秦正樹のレビュー一覧
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7月に行われた参議院選挙では、SNSに陰謀論が飛び交い、さらについ最近もJICAによる「ホームタウン」をめぐって酷いデマが溢れるなど、現在「陰謀論」がこれまでになく注目を集めており、メディアでも取り上げられている。そういった記事のなかで有識者としてコメントする場合も多かったのが、本作の著者・秦正樹氏。本作はそのものズバリ『陰謀論』というタイトルで、じつは発売直後に購入していたのだが、いままで読めていなかった。しかしいまこそまさに読むべきではないかと考えて読んでみたら、これがたいへん良い本であった。各章とも頷いたりあるいは驚いたりするような記述の目白押しで、たとえば「第2章」では、Twitter
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まさか研究者で推しができるとは。
これはすっばらしい本!この本を今このタイミングで読んだ自分を褒めたい。
「だれが」「なぜ」陰謀論を信じるのかというど真ん中の自分の疑問に、とっても科学的なアプローチで挑んでくれた研究者の秦先生、本当にありがたい。あとがきも素晴らしかったです。
専門用語はたまに出てくるが、前提やその周りの説明が丁寧で、中学生でもわかるような適切な説明で書いてある。知識ほぼない自分は助かった。(はずかしいが民主党が立憲民主党になったことさえうろ覚えなレベル)
ありきたりすぎる言い換えだけどこの本は「政治がわからない人のための現代日本政治学」だ。陰謀論という仰々しいタイトルなの -
Posted by ブクログ
選挙に興味を持ち始めたものの、分からないことだらけで読んでみた本。
なぜ自民党は強いのかや、なぜ野党は勝てないのか、なぜ女性政治家は少ないのかなどをテーマに。
前半はデータに基づいた話しをしているので、ウッとなるが、分かりやすく書いてくれているので、初心者でも全然分からないということはなく読めた。1からと言うよりは、近年の選挙に絞られていて、そこも身近に感じられて良かった。
最後は哲学対話で締められている。
興味を持ったのに、具体的に話すのはタブーみたいな風潮でより分からなくなってく「選挙」。生活の中で感じている「選挙」のことが話されていて、もっと身近にみんなで考えてみたいと思えた。
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ネタバレ某情報番組で紹介されていたことをきっかけに、本書を手に取った。著者は、陰謀論に対してソーシャルメディアがどのように影響を及ぼすのか、また保守・リベラルといった政治的立場や政治知識の有無によって、陰謀論を信じる傾向がどのように異なるのかを、オンラインサーベイ実験を通じて検証している。そして最終章では、陰謀論と向き合う際に必要な姿勢について、著者なりの考察が示されている。 特に印象に残ったのは、陰謀論に限らず、あらゆる意見と向き合ううえでの「リテラシー」の重要性だ。自分と同じ意見に出会ったときには、それが真実だからではなく、自分にとって都合がよいから無意識に受け入れてしまっている可能性を意識する
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この本を手に取ったきっかけは、情報番組で「自民党がなぜ強いかをデータで分析している」「選挙とは何かを座談会形式で考えている」と紹介されていた点に惹かれたからである。
本書によれば、自民党が強い理由としては、①小選挙区制において効率的に議席を獲得できる制度構造、②公明党との選挙協力、③野党が候補者を統一できず票が分散すること、④非都市部で組織団体や保護政策を通じて基盤を固めていること、⑤政治に不満を抱えながらも与党に投票する層が一定数いること、などが挙げられている。
また、(本書の説明を踏まえつつ私の理解を交えて言えば)投票率の低さも自民党に有利に働いている。特に「選挙に行かない層の中には野 -
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タイトルを見ると陰謀論そのものの解説にも思えるが、主に語られているのはどのような層に陰謀論が受容されているのかを統計的に調査したもの。
取り上げる陰謀論や調査の切り口は面白かったし、その分析手法についても学びは多くあった。
SNSの利用と陰謀論の受容の関係の意外性は興味深いものだったように思う。
一方で、文中に登場する調査の母数がクラウドソーシングサイトでの1500〜2000件程度と、今のSNSや社会の状況を抽出するのに適当な量だったかという点にはあまり納得感はないかもしれない。
陰謀論そのものを知りたい場合は、「あなたを陰謀論者にする言葉(雨宮純)」などを手に取るとよさそう。 -
