アンクリーヴスのレビュー一覧
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シリーズ2作目。最後の最後になるまで、登場人物と同じく五里霧中。
主人公の後ろから、デヴォンシャーの地方を歩き回って雨に打たれているような気分。
謎解きミステリというよりは、警察の丹念な捜査を一緒に見て、一歩一歩犯人に近づいていくような感覚。
事件を追う刑事たちも、家族や同僚、めんどくさい上司との関係にモヤモヤしたりしながら何とかチームで仕事に当たっている様がリアル。
色々な人物の視点でストーリーが進むので、お互いこういうところ評価してるんだ、とか実はこう思っている、というのが自然に語られていく。バージニア・ウルフの灯台形式というか、同じ国の人か…。
当然捜査中の警察官にもプライヴェートがあ -
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TVドラマ化されている『ヴェラ警視』シリーズは荒涼たるイギリスの大地で、人々の愛憎が描かれた。皆が秘密を隠そうとするクローズドサークルを、やや強引なヴェラが乗り込んできて、収拾にあたる。さて、本編はそれよりは明るいイメージ、というか、そもそもセンターに立つ捜査者のイメージが真逆である。
男性の恋人がいる、やり手のマシュー・ヴェン警部シリーズ第二弾。今度も彼の夫ジョナサンがかかわるコミュニティで事件が起こる。ジョナサンが複合施設を運営しており、様々な人が出入りする。こう言っては何だが、容疑者、被害者、そして事件の宝庫である。ジョナサンは当事者として関係者に関わり、マシューはあくまで捜査する者 -
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マシュー・ヴェンシリーズ、第2弾。今回も良かった!とにかく彼女の小説はキャラクターにリアルが感じられて、味がある。主人公のマシューももちろんだけど、夫のジョナサン、部下のロスとジェン、それぞれのプライベートストーリーを挟みつつ事件を追う、警察小説の王道。一気に読めてしまった。今回は娘のガラス工房で、父親が色ガラスで殺されたところから事件が始まる。凄惨だけれど、どこかドラマチックな殺害現場。マシューはいつも通り粛々と捜査を始めるが・・・。という流れ。被害者、容疑者それぞれに、いろんな角度からスポットが当てられ、単純に良い人、悪い人じゃ片付けられない複雑な一面をのぞかせる。犯人は誰なんだろうと思い
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ネタバレイギリスの作家アン・クリーヴスのマシュー・ヴェンシリーズ第二弾。
ヴェンの部下のジェンがパーティである男と出会う。どうやら刑事であるジェンに相談したいことがあった様だが、酔いもあり次の日に約束をしたところ、その男は死体となって発見される…
非常に染み渡る作品。警察の地道な捜査、関係者が直面する問題、主役たちのプライベートなど、複数からの視点で丁寧にこつこつと描かれる。この辺りはクリーヴスの得意とするところ(というか他の形式を見たことがない)。
ただこれが好き嫌いが分かれるポイントなのかなぁと。中弛みに感じる人もいると思う。
今作に限っては、実は過去一いいタイミングで転換点があった気がする。 -
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心が折れてしまったから…
どのような大木も折れて倒れるときはあるだろう
それは耐えられないほどの暴風が吹き荒れたからかもしれない
あるいはしっかりして見えたのは外見だけであり、中身は腐り空洞だらけだっのかもしれない
そしてもし、それが森の中にある木だったとしたら、倒れるときには周りの木々を巻き込みながら倒れるのも、必然なのかもしれない
だが、それは巻き添えをくった木々たちに納得できる理由となるのだろうか
すべての罪を許される免罪符となるのだろうか
一方で、刑事マシュー・ヴェンは静かに立ち続けている
「罪悪感」という名の暴風雨の中で
自分がもっと優秀な刑事であったなら
すべてのこと -
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『哀惜』を23年に読んで以来、本作の刊行をずっと待ち望んでいた。そして、本作はそんな期待を裏切ることなく応えてくれた。ほんとうに、いい。
