【感想・ネタバレ】筑紫哲也『NEWS23』とその時代のレビュー

あらすじ

かつて、日本にはこんなに自由で、一本背骨の通ったニュース番組があった――。

TBS『筑紫哲也 NEWS23』キャスターとして、日本の報道番組の新たな地平を切り開いた男が亡くなってから、今年で13年の時が過ぎた。「とかく一つの方向に流れやすいこの国で、少数派であることを恐れないこと」。最後の放送で噛みしめるように語った稀代のジャーナリストは、何を見て、何を考えていたのか。忌野清志郎、鴻上尚史、小澤征爾ら各界の文化人との交流、生涯の同志となった立花隆との共闘、そして「力の強いもの、大きな権力」を監視することへの強い意志。番組編集長として、在りし日の筑紫の姿を間近で見ていた著者が、関係者への膨大なインタビューをもとに振り返る。「頭をあげろ!」。世の中が混沌とする今だからこそ、筑紫の生き様はいっそう胸に響く。

筑紫さんといえば鋭い切り込みをしながら、顔は微笑んでいる、その表情が忘れがたい。
今こそ筑紫哲也の話を聞きたい、金平さんのそういう思いは僕もおおいに共鳴している――坂本龍一(音楽家)

●各章タイトル●
第1章「二度目のプロポーズだから受けざるを得なかったんだよ」
第2章 要は、何でもありということ
第3章 君臨すれども統治せず(ただし例外あり)
第4章 たたかう君の歌を たたかわない奴らが笑うだろう
第5章 遊びをせんとや生まれけむ、戯れせんとや生まれけん
第6章 筑紫さんがこぶしを振り上げて歌った
第7章 沖縄を愛し、沖縄を最後の旅先に選んだ
第8章 「旗を立てる意志」について僕が知っている二、三のことがら
第9章 「政治部失格」だが「人間失格」では、断じてない
第10章 「党派性で、人を区別して、つきあいたくないんだ」
第11章 触媒としてのジャーナリスト
第12章 タウンホールミーティングの時代
第13章 「私の人生、百八十度、変わりましたよ」
第14章 中国トップと市民の直接対話
第15章 阪神淡路大震災報道、その失意と責務
第16章 世界が変わった日
第17章 番組内でのがん告知と、家族との残された時間
第18章 『筑紫哲也 NEWS23』の最も長い日
第19章 『筑紫23』に馳せ参じたJNNの「つわものども」
第20章 『筑紫哲也NEWS23』で縦横に動き回った立花隆さんについて
第21章 演劇空間としてニュース番組
第22章 「『NEWS23』のDNA」〈伝承〉をめぐって
第23章 「頭をあげろ!」

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

ネタバレ

一つだけでなく二つも見るのが楽しみだったニュース番組があった時代を懐かしく思った。
 
 現在の満ち足りない空気の原因は、当事者以外は誰もが分かっている。
 少数派でも輝く。多様性を大切にする。
 それは大事。ただ、メジャーでも迎合的ではない快さが足りないのではないか。

1
2023年05月09日

Posted by ブクログ

あの当時まったく興味がなかったニュースや政治
興味を持たざるを得なくなったいま筑紫さんはいない





色々書いたがあまりに怒りが溢れていたので消した
ただ怒りが消えたわけではない!
このままで良いとは全く思っていない!

1
2023年01月10日

Posted by ブクログ

TBSラジオ公式読本と異なり、筑紫哲也NEWS23 のクリントン大統領タウンホールミーティング、オウム事件、損失補填問題など泥臭い裏側の記録を知ることができる証言集だった。詳しい話は随所に紹介されている参考文献を読むことになるだろうがそのことがまずは広く知れる良い本だった。それにしてもTBSラジオ公式読本はつまらなかった。

1
2022年01月08日

Posted by ブクログ

1989年、筑紫哲也は朝日新聞社を退社し、TBSの報道番組のキャスターに就任する。『筑紫哲也NEWS23』「編集権」を持つ個人名を冠した初めてのニュース番組がスタート。これは、10年以上にわたって筑紫哲也に伴走した著者が意と思を賭けた『23』時代の回想であり、自由なき時代への問いかけである。

