日比野コレコのレビュー一覧
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花を、草を、キーホルダーすらをも食べる、異食の道化師である薗。「みんなのひと」になりたくて、フリーハグをするハグ。プロの軟派師としてデビューしたばかりの弘愛。三人が「かいぶつ」と呼ばれる時計台が見下ろす公園で出会い、残酷ながらも幻想的な生が描かれるーーー
ハグも弘愛も、もちろん薗にも、もっと別の道がなかったのかなとも思う。けどそれは、ハグに言わせてみれば「耳が腐る」思案なんだよな。軟派師で、抱擁師であり続けた二人の人生は変えられないとなると、悲しさと共に溢れる敬意で胸がいっぱいになる。であれば、薗のこれからを想像してみる。人間になるための行動をした二人に、別のやり方で続きたい薗。自分の中にある自分から離れ、自分以外から自分を探し、猫から週一で野菜を買うために野菜を食べ始めるのだ。薗はもうへやを持っているし、部屋だってある。だから彼女はあゆみをとめず、また一歩大きな一歩でたえまなく進んでいけるだろう。薗のゆめはきっと広がる。この物語を手に取った人たちは、抱擁師と軟派師による人間宣言や、薗による続・人間宣言にあてられて更に続くはず。少なくとも私は、続をまたひとつ足し算したい。
「ビューティフルからビューティフルへ」に続いて二作目となる日比野コレコさんの作品。前も思ったけど、ワードセンスが好みすぎる。どちらの作品も、その作品が持つ世界観をこれでもかと広げて、読者を深く沈ませて逃さない。そんな言葉達に魅せられた。
「彼女は彼女がどこにもいかないということを全身で伝える術を知っていた。園はその永遠のあまりのほんものさに目を閉じることができた。」
うっとりするほど大好きな表現。ハグという行為をここまで詩的で恍惚感溢れさせられる言葉に変換出来る筆者の力に惚れ惚れする。 -
Posted by ブクログ
絶望がドレスコード。そう語る、ネグレクト家庭で育ち「死にたい歴=年齢」のナナと、同人エロ漫画を読んで育ったビックリ箱入り娘の静は毎週「ことばぁ」の元へ通う。そこに駅前でサイファーする男=ビルEも加わり、絶望で泳ぐ三人にことばぁによって糸が垂らされるーーー
最高だった。
希望が人間の骨格とするならば、折り畳み傘のようにバキバキに折れたナナ、小指程度が折れたビルE、そして無駄に一本骨が生えてきそうな静。それぞれがそれぞれの絶望を育て上げてなお生きている様は受け手としても何やら動かされるものがある。
人が絶望に溺れている時、藁でも掴み、生を求める。三人もまた、ことばぁが垂らした一本の細い糸によって、数秒先を考えられる。どんな人でもそれは当てはまり、何が自分の生きる希望となるかは分からない。自分だけの特別な物かも知れないし、ありふれ、使い古された物や言葉かも知れない。それでも救ってくれるならそれでいい。いま自分が好きな物は小説で、文章で、言葉。人からなんと言われようと自分には言葉があるし、絶望の中でも、言葉の輝きを見つけ、縋りたい。
日比野コレコさんの小説がずっと気になっていて、遂に読んだのだけれど、すっごい好きかもしれない。言葉のセンスが好みで、「たたみかけるパンチラインで描かれる」と紹介されているように、強く響かせられる言葉が文章に溢れている。 -
Posted by ブクログ
大好き!大好き!大好き!
オモコロチャンネルで紹介されてたから読んだけどドンピシャで大好きな作品だった。
うねるように次々登場するパンチラインの数々、どれも好きすぎて悶えた。
生きたいとか死にたいとか愛するとか信じるとか殺すとか色んな感情が心の中で日々渦巻く中で人と関わり合うことで生まれる感情の矢印を追うことに億劫になって自分から自分に向ける矢印が死にたい、しかなくなってしまう私はナナや静やビルEの存在に痛いほど勝手に共感したし救われた。
惰性でも結局生きるしかなくて私にとっての地獄は他人にとってはどうでも良くて。
道化を演じ続けるナナの切実さも分かるし自己肯定感の低さが原因なのかは分からないけど正解を追い求めてしまって絶対的な誰かに着いていくことしか出来ないビルEの気持ちも無邪気に誰かの感情を弄んで本当の真っ直ぐさは伝わらなくて空虚さしか心に残らない静の気持ちも、私は全部分かるよ、分かるって言わせて欲しい。
誰よりも強い矛盾を抱えて今日も生きなきゃいけないけど、正しいとか間違ってるとか無いから。
誰かにとっての正しいは誰かにとっての間違いだから。
だから、せめて少しは生きやすいように目の前にいるあなたの正しいに合わせて私は生きようと思う。
そして、美しさだけは正誤も善悪も全部飛び越える力があるから、美しく生きようと思う。
関わる人によって顔色を変える私はずっと美しく在りたい誰と話しても美しく、ビューティフルからビューティフルへと。
抽象的にしか掴めなかったけど本当に大好きで堪らない作品だった……。
日比野コレコさんの他の作品も読みたいな。
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Posted by ブクログ
ネタバレ衝撃的な作品だった。
薗やハグ、ひろめぐたち「とび商」は、「かいぶつ」と呼ばれる時計台のまわりで商売をしており、薗は異食、ひろめぐは軟派、ハグはフリーハグをしていた。
爆発を待つ時計台は薗たちの気持ちを表しているようで、気持ちがいつ爆発するか分からない危うさを感じた。
