あらすじ
ネット上の陰謀「Qアノン」を妄信する人々によって引き起こされたアメリカ連邦議会襲撃は、世界を震撼させる事件であった。21世紀の今、荒唐無稽な言説が多くの人に信じられ、政治的影響力すら持つのはなぜか。本書は、実証研究の成果に基づき、陰謀論受容のメカニズムを解説。日本で蔓延する陰謀論の実態や、個人の政治観やメディア利用との関連、必要なリテラシーなどを交え、「民主主義の病」への対抗法を指南する。
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Posted by ブクログ
7月に行われた参議院選挙では、SNSに陰謀論が飛び交い、さらについ最近もJICAによる「ホームタウン」をめぐって酷いデマが溢れるなど、現在「陰謀論」がこれまでになく注目を集めており、メディアでも取り上げられている。そういった記事のなかで有識者としてコメントする場合も多かったのが、本作の著者・秦正樹氏。本作はそのものズバリ『陰謀論』というタイトルで、じつは発売直後に購入していたのだが、いままで読めていなかった。しかしいまこそまさに読むべきではないかと考えて読んでみたら、これがたいへん良い本であった。各章とも頷いたりあるいは驚いたりするような記述の目白押しで、たとえば「第2章」では、Twitter(当時)の接触頻度が高いほど陰謀論的信念が低いことが書かれている。一見直感に反するようにも思えるが、昔からヘヴィ・ユーザーほどリテラシーが高いという一面もたしかにあった。とはいえ現在ではますますエコー・チェンバー化が進んでいると感じることもあり、いまおなじ検証をしたらどういう結果になるかわからない。ついで「第3章」では、ある意味でネトウヨの常套句となっている「右でも左でもない普通の日本人」が、実際に排外的な言説と親和性が高いことを示していて興味深かった。逆に「第4章」ではリベラル側の陰謀論を取り上げていて、こちらも興味深くはあったのだが、リベラル側で有名な陰謀論といえば「ムサシ」を槍玉に挙げた選挙不正だと思うので、それを取り上げていなかったことは残念に思った。「第5章」では政治に対する知識と陰謀論の関係を取り上げているが、そもそも一般国民の政治に対する智識があまりにも欠如していて呆れてしまった。内閣が行政権の行使について国会に対して連帯して責任を負うというのは中学公民でも習う基本的なレヴェルだと思うが、調査の結果得られた正答率はなんと33.75%。この調査結果自体は求めているデータとは異なり本文でもとくに掘り下げてはいないのだが、それにしてもこの数字は衝撃的である。この程度の政治リテラシーしかない人間が参政党なんかに喜んで投票してしまうのもある意味では当たり前である。さて以上のように、各章ごとに興味深い内容が書かれており、じつに良い読書体験をしたと思うのだが、しかし冒頭でも触れたように、近年「陰謀論」を取り巻く状況は急激に変化している。日本でもそうだが、アメリカではなんと陰謀論の権化みたいな存在であるトランプが大統領に返り咲いてしまった。本作は発売されてまだ3年しか経過していないが、このような昨今の情勢を踏まえると、早くも「増補版」を読んでみたい気がする。
Posted by ブクログ
まさか研究者で推しができるとは。
これはすっばらしい本!この本を今このタイミングで読んだ自分を褒めたい。
「だれが」「なぜ」陰謀論を信じるのかというど真ん中の自分の疑問に、とっても科学的なアプローチで挑んでくれた研究者の秦先生、本当にありがたい。あとがきも素晴らしかったです。
専門用語はたまに出てくるが、前提やその周りの説明が丁寧で、中学生でもわかるような適切な説明で書いてある。知識ほぼない自分は助かった。(はずかしいが民主党が立憲民主党になったことさえうろ覚えなレベル)
ありきたりすぎる言い換えだけどこの本は「政治がわからない人のための現代日本政治学」だ。陰謀論という仰々しいタイトルなので遠巻きにする人が多そうだし、また中公文庫の深緑が重々しいけど。研究者の誠実さにちょっと感動したレベル。「政治的関心ってもたなきゃだめ...?」とちょっとでも不安に思ってる知識ゼロ人間にはぜひ読んでほしい。
