ジェイムズラヴグローヴのレビュー一覧
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見事な短編連作で、作者が書きたいことをこれでもかとばかりに詰め込んだのが伝わる。
前作である三部作は、ホームズの青年期、壮年期、老年期という区分で、それぞれの時代のさまざまな事件の真相という体裁でクトゥルフとの戦いが描かれているのだが、今作はそれを更に俯瞰する形で、三部作の時代を貫き通すような形式で物語が構成されている。その分、登場人物も多くて、私のようにシャーロック・ホームズの原典に不調法な人間には、ん?んん?となることも多い。しかし、通底するシャーロック・ホームズの理想像というものに対して、作者は誠実でめちゃくちゃに好感がもてる。
ただ惜しむべきは、ヒロインであるアイリーンさんを際立たせる目的もあってか、ほかの女性登場人物がいまいちだというところだろうか? 悲劇性を強調する目的もあってのことか、被害者がむごたらしく惨殺されるあたりの描写に『ここまでしちゃうか~』となってしまった。
しかしながら、上巻という地ならしの上で展開していく下巻のそれはアグレッシブでエキサイティング、大変おもろしくて楽しかった。
後書きにて、それとなくこのワトソンが遺した手記は、これが最後ではないと匂わせているので、続編が編まれるのであれば、ぜひとも手に取って読みたいと感じた。 -
Posted by ブクログ
三部作で綺麗に終わったし、メタな話ではあるが作者もまた狂気に沈んだという終わり方だったのに、『続編?』不安半分、期待半分、そろそろとおっかなびっくり本を開くと、三部作とはまた違う趣向で話が展開している。
作者の狂気は、ゆっくりと静養したおかげで回復したよーという、なかなかの力業だったけれども、その分だけ続編に対して意欲的なところがあって、続編がどのようにして作者に『見いだされた』のかを語っていた。
上下巻ということで、これは気合いの入った長編かと、身構えたものの、いざ読み始めるとちょっと違っていた。三部作は純然たる長編だったけれども、今回は上下巻からなるオムニバス、短編連作のようだ。最初は長編だと思い込み身構えていたので、読み進めるのに時間がかかったが、オムニバスとなればそこまで肩に力を入れずとも、ひとつひとつを確実に読んでいけば良いし、なによりも切りが良い。
また作者がおなじみのホラーテイストに加えて、ミステリ要素をふんだんに入れようと目論んでいるようなので、なかなかに楽しい。
原典であるシャーロック・ホームズシリーズを不調法にもあまり読んでいないので、元ネタが分からないのが惜しいので、機会を作って読みたいと思った。 -
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シャーロック・ホームズとクトゥルフ神話の三部作、こちら第三作なわけで、いわば最終回なわけですが、その分だけ展開に結構容赦がなくて、大好きだったキャラが無残な状態で退場してしまって、えええっうっそーーーーっと呆然となってしまった。
シャーロック・ホームズ自身の死についても書かれていて、なんとも切ない気持ちになったのだけれども、全体として三部作集大成としてはとても面白かった。
あちこちに伏線や匂わせがあり、外連味がたっぷりでこれこそクトゥルフ、暗黒神話という感じがしている。それに加えて、シャーロック・ホームズが活躍していた時代背景なども丁寧に書かれているので、読んでいてイギリスの風景なども感じられて面白かった。
三部作ではあるけれども、好評につき続編が刊行しているようなので、これから次巻を読むのがたのしみだ。 -
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「高名な依頼人」のグルーナー男爵による行方不明事件、さらには「三破風館」のイザドラ・クインやメアリ・マーベリや、おまけに「マザリンの宝石」からもゾロゾロホームズ譚関係者が出てくる。そしておよそ30年の間に起きたそれらが全部1つの事件と繋がってくるのだ。
地球外生命体ミ=ゴとその仲間たちを相手にホームズが地球を救うスケールの大きな話なのです!
