リチャードオスマンのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
理想的でリアルな人間関係に、現実世界の希望をもらえる名作。
前作で大好きになった世界観だが、今作を読んでその面白さにさらなる確信を持った。
お互いの欠点を補い合い、大人の距離感で守り合う4人の絆が本当に素敵。
理想的でありながら、お綺麗すぎない絶妙な現実感があるからこそ、「現実世界にもまだ希望はあるな」とポジティブな気持ちを貰える。
印象的だったのは、ある年配の登場人物が、時代の価値観の変化(昔はお酒を奢れば笑い話にできた失敗が、現代では誰一人笑わない大ごとに処理される)に直面し、自分のアップデートできなさに落胆するシーン。
「現代の倫理」という教科書を持って生きている自分たちには見えにくい、昔の地図のまま現代の街を歩かされている人の生きづらさや孤独が猛烈にリアルで、ハッとさせられた。
そんな変化に対して、内心「意味がわからない」と笑いつつも柔軟に世を渡るジョイスと、圧倒的な知性でミッションとして適応するエリザベス。
この二人の対比や、ジョイスの頭の中のちょっと突拍子もない(でも誰もが隠し持っていそうな)本音の描き方も、作者の人間への愛や肯定を感じた。
終盤まで犯人が分からないミステリとしての楽しさもあるけど、唯一、犯人の人間味(犯行に至る葛藤や諦念など)がもう少し描かれていれば尚良かったかなぁ。
とは言っても、欲を言えばなので全体の満足度はとても高かった。
何より、好きなキャラクターであるドナの悩む姿に「幸せにしてあげて〜!」と願っていたので、ラストのボグダンとの明るい兆しにはガッツポーズ!
この不器用で包容力抜群な二人のその後が気になりすぎるので、第3弾も近いうちにチェックしたい。 -
Posted by ブクログ
作者のリチャード・オスマンは英国の人気TV司会者・制作者であり、本作はテレビプロデューサー出身ゆえの抜群のテンポとキャラ立ちが光るコージー・ミステリになっている。主人公はイギリスの高級高齢者施設「クーパーズ・チェイス」で暮らす平均年齢77歳の4人の老人。未解決事件の調書を読み解く「木曜殺人クラブ」を結成している。個性派揃いの4人だが、実質的なリーダーのエリザベスは卓越した観察眼と過去の謎めいた人脈(情報機関出身を彷彿とさせる)を駆使して、警察さえも手玉に取る。作品自体は、老人であることを利用し周囲の油断を誘って情報収集を行うユニークな捜査手法から最後の謎解きまでミステリとして秀逸な出来栄え。老人たちの身勝手な捜査に振り回される新米刑事ドナや警部クリスが、彼らと接することで人生の孤独を癒やされ、人間として、警察官として成長していく様子がまた面白い。
Netflixで映画化・配信されているようで、私は通常は映像化されたものは観ないのだが、この映画化作品は監督がクリス・コロンバス、俳優はヘレン・ミレン、ベン・キングズレー、ピアーズ・ブロスナンなどの名優が名を連ねているため、今回は観てみようかと思っている。 -
Posted by ブクログ
本屋に目立つ場所に置いてあり、ミステリーが読みたい気分だったので購入。読み始めてすぐ面白いと感じて、何回かに分けてほぼ一気読みした。
最後の最後までどんな結末になるか想像がつかないのも良かったし、中盤はそれぞれの容疑者に焦点が当てられ、読みながら推理していくのが面白かった。
自分の推理は当たらなかったけど、犯人や容疑者たちの動機がはっきり明かされているのが個人的に良かった。また木曜殺人クラブの4人のメンバーそれぞれに個性があって、それぞれ微妙に異なる関係性が描かれているのも良かった。後書きにも書かれていたけど、生き生きとした生活の描写の中に迫り来る「老い」やその先の「死」を感じずにいられない場面があるのが秀逸だった。やっぱり、年を重ねても毎日を生き生きと過ごしている人は素敵だなぁと感じた。 -
Posted by ブクログ
★3にするか★4にするか、とても困ったんだけど、とりあえず続刊もあるというから、これからの期待を込めて★4とさせていただきました。
導入から面白く、タイトルの面白さミス・マープルシリーズの『火曜クラブ』を知っているならば、興味津々になってしまうし、期待もしてしまう。
結果的には、思っていた感じとは違っていたが、物語としては面白かった。ふたつの殺人事件が、同一犯だと思わせておいて、実は別で、あやしい人物たちはことごとく外れとか、ちょっとばかり散乱している印象があるけれども、老人たちの元気具合と、身体的にはしんどいところとか、かなり丁寧に書かれていて面白いと思った。
続刊もあるので、彼らにまた再会したいなどと考えている。 -
Posted by ブクログ
ネタバレこの作品だけではないけれど、欧米の小説で往々にして見られる高齢者の恋愛事情、日本とは違うなあと思わされる。
今回は後期高齢者であるロンに若い彼女ができた。
その他、作中で61歳の男性が20代前半の彼女に愛情を寄せ、彼女もまた彼を守るために身を引くというロマンスも。
完全に身を引いて10年、互いに相手を思う気持ちが薄れていなさそうなところも含めて、日本とは違うなあと思うのだけど、それは恋愛偏差値底辺の私だからなのかしら。
それはさておき、今回の事件はゴリゴリの刑事事件で、さらにエリザベスの誘拐事件まで絡んできて、次はどうなる!?が止まらなかった。
たぶん彼女のことだからうまく切り抜けるのだろうと思いつつ、逃げ道はどこ?
