セレステ・イングのレビュー一覧

  • 秘密にしていたこと

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    『密やかな炎』がとても好きなタイプの物語だったので既刊のこちらもお取り寄せ。

    「リディアは死んだ。だが、彼らはまだそれを知らない。」のショッキングな書き出しで始まる。
    『密やかな炎』と同じく、その結末を迎えるに至った家族の顛末を辿る倒叙形式の物語。
    これがこの著者の型なのかな。

    倒叙といっても単なる過去の一時期に視点移動するのではなく、そもそもの発端である大過去(父ジェームスと母マリリンの馴れ初め)、10年前に訪れた家族の危機(マリリンの失踪)を語る中過去、直近での家族の歪みを描く小過去、それぞれの時点を唐突とも言えるほどの切り替わりで行きつ戻りつする。
    さらには時折りリディアの死以降の未

    0
    2025年11月08日
  • 密やかな炎

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    紛れもない傑作
    親子とは?家族とは?正義とは?愛とは?
    様々なメッセージが込められた作品だと感じた

    主人公となる2人の母親は、完全に真逆な存在だが、確固たる自分を持っている
    エリートの夫を持ち、たくさんの子供に十分な教育や物を与え、友人に囲まれている母親
    夫はなく、娘と2人きりで、その日暮らしの貧しい暮らしをしながら、深い愛情を持つ母親

    どちらが正解というわけではないが、子供達はそんな母親の生き方を敏感に感じている

    親も1人の人間でしかなく、子供もやはり1人の人間となる
    自分の子供への接し方、愛し方を考えさせられた

    0
    2025年09月25日
  • 密やかな炎

    Posted by ブクログ

    「母と子」や「階級と格差」や「正しいこと」と普遍的なテーマが複合的に描かれた作品。
    登場人物は特徴を捉えるとステレオタイプなキャラが多いけれど、結末を最初に出して「なぜそうなったか」の話を進めると同時に各キャラをしっかり掘り下げるので画一的に「いいやつ」と「嫌なやつ」にさせない書きぶりが素晴らしい。
    自分ならどうするか、この中の誰に近いのか、とかそんなことを考えながら読んだ。

    0
    2025年09月14日
  • 密やかな炎

    Posted by ブクログ

     閑静な住宅街にある邸宅が燃えてしまう。住人である家族は無事のようだが、末娘は見つからない。両親は弁護士と記者で、不動産収入もある裕福な家庭だ。末娘意外のの子どもはみな優秀である。これは、そんな恵まれた家族に何が起き、火災で家を失うことになったのかという物語だ。
     社会的にも経済的にも成功している家族が、どうして崩壊することになったのか、一家を人生の勝ち組として導いている母エレナの正確な計算のどこに狂いが生じたのが見どころで、ぐいぐい惹きつけられる。
     因果応報というか、生きてゆく中で、普通に起こり得るであろうトラブルに見舞われたとき、どう行動するかが大切で、誠実性を欠く対処は、巡り巡って自分

    0
    2025年08月02日
  • 密やかな炎

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    上手いな、この人。登場人物(特にお金持ちの奥様たち)の造形が戯画的ではあるものの、十分に楽しめる内容になっている。それにしても、失って初めて気づくってのはよくある話だけど、作中の〇〇夫人はあまりにも鈍感にすぎるんじゃないかな。

    0
    2025年06月07日
  • 密やかな炎

    Posted by ブクログ

    読みごたえがあった。美しく整備された街で、裕福で美しい暮らしを営む家族の表面と、そこにやってきた異質な母娘によって嫌でも見えてくる内部。経済的な格差、人種、性別、母娘の関係、いろんなものが突きつけられる。

    え、それは明かされないんだ?と言うモヤモヤの残ることもいくつかあったが、現実はえてしてそう言うもので。解決されたりされなかったり、わかったような気になったりわからなかったり、そうやって進んでいくよね。

    0
    2025年05月18日
  • 秘密にしていたこと

    Posted by ブクログ

     読み終わってから、最近の本だったという事に驚いた。翻訳者の後書きを踏まえると、まだアジア人差別のようなものが残っているのだなと感じた。まあでも、この本の主題はそうでは無いので、一旦置いておこう。
     この本を読んでいて、コンプレックスの克服とは、なかなかうまくいかないものだなと、強く感じた。コンプレックスをバネに成功した人の話は、何度か聞いたことがあるのに。
     親はやっぱり、自分のようになってほしく無いとか、こういうふうに育って欲しいという願望が捨てきれないのだろうな。表面的には成り立っている様に見える家族ではあるが、それは子供の協力があってこそ。むしろ、子供の共感力がなければ、早くに家庭崩壊

