あらすじ
ネット上の陰謀「Qアノン」を妄信する人々によって引き起こされたアメリカ連邦議会襲撃は、世界を震撼させる事件であった。21世紀の今、荒唐無稽な言説が多くの人に信じられ、政治的影響力すら持つのはなぜか。本書は、実証研究の成果に基づき、陰謀論受容のメカニズムを解説。日本で蔓延する陰謀論の実態や、個人の政治観やメディア利用との関連、必要なリテラシーなどを交え、「民主主義の病」への対抗法を指南する。
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Posted by ブクログ
「陰謀論」について、客観的なデータに基づいて実情を研究した内容を書籍にしたモノである。
まずは「陰謀論」とは何か、を定義し、それとSNSの関係をデータから分析している。
また、「保守」と「リベラル」それぞれの立場から陰謀論の事例を取り上げて、
結論としてはどちらも陰謀論が発生する下地は共通していることを記載している。
読んでみて、SNSとの関係が一番興味深く、SNSを多くやっている人ほど陰謀論に傾倒すると思いきや、データを見るとそのような傾向は無い(むしろ反対の傾向の方がある)というのは意外だった。
Posted by ブクログ
某情報番組で紹介されていたことをきっかけに、本書を手に取った。著者は、陰謀論に対してソーシャルメディアがどのように影響を及ぼすのか、また保守・リベラルといった政治的立場や政治知識の有無によって、陰謀論を信じる傾向がどのように異なるのかを、オンラインサーベイ実験を通じて検証している。そして最終章では、陰謀論と向き合う際に必要な姿勢について、著者なりの考察が示されている。 特に印象に残ったのは、陰謀論に限らず、あらゆる意見と向き合ううえでの「リテラシー」の重要性だ。自分と同じ意見に出会ったときには、それが真実だからではなく、自分にとって都合がよいから無意識に受け入れてしまっている可能性を意識すること。また、異なる意見に出会ったときには、頭ごなしに否定するのではなく、一定の距離を保ちながら認める姿勢を持つこと。この考え方は、陰謀論対策にとどまらず、ビジネスパーソンにとっても欠かせない心構えだと感じた。 さらに、著者自身がサーベイ実験を設計し、その結果を分析している点は非常にユニークであり、学術的にも実務的にも興味深い取り組みであった。ただし、知識層ごとの分析を示したフォレストプロットにおいて、図中の記号(四角・三角・丸)と凡例(人間シルエット)が一致していなかった。意欲的な内容であるだけに、こうした初歩的なミスは残念であり、次版ではぜひ修正を望みたい。 本書は、陰謀論をめぐる議論を社会科学的なアプローチで丁寧に掘り下げ、私たちが情報とどう向き合うべきかを考えさせてくれる一冊である。