【感想・ネタバレ】ロシアより愛をこめて あれから30年の絶望と希望のレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

90年代前半のロシアに駐在した金平さんの駐在記だが、今のロシアや日本に続く問題についての鋭い指摘が続く名著だと思う。
エリツィンの考察や地獄の沙汰もカネ次第みたいな日常も細かく書かれていて面白かった。受験生でエリツィンというといつも酔っ払っているイメージが強かったがなかなかしたたかだったんだなぁと感じた。ソビエト崩壊後も、力を持つKGBや今やコスパ、タイパと効率重視の日本人には理解できないお役所対応の描写も面白い。
値段の割にまずい日本食とか、忙しかろうが自分の権利は守る!ロシア人。(しかしこのタイプ、日本でも増えてるし悪いことではないよなぁ)
著者がロシアを去るときに贈られた宝石箱に話も良かった。

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2024年02月09日

Posted by ブクログ



集英社文庫 金平茂紀 「ロシアより愛をこめて」


2部構成の取材日誌
*1991年〜ソ連の社会主義終焉と直後の混沌とした状況
*2022年〜ロシアのウクライナ侵攻


現在から読むと、イデオロギーは終焉しても、新しい秩序が確立したのではなく、国家と民族の対立が起きたということになる



著者のメッセージ「独立と自尊を求めるウクライナもいい。偉大なるロシアの幻影を求める人々がいてもいい。だが、お互いに殺し合いをするのはやめて欲しい。国家とか民族とか、それがなんぼのものなのか」




社会主義終焉時の混沌とした状態
*ソビエトもマルクスレーニン主義を否定するところまできた
*何かやたらと物をせびられる〜共産党の崩壊やKGBの失墜により市民を抑圧してきた重しがなくなった
*貧富の格差の拡大〜階層間、地域間、ロシアと旧ソビエト諸国間


著者が、混沌としたモスクワから見た1991年の日本
*国際社会で日本に振り当てられているのはサラ金〜ロシアは物乞い国家〜サラ金と物乞いは歪んだ出会いしかできない
*日本という国家が求めているのは、いつも平均より上〜均一な価値観によって支配された社会は、同質性や均質性を国民に強いる社会になる



























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2024年01月16日

Posted by ブクログ

《現地の現実はかくも想像と異なるのか》
ソ連崩壊時にモスクワで働いていたTBS特派員の書簡・日記。私は21世紀生まれでソ連を歴史でしか知らないが、当時の実態(政治情勢だけでなく市民生活も)を追体験できる迫力ある文章が綴られている。この本は加えて2022年からのウクライナ侵攻時のウクライナ取材も同録されており、他のメディアでは伝わりにくい実情も記されている。日本の中での想像と現地の現実の差を意識させる、報道として良い本。

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2023年11月26日

Posted by ブクログ

本書は著者がモスクワ駐在員として勤務した1991~1994年頃の約4年間、著者自身が経験した日常を知人宛への書簡としてまとめたものです。取材や調査を基に事実を描くスタイルではないので、当時のロシアに関する客観的な分析などが描かれているというわけではないですが、ソ連が崩壊し、クーデターが発生した当時の不安定な状況下でのモスクワの空気感が良く伝わって来ます。
ソ連といえば、日用品を購入するにも行列で待たされるとか、警官や車掌といった公共性のある職業人が堕落して賄賂を握らせたらどうにでもなったりとか、ナショナルフラッグキャリアのアエロフロート航空の酷いサービスの内情など、そういう日常レベルでの混乱などがリアルに紹介されており、約70年の歴史を閉じた社会主義経済から資本主義へ移行する混乱を市民レベルで描いています。
この頃のロシアはルーブル安でインフレも激しく、国家としてもヨレヨレで、西側の援助なしでは成り立たないぐらい弱っており、冷戦終結で世界情勢はアメリカ一局に突き進んでいる様子も伝わって来ます。プーチンをはじめとする現在のロシアの指導者層が、この頃に味わった劣等感、屈辱感みたいなものが30年の時を経て暴走しているのが今のウクライナ侵攻なのか、と考えさせられました。
文庫化にあたり、ウクライナ侵攻が開始された直後のウクライナ、紛争が続いている状況下でのモスクワへの取材滞在中の様子が追記されています。緊迫するウクライナと、戦時中であることが感じられないモスクワの対照的な様子が、現地で実際に見聞きしていたからこその描写で描かれています。

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2023年10月12日

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