恐るべきラストは異形との対決とワトソンの決断。クトゥルー神話ではラヴクラフトの「闇に囁くもの」がベースになっている。
そして最も驚かされるのは、ホームズの聖典とされる話は全てワトソンの創造であり、実際はクトゥルーとの30年にわたる対決こそが事実となっているという設定だ。そして、クトゥルーとの対決の中で登場した人たちをモデルに聖典と言われる小説が書かれているということなのだ。
もう続編は出ないんだろうな。なかなか面白い話でした。
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無敵なもの同士の対決で決着はつくのかい!と設定に文句を言いながらも読んでしまうのは何故だろう。ホームズがクトゥルーの神々と戦う〈クトゥルー・ケースブック〉は3部作で完結したのだが、補完するような最新作を見つけてまた読んでしまう。
作家ラヴグローヴが新たに入手したワトソン博士の手稿にはハイゲイト墓地に始まるホームズと神々のもうひとつの事件が記録されていた。ハイゲイト墓地から3つの死体が消えた。ホームズは死体が真菌類の胞子によってクリーチャー化したことを暴くが、それは恐るべき陰謀の幕開けにすぎなかった!
この話、正典として描かれた事件の登場人物も多く現れ、ワトソンが書かなかった事件の真相やその後が語られる。例えば「ボヘミアの醜聞」でお馴染みのアイリーン・アドラー、「ブラック・ピーター」のピーター・ケアリ、「隠居絵具師」のジョサイア・アンバリー。
ホームズが唯一恋した?女性とまで言われるアイリーン・アドラーが変装の名人になった理由がわかる。彼女の身に何があったのか!そしてグリーンランド沖を航海中のピーター・ケアリ船長の船で起きたこと。北極海から彼らが持ち帰ろうとしたものが太古の神々を目覚めさせたのか。さらには神々を崇める宗教団体を統べるアンバリーの超常的な脱走劇とホームズ暗殺計画。正典と食い違わないように描かれた彼らのもうひとつの顔がわくわくして楽しいのです。
クトゥルーからは、黒き豊穣の女神シュブ・ニグラスが出てきます。いいですねー。
上巻はここまで。手先のような人間との対決は解決するも、真菌類の胞子やシュブ・ニグラスをはじめクトゥルーにどう対処するのか。さあ、これから下巻。 -
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前作よりも登場人物と設定になじんだこともあり、とても楽しく読み進めることが出来た。その分だけ、まとめて一気に読み進めたいという気持ちがあり、まとまった時間を作るのに苦労して、今日、ようやっと一気に読み上げた。
凝った設定ではあったが、背景描写も良くて読んでいて実に楽しかった。引き込まれる部分は、なんといっても登場人物だろう。今回は前作よりも物語に関係する登場人物が多いのだが、とにかく個々のキャラが立っていたのが良かった。またクリーチャーの描写も細やかで、前作よりも真に迫って読み取れたのは、私の知識が増えたからなのか、それとも洗練されたからなのかはわからないが、そのおかげで世界観に浸ることが出来て楽しかった。
グロ要素もあるし、本家であるラヴクラフト作品では猫が大切にされていて、傷つくことはそうそうないらしいのだが、今作は猫の身の上に不幸が降りかかるので、それが駄目な人は避けた方が良いかもしれない。
シャーロック・ホームズが実は人外たちと戦っていて、ワトソンはそれに虚飾を交えて小説にしたて上げている。その設定の面白さが前面に出ている作品だと思う。
三部作とのことだが続編があるらしいので、これから読むのが楽しみだ。 -
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クトゥルーの本を読み終えた時に、お勧めとして出てきたのが本書だった。シャーロック・ホームズはあまり読んでいないし、かろうじて読んだのは短編集がいくつかと、児童向けに翻訳されたものなので、さあてどうだろうか……と、不安半分期待半分……
