陸海空のそれぞれ最高階級の経験者の対談ということで、貴重な書籍となっている。
<おススメする人>
・日本の安全保障環境に興味があり、自衛隊の幹部がどういった問題認識を持っているか興味がある人
・組織や社会が持つ普遍的な問題についての洞察を自衛隊という切り口から気づきを得たい人
<本書を読んだ個人的
...続きを読むな気づき>
・第5章 科学技術政策と軍事研究より
ニーズとシーズがマッチしていないことや、運用構想⇒開発の順になっていないことが問題として挙げられていた。
このあたりの問題点は日本社会が抱える既存ITシステムの失敗であったり、DXを推進できない理由として挙げられている経営層とステークホルダー間の「対話の重要性」と似ていると感じた。
何か先駆的な技術があるから使ってみよう、という考えでは、日本社会が失敗したレガシーITシステムの再来となってしまう。適当な要件定義でベンダーに外注したら誰も使わないシステムができてくるのと似ている。
経営層に方針があり、それに沿う形でIT、非IT問わず全部門が変形していくのがDXの理想形だが、現状の経営層は理想の方針を示せず、プロジェクトメンバーは何を改善すればいいのか分からなくなってしまう実情がある。
どんな組織でも、オペレーション(戦略、運用構想)が先にあって、それを技術やシステムに丁寧なコミュニケーション(対話)を得ながら落とし込むことが大事だと感じた。オペレーションと開発のコミュニケーションのあり方を人材育成(DXで言うところのDX人材内製化)を含めて考えないと、日本社会全体沈んでいく気がした。
<その他本書で印象に残ったところ箇条書き>
・戦略環境を俯瞰する際、ユヴァルノアハラリの視点も紹介していた。
・インドは陸軍国であり、海洋に出てられない。
・現在、自衛隊には核の専門家がいない。少し前までは真剣に議論する場くらいはあった。
・日本が北朝鮮に先制攻撃をする場合、韓国との関係性が問題となる。なぜなら、韓国は北朝鮮を統一後の自国の一部と考えているから。
・有事になると統合幕僚長は仕事でパンクする。総理大臣への助言と、自衛隊への命令の両方を一人では果たせない。
・政治と自衛隊の連携(総理大臣の判断と統合幕僚長が提示するオプションの齟齬、人的損害が出る作戦の責任の所在等)の部分の議論では、やや感情論も混じった対談になっていた。⇒この部分だけやたら感情的になるほど、実は安全保障上一番まずい問題点なのかもしれない