    0
    2024年02月16日
  • 秘密にしていたこと

    Posted by ブクログ

    いやー、なかなかしんどかったな。
    家族とは言え(家族だからこそ?)誰にでも何らかの秘密はあるものだけれど、もうちょっと共有し合えていればよかったのに、とは思う。人種、女性として生きる道、両親から過剰な期待をされること、あるいはまるで期待されないこと…何もかもがあまりにも重くて。

    作家の力量はひしひし感じる。この人の作品はもっと読みたい。

    0
    2022年10月28日
  • 密やかな炎

    Posted by ブクログ

    読み進めていくうちに、ミアはジョディ・フォスターのイメージが合うと思った。既にドラマ化されている様だけど、見て見ようかどうか悩む。ドラマ化や映画化って全然別物になってしまう事が多いから。
    英語版も入手したので、時間を見つけて読みたい。

    0
    2025年10月30日
  • 密やかな炎

    Posted by ブクログ

    シェイカー・ハイツという計画的に造られた町に住み規則を重んじる人や、型を破りながら人生を歩んでいく人達が交錯する物語。じっくりと読んでいるうちにいつの間にか物語に引き込まれていた。両親の理解を得られぬまま芸術の道を選択し放浪するミア、恵まれた家庭に生まれながらも規則に縛られることを嫌い両親に理解されないイジーら、自身の中に燃える火を信じて生きていくことは大事。一方で、ミアの両親らがその生き方を理解しないことを責めるような表現は少なかった。育ち方や環境、時代が違えば、許容できる範囲も変わり、考え方が異なることは無理もないという表現だった。ある小さな町の物語に没入したような満足感のある本だった。

    0
    2025年10月03日
  • 密やかな炎

    Posted by ブクログ

    米国の住宅街での火事で幕が開く。
    弁護士の父親と地元新聞の記者の母親、4人の高校生の兄弟・姉妹が住む地元の名士リチャードソン家。原因は、末娘イジーの放火。そして、イジーとリチャードソン家の家事を担っていたミアとその娘でリチャードソン家の子どもたちと仲の良かった娘のパールが、いなくなった。

    家族の意味、親子のあり方・意味、命をさずかる事の意味…。リチャードソン家とウォレン家(ミアとパール)、ミアの同僚のべべ、様々な立場の登場人物たちの思いとすれ違いに考えさせられた。

    0
    2025年09月29日
  • 密やかな炎

    Posted by ブクログ

    母と子、異なった生活歴、職歴を持つ回想が異なる二組の「家」そして女性の対立。
    筆者イングは中国系移民2世・・これまで読んできた同じ流れにいる作家とはまた一味異なった作品だった。
    読み始めは、なかなか流れに乗れず、正直だれるドラマ。
    次第に 背景となる時代、社会風景に生きていくティーンの男女の性愛、セックス、妊娠、そして異人種の代理母など様々な愛の形と「母と子」のモデルの裏が描かれて行く手法が染みわたってきた。

    舞台となるオハイオ州シェイカー・ハイツは実存するんですね。
    完璧な場所、完璧な暮らし・・そこに住んでいるリチャードソン一家はまさにそう、そして母エレナは常にりそいうの家庭像を追い求める

    0
    2025年09月27日
  • 秘密にしていたこと

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    ジェームズとマリリンとでは、「違う」に対する考え方が違った...。非常に上手な作りだと思った。

    違うことと和解できていないふたりが、娘には理想を生きてほしいと自分がして欲しかったことや彼女の「役に立つ」であろうことを言ったりやったりする。でもそれが本人の性質や希望とは「違う」場合、それは重荷になる。

    移民二世や、移民でなくとも、親の期待を子供に背負わせることはよくあるが、それが重くなりすぎるとどんなに苦しいことになるのか、結果として家族も苦しめることがあるという可能性を見た気がした。

    型に当てはめたら幸せになるわけではない。子育てって、個の特徴をしっかりと捉え、尊重してあげることが大切な

    0
    2025年09月03日
  • 秘密にしていたこと

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    家族に秘密にしていることはありますか? そりゃ、ありますよね、たいていの人は。でも、家族だからこそ、想いをきちんと伝えなければならないことってあると思うんです。この物語では、まず両親がきちんと本音をぶつけ合っていない。妻のマリリンは私と同じ女性なので、目指す生き方と、結婚妊娠出産育児との折り合いをつけるのは大変だったろうと思います。時代も1960年代ごろですし。だけど、何も打ち明けずに行動するのは、家族にとっては(特に子どもにとっては)捨てられたも同じことで、大きな傷を抱えてしまう。なぜ、きちんと話せなかったのか? 腹立たしくて、心を寄せることが出来なくなってしまいました。
    子どもは親とは別人