この本の難しい部分は、著者が検証のために用いている「サーベイ実験」という統計の手法(?)による、アンケート分析に割かれた部分の説明。これが各章に結構ある。ここは結論を信じるしかないので詳しいところは読み飛ばしたが、このサーベイ実験の存在なくしてはここまでの感動を得られなかったと思う。
ぶっちゃけ、思ったことありませんか。アンケートを◯◯人にとり分析した結果の図がこれで...と言われたところで、そのアンケートの設問って導きたい結論ありきじゃない?とか、その回答者って正直に答えることできてるの?とか。読んでるうちに余計な疑問が湧いてしまうんですよね。
著者は、こんな自分を見透かしたように「表層ではなく腹の中まで調査する手法」としてサーベイ実験を紹介してくれ、詳しく説明してくれたので、とてもアンケート手段の結果を信頼できました、ほとんどわかんなかったけど。科学者たるもの、素人がちょっと思いつくような曖昧さのようなものはなるべく排除しようと、当たり前に追究している、その美しさにやられました。
全体の構造も最高にわかりやすい。
いったん陰謀論とは何かを定義する章、
ソーシャルメディアの背景を説明する章に続いては、
政治的傾向に分けて、層ごとに、陰謀論をどのように/どの程度受け入れているかを検証していくという、パンダでも分かる惚れ惚れするようなパラグラフ。
この適切な論述のおかげで、リベラル/保守の今さら人に聞けないような基礎的な知識を図らずも最良の形で受け入れることができたし、政治的関心の薄さという自分に向けられた問題を不意打ちで提示されても、その背景など含めて向き合うことができた。
問題を細かくきちんと切り分けてくれている美しい断面の、どんな人にも「これは自分用だ!」というケーキが用意されています。
エモな洞察もみどころ。経済的/政治的動機でそれぞれ立場があること、受け止めきれない現実や、どんな人も心理的に不安定であること、への眼差しも含めつつも、適切な状況判断をがしがし下していく。どこからも中立であるように感じる。終章の結びは特にエモいので読んでほしい。
陰謀論への問いで導かれた結論的なものに特段の驚きはない。学術は派手ではないから。
物見雄山で陰謀論に関する書籍をいくつか読み始め、タイトル読みしてみたが、政治学の入門としてこんなに良い読書に出会えるとは思っていなかった。ど素人をないがしろにしないでくれていてありがとうございました。
Posted by ブクログ
「陰謀論」について、客観的なデータに基づいて実情を研究した内容を書籍にしたモノである。
まずは「陰謀論」とは何か、を定義し、それとSNSの関係をデータから分析している。
また、「保守」と「リベラル」それぞれの立場から陰謀論の事例を取り上げて、
結論としてはどちらも陰謀論が発生する下地は共通していることを記載している。
読んでみて、SNSとの関係が一番興味深く、SNSを多くやっている人ほど陰謀論に傾倒すると思いきや、データを見るとそのような傾向は無い(むしろ反対の傾向の方がある)というのは意外だった。
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陰謀論の調査である。陰謀論についてあれこれ説明するのではなく、主にインターネットを利用した調査の結果から陰謀論を支持する人を説明している。
内容よりも、webを用いた調査とその基本的な手続きを説明しているので、学部学生の卒論での分析に非常に参考になるであろう。
あとがきが個人的な状況を丁寧に書いてあり、本文より面白い。
Posted by ブクログ
某情報番組で紹介されていたことをきっかけに、本書を手に取った。著者は、陰謀論に対してソーシャルメディアがどのように影響を及ぼすのか、また保守・リベラルといった政治的立場や政治知識の有無によって、陰謀論を信じる傾向がどのように異なるのかを、オンラインサーベイ実験を通じて検証している。そして最終章では、陰謀論と向き合う際に必要な姿勢について、著者なりの考察が示されている。 特に印象に残ったのは、陰謀論に限らず、あらゆる意見と向き合ううえでの「リテラシー」の重要性だ。自分と同じ意見に出会ったときには、それが真実だからではなく、自分にとって都合がよいから無意識に受け入れてしまっている可能性を意識すること。