トマス H クックのレビュー一覧

  • サンドリーヌ裁判

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    ネタバレ

    新作が出ると読まずにいられない作家のひとり。
    本音を言えば『ローラ・フェイとの最後の会話』あたりから作風が変わって来たように思える。これまでの自分の本棚とレビューを読み返しても「ついつい読むのだけれど、前の方がよかった」とぼやいている。
    過去の何があったのか、読者はよくわからないまま、でも重大なことがあったのだろうな…と思わせつつひっぱってくるといういつもの手法ではなく、裁判劇である。裁判ゆえに過去なにがあったか、微に入り際に渡りほじくり返され衆人の目にさらされる。
    そして読者は、主人公の「わたし」という人物を、本人はどう思っているか、他人はどう思っているかも知っていく。
    物語の運びは、少々平

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    2016年08月12日
  • サンドリーヌ裁判

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    ネタバレ

    途中、飛ばし飛ばしになってしまいました。
    最後の最後のところで、救いがあって良かったです。
    ただ、なんとも長い……。
    あと、妻の夫への心情が、そこまで?というあたりで、
    動機の背景がもうちょっと明確だと良かったかな。
    ★3,5というところです。

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    2015年05月11日
  • サンドリーヌ裁判

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    好きな作家というわけではないのに、なぜか必ず読んでしまうクック。我ながら不思議だが、文句言いつつ手が伸びる。今回もそうだった。

    出だしは、またこれか~という思わせぶりな独白が続く。なんでいつも読んじゃうかなあ自分、と思いつつ、事の真相は何なのかという興味に引っ張られて読んでいくうちに、いつのまにか夢中になっていた。やっぱり読ませるなあ。人の気持ちのひきつけ方を知っているという感じ。

    ただ、読み終わっても釈然としないところは残る。ヒロインの心情が結局よくわからない。あまりにも芝居がかってるんじゃなかろうか。珍しく「いい話」にしちゃったラストも、うーん、どうなんだろう。ブツブツ言いつつ、きっと

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    2015年04月29日
  • ジュリアン・ウェルズの葬られた秘密

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    「子供は戯れに蛙を殺すが、蛙は真剣に死ぬ」
    随所にさりげなく織り込まれた言葉が、真相がわかったときに突然意味を成してくるのがクックの作品。

    これまでの作品同様、主人公がどうしても腑に落ちない事件を掘り起し、少しずつ過去が明らかになってくる。そしてまた、主軸に父と息子があるのも同様。

    ただ、以前と比べて謎解きと意外さの面白さは影をひそめ、ミステリとはいえども文学的要素が強くなってきている。それはこの前に読んだ『キャサリン・カーの終わりなき旅』でも同様。

    丹念に織り込まれたタペストリーの糸を少しずつ解いていくようなクック作品、今回も満足はするにはしたのだが、好みは、と言われればもう少し前の作

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    2015年03月31日
  • ジュリアン・ウェルズの葬られた秘密

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    ザックリあらすじ。
    主人公フィリップのかけがいのない友で作家ジュリアン・ウェルズが突然自殺した。
    友が何故自殺したのか、どうすれば友を救えたのか、フィリップはジュリアンの自殺の謎を解明するべく彼の足跡ををたどる旅に出る。
    やがてジュリアンの若き日の罪が探り出されていく。キーワードとなるのは、「子供は戯れに蛙を殺すけれども、蛙は真剣に死ぬ」

    時折でてくる詩的な表現がとても美しい。
    ジュリアンの書いた小説は実在の殺人者達の物語。とても残酷で実話だけに、心に迫ってくるものがある。
    それが彼の心の中の暗闇が深い事を象徴しているようだ。
    とても良くできているが、一気に読む感じではない。はっきり言って、

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    2015年01月29日
  • ジュリアン・ウェルズの葬られた秘密

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    共有した時間を元に、作家の人物像を懐かしく語っているが、旅が進めば進むほど作家の意外性がクローズアップされ、友情に対する価値観が徐々に揺らいでくる。この辺りの微妙な心理の変化は、ミステリというよりは、純文学のヴェールをまとった雰囲気がある。

    ささいなきっかけから人生が流されていく皮肉さを描く手腕はクックの真骨頂だが、本作品は、追想の旅がいつしか探偵劇に変貌していく展開が秀逸で、ゆるやかに進行しつつもプロットは緻密。読後、振り返ればミステリだと認識できるが、読書中はそういう意識は薄いので、退屈さを感じる時間の方が多かったかな。

    「子供は戯れに蛙を殺すが、蛙は真剣に死ぬ」、「善とは悪の極めて巧

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    2014年03月16日