あらすじ
第64回群像新人文学賞受賞!
高2の夏、過去にとらわれた少年たちは、傷つき躊躇いながら未来へと手を伸ばす。清新な感覚で描く22歳のデビュー作。
日本一暑い街、熊谷で生まれ育ったぼくら4人は、中1のとき出会い、互いの過去を引き受け合った。4年後の夏、ひとつの死と暴力団の抗争をきっかけに、ぼくらの日々が動き始める――。孤独な紐帯で結ばれた少年たちの揺れ動く〈今〉をとらえた、新しい青春小説。
(群像新人文学賞選評より)
・〈文法の破綻した叫び〉こそが高二のぼくらのリアルな何事かを言語的に表現する、との説得力。――古川日出男氏
・私がいちばん感心したのは〈一人称内多元視点〉と呼ぶべき視点のつくり方だった。これは文学的に有意義な試みだと思う。――松浦理英子氏
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
流れていく感情、心が今まさに言葉になる瞬間を捉えようとする詩だった。
私は小説に新しい表現をあまり求めないので、この作品が現代的なもので、新しい普遍になっていくものなのかもしれないと思いつつ、気持ちをくっきり描き出すこれまでの小説の方が好ましいと思った。
Posted by ブクログ
難しい。だがしかし面白い。
詩的で私的な文章。そのすべてを拾えてはいない。
だがここに敷かれている雰囲気は儚くも美しい青春の一回性を孕んでいる。
僕が生きる今は、過去から連続していて未来に繋がっている。しかし僕が生きているのは確実に、今だけ、なのである。
98 どこに向かうか誰が何をするかわからない常に惑い揺れ動く今を抱えた人間が交差し交錯して織りなす綱渡りが延々と繰り返される日常のワンシーン、その都度奇跡的でだからこそ危険性を孕む一回性。その先が見えなくとも暗闇の中で不安定な綱の上を歩く、歩こうとする一瞬のことを、高島は臨場感、すなわち、今って感じ、と呼んだ。
100 認めてあげないと。過去の自分を解放してあげないと。ぬるい場所から抜け出さないと。被害者で居続ける自分から抜け出さないといけないんだよきっと。
112今が過去から続いている地続きになっていることを認めながら、かつ過去と今とを切り離し、人間を肯定し否定し好いて嫌って、愛憎に塗れながら揺れながら、それでも可能な限り最善の今を絶えず繰り返し生み出し更新していくしかない。途方もない。途方もない。途方もないが、俺は、俺らは、そうしていくしかない。希望はそうしなければ生まれない。
138 絶対の楽しさが正しいのは、それは今を生きた俺らだ
Posted by ブクログ
熊谷の四人の男子高校生。彼らはみな父親との不幸な関係をもち、お互いの傷をなめ合うように、時には傷つけあいながら生きていく姿が描かれています。僕のホームビデオや高島の撮る映像を通してみる過去、今の自己と未来の姿といった時間軸の対比を語る彼らの表現は難しい言い回しで読解できないところも。随所に表現されるそれは高校生らしからぬ不自然な違和感を感じ、登場する四人は似た境遇設定のためか没個性で、彼らは一様で一律に感じてしまいました。
Posted by ブクログ
それぞれの孤独を抱える青年たちが、互いに支え合い繋がり続けていることを強く感じた。
作中で幾度も登場する紐帯という言葉には、青年4人の心の支えとしての互いの関係性を上手く表現されていた。決して真面目とはいえない4人であるからこそ、心に秘める闇の部分に問題性を抱けたし、愛としての友情の存在に気付かされた。
それぞれに家庭事情があって、家庭を恨む気持ちを抱えつつそれを是認しともに生きて行くことを選んだ点には感動した。
過去は忘れてもいいが、忘れようとしてはいけないという言葉は刺さった