また、異なる意見に出会ったときには、頭ごなしに否定するのではなく、一定の距離を保ちながら認める姿勢を持つこと。この考え方は、陰謀論対策にとどまらず、ビジネスパーソンにとっても欠かせない心構えだと感じた。 さらに、著者自身がサーベイ実験を設計し、その結果を分析している点は非常にユニークであり、学術的にも実務的にも興味深い取り組みであった。ただし、知識層ごとの分析を示したフォレストプロットにおいて、図中の記号(四角・三角・丸)と凡例(人間シルエット)が一致していなかった。意欲的な内容であるだけに、こうした初歩的なミスは残念であり、次版ではぜひ修正を望みたい。 本書は、陰謀論をめぐる議論を社会科学的なアプローチで丁寧に掘り下げ、私たちが情報とどう向き合うべきかを考えさせてくれる一冊である。
Posted by ブクログ
タイトルを見ると陰謀論そのものの解説にも思えるが、主に語られているのはどのような層に陰謀論が受容されているのかを統計的に調査したもの。
取り上げる陰謀論や調査の切り口は面白かったし、その分析手法についても学びは多くあった。
SNSの利用と陰謀論の受容の関係の意外性は興味深いものだったように思う。
一方で、文中に登場する調査の母数がクラウドソーシングサイトでの1500〜2000件程度と、今のSNSや社会の状況を抽出するのに適当な量だったかという点にはあまり納得感はないかもしれない。
陰謀論そのものを知りたい場合は、「あなたを陰謀論者にする言葉(雨宮純)」などを手に取るとよさそう。
Posted by ブクログ
「誰が、なぜ陰謀論を信じるのか」という問いについて、サーベイ実験というデータ分析の手法を通じて様々な観点から明らかにし、日本社会における陰謀論受容の実態とメカニズムを解説。
陰謀論が跋扈する現状を憂慮する1人として、本書の内容はとても有益で、参考になった。
日本人の2~3割もが陰謀論的思考を有していること、ツイッターの利用頻度の高さはむしろ陰謀論的思考の低さと関連していること、自分自身を「普通」だと考えている人々ほどいわゆるネット右翼がしばしば主張する陰謀論をより強く受容しやすい傾向にあること、左派・リベラル層であっても反政府・反自民党的な陰謀論は受容しがちな傾向にあること、政治的洗練性(政治的関心・政治的知識)の程度が高いほうがむしろ陰謀論を受容しやすい傾向にあることなど、本書で紹介されるサーベイ実験の分析結果は、直感的イメージとは異なるものも多く、非常に興味深かった。
誰もが陰謀論にはまってしまう可能性があるというのが本書の教訓だと思う。ただ、著者は政治的関心や政治的知識もほどほどが一番と結論づけているが、そこには同意できない。政治的関心や政治的知識の程度を高めること自体は否定されるべきことではなく、関心を持ち知識を付けた上で、自分の政治的志向などに自覚的になり、対立する立場の考えにも思いを巡らし、複眼的・相対的に物事を考えるようにすることこそ、陰謀論に陥らないために必要なのではないかと思う。
社会的望ましさバイアス(社会的期待迎合バイアス)を防ぐためのリスト実験やヴィネット実験という手法を知ることができたということなど、最先端の政治科学の研究の紹介という点でも本書は面白かった。
Posted by ブクログ
陰謀論が発生する要因について、丁寧に分析されている。
ツイッターの利用は、むしろ陰謀論的信念の低さと関連している。多くの人が、自分自身はウェブ上の陰謀論やデマ情報には騙されないが、自分以外の多くの人はきっと騙されているだろうという「第三者効果」の認識が、ツイッターの利用頻度が高いほど感じる傾向にある。
世論調査で測定される意識や態度の一部には、社会的に望ましい方向に答えてしまう「社会的望ましさバイアス」が働くことが知られている。このバイアスの低減を図るために、いくつかの意見に関するリストを提示して、その中から自分自身もそう思うという項目の個数を選んでもらうリスト実験を用いている。
ナルシズムが高い人や社会的に阻害されていると感じる人ほど陰謀論を信じやすい傾向にある。