視点となる登場人物が章ごとに変わる。捜査担当者の3人の中でもマシューとジェンはお互いに評価していて、ロス・メイだけ未熟で不出来で保守的という位置付けかと思いきや、マシューとジェンも互いに相手を批判的な見方で見ている記載がある。そういう公正で客観的に思われる描き方によって、それぞれのキャラクターが鮮やかに生きる。
ミステリーの筋立てはしっかりなされながら、登場人物の心の機微が描かれている。そのほとんどが悩みとなる内容なので、それぞれの展開にも謎解き同様に関心 -
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ラストの取り調べシーンの説明口調が気にはなったものの、やはりこの作品の語り口と、マシューの人柄が共感できてとても好き。登場人物一人一人を丁寧に描写するあたり、日本の作品ににていて引き込まれます。事件が起きてから1週間とは思えない濃密さに取り憑かれ、一気読み。深い満足感に包まれています。前作に登場のルーシーが逞しくなっていて嬉しさひとしお。確執のあったマシューのお母さんとの関係に変化があったこともラストでわかり、温かな気持ちに包まれます。サイコパスか、と思えるような犯人にひんやりした気分になりつつ、こうした場面があることもこの作品の魅力かと。狭い地域でこんなことが、と思わされますが、真面目に懸命
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ネタバレマシュー警部シリーズ2作目。
「地味だが滋味がある」と解説にあったが、その通り。
殺人事件そのものよりも、マシュー警部補と夫ジョナサンをはじめ、
刑事たちや被害者周辺の家庭の人間関係が主題なところは、
前作と同じ。
マシューは疎遠にしていた母親を家に招き誕生日を祝い、
ジョナサンとはお互いの価値観を気遣う。
部長刑事のジェンは、捜査で子供たちの世話ができないことを気に病むが、
娘も息子も成長しているのを感じる。
ロス刑事は料理が上手で世話をしてくれる妻の態度の変化に、
妻との関係、そして自分を見つめなおす。
事件の方はと言えば、ジェンがパーティーで会った男性が殺された。
ジェンに相談した -
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アン・クリーヴスの新シリーズ!期待以上に面白かった!ようやくジミー・ペレスのシリーズを読み終えて(こちらも充分に堪能)、新しい主人公とご対面。マシュー・ヴェン警部、なかなか良いですよ。きっちりスーツを着こなす、真面目で一見面白味のない刑事だけど、ラスト、欺瞞ばかりの権力者に怒りを持って対峙するシーンはスカッとした。同僚のシングルマザーのジェンや、まだまだ経験が浅いロスも、これからの活躍が楽しみだし、いつも短パンとTシャツ姿の夫であるジョナサンとのほんわかしたやり取りも読んでいて癒される。新シリーズなのでついつい人物描写ばかり書いてしまうが、事件そのものも面白かった。海岸で殺された男が、最初はた
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ネタバレシェトランド島シリーズと同じ作者だったので。
解説によると「キャラクター小説」だそうだ。
登場人物のキャラクターと物語と密接な小説、という意味で。
確かに登場人物の人物像が精密に描かれているし、
ストーリーとのがっちり組み合わさっていると思う。
しかし、それを巷で流行っている「キャラクター小説」で説明するのはどうだろう。
鴨のコンフィをパリッとしている鶏のから揚げみたい、と言われましても。
鴨のコンフィも、鶏のから揚げも、
登場人物がきっちり描かれているミステリーも好きだが。
イギリス南西部の町の海岸で他殺体が発見された。
捜査にあたるのは、海岸の近くに自宅をかまえるマシュー。
夫は、ディ -
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ネタバレ2025年の32冊目は、アン・クリーヴスの「沈黙」です。「哀惜」に続くマシュー・ヴェン警部シリーズの2作目となります。読書の舞台は、ウェスト・ドーセットからノース・デヴォンに移りました。
作者アン・クリーヴスの円熟した作品を堪能出来ます。
派手なアクションシーン等は有りません。派手な作品が好きな人には物足りないかもしれませんが、マシュー、ジェン、ロスのチームが、関係者から丹念に聞き取りを重ねて事件の犯人とその真相に一歩一歩辿り着いて行きます。最後は、一気読みでした。以外な人物が犯人です。
マシューとジョナサン、ロスとメラニーの2組の夫婦関係やジェンと子供達との関係等、捜査陣の私生活の描写が、良