矢口高雄のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
(01)
残酷さがある.残酷はしかし,動物たちの世界に置かれたとき,とりわけマタギが駆け巡る山の哺乳類たちの生殺の関係に置かれたとき,やや残酷味は薄まる.
殺すのも当然,殺されるのも当然,突然死んでしまう偶然もどこか必然となるような山に向かってマタギは生きている.村人たちの日常をよそに,マタギたちは非日常を生きてるかのようでもある.地形に起伏があり,気象や植生も激しく迫るような場所を獲物を求め,さまよい,歩き,走る姿は,それだけでファンタジー(*02)でもある.
山の麓の村には電気もガスも水道も見当たらない.本書に収録された漫画が雑誌に連載されたのは1975年前後であったが,その頃の読者にしても郷愁を誘い,異世界に誘われるような魅力を発していただろう.前半に,電柱やオートバイの描写もあるが,それも不幸な呼び物のようにしか現れず,以降,技術といえば鉄と火と木と体術のような忍者やチャンバラの歴史物のような世界観が延々と続き,山の動物たちは科白こそ吐かないものの,どこか感情を表示するような表情をみせることもある.つまり,人間どもの技術レベルが落ちることで,動物どもの感情レベルが少し上がり,同じ山の舞台に立たされ演技しているようにもみえ,互いに戦わされているような異種格闘技も感じられてくる.
その混沌が綿密な取材や緻密な背景描写から成り立っているところにこの漫画の魅力はあるのだろう.
(02)
特に後半の「行者返し」や「樹氷」の章は幻想的であり,主人公のひとりである三四郎が孤独と疲労と熱によって魅入ってしまった夢のようにも感じられ,ちょっと可笑しい.真面目な物語が行き場を失い,うなされているような不思議さがある.マタギという生きにくい存在が現代において逢着した場所は,都会や田舎がある地平とは別のステージに解脱してしまったような,換骨奪胎の可笑しさともいえる. -
購入済み
なんだか懐かしい。
釣りキチ三平は自分が小学校1年生の時の漫画でした。
漫画見て、自分もやりたくてつり竿握った記憶があります。
ただ、魚紳さんの目が釣り針で見えなくなった場面がなんとも幼心にトラウマになって
とうとう針が怖くてやめてしまった記憶が・・・・。
あっ!!!漫画は面白いですよ。懐かしくて・・・。VSっていうのがいいです。 -
購入済み
ついに完結
釣り漫画の金字塔、釣りキチ三平もついに最終編です。今までの明るくほんわかしたふいんきと1線をがし、シリアスな内容ですがそこはキャラクターたちの力で湿っぽくなりすぎず、今まで出てきた話を上手く纏めながら読み応えのある内容になっています。
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Posted by ブクログ
コミックながらズッシリとくる...!
ただ楽しい、素晴らしい、ではなく残酷で切なかったり、複雑な思いなエピソードもあったりと、読者に色々考える機会を与えてくれる一冊でした。
狩りとは何か、、、。物が溢れスーパーで普通に肉が売られている現代に生きていると、圧倒的人間が優位になる武器「銃器」使っての熊撃ちはひどく残酷であるといった錯覚に一瞬陥る。でもそれは重大な勘違いで当時の山の人間は普通に「生きる」という行動をしていただけで、自然に最大限の感謝を払い、自然の恵みをそれはそれはとても大切にしていた。
マタギの文化、知恵、思想、北東北の自然を教えてくれる一冊でした。 -
Posted by ブクログ
本来、人間は自然の一部である。
自然というフィールドにおいて、人間と他の動物とは対等であるべきなのだ。
大正四年十二月、三毛別羆事件として知られるこの事件は、二日で六名の死者を出す被害となった。
開拓民の村を羆が襲い、女子供を食べては、何度も現れる。
どこから羆が襲ってくるのか、村は恐怖に陥る。
一方、自分の縄張りで好き放題山を開墾する二本足を苦々しく思っていた羆はある日、彼らの家を襲うことにした。