辻・永吉は、 ネット右翼を中国韓国への否定的態度の有無、保守的政治思考の有無、インターネット上における日常的な政治的意見の発信の三つの要素を併せ持つ層として定義し、全体の1.5%を占めると報告している。ただし、保守的な政治思考を除く2つの要素を持つ層が3%存在する。自分が普通であると認識している層は、韓国やリベラル野党に対する意見が強く、陰謀論を強く受容しやすい傾向にある。
リベラル系の野党支持者は、近年の選挙で敗北を喫し続けていることが原因となって、選挙や政党、政治という統治のしくみ、多数決主義的な各種の選挙制度に対して懐疑心を覚えやすい。現行の政治の仕組みに対して不信感を持ちやすく、陰謀論的な言説を受容する素地になっている。
日米合同委員会に日米政府間の新たな合意を徹底する権限はなく、正式な閣議決定や通常のプロセスによる政府代表者同士の合意が別途必要になるため、その場で密約が結ばれることはない。外務省の公式ウェブページには、「日米合同委員会における協議を経た合意事項は、そのほとんどが施設・区域の提供、返還等に関する事項である」と書かれている。
18歳投票権年齢引き下げは、与野党8党により発足したプロジェクトチームで党派を超えて合意を得たのち、衆参両院において全会一致で可決された経緯がある。
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あとがきで学部生時代ネトウヨだったという衝撃の告白。
陰謀論に近づく人の傾向として,「政治的に意識が高い人(右も左も)」というのは納得感ある。関心が身近なことな人はリスクが低いのに,反ワクとか放射能怖いで侵食しようとするのは本当にけしからんなあ…。
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9.11のニューヨーク、テロ事件、武漢から始まるコロナの拡大、ロシアによるウクライナ、侵攻事件、3·11、東日本大震災と福島原発事故、コロナワクチンの接種とビルゲイツによる人口削減、計画、安倍、元首相、暗殺事件と統一教会問題、様々な事件が起きるたびに報道されていない。裏に大きな問題が潜んでいると考えるようになった。これがいわゆる陰謀論と言われるものに近いのかと思いながら、自分は陰謀論に惹かれやすい信じやすい体質なのだろうか?などと考えながら、真偽不明の様々な事件について考えてきた。基本的に不思議だな、不自然だなぁと思う事件の裏には、報道されない事柄が多く、真実は何も知らされずに過ぎていくのだろうと思っていた。
本書では、なぜ陰謀論がへ信じられやすいか、誰が陰謀論が信じるか?と言ったことに対して、様々な角度から分析を進められている。答えは、誰もが信じるし、なぜなら自分のものの考え方を支えてくれるからと言うことになる噂話を見聞きした際に、それは自分が考えていたことと、同じことをかけていると思ったら、要注意、それはたまたま耳に入ったのではなく、自ら接触しに行っている可能性があることを自覚しておくことが、陰謀論から身を守ることになるだろう。
Posted by ブクログ
現代日本における陰謀論の受容について、ちゃんと統計的な研究に基づきつつ自分みたいなアカデミアに所属しない人にも分かりやすく教えてもらえるのでよかった。
Twitterと陰謀論の親和性が低いとか、政治に詳しい人が陰謀論に接近しやすいとか、意外な結論になる論点もある。
日本における保守派が陰謀論に惹かれがちなことは書かれている通りだと思うけど、世界的にみても保守派がわりとチープな陰謀論に接続しがちに見えるのはなんでだろ。保守派が「普通」を自認しがちなのはどこの国でも同じなのかもしれない、そんな想像をした。
リベラル派が陥る構造については左派市民運動にコミットしていた自分の認識と一致する。だから勝たなきゃいけない、きちんと勝ちに行かなきゃいけない、と思うんだけどね。
是非他にも色々と一般書を書いていただきたいなー。
Posted by ブクログ
社会科学の統計的手法を使って定量的に陰謀論の実態を分析した本。因子分析によって導き出された因子を「陰謀論的信念」と仮定し、サーベイ実験(対照実験)によって原因を探る。
そもそも陰謀論はフェイクニュースと異なり反証可能性がない主張であり、陰謀論的信念を持つ層は党派を超えて多く存在する。左右ともに選択的メカニズムにより信念に合う現実観を持つのだ。