それがタイトルの『逸れた銃弾』につながった時、解決してないじゃーん!!って。
前回の事件で逮捕されたコニー・ジョンソンはロンとボグダンに復讐を誓っている。
牢から出ることができた暁には、絶対に殺してやる、と。
そんな彼女にイブラヒムは近づき、カウンセリングをするのだが、一体彼女が刑期を終えるまでに復讐を断念させることはできるのか?というのも今後の見どころとなるのだろう。
この作品には多くの老人が出てくるが、彼らに生活の不安はあまりない。
でも、彼らが幸せそうに見えるのは、お金のことよりも傍にいつも仲間・友達がいるからなのだろう。
元労働運動家のロンが、元大物犯罪者のジャック・メイソンや元KGB将校のヴィクトルと友情をはぐくみ始めたシーンはよかった。
けれどそれは永久のものではない。
エリザベスが寒空の下、空中プールで泳ぐジョイスに、「夏になってもまだプールはあるのよ」というのに対して「そうね、だけど私達はいないかもしれないわ」と答えるのが、切ないけれど真実だ。
ボグダンについては、常々、有能すぎて胡散臭いと思っていたのだが、エリザベスがボグダンは自分に秘密を持っていると感じていることが分かって、逆に信じていいのだなと思い始めた。
裏切るなよ、ボグダン。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ高級高齢者施設に暮らす4人の男女が、自身の持つ知識や行動力で、未解決の事件を勝手に推理する「木曜殺人クラブ」。
今回はリーダー格のエリザベスの元夫がそこに入居してきたことから事件が始まった。
それとは別に、マーティン・ロマックスという、ビジネスマンを騙る大悪党。
金になるなら、盗品だろうとなんだろうと取引の対象にする。
彼のもとから2千万ポンド相当のダイヤが盗まれる。
犯人は、エリザベスの元夫・ダグラスと思われる。
そのダイヤがないと、マーティンはアメリカのマフィアに殺されてしまうので、なんとかしてダイヤを取り戻さなくてはならない。
4人の中で一番内省的なイブラヒム。
新しいことをはじめるのが苦手で、今まで外出もあまりしなかったが、意を決して街に出た。
楽しい数時間を過ごし家に帰る途中、自転車に乗った若者たちに襲われスマホを奪われ大けがを負う。
仲間たちは当然犯人に目にモノを見せてやると息巻くのだが。
一度読み始めたら止まらないくらい面白いのだけど、ひとつだけ気になることが。
イブラヒムを襲った犯人のライアンに、木曜殺人クラブのメンバーは報復をするのだけど、自分たちが違法に買ったコカインと、イブラヒムの財布から持ち出したカードをライアンの家のトイレタンクに隠して警察に通報する。
それは、犯罪では?
ホリー・ジャクソンの『卒業生には向かない真実』を読んだ後だから余計気になるのかもしれないけれど、犯人が反省してないなと思ったら、被害者仲間が私的に復讐するのを是とするような共通認識がいまのイギリスにあるのかしら。
だとしたら、それはちょっと怖い。
地味だけど人を見る目に長けているジョイスも、頑固だけどウラオモテのないロンも好きだし、ロンの孫のケンドリックとイブラヒムのやり取りや、エリザベスの夫で認知症のスティーヴンと何でもやってくれる協力者のボグダンのやり取りなどとても好きなのだけど、善人が正義のために行う行為はすべて正しいとする考え方はちょっと…。
今回は事件も大きかったし、悪人だけではなく何の罪もない若い女性も殺されたりしたけれど、それでも読後感がいいのはキャラクターたちのおかげであるのはわかっているのよ。
特に好きなシーンは、ドラッグ・ディーラーを騙しておとりに使った挙句警察に逮捕させたときのこと。
”コニー・ジョンソンはできるだけロンに近づき、歯ぎしりしながら言う。「あたしがシャバに出たら、あんたの命はないよ」
ロンは彼女を振り返る。「ああ、おれは七十五なんだ。で、あんたは三十年ぐらいは食らうだろ。うん、了解だ」”
犯罪とは無縁に、こういう人を食ったような年寄りになりたいと思う。