ピップ・ウィリアムズのレビュー一覧

  • 小さなことばたちの辞書

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    女性たちの連帯はもちろん、同じ時代を生き、ことばに仕えた人々のきずなが描かれている、壮大な物語だった。
    単なるフェミニズムに寄りすぎるのではなく、エズメの周りの男性達は、女性であるエズメを理解し、応援したり温かく見守ってくれる人たちだっただけに、男性が主体となって向かわなければならなかった戦争のおぞましさが引き立っていた。
    戦争はもちろん、他にも悲しい出来事はたくさんあったが、ことばの世界に守られてきたエズメが、ことばを通して誰かを励まし、慰め、背中を押して次の世代にバトンを渡すまでの生き様がとても美しく描かれていた。

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    2025年07月28日
  • 小さなことばたちの辞書

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    ネタバレ

    あまりに美しくて最初から涙が出そうになる。「美しい」といったけどそれは外見に現れる「美」ではなくて日常に浮かんでいる、心が絵のように印象を切り取り溜め込んでいくそのシーンの美しさの事。言葉で文中説明されることのない主人公の感情の積み上げはこちらにぽつりぽつりと落ちて波紋をいくつも作るのよ。トニモリスンの「ラブ」を読んだ時の如く、直接説明せずに描ける方は本当に凄いなぁ。映画化されて欲しいくらいだが映画でこの美しさを表現できるのか?とも思う。本が好きな人も、言葉が好きな人も、女性である事に鬱々とする人も、メタな視点でいえば翻訳という事を楽しむ人も、何かしら見つけられると思う。そして戦争が日常に入り

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    2025年07月16日
  • 小さなことばたちの辞書

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    辞書は男の言葉でできている、そんなことに気付かされる物語。
    全ての英語を記載する辞書を作る過程を描きながら、そこからこぼれ落ちる言葉に注目したという、それだけですごい作品。
    女性たちの、”取るに足らない””学術的な価値がない”などとされていた言葉を拾い集めることで、それを使う人々の地位や出自、そして性別によって、残されるべき言葉が決まっているのかもしれない…。
    言葉に取り憑かれたような女性、エズメの人生を描きながら、過去と現代を照らし合わせることで、見えていなかったものが見えてくる作品だった。
    個人的には、なぜある言葉を”卑猥”と感じるのか、その視点がなかったので、本編と訳者のあとがきを読むこ

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    2025年05月08日
  • 小さなことばたちの辞書

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    ネタバレ

    読んでよかった。
    ことばを持つこと、ことばを扱うこと、ことばを得ること。ひとつひとつが大切で、意味のあることだって実感できた。

    すくいあげられない市井の人のうつくしさも素晴らしかった。
    エズメは当時の女性にしては恵まれていたが、それでもやっぱり「女」であることからは逃れられなくて、「持つ者」としてのエズメと「持たざる者」としてのエズメ両方を描いているところが好き。

    メイベルもディーダもガレスも好き。リジーはもちろん好き。リジーがいたからエズメは「ボンドメイド」ということばが引っかかったのだろうし、エズメがいたからリジーはいろんなことばを獲得して、ことばを通して心について考えたりできたのでは

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    2025年05月07日
  • ジェリコの製本職人

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    第一次世界大戦下のイギリス、オックスフォードの製本所で働く女性ペギーが地位を超えて大学を目指すお話。障害を持つ妹、戦争の影響、女性の権利の低さ。ペギーが卑屈すぎると何度も感じたけれど、それは今までペギーが受けてきた視線や言葉や待遇の裏返し。普段は日本の小説を好んで読んでいるけれど海外の小説はやはり世界が広いなー。これからもぼちぼち読んでいこうと思う。

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    2025年05月03日
  • ジェリコの製本職人

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    小さなことばたちの辞書が素晴らしかったので、姉妹本とされるこちらの本も手に取りました

    女性差別が酷かったこの時代
    今では当たり前にある権利は、こういった女性差別に苦しんできた人たちが勝ち取ってきたものなのだと思うと、大切にしなければならないと思います

    また、この本からは諦めない心も学べる

    本を読むということは、楽しみもあるけれど、学びの一面もある
    全ての本が好きな人たちに、読んでみてもらいたいと思います

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    2025年05月02日
  • 小さなことばたちの辞書

