島口大樹のレビュー一覧

  • 遠い指先が触れて

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    ネタバレ

    極めて難解だった。
    そして面白かった。読んだタイミングが良かった。
    初めて読んだ作家だったが、まさかこれほどまでに素晴らしいものとは思っていなかった。ぜひ芥川賞を獲ってほしい。
    文体は確かに特異なのだが、それよりも表現の、特に比喩の美しさが僕は好みだった。
    苦しい小説だった。
    ひとつになる瞬間がたしかにあった(p.68)ことが、この二者の主観が描かれる文体により明確になっている。だからこそラストにかけての苦しさはより大きなものになっている。
    ただ一志の一人称のみから描かれていれば、杏さんへ怒りが湧いてしまうようになっていたと思うが、この書き方だとひたすら苦しい。
    答えは出ていない。僕も考えてい

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    2025年10月24日
  • 遠い指先が触れて

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    ネタバレ

    久しぶりにこんなに良い本が読めた、凄かった
    素敵な言い回し(何回読んでも理解できない表現もあったけど)がたくさんあって全体的にお洒落だったし、
    一文のうちに語り手が代わるのも、読んでいて心地よかった。
    記憶を見てからの鬱展開に自分もかなりショック受けてしまった、、
    一志のそれからを、ふとした時に度々考えてしまうと思う
    心に残る作品だった。

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    2024年03月18日
  • ソロ・エコー

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    目の前にある世界は、自分に関係なく存在する。
    けど自分が感じる世界と、その背景を知ったのちに感じる世界はすべて異なるものだろう。
    認識された対象、そも認識し認識されるということはどういう意味を持つのか? 一人よがりと言えばそれまでだけど、そういった思いが人を支えているんだよね。

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    2025年09月20日
  • 若き見知らぬ者たち

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    本作は映画監督内山拓也氏が原案・脚本をも手がけた映画『若き見知らぬ者たち』の小説版として、島口大樹氏が書き下ろしている。



    〝この世のあらゆる暴力から、自分の範囲を守るんだよ〟主人公のひとり彩人が父からかけられたこの言葉が、この物語の底を流れているかと思います。

    ヤングケアラーと格闘技を軸に
    やり切れなさがクローズアップされます。
    派手さはないにしろ
    心にグサリとくるものがあります。



    映画もお勧めします

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    2025年02月11日
  • 若き見知らぬ者たち

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    映画を観た後に読んだ。
    「この世のあらゆる暴力から、自分の範囲を守るんだよ」、「みんな表現者なんだよ」。
    やっぱり台詞がかっこよくて惹かれる。
    映画が余白多めだったのと対照的に、こっちはかなり細かく描写されてる。書き手の癖もあるけど。
    彩人と日向の馴れ初めとか、治虫の心情とか。
    大いなる喪失を抱えた機能不全の家族なんだけど、全員が背負って、向き合って、闘っている。
    前頭側頭葉変性症の母親の症状を、過去をまだ見ているのだという風に表現していたのが気に入った。
    不条理の中でも幸せだった過去は変わらない訳で。
    風間家の原風景とも言える、庭での兄弟と父親でのミット打ちの風景が何度も家族を繋いでいる。

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    2024年11月02日
  • 若き見知らぬ者たち

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    映画を観る予定なので読みました
    映画が楽しみです

    追記
    映画、観てきました
    磯村勇斗の疲れ果てた顔がなかなかよかったです

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    2024年10月21日
  • 遠い指先が触れて

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    児童養護施設で育った2人が再会し、失った記憶を取り戻そうとする。
    視点人物が移り変わり、主語が変わる。それは2人の人が一つに溶け込んでいくような、2人の関係性が密になっていくのを表しているようにも感じる。
    そして、2人が兄弟であったことが過去の記憶を知ることにより判明する。
    そこまでは2人が1人であったような文体から、関係性はより強固な血縁の繋がりがあるのだとわかったのにも関わらず、2人が離れていく様が文体からも伝わる。
    そして、最後の場面。
    お世話になっていた児童養護施設長の言葉。
    「あんまり覚えてねえんだけどなあ、お前さんがそう言ってくれるなら嬉しいこっだな」
    記憶にこだわる登場人物とは、

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    2024年08月18日
  • オン・ザ・プラネット

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    4人の若者が映画を撮るために鳥取砂丘を目指す。
    会話がリズミカルで面白い。そこに、話者の視点からの思考の流れが織り交ぜられている文体が新鮮。
    世界とは何か。自分の世界と相手の世界は同じではない。自分が今見ている世界は世界ではないかもしれない。相手の世界は世界ではないかもしれない。世間で報道される世界は世界ではないかもしれない。現実世界でも虚構世界でもそれが世界の有り様であり、世界である。

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    2024年08月17日
  • 鳥がぼくらは祈り、

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    流れていく感情、心が今まさに言葉になる瞬間を捉えようとする詩だった。
    私は小説に新しい表現をあまり求めないので、この作品が現代的なもので、新しい普遍になっていくものなのかもしれないと思いつつ、気持ちをくっきり描き出すこれまでの小説の方が好ましいと思った。

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    2024年06月14日
  • オン・ザ・プラネット

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    経験したことと記憶の差異、思い出せることと人に伝えられること。これらは少しづつ違う。
    人は記憶によって規定されるけど、それは事実とは違っていたりする。
    筋立てはロードムービーだけど中身はかなり尖ってる。好みの作品だ。

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    2023年02月11日
  • 遠い指先が触れて