    0
    2025年08月08日
  • 密やかな炎

    Posted by ブクログ

    面白かった。さりげなく、しかし確実に意図的に物語に登場する様々な家族の「かたち」。なかには、非難を呼び得る選択の結果形成されたものもある。しかし著者は決してそれをジャッジしない。ただ、人生として描いている。
    そしてそれぞれのヒストリーや勃発する事件の中で描写される、ジェンダーや人種を巡る尽きぬ問題。特に、作者の実感の滲む、米国社会におけるアジア系移民の立場やそのアイデンティティを巡る議論については、新たに気付かされる視点もあった。
    何よりサスペンスとしての物語の織られ方が上質だ。裕福な、絵に描いたような美しい家庭と思春期の子供たちの生活に、ある日訪れる根無し草の親子─というやや古典的な導入から

    0
    2025年07月04日
  • 密やかな炎

    Posted by ブクログ

    母と子のアンバランスな愛情… 情緒がリアリティに満ち溢れ、ジワリジワリと染みわたる #密やかな炎

    ■あらすじ
    オハイオ州シェイカー・ハイツに住むリチャードソン一家。母エレナは子どもたちに規律を重んじるよう厳しく接し、理想の家庭を追い求める女性だった。

    ある日、一家の借家に母娘ミアとパールが引っ越してくる。有色人種で芸術家のミアは経済的に苦しい生活を送っている。安定した暮らしに憧れているミアは、裕福なリチャードソン一家の子どもたちと交流を深めていく。

    やがてこのリチャードソンの大きな邸宅が、火事になってしまうのだが…

    ■きっと読みたくなるレビュー
    ダークでやたら現実味あふれるホームドラマ

    0
    2025年06月14日
  • 密やかな炎

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    失ったものはもう戻らない。
    何を得て、何を諦めて失うのか。
    2つの家族はまったく違う環境下で生活している。どちらの家族が正しいなんてことはない。しかし子供達にとって、どちらの方が生きやすいかと言われるとまた違ってくるのだろう。
    出てくるキャラクターたちはみな魅力的で、
    描写がこと細かく、まるでキャラクターたちが自分の友人のように見えてきました。
    そんな彼らが選ぶものは何なのか。
    家族なのか、友情なのか、恋人なのか。
    はたまた、、、?
    火事を巡って、その原因は、犯人は誰なのか。
    過去に遡って真実を探していくミステリー。
    私は特にミアの過去シーンに驚き、
    息を呑んでしまいました。

    0
    2025年05月11日
  • 秘密にしていたこと

    Posted by ブクログ

    言い回しに分かりづらさを感じる部分があり、読み始めは戸惑った。娘の死は既に確定しており、家族それぞれに抱えた思いやすれ違いがどうにもならないところまで捻れていく様は耐え難いものがあった。

    0
    2023年03月07日
  • 密やかな炎

    Posted by ブクログ

    都市計画によって建設されたオハイオのシェイカーハイツ、そこはアメリカでは珍しく人種や宗教に関係なく居住できる。そこの住人で主に、理想の母親を演じるエレナと末娘イジー、自由人ミアと娘のパールの視点で描かれる。エレナの家の火事から始まる物語は過去に遡って行く。
    上昇志向の家族、自由を満喫したい家族、其々の家庭内での軋轢がページを捲る毎に重くのしかかる。息苦しくなる様な作品だった。

    0
    2025年09月08日
  • 密やかな炎

    Posted by ブクログ

    作品の舞台となったシェイカーハイツという計画都市はオハイオ州に実在しているそうで、いろいろな人種の人が同じ場所に住むのは珍しい米国において、ある程度の成功を収めたということになっているらしい。作者はそこで育った経験をもとに、表向きは人種平等を具現化している場所でも、マイノリティの生きずらさはあることを小説を通して表している。他意はなくても傷つけてしまうのは集団生活の難しさで、本小説の登場人物達が、ささいなことで傷つくのを読むと、人間関係って面倒くさいと思ってしまう今日この頃である。
    産みの親と育ての親問題は、赤ちゃんのことを考えて判断するべきというのが私の意見で、貧乏な片親より裕福な育ての親が

    0
    2025年08月01日