オザワミカのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
大逆事件の金子文子の自伝を読み続けるミア。母親は、アル中でドラッグ常習者で男と一緒になっては捨てられを繰り返している。まだ幼い弟のために、ソーシャルワーカーから違う里親に連れて行かれることを恐れ、必死で生きているミア。そんなどん底の生活をする英国の女子高校生は、金子文子に自分を重ねる。
授業で書いたミアの詩を読んだ同じクラスのウィルから、ラップのリリックを書いてほしいと言われる。ウィルから一緒にラップをやろうと誘われ、何か変われるかも…と思い始めた頃、母親はどんどん悪い方向に向かっていく。弟と逃げるしかない…。
大逆事件の少女と現代の英国の少女。時代も国もまったく違っていながらも、保護者であるべき大人たちの無責任さに翻弄される少女たち。
なんだか、とても重いものを読んでしまった気がする。
少し明かりが見えてきたミアにエールを送りたい。 -
Posted by ブクログ
ミアとフミコの自伝が交互に語られていく
金子文子は実在した人物で自伝や歌集も出していた。その自伝のたぶん最初の方だけを使っているのかなと思われる
唇を噛みながら胸が裂ける文字を追っていた。苦しい境遇それでも希望を信じ生きていこうとする。溶けて沁みていく言葉は人の道を外れた者には届かない。ミアはリリックに、フミコは自伝に想いを載せる。伝わってくる懸命な姿、どうにかどうにか安らげるようにと願いながら、苦しくも希望を忘れたくない物語だった
ラストにウィルの気が抜けるような思いが緊張を和らげてくれてよかった
好きなフレーズ引用
それはここではない世界で 自分が本来いるべき場所っていうか 行ったこともないのになぜか知っている場所…
一緒に震えることができる相手を友だちっていうんだろうか
いま住んでいる世界だけが私の住む場所とは限らない -
Posted by ブクログ
ネタバレ私たちの世界は、ここから始まる
貧困、身分、親ガチャなど。
社会問題についてあらためて考えるきっかけになる1冊。
これらの状況を脱却するには、周囲の支えも必要だ。
今、このようなことで困っている人を見ても、自分は無力だ。
何もできることは思いつかない。
最初は、行政に助けを求めるのが最善の策と思っていた。
しかし、本作を読んでいるとミアと弟が離れることは必ずしもいいことではないと知る。
そのため、対応が難しい事案だなと思った。
カネコフミコの自叙伝。
自身の境遇を重ねながら、ミアは読み進める。
ここに記された言葉が、ミアを支えたように、信じられる何かがある社会であってほしいと切に願う。
-
Posted by ブクログ
最近重い話ばかり読んでいる気がする
中盤までミアの現状もカネコフミコの自伝も全然救いがなくて結構鬱だったな
正直自分は本当に有難いことにそこまで貧困に対しての想像力が豊かではないから恐らく登場人物達の苦悩を1/10も理解できていないと思うけど、子供が子供を育てるとはどういうことなのか、生活保護とは誰のためにあるのか、母親とはどういう存在であるべきなのか、大人は子供にとってどんな存在であるべきなのかを考えさせられた。
内容としてはジャクリーンウィルソンのタトゥーママに近い気がする
フミコの時代から100年も経ったのに相変わらず救われない子供たちがいる世の中であるという事実には悲しいものがあるが、少なくとも100年で社会が子供を助けられる可能性を見いだせるようになったのは進歩なのかもしれない。
しかし14歳の子が幼い弟を連れて逃げるなんてできっこないのに、誰も頼れない、この方法しかないと誰にも相談せず街を出た事にはやはりかなりの衝撃があった。少し前に自分と同じ境遇からソーシャルワーカーになったレイチェルに少しだけだが心を開いたような描写があったのに、メールアドレスと電話番号の書いた紙ももっていたのに、結局彼女を頼らず一人で判断したという事実が、ミアがまだ大人は信頼出来るものではないと考えていた証拠であり、悲しい気持ちになった。
誰にも頼れない子供たちを社会がどう接していくべきなのか、いつの間にか子供時代を抜け出して大人になってしまった自分も考えなくてはならないと思う。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ地獄の中で「生きる理由」を掴み取る物語
この物語は、主人公・ミアが金子文子の自伝を読み進めながら、過酷な現実を生き抜く姿を描いた再生の物語である。
ミアと金子文子には、共通点が多い。
共に父親が不在で、母は男性や薬物に依存している。子供時代を子供らしく過ごすことすら許されない、あまりに過酷な環境だ。
食事や住環境といった生存のベースすら危うい中、ミアは幼い弟の世話を一身に背負う「ヤングケアラー」として生きている。今の時代ならソーシャルワーカーに頼る道もあったはずだが、彼女はそれを拒む。助けを求めることは、最愛の弟と引き離されるリスクを意味するからだ。ミアにとって自分自身のことは二の次であり、弟こそが彼女をこの世に繋ぎ止める唯一の「光」だった。
金子文子の自伝の中には、彼女が死に希望を見出す瞬間がある。しかし、死の淵で文子は自然の美しさに気づき、「地獄のような世界の外には、こんなにも美しい景色が広がっていたのか」と生を思い直す。文子にとっての「自然」が、ミアにとっては「弟」だったのだ。
人はそれぞれ、異なる生きる意味や価値を持っている。あるいは、そんなものを持たずに生きている人もいるかもしれない。
しかし、どんな絶望的な状況にあっても、その命がそこに留まるための理由は、何かしら見出せるのではないかと感じた。
一方で、そんな「生きる理由」を必死に探さずとも済む世界であってほしいとも強く願う。
ミアは極端に大人を信用していない。それは彼女の冷めた視線や、世間に対する頑なな態度から痛いほど伝わってくる。彼女の過剰なまでの責任感は、「自分以外に弟を守れる者はいない」という絶望的な孤独の裏返しなのだ。
そんな彼女の価値観を揺さぶったのが、ソーシャルワーカーのミッチェルとの出会いだった。レイチェル自身もかつてミアと同じような境遇にあり、大人に助けられた経験を持つ。彼女の「子供を守りたい大人もいる」という言葉は、ミアの凍てついた心を少しずつ溶かしていった。物語の終盤、ミアを迎えに来たのがレイチェルであったことは、ミアがこれから「子供」として生きていくための大きな希望となるはずだ。
子供時代に受けた愛情やトラウマは、その人の人格形成に計り知れない影響を及ぼす。DVやネグレクトの傷跡は、大人になっても消えることはない。それを乗り越えるには、本人の努力だけでなく、周囲の理解と専門的なケア、そして社会全体の想像力が不可欠だ。トラウマと共に生きることは、それだけで膨大なエネルギーを消耗する。
そうした過酷な運命を強いないために、大人は子供を守る義務がある。それは親個人だけでなく、社会組織、そして私たち全体で取り組むべき課題だ。
社会がその責任を果たすことこそが、ミアに「トカレフ」を手渡さずに済む未来を作るのだと信じたい。