金平茂紀のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
本書は著者がモスクワ駐在員として勤務した1991~1994年頃の約4年間、著者自身が経験した日常を知人宛への書簡としてまとめたものです。取材や調査を基に事実を描くスタイルではないので、当時のロシアに関する客観的な分析などが描かれているというわけではないですが、ソ連が崩壊し、クーデターが発生した当時の不安定な状況下でのモスクワの空気感が良く伝わって来ます。
ソ連といえば、日用品を購入するにも行列で待たされるとか、警官や車掌といった公共性のある職業人が堕落して賄賂を握らせたらどうにでもなったりとか、ナショナルフラッグキャリアのアエロフロート航空の酷いサービスの内情など、そういう日常レベルでの混乱などがリアルに紹介されており、約70年の歴史を閉じた社会主義経済から資本主義へ移行する混乱を市民レベルで描いています。
この頃のロシアはルーブル安でインフレも激しく、国家としてもヨレヨレで、西側の援助なしでは成り立たないぐらい弱っており、冷戦終結で世界情勢はアメリカ一局に突き進んでいる様子も伝わって来ます。プーチンをはじめとする現在のロシアの指導者層が、この頃に味わった劣等感、屈辱感みたいなものが30年の時を経て暴走しているのが今のウクライナ侵攻なのか、と考えさせられました。
文庫化にあたり、ウクライナ侵攻が開始された直後のウクライナ、紛争が続いている状況下でのモスクワへの取材滞在中の様子が追記されています。緊迫するウクライナと、戦時中であることが感じられないモスクワの対照的な様子が、現地で実際に見聞きしていたからこその描写で描かれています。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ「今という時代が実は筑紫哲也という人物の記憶を呼び込んでいるのではないか。」
秋ごろ武田砂鉄著の『日本の気配』という本を読んだ時に、奇しくも著者と同じ思いを抱いた。武田氏の著作の訴えが中途半端であったこともあり、「今の時代に筑紫さんが生きていたら・・・」と。
そう思っていた矢先に本屋で見かけた本書。思わず手に取った。
「時代の大きな転換点の渦中に僕らはいたのだ。天安門事件。リクルート事件。冷戦の終焉。そして昭和の終わり。」
確かに、あの頃は、仕事で遅く帰宅しても、『NEWS23』を見てから、あるいは見ながら寝るなんて夜が何回もあった気がする。
今もまた、ある意味、”時代の大きな転換点の渦中“と言えるのかもしれない。そんな時代が故に、”筑紫哲也という人物の記憶を呼び込“んでいるという思いはスッと理解できた。
あの頃を懐かしく振り返えれると共に、またあの頃の活力よ再びと思わないでもなかった。体力では及ぶべきものではないが、そこは知力と、ささやかな経験でカバーか。
『NEWS23』のDNAは、3つ。最終回の多事争論で筑紫さんが語った、『力の強いものを監視し』『少数派であることを恐れず』『多様な意見で社会に自由の気風を保つ』ことだそうだ。ふたつめの意気込みは、知らずに実践できている気がするが、どうだろう。
少数派であることを恐れずにというより、多数派の裏を行ったほうが間違いがない。長いものに巻かれてしくじった時の後悔ってのは救いようがないからね。
「文化の動きの方が省庁発表の官製ニュースなんかより、よっぽど価値があると思っていた。」
『NEWS23』の二部の構成がまさにそうだった。芸能、演劇、映画などなど、実に文化的であり好きだった。今も、書籍や映画のラインナップで、大きな世の流れ、世界の動静はざっくり把握できると思っている。知らずと筑紫さんから教えられていたことなのかもしれないなあ。
とはいえ、まえがきに著者が記した
「テレビ報道はまだ生き残る価値がある」
は、どうかと思うけど。
テレビは家に置かずに10年以上になる。