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    読み始め、翻訳特有のとっつきにくさを感じ、完読できるのか不安になってしまい、ブグロクでネタバレの無い感想を先に読みました。ポジティブな感想が多く、それ以降は、ほとんどのめり込むように、本の世界に入ってる自分がいました。
    日本の辞書編纂を題材とた船を編むは読んだ事がありましたが、やはりどの国でもこのテーマって愛されるんだなぁと思いました。
    彼女の数奇な運命に私も何度も涙を流し、彼女を取り巻く様々な人の人生を垣間見て、私も力をもらい、彼女の人生に人しれず伴走して生き切った感じです。
    辞書は、それを作った人達の熱意や、出典元となる言葉を提供してくれた人々の気持ちも全部乗せて、文字が組まれて印刷されて

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    2025年04月01日
  • ジェリコの製本職人

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    ネタバレ

    前作の「小さなことばたちの辞書」も良かったけど、それを更に上回る面白さだった。前作のガレスとエズメが出てきたのも嬉しい驚きだった。また、前作の主人公エズメよりも今作のペギーの方が感情移入でき、より読みやすかった。
    ペギーがまさかサマーヴィルに落ちるとは思わず、これからどうなってしまうのだろうと読者ながらにハラハラ心配したけど、最終的に翌年に合格してバスティアンとも各々のあるべき場所で幸せに繋がりを保てているラストにほっと胸を撫で下ろした。

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    2025年03月14日
  • 小さなことばたちの辞書

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    ネタバレ

    エズメが大切に大切に言葉を集めたように、大切に大切に読みたかった。辞書編纂をめぐる壮大で、かなしくて、あたたかい物語。
    「世界中のあらゆる書物から集めた言葉」が、書物の書き手がほとんど男であったために男が使う言葉に片寄っているのではないか?という視点は目から鱗だった。
    編纂にかかった40年の間に第一次世界大戦があり女性参政権運動があり、それがエズメとOED編纂の物語に丁寧に織り込まれて、読みごたえがあった。(戦争の下りはもう過去の話として読めなくて、本当につらい)
    翻って、物語の中にあったような女性の生きづらさが果たして今はなくなっているのか?と思うにつけ、なにも変わっていなくてびっくりする…

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    2025年02月12日
  • 小さなことばたちの辞書

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    とても良い本だった

    ことばってとても大切なものだと私はずっと思っている
    本来、ことばはことばそのものであり、良いものも悪いものもきっとないはずで
    それに意味を見いだしてことばを使っていくのが私たち

    以前、今もかもしれませんが女性の立場はとても低いものだった
    それはことばでも同じ
    辞書を作る、という事柄からいかに男性優位で女性が下位にいたのかがわかります

    こういう本を読むと、いつも思うんです
    女性運動に注目して書かれた本は少なくないのに、その本は大抵女性が書いている
    男性にも、もっと注目してもらいたいなと思ってしまいます

    辞書は歴史書でもある

    本当にそう思います
    以前とは、意味が異なっ

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    2024年09月07日
  • 小さなことばたちの辞書

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    タイトルからもう好きな予感がしたんだが、とてもとても良かった。

    主要な登場人物たちに共通する慎み深さ、物語の静かなトーン。
    一歩一歩、踏み締めていくような時間軸でエズメの人生が進んでいくから、その都度交わされることばや体験がどれも沁みた。

    ことばを通して見える女性たちの社会的立場への問いかけ、シスタフッド、歴史、教育論、家族愛、恋愛…
    静かな物語だけど、中身がぎっしり詰まってた。

    いつか自分の子どもにも読んでもらいたいな。

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    2024年06月28日
  • 小さなことばたちの辞書

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    ネタバレ

    いや、すっごいこの本は考えさせられた!
    何か分からない言葉があったら調べる。
    今はネットとかでサクッと調べるけど、より深く調べたり学校に通ってた時は辞書を使いなさいとよく言われた。
    だから辞書の中には全ての言葉の意味が載っていると当たり前のように思っていたけど、そうでは無い事もある。
    特に男尊女卑が激しかった昔に作られたオックスフォード辞典にはほぼ女性が使う言葉は無く仕事もほぼ男性の手によるもの。
    女性も沢山編集に加わっていたものの、時代的に女性は手伝っていたとはみなされなかった。
    さらに階級格差で比較的上流階級の人の言葉だけが採用されている。