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    ここで展開される視点の切り替え方は斬新だ。
    章ごとに語り手が切り替わるのはよくある手法だけど、この作品では同一の文章内でも切り替わる。
    これにより自我と自我を認識する自分、自分の自我に気づいているであろう相手の意識が溶け合っていく。
    新しい才能だ。

    0
    2023年01月29日
  • 遠い指先が触れて

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    ネタバレ

    混じり合いの文章は意外に、さほど違和感なく良かった。

    展開的には何となく読めるので、早く、早くと読み進めたくなる。

    だからだろうか、終わり方が消化不良だった。
    純文学はそういうものなのかもしれない。

    けれど個人的には、何らかの希望が見えたり
    一応のおさまりがついている小説が好きだ。

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    2022年10月02日
  • オン・ザ・プラネット

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    一本の映画を撮るため旅に出る若者たち。道中の話題は哲学、概念的な思想が伴うものばかり。難解な部分はあれど興味深い内容でした。「今見るためだけでなく、思い出すために見る」。映画の世界観が小説となったような。

    若者のエピソードに沿って、概念を語り合う様子は、とりとめのないようで、読み手を深くふしぎな感覚に陥れていく気がした。

    小説なのかフィクションなのか、その境目もまた曖昧で、読後、何故か不安で心が騒いだ。

    登場人物が連発する「でもさ」に不快感。

    0
    2022年03月22日
  • オン・ザ・プラネット

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    過去と未来、記憶についての話。今見るためだけじゃなくて、思い出すためになにかを見ているという話が好きだった。そのことを意識してこの小説も書かれているように感じた。

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    2022年03月12日
  • オン・ザ・プラネット

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    なんか、わかんないけど最後泣いてた。
    曖昧で、複雑でよくわかんなかったけどなぜかとても羨ましかった。
    学生のときにそんな話ができる友人がいて、聞いてくれる友達がいてとても羨ましいし、なんなら読んでる途中から私もひとりの登場人物として車に乗ってた気分。

    なにが言いたいかまとまらないし、何を読んでたんだろうという気持ちが残るけど、ひとつ、確実に言えることは
    この本に出会えてよかった気がしてる。



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    2022年01月27日
  • オン・ザ・プラネット

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    大学生の等身大の哲学談義。の、ようなもの。
    身につけた知識を自分の中に落とし込んで内省して、自分なりの「哲学」を作り上げる。
    私にも身に覚えがある。世界を定義したり、心のありかを考えたり、人生を物に見立てたり。
    私も彼らだったんだなと懐かしく振り返った。

    確かに経験しているはずなのに明確には残っていない記憶があるというのは確かに不思議だ。
    幼少期の神隠し、父親の自殺、死んだ後に美化される曽祖父の思い出、弟の失踪。
    結局人間は、記憶は、自分にとって都合のいいようにできていて、身の回りのものに身勝手に意味を持たせようとする。
    そして過去でも未来でも今この現在でさえも、「事実」を私たちが正確に掴む

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    2022年01月16日
  • 鳥がぼくらは祈り、

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    ネタバレ

    難しい。だがしかし面白い。
    詩的で私的な文章。そのすべてを拾えてはいない。
    だがここに敷かれている雰囲気は儚くも美しい青春の一回性を孕んでいる。
    僕が生きる今は、過去から連続していて未来に繋がっている。しかし僕が生きているのは確実に、今だけ、なのである。

    98 どこに向かうか誰が何をするかわからない常に惑い揺れ動く今を抱えた人間が交差し交錯して織りなす綱渡りが延々と繰り返される日常のワンシーン、その都度奇跡的でだからこそ危険性を孕む一回性。その先が見えなくとも暗闇の中で不安定な綱の上を歩く、歩こうとする一瞬のことを、高島は臨場感、すなわち、今って感じ、と呼んだ。

    100 認めてあげない

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    2025年10月28日
  • 鳥がぼくらは祈り、

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    熊谷の四人の男子高校生。彼らはみな父親との不幸な関係をもち、お互いの傷をなめ合うように、時には傷つけあいながら生きていく姿が描かれています。僕のホームビデオや高島の撮る映像を通してみる過去、今の自己と未来の姿といった時間軸の対比を語る彼らの表現は難しい言い回しで読解できないところも。随所に表現されるそれは高校生らしからぬ不自然な違和感を感じ、登場する四人は似た境遇設定のためか没個性で、彼らは一様で一律に感じてしまいました。

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    2025年10月18日
  • 鳥がぼくらは祈り、

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    それぞれの孤独を抱える青年たちが、互いに支え合い繋がり続けていることを強く感じた。
    作中で幾度も登場する紐帯という言葉には、青年4人の心の支えとしての互いの関係性を上手く表現されていた。決して真面目とはいえない4人であるからこそ、心に秘める闇の部分に問題性を抱けたし、愛としての友情の存在に気付かされた。
    それぞれに家庭事情があって、家庭を恨む気持ちを抱えつつそれを是認しともに生きて行くことを選んだ点には感動した。
    過去は忘れてもいいが、忘れようとしてはいけないという言葉は刺さった

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    2025年09月30日
  • 鳥がぼくらは祈り、

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    いまリアルタイムな現在の文学の立ち姿として、過去の小説群とは綺麗さっぱり切れており、すがすがしい。

    映像的、切り抜き動画的かなと印象付けられるブツ切りの文章を投げつけられて正直なところひるむのだが、読み通してみると、さながら古典的小説群が得意とするような、繊細な心理であるとか、地霊的呪縛とともに生きる人間像みたいなものまで差し出してくる逸品であることに気づく。いや読み終える前にその手ごたえは伝わる。

    続けて続作を追いかけてみたい。

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    2025年03月02日