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若者たちの生を鮮やかに描く、芥川賞候補作
第173回芥川賞候補作
若者たちの生を鮮烈な文章で描く、これが文学の未来!
「かいぶつ」と呼ばれる時計台が見下ろす公園で出会った二人の少女と一人の青年。
美容外科のポスターに啓示を受け、花を食べる“異食の道化師”薗(その)。
「みんなのひと」になりたくて、フリーハグを続ける“抱擁師”ハグ。
“プロの軟派師”としてデビューしたばかりの弘愛(ひろめぐ)。
「こんなふうだったら、かんぺきだと思う」
「なにが」
「人と人とのむすびつきがさ」
ここは帰るべき家を持たない少年少女たちの残酷な楽園
21歳の新鋭が爆発させる愛と幻想の世界!
※アプリの閲覧環境は最新バージョンのものです。
Posted by ブクログ
花を、草を、キーホルダーすらをも食べる、異食の道化師である薗。「みんなのひと」になりたくて、フリーハグをするハグ。プロの軟派師としてデビューしたばかりの弘愛。三人が「かいぶつ」と呼ばれる時計台が見下ろす公園で出会い、残酷ながらも幻想的な生が描かれるーーー
ハグも弘愛も、もちろん薗にも、もっと別の道がなかったのかなとも思う。けどそれは、ハグに言わせてみれば「耳が腐る」思案なんだよな。軟派師で、抱擁師であり続けた二人の人生は変えられないとなると、悲しさと共に溢れる敬意で胸がいっぱいになる。であれば、薗のこれからを想像してみる。人間になるための行動をした二人に、別のやり方で続きたい薗。自分の中にある自分から離れ、自分以外から自分を探し、猫から週一で野菜を買うために野菜を食べ始めるのだ。薗はもうへやを持っているし、部屋だってある。だから彼女はあゆみをとめず、また一歩大きな一歩でたえまなく進んでいけるだろう。薗のゆめはきっと広がる。この物語を手に取った人たちは、抱擁師と軟派師による人間宣言や、薗による続・人間宣言にあてられて更に続くはず。少なくとも私は、続をまたひとつ足し算したい。
「ビューティフルからビューティフルへ」に続いて二作目となる日比野コレコさんの作品。前も思ったけど、ワードセンスが好みすぎる。どちらの作品も、その作品が持つ世界観をこれでもかと広げて、読者を深く沈ませて逃さない。そんな言葉達に魅せられた。
「彼女は彼女がどこにもいかないということを全身で伝える術を知っていた。園はその永遠のあまりのほんものさに目を閉じることができた。」
うっとりするほど大好きな表現。ハグという行為をここまで詩的で恍惚感溢れさせられる言葉に変換出来る筆者の力に惚れ惚れする。
Posted by ブクログ
著者は、2003年生まれの大阪の女の子らしい。文体が、数珠繋ぎのようにつながって異様な世界を生み出す。主人公は、薗というこだわりを持った女の子である。なんとなく、大阪万博のマスコット、ミャクミャクをイメージする。ミャクミャクは、「脈々と受け継がれてきた人間のDNAや知恵や技術、歴史や文化を未来に受け継ぐ」といった意味を込めて「脈々=ミャクミャク」と名付けられた。読んでいると薗がミャクミャクに見える。様々な言葉が、文章の中に転がっている。無造作な言葉たちが漂う。それが文学だと錯覚しているように。その転がっている言葉を食べていくような錯覚に陥る。
薗という存在も、どんなことがあっても生き抜いていく力があるようだ。食べるのは、まともな食べ物ではなく、自分の髪や爪、そして主食が氷だ。栄養分は、ほとんどないけど、園は食べる行為が重要であって、美味しいとか不味いとかという基準はないのだ。薗は「異色の道化師」と自称する。とにかく食い繋いでいくのだ。そして、美容整形外科の「痩せることで世界が変わる」という看板がかかっている。食べることで、自分の変容を期待する。とにかく、あとはねぐらがあればいいのだ。道端にさく花の雌蕊と雄蕊を食べることが好きだった。
生存することに意味があるような薗。大阪の食い倒れというあくなき食欲の世界で、ただ氷だけを食べている。生活様式が、食べることを拒絶する。ただし咀嚼はし続ける。その舞台が大阪であることに、薗の存在の意義が生まれる。そして、その食べている姿が見せ物とする。生きていることが、傷つけられるのだ。
大阪の時計台を舞台とする。爆発までの時を刻む緑青の時計台。檻のような螺旋型の展望台で、大量の観光客(生活者)を見込んで、少年少女たちによる個人商売が行われている。彼らはその商売を「とび商」と呼ぶ。そこで、生き抜く薗。 そこで、ハグが繰り返される。ナンパ師の子供の弘愛は、ナンパをし続ける。弘愛はナンパをする行為が、市民の抵抗だと刷り込まれている。そして「おれはそういううつくしいものに向いていないんだろうな」と思っている。弘愛は、クローゼットの暗闇の中で成長した。はぐむと呼ばれるハグは、フリーハグをし続ける。そして、そこには愛が存在しない。ただ、ひたすらハグをする。結局、ハグも弘愛も、性行為を撮影して、ネットの中に売られていく。
著者の作品で『ビューティフルからビューティフルへ』がある。うつくしいものの羨望もある。
そして、薗は、ハグの部屋で、食べきれないほどのひかりの雨に撃たれて、光を存分に浴びる。そして、「わたしはなにもまちがえなかった」と言い、それが薗の人間宣言だと思った。
薗は、ミャクミャクくんになるのだ。設定から、終わるまで、異世界の中に生きている。
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