SNSが陰謀論の巣窟とされることが多いが、統計的には民放報道とヤフコメ、まとめサイト利用者に陰謀論者が多い。逆にツイッターやNHK、新聞利用者では陰謀論者が少ない。ツイッターを多く利用する若年層では日常的会話が多く、陰謀論の入る余地は少ない。これは、他で指摘されているようにツイッターの中で陰謀論者がエコチェンバーに陥っているからではないかと思った。大多数には影響を与えていないのだろう。また、年齢でいうと高齢者の方がSNSとの関わりで陰謀論に陥りやすい。ではなぜツイッター警鐘論があるからと言うと、他人を見下す第三者効果があると筆者は語る。確かに。実際には自分も他人と変わらない人間のはずなのに。
次に陰謀論に陥りやすい層についての研究。保守層ではネトウヨをリスト実験により本音を引き出して分析する。「普通」を自認する層(全体の半分!)は結局個人の意見を普通だと思い、全体を客観視できていないことが分かった。これは政治的対話の欠如の帰結だそうだ。
またリベラル側では、政権を取れない万年野党としての鬱屈した感情が、正当な政府批判とトンデモ政府批判の混同、さらには選挙制度自体(18歳選挙権等)の感情的信頼の衰退につながっているという。
最後に、実は政治に詳しくなるという行為自体が陰謀論に近づいているということを示す。質問中の属性を変えて潜在意識を探るヴィネット実験では、政治的関心が高く政治的知識を持つ人が奇説に反応してしまうことが分かった。
筆者はそれに対してバランス感覚や政治への一定距離(無関心ではない)、マスメディアへの信頼をあげる。
今作はまさに時流に乗った良作だが、統計的な説明が多いため、数字の分かる層には刺さっても大多数には刺さらなそうである。また統計的説明が主眼であるため、より踏み込んだ議論は少なかった。その考察は読者にゆだねられているのだろう。
よくNHKが左右から共に攻撃されている姿をネットで見かけるが、それが逆説的にNHKが中立的なことの証明になっていることに代表されるように、自分の思想を客観的に把握できない人、現実を受け入れられない人が極端な主張に取り込まれ、バランス感覚を持った人が攻撃される現象が増えると思う。それを防ぐためには政治的対話が必要であり、本当の有権者教育とは「政治に詳しくなる」啓蒙教育ではなく相互の政治交流を可能にする意識変革ではないだろうか。その前提となることはリアルで太い関係性を築いていることに加え各々が寛容と忍耐の意識を持っていることだろうが、個人主義の強い現代でそういったある種快適でない共同体的関係が受け入れられるのかは疑わしいところである。
また世間はお前が思っているほどには馬鹿ではないという意識も大事だろう。そういった秘密が簡単に隠匿できるのであればスキャンダルなど起こるはずもない。
Posted by ブクログ
他人事じゃない。つかみどころのない「陰謀論」を定義し、一般化し、データを用い、その虜とならないため、私たちは何にどう気をつけるべきかを示す。「自分はごく普通だ」と思っている場合こそ、自省を要するかもしれない。
テーマの提示から結論まで駆け抜ける、新書の機能を体現するような疾走感。
Posted by ブクログ
結論が判然としないけれども、ともかくバイアスに囚われすぎず、何事もほどほどにってことかな。Twitterよりもまとめサイトやワイドショーが陰謀論者を生み出しやすいってのとか、第三者効果とか社会的望ましさバイアスとかサーベイ実験とか勉強になる概念はあった。
Posted by ブクログ
陰謀論の本というよりは、陰謀論に関する統計調査の解説本という風味で、陰謀論の実体を分析するのには役立っても、陰謀論全体の理論を考察するのには直接役立つことはないかなと思う。
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陰謀論とカテゴライズする以前に、虚実を確かめられれば良いはずで、議論の余地があるから、仮説が陰謀論とされる。陰謀論とする事で、人はその説を蔑み取り扱わないようにする。しかし、それを信じる人にとっては陰謀ではないのだから、自然、対立軸としての通説、社会通念が存在する。
