青波杏のレビュー一覧

  • 花咲く街の少女たち

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    朝鮮の少女とのすれ違いながらも心を通わせていく切ない話。
    標本の話とは重さは違うけど懸命に生きている戦争中の人々の話は現代の小説にはない重厚な、ずっしり感と戦国時代小説よりも読み応えのある気がする。この作者もこれからも追いかけていきたい作家の1人となった。

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    2025年10月02日
  • 花咲く街の少女たち

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    当時の歴史背景を全然知らずに読んだので、その事実を知って、複雑な気持ちになった。
    それでも、本当に美しい文章で物語が書かれていて終始引き込まれっぱなしだった。
    最後は、出会う人や街を通して大きく成長した主人公とハナが、また笑顔で再会できると良いなと心から思った。

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    2025年09月10日
  • 花咲く街の少女たち

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    ずっと、この物語好きだなぁと味わい噛み締めながら堪能した。戦前の東京の下町の娼婦街で育ちかりそめのお嬢さまとして日本統治下の京城で女学生になった翠と、翠の下宿先で子守として働く朝鮮人のハナ。民族、生まれ、親、立場、何もかも違う2人の少女の友情はたまた恋愛の物語。時代背景や民族差別や虐殺など息苦しくなる部分がありハナの、お嬢さまにはわからないと怒る気持ちに悲しくなる。分かり合えないと感じていた2人が惹かれ求め合い、過去の真実に辿り着いた瞬間には目から鱗だった。2人がまた再開できる明るい未来が待ち遠しい。

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    2025年09月06日
  • 日月潭の朱い花

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    ネタバレ

     衝撃の事実に驚いた。ミステリー仕立てで、足跡を追った末に知らなかった世界や感情が立ち上がってくるのが良かった。

     最後のKからの手紙には自分のことを知ってほしいと思う気持ちと、背景の違いからどうしても届かない悲しさともどかしさが綴られており苦しくなった。また、Kに自分を重ね合わせたジュリにとっては、秋子の足跡を追うことは過去を探すことではなく、自己を見つめることでもあったのだろう。
     積み重ねられてきた歴史の表層しか知らず、その裏で歴史に残らなかった一人一人がどんな思いをしてきたかは当事者でなければきっと完全にはわからない。自国が他国にしてきたことを直視せず、つい都合の良いところだけを見て

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    2025年07月19日
  • 日月潭の朱い花

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    日本統治時代の台湾で女学生が書いた日記を追うお話。過去調査ミステリって好きなんだよね。戦前の台湾って全然知らないからそこも面白かった。現代側の主人公サチコとジュリのもだもだした共依存関係も好き。近現代史を研究する大変さが詰まってるのも好き。

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    2025年04月29日
  • 楊花の歌

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     読み終えた今、生涯の大切な作品の1つになるだろうな、と強く予感している。
     リリーの複雑な感情や危ない橋を渡っている緊張感、亜熱帯の空気や食べ物の匂い、戦時中の日本と他国の関係、そしてヤンファ。最後に全てが繋がったときには深い感動が胸に広がった。
     忘れてはいけないことがある。忘れられないことがある。そして、忘れたくないことがある。彼女たちの人生は常に何かを奪われてきた。激動の人生にもかかわらず、読み終えた今なぜか優しい気持ちが心に残っている。

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    2025年04月02日
  • 日月潭の朱い花

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    日本統治下の台湾と現在の台湾を舞台にした物語。親日家が多いイメージだけど、日本統治下時代は平等な立場ではなく、支配者と従属者の関係であり多くの犠牲を強いていたことを忘れてはいけない。そして朝鮮の問題にも触れられている。決して堅苦しい内容ではなく、ミステリーやサスペンス、台湾の風習やグルメ、ファッション、サブカル、そして日常生活が生き生きと描かれており、複雑な環境で育った二人の心情も細やかに描写されていて読みごたえがあった。
    先日読んだ『台湾漫遊鉄道のふたり』と同じく百合要素あり。日本統治時代の台湾と百合が重なってどうしても思い出してしまった。

