小野寺拓也のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
「ナチスは良いこともした」とは私も何度か聞いたことがあるが、これが専門家の視点から確かな資料で斬られていくのは痛快の一言。
本書が私に明らかにしたナチスの実態を例えるなら、殺人鬼が捨て猫を拾っていても「善人」とは認めにくいうえ、猫のこともたいして大切にしなかった、という感覚だ。
子供の出生増加に対して、本書P80などの「実際にはナチ政府からの給付金や福祉制度は増加させておらず、イデオロギーに基づいた名誉をぶら下げただけでは子供は増えなかった」「女性に対しては家父長制的圧力、親となろうとする人々へは民族イデオロギー的圧力がマイナスに働いたのではないか」という指摘は現代の先進国の少子化対策に対する -
Posted by ブクログ
ナチズム研究の専門家が、巷で言われる「ナチスは良いこともした」論について検証する。 一般によく言われるナチスの先進的な政策である、経済政策、労働福祉政策、家族支援政策、環境保護政策、健康政策について、いずれもナチスが特段優れた政策を実施したわけではない。ワイマール体制下の政策が実を結んだものが多い。また、「民族共同体」の訴えに基づいて行われた諸々の政策だが、裏を返せば「民族同胞」として包摂されなかった人(ユダヤ人、共産主義者、障害者、同性愛者等)を排除することを目的としていた。
「ナチスは良いこともした」論を唱えることは、ナチズムが実際にどんな体制であったかを無視した暴論である。 -
Posted by ブクログ
本書の感想からやや離れる。
筆者のSNSのプチ炎上をリアルタイムで見ていた。「本筋の研究者によく物を言えるな」と驚いた覚えがある。筆者を批判しているツイートで目立ったものは共通して『上から「学者にわからせてやる」口調(当然敬語ではない)』『アカデミックなものに対する敵意』、俺は論破などされないというスタンスからはいる一連のツイートは胸に来るものがある。というのも、本書のような、その指示の専門家が書いた素人にもわかるよう記した本でも、彼らは納得しないだろうと思ったからだ。
各章のナチスの政策と、それが『良いこと』だったか、の是非は私のような素人にもわかりやすく大変勉強になった。中でも自分が一番心 -
Posted by ブクログ
よいことをしたといわれるが、結局は独自のものではなく前政権からの引き継ぎで効果を上げていたり、他国と同じことを幾分か徹底的に行ったり、名目は立派だったけど結局は戦争のための、戦争による経済だった。つまり自転車操業だった。そもそもよいこととされる政策の対象はいわゆる健常なドイツ人のみであったため良いこととは言いきれない。そしてだんじょかんで強く家父長制的価値観が強く押し出されているので政策の内容が変わるものもあった。
移民が増えている日本は当時のドイツとやや似た状況になってきているため、ナチ政権のようなことはしないようにしつつ、けれども日本を守るにはどうすればいいか考える必要があると思わされる。 -
Posted by ブクログ
出版当初、話題になったナチズム研究の書籍。
話題になったのも頷ける本で、めちゃくちゃ面白い。
自分はナチス関係の書籍を熱心に追っているわけではないし、何ならこの手のナチス関係の本のスタンダードなものしか読んでいないので知識が固定化してしまっている。本書はそんな自分を揺さぶってくれるような本で、今後も折を見て読み返したいと思えるような本だった。
それにこの薄さにも関わらずかなりわかりやすくまとまっている。
ただ初めてナチス関係の書籍を手にする方は、ここから手を出すとちょっと難しいかもしれない。
なので新書で何冊か読んでから読むのがいいかもしれない。 -
Posted by ブクログ
ナチスが台頭していった過程がよくわかるコンパクトな概説書。もう最初から戦争する気満々で、よく言われる”経済”も、国内のユダヤ人や戦争で分捕った周りの国をこき使って得たものを、ドイツ系白人のみに対して(不満の出ない範囲で)優遇したもので、とても経済政策と言えるようなものではない。ユダヤ人だけでなく、ジプシーもロシア人も”死んでしまえ”なわけで、自民族だけが優れているという狂信がいかに危険なものかがよくわかる。強盗の家族が”でも僕たちには贅沢をさせてくれた”というようなもので、本当にナチスに対して肯定できるようなものは何もないことがよくわかる。ナチスがなぜ今でも厳しい批判の対象なのか、事実をよく知