社会やマスコミによる通説に対し信頼性が下がれば下がるほど、陰謀論とされる異説が生まれる。インターネットにより論説が自由化され、異説が徐々に力をつける。そうした異説を信じたい層、信じがちな層が次々と信者になる。本著は、そうした偏りや傾向をデータ分析し、解説する。例えば、政治に関心がある層の方が、秘密結社の存在を信じやすいか否かなど。
誤った認識で暴動が起きる事は避けるべきだが、陰謀か否かより重要な議論は、社会通念が自らの味方かどうかだ。人生を必死に生きても一向に報われないなら、何かに支配された気分になっても仕方ない。古い株のワクチンを必死に打たせようとする政府に企みを感じても仕方ない。
古くは雨乞い生贄を焼くと雨が降った事を結びつけ、誤った因果推論で物語を描いた人間が、事象と仮説を結び付けて曲解、歪曲したとて、あり得ない事ではない。厄介なのはインターネットで自らの非科学的な体験や思想を共有、補強し合う、そうした近似知能階層が齎すエコーチェンバーやフィルターバブルのような現象だ。暴動を煽る、差別を助長する、反社会的な行動を促すような投稿は規制しなければならない。そして、その傾向がある人たちは、既にあるデータから管理識別できるはずだ、というとこれも陰謀論だろうか。
Posted by ブクログ
何とも評価の難しい本だ。冒頭、陰謀論を信じるか様々な説について調査しているのだが、殆どの説は信じる人が少数派なのに対して「マインドコントロールの技術は使われている」「重要な事実が隠蔽されている」の2つについては「そう思う」が多数派となっている。しかしその点について本書では全く言及しない。様々な調査のデータは時に非常に興味深く意外な結果を表しているのに、何故かそこに触れずに済ませてしまう(例えば民放ニュース番組をよく見る被験者は本書が問題視するヤフコメやTwitterと比べてより陰謀論との親和性が高いなど)。また他にもそもそも陰謀論としては微妙な武漢ウイルス説(アメリカ政府が公式に調査検討している)を基準に政治的洗練層と陰謀論の親和性を評価していたり、もう少し他のやり方は無かったのかと思ってしまうが、結論的には中庸の美徳というか、何事も程々に、というまぁ当然といえば当然のところに落ち着いている。
著者も注意喚起しているが、そもそも陰謀論は正当な批判と区別がつきにくいところもあり、何でもかんでも陰謀論として一蹴してしまうと議論が成り立たなくなるので、本書自体も鵜呑みにしないで程々に付き合うのが正解かもしれない。
Posted by ブクログ
なんつかなあ。
一般論としては正しい。いろんな統計の取り方の紹介もいいんだけど。
世論取るのに、楽天なんとかに来てる人の二千人くらいに聞いて、それって十分な母数なのかまず気になる。一般性あるの?
陰謀論と括ってしまうのもやばいよと、一応触れてはいるが、ここの「陰謀論」の何が問題か全く触れてないので、何気に挙げられてる事象は全部陰謀論だよと、刷り込む結果になっている。
大体、保守とリベラルの定義が全くされてない。
多分、ネトウヨという言葉が生まれた頃の論者と、現在ネトウヨと呼ばれている論者とは可成り異なっている気がするのだが、それも検証してない。
右が陰謀論を信じやすいというが、この本でいうリベラルって「反日共産」系だというとそれだけでネトウヨと言われがちだが、もう少し、丁寧に情報追ってから語って欲しい気はした。
陰謀論ではなく、これまでの歴史を考えても、安易に信用できないんだよ。
実際、信じろというマスコミが、偏ってることに全く言及しない。
ちょっと、厨二感は感じた。
Posted by ブクログ
読みやすかった。
どんな人でも陰謀論に陥る可能性が割とあるという事はなかなかショッキングだった。バランスよくあること、程々であること、リテラシーを身につけることの大切さという一見凡庸な見解が、実はとても(というか最も)重要だった。
Posted by ブクログ
学術的に「陰謀論」を解析を試みる。
なぜ発生するのか、どんな人が信じるのか、なぜ信じるのか、どうすれば陰謀論に惑わされないで済むのか などに迫るもの。
ちゃんとデータに基づいて説明しようとしている。けっこう予想したものとは異なる結果に驚く。どうにも肯がたいけど、そう思えることが、自身も危ないのかなと思う。