読み進めるのは、存外と大変だった。シャーロック・ホームズの本作をろくに読んでいないので、どうにも馴染みがない。これは有名な逸話だぞとお出しされているものの、ピンとこない。せめて『緋色の研究』だけでもちゃんと読んでいたならば、話は早いのだろうけれども、生憎と未読なので隔靴掻痒……クトゥルフネタも潤沢だけれど、こちらも勉強不足……前提の知識がないことが口惜しい……
とはいえ、普通に読んでいて充分に面白い。1880年代のロンドンの文化や背景が丁寧に描かれていて、その背景描写は見事だ。脳裏に浮かぶ景色は鮮やかでリアリティにあふれている。
また、ゲストキャラであろう中国人の造形も魅力的で、アヘン戦争についての言及とかも、なかなかに辛辣で面白い。平行して読んでいる中華街の話がオーバーラップして、読んでいる複数の本が有機性を帯びた状態で結びつくのは、読書の醍醐味だなとしみじみ感じる。
三部作の一作目ということで、物語はまだまだ後に続いている。次を読むのがたのしみだ。 -
Posted by ブクログ
ついに第三巻で完結。シャーロキアンというよりは、どちらかというとラヴクラフティアン向けのシリーズだったのかなと。両方のファンなので、二乗で楽しめました。
ルルイエでのクトゥルーとの対決や、ネクロノミコンに魔法の道具の数々、ラヴクラフトの十八番である日記形式…クトゥルー神話好きには堪らないネタを次々と投入しながらも、ホームズ小説の史実にも忠実なストーリー展開と気の利いた言い回しが職人技。
論理思考の権化的アイコンのホームズが、邪神蠢く心霊オカルト世界に参入してしまうという意外性(でも、ヤク中だから体験的には慣れてそう)が楽しいコラボですが、好奇心と先見性が旺盛すぎるが故に、一線を越えてしまった結果のラストが辛い…。
続編はなさそうなので残念ですが、短編が『ミステリマガジン2023年11月号』に掲載されているようなので、そちらも当たってみようかなと思います。 -
Posted by ブクログ
太古の神クトゥルーとの対決が始まってから30年。サセックスで隠遁生活を送るホームズは失踪した3人の女性の調査を行っていた。ドイツ人スパイが暗躍し、戦争に突き進むヨーロッパで、遂にホームズと、ルルロイグとなった宿敵モーリアティとクトゥルーと三つ巴の最後の対決が始まる!
3作目になると、もう世界観も把握できてるので内容はスムースに頭に入る。映画を観てるようだ。もういにしえの神との対決なのだから、これが本当の最後の事件なのだ。ライヘンバッハの滝に落ちてる場合ではないのだ。開始早々にホームズの兄マイクロフトが殺された!ディオゲネスクラブのメンバー7人が同日に死ぬのだ。邪教の影、幽霊甲虫、ヘビ人間。マイクロフトを殺した犯人と失踪した女性たちを探してニューフォードへ。クトゥルーの名作「インスマンスの影」を彷彿とさせるシーデヴィルたち。囚われたホームズとワトソンはドイツ軍のUボートへ。船は悪夢の都市ルルイエに向かう。そこにはあのクトゥルーが眠るという!もうどんどんネタを注ぎ込んでのてんこ盛り、面白い展開だ。
しかし話は少しもったいない。最終対決が主題だから結末をつけるためのストーリーは面白い。しかし、逆に言えばこれホームズでなくてもええやん、というところか。いうなれば、もっとホームズらしさにこだわるか、ホームズを無視してもっともっと話をどきどきわくわくに仕立て上げるか、だったのだが、作者のラヴグローヴはその中間に落としてしまった。
いやそれでも十分楽しめましたよ。
この話はそもそもの設定が難しいのだから。そして、あとがきにまで仕掛けがあって、そこまでがストーリーなのだ。コズミックホラーの本領は発揮される。