山口尚のレビュー一覧
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こちらもひょんなことから流れ着いた一冊。自分の人生において、なにより今後の学びにおいて、示唆に富む本だった。著者の山口氏の書き口がかなり好みで、というのも、氏の個人的な体験や哲学的論考の枠を超えた趣味嗜好が見え隠れてしている文章が良かった。(集団で口々に発せられる「頑張ろう!」は無意味で好きではないとかね)
にしても彼、「軌を一にする」って表現好きだねえ。昔読んだBL小説家で「吐息する」という言い回しをやけに多用する人がいたけれど、それを思い出したよ。
様々な手段・角度から自由意志の存在を否定し、そうやって人間の逃れ得ない不自由さを認識した上で、だからこそ「自由」を目指す。自由意志否定論の( -
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哲学書。
身近なテーマである「罰」だけに、難解ではあるが、丁寧な説明と、
多くの事例から、何とかついていける。
あらすじを書けるほどの理解はないので、キーワードを書いておきたい。
刑罰の意味 抑止、応報、追放、祝祭、見せもの、供犠、訓練
ここで「応報」に着目し、
行為、責任、主体という概念が浮かび、
リベットの実験 自発的行為は意志の前に脳で無意識に起動する、
つまり人間に自由な選択はないのではないか、そうなれば責任は生ぜず、
行為の責任に対する応報は問えないのではないか、、、
深い。
この議論が続く。終わりはない。
この本で取り上げなかったのが「赦し」
これも深いテーマだ。
応えは -
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國分功一郎、青山拓央、千葉雅也、伊藤亜紗、古田徹也、苫野一徳。
前者3名は知っていた。逆に言えば後者3名は知らなかった。
それにしても、彼らを不自由論で統一しているのは意外だった。この本の著者の洞察力には感服する。
章ごとに、この哲学者は、という呼び方をしているところに違和感を感じた。
私事だが、学生のころ、消極的な積極性という名のもとに勝手に知らない教室に入って身を任せていたことがあった。ワクワクしたのを覚えている。別に教室の雰囲気を変えたかったわけではない。壊したかったのでもない。ただ新しい環境にいて内面を変えたかった。
自由は責任能力に与している、とすれば、精神異常者として、自由 -
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ネタバレ読むきっかけとなったのは2つ。凪良ゆうの『流浪の月』を読んで、人が人を罰することは本当にできるのか?という疑問。2つ目はSNS上における“私刑”の過剰化から1の疑問が、さらに言えば事件に関係のない第三者が罰することに疑問を覚えたから。
罰することは生のフレームワークに組み込まれていて、それを否定することは抜本的にできないという結論。
特に『道徳的要求/道徳的期待が裏切られると、たとえ他人であったとしても、対“人”に対して義憤というネガティブな感情が生まれる』という部分が疑問を考える上で役に立った。
人が人を罰することから逃れられないの同時に、罰すること自体への責任も持たなければいけないことが -
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人は自由意志を持ち、過ちを犯した者は咎められ、罰される。それが共同体における基本ルールと考えられていた。
一方で、自由の存在を否定し、刑罰は無意味だとする神経学者や社会倫理学者の立場もある。
はたして、人間とは自由な選択主体なのか。人が人を罰する事に意味はあるのか。
人を「責める事」及び「罰する事」に主題を置いた自由と責任に関する哲学書です。
刑罰の意味からはじまり、人間の自由意志否定論、責任虚構論などを紹介・解説したうえで、その矛盾や盲点を解説するという内容になっています。
「責める事」「罰する事」は人間の生のフレームワークに含まれているという結論を聞くと、優しく穏やかな世界というもの -
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難解な本を読むことに「必勝法」はないが、「正攻法」はある、というスタンスのもと、読解する上の指針になる着眼点を紹介している本である。文章全体が何を伝えようとしているのか。それを知るために一つ一つの章や節、文といった部分部分と全体を繰り返し読み直す(「解釈学的循環」をする)こと。そして、文章全体が伝えたいことを捉えて、その主張を表すキーセンテンスを見つけること。この二つを基本的な原理として、そのための具体的な方針が説明される構成になっている。
読解の方法について一番印象に残っていているのは、第六章「その文章のどこが重要なのか?」という部分だ。
有名な本を読んでも、何がすごいのかが分からない。文 -
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2010年代の日本哲学の最前線は不自由に目を向け「意志」概念を批判する潮流にあるとし、6人の哲学者とその理論を紹介している。各哲学者の理論の説明の前に、その根底にある考え方や背景などから説明に入るため、紹介されている理論も比較的頭に入ってきやすい。6人をただ紹介しているのではなく、それぞれの理論を結び付け、共通項を繋ぎながら日本哲学の潮流として落とし込んでいくことがこの本の価値だと感じた。
ここで展開されている不自由論は「より自由になるための不自由論」であり、人は自己の意志に頼むことで却って不自由になると考えている。意図的にコントロールできないことに悩むことが自分を縛ることに繋がり、「意志」を -
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難しい本を読むための正攻法が書かれている。
まず、全体と部分を循環してキーセンスを見つけるのが原理となる。
次に、前提と結論を分けて話の流れを掴む、であったり、抽象的な主張には具体例を考えて理解を深めるなど、方法論が紹介されている(前者は例えば批判するときは前提を批判するのか、前庭から結論の過程を批判するのかといった反論にも役立つ。後者は本の内容を自分の中に取り入れる作業となる)。
最後は、上記をブラッシュアップさせるために、読書会を薦めている。
哲学中心だが、他の本の文章を例題に、正攻法や、方法論が述べられており、理解しやすい内容になっている。 -
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文系ですが、学生時代は現代文が苦手でした。
本書では読解の技法として「具体例をあげる」ことが指摘されていた。
多分当時の自分は具体例にたどり着くほど経験が足りていなかったんだと、今は思う。
振り返ると昔の自分は読解の「必勝法」を求めて失敗していたんじゃなかったかと。
代ゼミの酒井先生や出口さんの参考書を求めては難解な文章を理解できず、挫折をしていたものだった。
この本を読んで、難しい本の読解とは文章に人生まるごとでぶつかる営為ではないかと思った。
だからこそ読書会を催す必然性もあるのだろう。
外堀を埋めるばかりだが、本書の一番の肝は恐らく「部分の積み重ねで全体を理解する」と同時に「全体が -
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難しい本を読むために意識、実践するべきことを哲学者の文章を実際に読んでみることを通じて説明していく内容です。難しい内容の本を読むことが苦手な人は、論理的に読むために必要なことを構築でき、そうでない人にとっても改めて自分の中で理論を整理し、明確にする手助けになるのではないでしょうか。
タイトルに対するネタバレになりますが、筆者がこの本で何度も述べているように、難しい本を読むために「正攻法」はあれども「必勝法」はありません。人によって持っている背景知識や読む文章との相性も違います。文章の内容も書き手によって様々であるため、万人が必ず正しく読むことができる方法などは当然ありません。しかし、難しい文