    辞書と言う物はそういう世の中の格差や差別等から

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    2023年06月11日
  • 小さなことばたちの辞書

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    読み応えがあるのにやさしく読める不思議な本。内容は重いけど心に刻まれたものは決して暗くない。言葉を選ぶのは好きだけど、そんなふうに言葉を考えたことなかったなぁ。すごくいい作品。

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    2023年04月14日
  • 小さなことばたちの辞書

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    オックスフォード英語大辞典の編纂を助けた記録から抜け落ちた女性たちに光を当て、言葉に魅せられた少女エズメの成長と女性や貧しい人々であるために編纂からこぼれ落ちた言葉たちの物語。女性参政権運動や第一次世界大戦なども編み込みながら、父親やボンドメイドとして結ばれたリジーとの愛が全編を彩り類稀なタペストリーに仕上がっていて、読み応えもあり美しい。

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    2023年02月07日
  • 小さなことばたちの辞書

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    「オックスフォード英語大辞典」の編纂の歴史的事実をもとにしたフィクション。美しい物語という評価が一番しっくりくる作品だった。人生をやり直すことができるなら辞書編纂の仕事には憧れる。学生の頃にはそんなことは思ってもみなかったので選択肢にも入らなかったが。

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    2023年01月22日
  • 小さなことばたちの辞書

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    ネタバレ

    最後の「ボンドメイド」の意味と文例に長い年月を思って泣いた。ガレスがエズメをエッシーメイと呼びたかったこと、残されたリジーの深い哀しみすべて。死が淡々と描かれているけれど、エズメが少女の頃からの風景を一緒に眺めていたから深い。またいつかゆっくり読み返したい。

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    2023年01月22日
  • 小さなことばたちの辞書

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    ネタバレ

    全体にとても好き。こういうのが出てくるようになったんだなあ。子供の頃にアラバマ物語を読んだときを思い出した。1928の部分がすごくいいのだけれど、1989が少しばかり不満。この人がこのときのメガンの年になって書くものが読んでみたい。

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    2023年01月08日
  • 小さなことばたちの辞書

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    世の中ではあまり話題になっていないみたいですが「掘り出し物」でした.
    何年か前に「博士と狂人」や「舟を編む」が話題になったのですが,これは前者と同じオックスフォード英語大辞典の編纂作業を背景にし,ただし,架空の名もなき女性がそこに陰ながら携わる姿を描いたものです.
    背景には,女性参政権運動や第一次世界大戦があり,その中での主人公のほぼ一生を描いた大河小説です.
    残念ながらオックスフォード英語大辞典にとって彼女はあくまでも”陰”で,彼女の名前がそこに残ることはありませんでしたが,エピローグでは彼女が言葉に対して捧げてきたことが見事に実を結んだ様子が描かれます.

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    2022年11月24日
  • 小さなことばたちの辞書

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    ことばを丁寧に包めたような書き出し。ああ、いい物語が始まる、とすぐに感じた。

    言葉を歴史とともに正確に記録し、後世に伝えていく。
    辞典編纂は、壮大な人類の試みである。
    この作品は、そうした人々の熱意と、時代や社会に隠されてきた女性の存在、戦争によって失われそして生まれ変わった言葉たち全てを偉大な主人公として、書物という土台の上に建っている。

    どんな「小さな」言葉にも物語があり、それはそれを手に取る全ての人にとって異なり、時代によって移り変わる。しかし、その言葉を記録した人々がいつかのどこかの人間であるという事実は永遠に変わらない。私のもとにやってきてくれてありがとう。

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    2022年11月14日
  • 小さなことばたちの辞書

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    「オクスフォード英語大辞典」はもちろん大変価値ある偉業であるが、男性たちが男性たちの用例を集めて作っていること、そこには何人かの女性たちも加わっていたのに(祝賀の食事会でも外の席にされたことに象徴されるように)存在に光を当てられていないことに気づき、そこから想像を広げていく作者の視点が素晴らしい。史実と想像を織り込んで。ここまで豊かで生き生きと物語を紡いだことが素晴らしい。

    捨てられたことば、置き去りにされた小さなことばを集めるエズメ。女性の参政権の獲得や戦争という歴史の波と、エズメの日々の暮らしや恋愛などを重ねて生涯が描かれ、それは体温と重みを持つ。謝辞も辞書のテイで、作者の辞書や言葉に対

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    2022年10月21日