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「誰が、なぜ陰謀論を信じるのか」という問いについて、サーベイ実験というデータ分析の手法を通じて様々な観点から明らかにし、日本社会における陰謀論受容の実態とメカニズムを解説。
陰謀論が跋扈する現状を憂慮する1人として、本書の内容はとても有益で、参考になった。
日本人の2~3割もが陰謀論的思考を有していること、ツイッターの利用頻度の高さはむしろ陰謀論的思考の低さと関連していること、自分自身を「普通」だと考えている人々ほどいわゆるネット右翼がしばしば主張する陰謀論をより強く受容しやすい傾向にあること、左派・リベラル層であっても反政府・反自民党的な陰謀論は受容しがちな傾向にあること、政治的洗練性(政治 -
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陰謀論が発生する要因について、丁寧に分析されている。
ツイッターの利用は、むしろ陰謀論的信念の低さと関連している。多くの人が、自分自身はウェブ上の陰謀論やデマ情報には騙されないが、自分以外の多くの人はきっと騙されているだろうという「第三者効果」の認識が、ツイッターの利用頻度が高いほど感じる傾向にある。
世論調査で測定される意識や態度の一部には、社会的に望ましい方向に答えてしまう「社会的望ましさバイアス」が働くことが知られている。このバイアスの低減を図るために、いくつかの意見に関するリストを提示して、その中から自分自身もそう思うという項目の個数を選んでもらうリスト実験を用いている。
ナルシ -
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9.11のニューヨーク、テロ事件、武漢から始まるコロナの拡大、ロシアによるウクライナ、侵攻事件、3·11、東日本大震災と福島原発事故、コロナワクチンの接種とビルゲイツによる人口削減、計画、安倍、元首相、暗殺事件と統一教会問題、様々な事件が起きるたびに報道されていない。裏に大きな問題が潜んでいると考えるようになった。これがいわゆる陰謀論と言われるものに近いのかと思いながら、自分は陰謀論に惹かれやすい信じやすい体質なのだろうか?などと考えながら、真偽不明の様々な事件について考えてきた。基本的に不思議だな、不自然だなぁと思う事件の裏には、報道されない事柄が多く、真実は何も知らされずに過ぎていくのだろ
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Posted by ブクログ
現代日本における陰謀論の受容について、ちゃんと統計的な研究に基づきつつ自分みたいなアカデミアに所属しない人にも分かりやすく教えてもらえるのでよかった。
Twitterと陰謀論の親和性が低いとか、政治に詳しい人が陰謀論に接近しやすいとか、意外な結論になる論点もある。
日本における保守派が陰謀論に惹かれがちなことは書かれている通りだと思うけど、世界的にみても保守派がわりとチープな陰謀論に接続しがちに見えるのはなんでだろ。保守派が「普通」を自認しがちなのはどこの国でも同じなのかもしれない、そんな想像をした。
リベラル派が陥る構造については左派市民運動にコミットしていた自分の認識と一致する。だから勝た -
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社会科学の統計的手法を使って定量的に陰謀論の実態を分析した本。因子分析によって導き出された因子を「陰謀論的信念」と仮定し、サーベイ実験(対照実験)によって原因を探る。
そもそも陰謀論はフェイクニュースと異なり反証可能性がない主張であり、陰謀論的信念を持つ層は党派を超えて多く存在する。左右ともに選択的メカニズムにより信念に合う現実観を持つのだ。
SNSが陰謀論の巣窟とされることが多いが、統計的には民放報道とヤフコメ、まとめサイト利用者に陰謀論者が多い。逆にツイッターやNHK、新聞利用者では陰謀論者が少ない。ツイッターを多く利用する若年層では日常的会話が多く、陰謀論の入る余地は少ない。これは -
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陰謀論とカテゴライズする以前に、虚実を確かめられれば良いはずで、議論の余地があるから、仮説が陰謀論とされる。陰謀論とする事で、人はその説を蔑み取り扱わないようにする。しかし、それを信じる人にとっては陰謀ではないのだから、自然、対立軸としての通説、社会通念が存在する。
社会やマスコミによる通説に対し信頼性が下がれば下がるほど、陰謀論とされる異説が生まれる。インターネットにより論説が自由化され、異説が徐々に力をつける。そうした異説を信じたい層、信じがちな層が次々と信者になる。本著は、そうした偏りや傾向をデータ分析し、解説する。例えば、政治に関心がある層の方が、秘密結社の存在を信じやすいか否かなど