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    2024年09月13日
  • 花咲く街の少女たち

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    ネタバレ

    最後は前向きだしいいお話ではあったけど、歴史上のしんどい部分が後半は主軸になっていたので、すっきり前向きな話としては読めなかった。

    翠の環境もハナの環境も時代によるところは大きいと思うけど、じゃあ今の時代はどうなんだろうって思うと、もっと潜在的な差別はあるんじゃないかなとも感じる。

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    2025年11月24日
  • 日月潭の朱い花

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     『楊花の歌』で小説すばる新人賞を受賞した著者の2作目。こんどは2013年の台北を舞台に、25歳の日本人女性と23歳の在日コリアンの女性とが、古道具屋で見つけたトランクに隠されていた女学生の日記を手がかりに、1941年の台中と日月潭で起きた本島人女性の殺人事件と日本人少女の溺死事件の謎に迫るというストーリー。小説の鍵となる場面で淡水の老街や紅毛城が舞台に取られていて、つい懐かしくなってしまった。

     いささか教科書的な記述や展開が気になったけれど、それでも、現代の日本語の読者に帝国日本の支配と植民地主義の暴力、とくに女性に対するそれを主題化しようとする志の高さは特筆したい。2010年代のサチコ

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    2025年11月23日
  • 花咲く街の少女たち

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    2025.10 誰かの小説に雰囲気が似ているなと思ってい読み進めていた時にふと頭に浮かんだのが伊吹有喜さん。芯のある若い女性の心情でストーリーが進んでいくからでしょうか。沁みる小説でした。

    ただ、こういう小説を読むと日本人であることが恥ずかしくなることがある。日本人は優しくて礼儀正しい、なんて言われるけれどムッツリなだけで本性はちがうよな、なんてことも感じました。人のことは言えんけど。

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    2025年10月10日
  • 花咲く街の少女たち

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    ネタバレ

    主人公翠は、私娼と朝鮮人の子として生まれ玉の井に育ち、妾候補となり、朝鮮にわたり京城の竜谷高等女学校に入学する。そこで子守に雇われている朝鮮人の少女ハナに出会う。
    時代は1936年から37年、京城で世話になる家は、早稲田卒の社会主義者で京城第一高女の教師で特高の影が、日華事変が始まり京城にも戦争の跫音。翠とハナとの間の反発と恋愛感情が描写される。

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    2025年09月25日
  • 楊花の歌

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    途中でヤンファが誰なのか1ミリも気付かないのも都合が良い気もするけど、映像にしたら良さそう。史実が混ぜられていて勉強にもなった。

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    2025年09月06日
  • 花咲く街の少女たち

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    文章がしっかり作中の空気を纏っている。
    あつあつで少し塩辛いソルロンタンをご飯に浸して食べるシーン。ふわりとはためく紫のワンピースを着てみたかったハナ。
    背景や人間関係もよく描かれていた。

    作者名から勝手に女性と思っていたが、女性史研究家の男性と知って新鮮な気持ちになった。

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    2025年09月01日
  • 楊花の歌

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    戦時下の中国、主人公女性が出会ったヤンファという女性、彼女らはスパイ活動を行なっていたのだが、、というお話(?)。

    それぞれの出自や過去、途中挟まれるエピソードも何かしらあるのだろうと思っていたら、やはりラストで収束した。美しさある物語だった。

    これはこちらの問題なのだけど、読むのに時間がかかってしまったために、最後の展開で誰が誰だったっけ?が曖昧になってもう一度読み返さなければならなかったのよぅ。人物関係把握間違ってたら申し訳ないです。

