小野寺拓也のレビュー一覧
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しばしば見かける「ナチスは良いこともしていた」論に対して、歴史学の観点から検証を行う。①オリジナルの政策なのか(ナチスだからこそできたことなのか)②政策の目的は何だったか③成果を上げていたのか、の3点から成果として主張されることの多い経済政策、労働政策、家族支援、環境保護政策などを簡易で明快な論理で否定していく。要はオリジナルは無いし、目的は排除を前提とした包摂と戦争に帰結し、成果も大きく評価できるものはない。「良い面もあれば悪い面もある」という一見中立や公平を装った態度は歴史解釈に限らずさまざまな分野で見られるが、本当に中立や公平な態度であるのか、をどのように受け止め考えれば良いかということ
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ネットでもたまに見る「ナチスの政策にも良い部分はあった」という言説を検証・否定する本。
その言説を発信する人たちがことごとくアレなので特に信じてもいなかったんだけど、調べもせずに否定していたら調べもせず肯定しているのと変わらないかなと思って読んた。これで堂々と否定できる。
そもそもナチスの細かい政策を調べたことがなかったので、ナチスに関する書籍の入門編としても分かりやすくて良かった。
結局こういうことを言い出す人って、中二病とか反対思想への反発が根底にあるんじゃないかな。中高生くらいなら教師や親の綺麗事への反発心からそういう考えに傾倒することもあると思うけど、いい大人が言ってるのは危険だ -
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ナチスが「良いこと」をしたかどうか。
この問いは、レイシストのように偏見に満ちた危険な差別主義的視点だ。ナチスだから、何もかも悪いわけないじゃないか。ユダヤ人だから全てが悪いという構文が成立しないように。物事は二元論ではなく、もっと複雑だ。戦争を全てナチスのせいにして、ナチスの存在だけが反省点だからと、思想背景や構造を反省しないならば問題だ。
私はナチス肯定派ではない。ただ、これを狂気の免罪符とするのに反対で、人間は過ちを犯しうるものとして警戒し、政策の良し悪しは当然あっただろうし、寧ろその良いと感じる魅力的な政策によって、悪しき思想が覆い隠される危険性がある、とする立場だ。だから、「ナチス -
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ナチズム研究の大家である著者が、平易かつ短いページ数でナチズムの最新の研究成果を語る入門書の翻訳版。たまたま手に取ったのはTwitterの「その道の専門家が選ぶ優れた入門書」的なハッシュタグで話題になっていたからなのだが、内容は非常に平易で大学1年生レベルの予備知識がなくても十分に読み進められるものとなっている。
もちろん入門書とはいえ、現代に出版する以上、最新の研究成果の盛り込みが求められる。本書で特に重視されているのは、植民地経済の延長線上にポーランドなどの東欧の占領を位置付ける、という視点である。植民地というと、どうしても欧州の列強がアフリカやアジアに対して行ったこと、というのが通説で -
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新書版で250ページという中で、第三帝国の歴史をコンパクトにまとめている。
もちろんどういった史実を重視し取り上げるかについて著者の考え方はある訳だが、ナチ支配確立以降の、ポーランド、ソ連の占領地域の植民地化の問題、またユダヤ人政策の経緯について比較的詳しく叙述がされている。
個人的に興味があるのは、なぜナチスが政権を取れたのかということだが、著書は2つの要因が決定的だったとする。1つは、大統領始め国民保守派の指導的グループが、権威主義的で議会に拘束されない統治システムを確立することを目指しており、そこでは左派自由主義政党や社会民主党、労働組合の影響力は排除されることとされていたが、 -
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とにかく読みやすい本。
だけどあまり納得はできなかった。
その政策が良いか悪いかを評価する際に「オリジナリティ」って必要?
優良なドイツ人を(平易な言葉を使うならば)エコ贔屓して戦争に突き進む政策といえど、その一部の優良なドイツ人たちには確かにメリットがあったんじゃない?それって(ごく一部の人に限るという但し書きがつくとはいえ)「いいこと」なんじゃない?と思ったり。
ナチが極悪非道の組織であることは百も承知だけど、「ナチスはいいこともしたのか?」というテーマで語るなら、いやいいこともしたように思えるけど……と考えてしまう内容。
私の理解度が足りずモヤモヤが残る読後だった。
またナチへの理解を深