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「痩せたらなにもかもが変わる!」
美容外科に飾られたそんな広告をきっかけに、薗はダイエットをして痩せ、異食をするようになった。
口にするものが「食べ物」であればあるほど食べられず、「食べ物ではないもの」であれば食べられる。
特に花の雄蕊と雌蕊を好んで食べる描写が強く印象に残っている。
そんな薗の行為は異様で考えられないものであったが、途中から登場する抱擁師・ハグにより、薗の異様さが私の中で薄れた。
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この小説を読む中で考えたことは、大きく分けて二つある。
一つは、世間からの性別の捉えられ方だ。
性行為に関して、世間から向けられる目が、性別(この小説では女性と男性)によってかなり異なり、イメージが固まってしまっていると感じた。
ハグ(女性)とひろめぐ(男性)の行為をSNSで目にした人たちは、ハグをか弱いもののように扱い、抱擁師としてのハグの仕事は破綻してしまう。
本当は、抱擁師であるハグの包容力で成り立っていたものなのに。
動画一つでハグの仕事が成り立たなくなってしまう流れの中で、頭のどこかで「やっぱりな」という諦めにも似た気持ちが浮かんだ。
女性を弱いもの、支配されるものだと捉えられてしまうのは、本当に悔しい。
そして、その人自身の光を性的魅力だと思われ、それが生涯拭い去れず、何をしても「そのせいだ」と思われてしまうのは、とても苦しい。
その人自身の光は変わらないはずなのに。
考えたことのもう一つは、過剰な包容力についてだ。
ハグとひろめぐの行為について、「抱擁師であるハグの包容力で成り立っていたもの」と書いたが、その包容力が恐ろしかった。
「包容力」という言葉からは温かく優しいイメージを抱くが、ハグのそれは果てしなく、それゆえに近寄りがたいような感じがした。
ハグは「みんなのひと」になりたかったし、そのためならどんな手段を使ってもいいと思っていた。
そのいきすぎた包容力は、薗の異食よりも怖く感じた。
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ハグの仕事が成り立たなくなる中で、薗の気持ちに変化が起きていたのが印象的だった。
これまで疑わず迷わず生きてきた薗が、初めて「方向転換」をすることを考える。
ハグとひろめぐが《痛くない出口》に向かったあと、「非生活者」だった薗が「人間(=生活者)」になるために動きだすラストは、ほんの少し希望があると思った。 -
ネタバレ
最後まで食えば美味しくなってる
そういう料理みたいに読んだ後は魅了された。
私は全然登場人物に共感もしなければ同情もしなかった。それはいい意味で文体や言葉選びに集中できたからだろうと思う。
内容としては最初のページから生々しくて、重苦しくて、青臭くて、重たいようなこの本のことを最後まで読めるか不安だった。でも私は自分が終えた学生時代というものを濾過して、美化をしていたことに気づかされた。人生は思ったより汚くて、学生時代だって信じられないほどグロテスクな人間関係があって、自分は何を平気なふりをして生きてるんだと震えた。無料の同人エロ漫画を読み漁って夜を更かして、女だって全然そうでもいいだろと正気になった。
私は綺麗な言葉や物語に毒されて、部屋も汚せなくなっていた。生きてもないのに死んでたまるか。精一杯生きたいです。素敵な物語でした。
はじめての本のレビューを書きました。日比野さんの作品を楽しみに星は全部つけます。大好きです。
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Posted by ブクログ
とてつもない才能を感じた。文体が自由奔放で、予想外の表現が畳み掛けられていくのが面白かった。
「希望は人間の骨格だって言うけど、ダイの困った顔を見るのが好きで好きでたまらなくて、骨がいっぽん無駄に生えてきそうだった。」という箇所が好きだった。恋心をこんな風に表現する作家は、これまで見たことがない。
文体についてもう1つ良いなと思ったのが、「意味を認識することができない箇所」が、静が語るパートにいくつかあったこと。
たしかに日本語が羅列されていて、読点で区切られている一文ずつの意味はわかるのに、その一文を全てつなぐと意味がわからない。
とても不思議な感覚だった。
そこに静の自由奔放さが現れているような気がした。言葉を伝えるための道具として使うのではなくて、言葉を粘土にたとえるなら、言葉が静の思うままにいろんな形にこねくり回されて、その結果できたぐちゃぐちゃした粘土の塊が読者に提示されているみたいな。
言葉遊びの最上級がここにある、そんな感じがした。
「生きていくなかで、心をここになら置いておけるという場所がないから、負の感情を全部受け取って溜め込んでしまう」、溜め込んだ負の感情が汚い言葉として口から出てきてしまう、そういう人間の醜い性みたいな部分が描かれているのも良かった。
「この世でいちばん意味のないものは、確実に、確実に恥じらいだ。だから最短距離でダイが好き。」
という箇所も良かった。
綿矢りささんの小説に出てくる主人公のように、恋する相手に対して周囲を憚らず一直線に突き進んでいく感じがよかった。