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    2025年06月30日
  • 日月潭の朱い花

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    以前大学のカリキュラムの一環で、台湾の学生達と一緒に日月潭に行った事があり、懐かしい!と思い読み始めました。
    台湾、韓国、日本の歴史とマイノリティーの生きづらさが物語の根幹に深く関わっていて当時無邪気に無知なまま彼らに案内されて観光を楽しんだ自分が恥ずかしくなりました。
    過去は変えられないけれど、今に生きる自分たちは過去を知る必要があると強く思いました。

    亜熱帯の湿度のある空気、美味しい料理、優しい人たち、一人一人が心に抱える痛み。
    思ったよりサスペンス色が強くて驚いたシーンもありましたが、過去の歴史や痛み、愛情を現在へと繋ぐこの作品をぜひ読んでみてほしいです。

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    2025年06月21日
  • 日月潭の朱い花

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    2月に行った台湾、寒桜満開の日月潭。タイトルに惹かれ手にしたが…時代小説かと思ったらミステリー仕立て。「わたしたちは悲しいくらい歴史を知らない。それなのに根拠のない優越感という負の遺産だけ引き継いでいる」「知らん人からネガティブな感情ぶつけられるの、怖いに決まっとるやん」初めての作家だけど、歴史観含め次の作品楽しみ。

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    2025年05月05日
  • 楊花の歌

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    日本とは違う多湿の大陸で生きる少女達
    心情表現も物凄く良かったけれど、ジメジメした時期のコンクリートの感触だったり肌に触れる服がくっつく気色悪さがとてもリアルで良かった
    後半の全てが繋がって丸くなっていく感覚はジメジメした土地に涼しい風が吹いてくるようだった

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    2025年03月23日
  • 日月潭の朱い花

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    現代の台湾と日本統治時代の台湾
    二つの時代が交差する


    台北で日本語教師をするサチコとルームメイトのジュリ。
    二人は、古道具屋で買ったトランクの中に古い日記を発見する。
    それは日本統治時代を生きた桐島秋子という女学生の書いたものらしく、解読していくと事件や謎が見えてきた。
    それを追い始めた二人の毎日は大きく動き出すことになる。


    特に今まで引きこもり生活を送っていたジュリは、夢中で日記を解読していくのだが、あまり興味を持てないサチコには、ジュリがのめり込む理由が分からない。

    ジュリは在日コリアンだ。
    そして秋子の日記には、朝鮮から来たという友人の白川さんが登場する。
    植民地支配という歴史

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    2025年02月10日
  • 日月潭の朱い花

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    青波杏の日月潭の紅い花を読みました。
    主人公のサチコは日本から逃げるように台湾の求人を見て台湾にで暮らします。
    古い皮のトランク中の古い日記を発見し、その日記に違和感を覚え、謎を解いてきます。
    秋にサイクリングで訪問した十和田の宿で知り合った台湾のご夫婦と台湾での再会を約束してから、台湾のことをいろいろ調べて、この小説でも登場する地名をGoogleで調べながら読んでいました。
    半分まではなかなか引き込まれないで、読むペースが遅かったのですが、後半古い日記の謎解きから現代につながり、ミステリーな話に急展開して、なかなか面白かったです。映画になるともっと面白いかなと思いました。

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    2024年12月05日
  • 日月潭の朱い花

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    25歳のサチコは、不条理な派遣から逃れて台湾で偶然再会した在日コリアンのジュリといっしょに住む。
    古物商で見つけた革製のトランクのなかから古い日記帳を見つける。
    それは、日本統治時代の台湾を生きた女学生が、書いた日記だった。
    その日記を読んだときから普段は引きこもりのジュリが、その女学生の行方を調査するようになり…

    現代のサチコとジュリが、時をこえて日記の少女の行方を探すのだが、植民地台湾の生活に触れて思う重たい気持ちや知らなかったやるせなさなども考えさせられる。
    それだけではなくこの二人のアイデンティティも求める旅にもなっている。
    探して、追い求めて、ときには苦しみも伴い、だけど断ち切れな

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    2024年09月20日