筋で、それを告発、断罪できるのか。

    「キモい」。それはイヤな気分だろう。
    しかしそこに刃を向けることを許したら、後はグラデーション。どこまで許すかを本当に線引きできるものは存在しない。

    男性の生きづらさ、女性の卑怯さ、というような、今の時代、politicalに日の光を当ててはいけないことになっていることがらに向き合う佳作。

    この問題を女性筆者が作品にしたことに、相互理解や協力の萌芽を感じた。


    しかし。
    男女、と

    0
    2023年09月14日
  • 橘の家

    Posted by ブクログ

    「子孫繁栄をどうして人間は願うのでしょうね」
    子がいなくなれば種は滅ぶ
    だから生き物は繁殖するのだろうけど、それだけが生きる目的ではない
    でも気がつけばそれに囚われそれだけを願いそのためだけに生きてしまうこともある

    ものすごく面白い設定だけど、思ったほど刺さらなかったのが残念

    0
    2025年11月01日
  • 橘の家

    Posted by ブクログ

    『橘の家』を読んで、家族と家のつながりについて深く考えさせられました。物語に描かれる橘の家は古く落ち着いた雰囲気を持ちながら、そこに暮らす人々はそれぞれ悩みや秘密を抱えています。しかし、日常の会話や小さな出来事を通じて少しずつ心を通わせ、家族の絆を確かめ合う姿が印象的でした。

    特に主人公が「家はただ住む場所ではなく、心が戻れる場所だ」と感じる場面が心に残りました。私も普段、家を当たり前の存在として意識していませんでしたが、この本を読んでからは家族がいるからこそ家が成り立つのだと気づきました。また、代々受け継がれてきた習慣や思い出が「家族の証」となり、未来へとつながっていくことにもあらためて価

    0
    2025年10月11日