0
2022年06月23日

Posted by ブクログ

 タイトルどおり、筑紫哲也氏と「NEWS23」について裏事情満載で語っている。筑紫氏がNEWS23のキャスターになる前のエピソードも多くてNEWS23の視聴者や筑紫ファンには面白いだろう。私も大変興味深く読んだ。
 あらためて「NEWS23」という番組は面白いことをやってきたんだなあと思う。
 
 ヘビースモーカーである筑紫氏が番組本番中にタバコを吸って、そこをカメラに抜かれて苦笑いして慌ててタバコを消したなんて場面も見たなあ。自由なんだか何なんだか。

 NEWS23のDNAは受け継がれているのか。松明は受け継がれているのだろうか。
 金平氏は希望を失っていないというが、状況はあまりに暗いと思うよ。
 

0
2022年04月12日

Posted by ブクログ

メディアは権力の監視を矜持として、弱者を慮る姿勢を優先する。この当たり前のようだが、いつしか強者に忖度や世論という印象操作に手を染めてしまう陥落が、報道の不自由という意識の剥離へと常態化する。嘆くべき現状はどれだけの人々が共有されているのか、気骨あるジャーナリズムは故筑紫哲也のメッセージを受け継いで果敢に報道して欲しい。でなければ、この国はますます衰退する。そして滅ぶ。

0
2023年03月15日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「今という時代が実は筑紫哲也という人物の記憶を呼び込んでいるのではないか。」

 秋ごろ武田砂鉄著の『日本の気配』という本を読んだ時に、奇しくも著者と同じ思いを抱いた。武田氏の著作の訴えが中途半端であったこともあり、「今の時代に筑紫さんが生きていたら・・・」と。
 そう思っていた矢先に本屋で見かけた本書。思わず手に取った。

「時代の大きな転換点の渦中に僕らはいたのだ。天安門事件。リクルート事件。冷戦の終焉。そして昭和の終わり。」

 確かに、あの頃は、仕事で遅く帰宅しても、『NEWS23』を見てから、あるいは見ながら寝るなんて夜が何回もあった気がする。
 今もまた、ある意味、”時代の大きな転換点の渦中“と言えるのかもしれない。そんな時代が故に、”筑紫哲也という人物の記憶を呼び込“んでいるという思いはスッと理解できた。

 あの頃を懐かしく振り返えれると共に、またあの頃の活力よ再びと思わないでもなかった。体力では及ぶべきものではないが、そこは知力と、ささやかな経験でカバーか。

『NEWS23』のDNAは、3つ。最終回の多事争論で筑紫さんが語った、『力の強いものを監視し』『少数派であることを恐れず』『多様な意見で社会に自由の気風を保つ』ことだそうだ。ふたつめの意気込みは、知らずに実践できている気がするが、どうだろう。
 少数派であることを恐れずにというより、多数派の裏を行ったほうが間違いがない。長いものに巻かれてしくじった時の後悔ってのは救いようがないからね。
 
「文化の動きの方が省庁発表の官製ニュースなんかより、よっぽど価値があると思っていた。」

 『NEWS23』の二部の構成がまさにそうだった。芸能、演劇、映画などなど、実に文化的であり好きだった。今も、書籍や映画のラインナップで、大きな世の流れ、世界の動静はざっくり把握できると思っている。知らずと筑紫さんから教えられていたことなのかもしれないなあ。

 とはいえ、まえがきに著者が記した
「テレビ報道はまだ生き残る価値がある」
 は、どうかと思うけど。
 テレビは家に置かずに10年以上になる。

0
2021年12月31日

Posted by ブクログ

後半に書き足された章は蛇足というか、後味があまり良くないのだが、マスメディアが成立していないとジャーナリズムが成り立たない理由は、大変よく伝わる。ターゲットメディアに報道はたいへん食い合わせが悪い。そのことを日々考える。

0
2021年12月06日

「ノンフィクション」ランキング