自分の縄張りで何をしようと文句を言われる筋合いはない。
軒先のトウモロコシを食べていたが、ある時をきっかけに人肉の味を知ってしまう。(羆風)
かつては毛皮を目当てに狩猟対象だった羚羊(カモシカ)は、野生生物保護を名目に狩猟禁止となった。
蔵王山麓、七ヶ宿。
禁猟となった後も密猟を続ける猟師たちが集まってきた。
彼らが狙うのは飴色の角を持つ牡の羚羊。
羚羊と猟師の一対一の戦いを描く(飴色角と三本指)
人間と、動物の視点がフェアに描かれている。
都市を築いた現代人が忘れてきたものだ。 -
Posted by ブクログ
奥羽山脈の山里で、様々な野生動物と対峙するマタギたちの物語。
これまでにアイヌの熊打ちに関する書籍はいくつか読んだことがあるんですけど、東北マタギのツキノワグマ狩りの事はほとんど何も知らなかったので、とても興味深く読みました。
単なる狩猟技術の継承にとどまらず、「流派」や「信仰」の域にまで達しているマタギ独自の精神性……すごいなあ、もっと詳しく知りたいなあ。
全9章が収録されていますが、やはり「野いちご落し」が圧巻。次いで「オコゼの祈り」が切なくて切なくて。そして「樹氷」に度肝を抜かれました。
【目次】
章之壱・野いちご落し
章之弐・怜悧の果て
章之参・オコゼの祈り
章之肆・勢子の源五郎
章之伍・アマッポ
章之陸・行者返し
章之漆・寒立ち
終 章・樹氷
別 章・最後の鷹匠 -
Posted by ブクログ
単に「猫可愛い」というペット好きな方にはオススメできないエッセイ。
理由は著者が幼少時に体験したネズミ捕りや祖母の猫にまつわる話が残酷さ。
ただ、当時の東北、しかもドがつくほどの田舎の農村ではそもそもペットという感覚がないのが当たり前なので、決して著者が残忍な訳ではもちろんない。
あえて人間と生き物の共存をしっかりと伝えたかったからこそ、このエピソードを描いたのだと思うが今の時代は万人受けはできないだろうなぁ。
自分も東北の田舎出身で、そういうことが普通だったのだと教えられてきたから別段驚きもしなかったけれど。
飼い猫ナッコの死に姿を描いた絵が一番印象的だった。
矢口先生らしい、漫画家らしいお別れの仕方だと思う。 -
Posted by ブクログ
白水社から1987年に刊行されたものに「オーイ!!やまびこ5」より「百日咳」を加えた形で刊行。
中学校の頃に一度呼んだことがある。確かお茶の水の丸善で椎名誠の本と一緒に買ったのを覚えている。あとがきにも書いてあるとおり、教育界に反響を呼び、その後教科書にも一部が掲載された。非常に悔しかった。釣りキチ三平の著者でもある、人の文章で勉強がしたかった。
当時、釣りキチ三平の連載が終わり、3~4年が経ち表立って新作品が出ない著者がエッセイという形で読めるということは意外なうれしさがあった。
少年時代を描いたエッセイ集である。戦後間もない秋田の山奥の子がどのような生活を営んでいたか、遊び、仲間、集落ないでのつきあい、少年の目と現在の大人の目を織り交ぜながら得意の漫画も言葉とマッチして活き活きと読める。 -
Posted by ブクログ
日本海中部地震の被害と対策を、釣り人の視点から捉えた漫画。
うーん。困りました。面白いかどうかと言われたら面白かった。画力はさすが矢口高雄、ものすごい。釣りへのこだわりもすごい。
とはいえ、ですね…「釣り人が津波を取り上げる」ということの必然性がもう一つ感じられなくって、それは別に他の誰かがやることでも良かったのではというような変なもやもやが残ったところが正直ありました。
釣り人の視点として、ライフジャケットを必須としようとか、男鹿半島の地盤の硬さへの言及など、「学び」を感じさせることがあるのは勉強になりましたし、日本海中部自身の段階で、海沿いに済む人々さえ津波に関する知識関心はあまりなかったようだということに、東北大震災を見聞きしている身としては驚くところでもありました。そうしたことに思いするという意味では、読んでとても良かったです。