山口尚のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
人間の思考は、会話を前提にしている。自分なりに咀嚼すると、鏡のようなもの。
鏡に自分が映っていることで、自分の姿・存在を確認できる。鏡に何も映っていないなら、自分は幽霊かなにかになってしまう。
鏡は映るのは自分だけど、会話は他人とでないと成立しないのが、厄介で面白いところ。
会話が成立することで、実在や心などを相互承認して、懐疑論から脱出できる。会話が成立しないなら、つまり自分と相手のどちらか一方でも誠実に返答しないなら、相互承認が成り立たない。実在を疑い、懐疑論から抜け出せない。
懐疑論にハマること自体は健全だけど、相手にまともに取り合ってほしいなら、まずは自分がまともに回答することから。
とすると、「聞く技術 聞いてもらう技術」とつながるところがあるかも。
自分用の宿題が2つ。
①陰謀論にハマった人達は、お互いには誠実な会話が成立していて、正気を確認し合っているが、外から見れば狂っている。エコーチェンバーから脱出するには、誠実な会話以外にも必要なものがあるらしい。
②AIと会話できるなら、AIとも心や自由などを相互承認できる、といえるのか? -
Posted by ブクログ
哲学書。
身近なテーマである「罰」だけに、難解ではあるが、丁寧な説明と、
多くの事例から、何とかついていける。
あらすじを書けるほどの理解はないので、キーワードを書いておきたい。
刑罰の意味 抑止、応報、追放、祝祭、見せもの、供犠、訓練
ここで「応報」に着目し、
行為、責任、主体という概念が浮かび、
リベットの実験 自発的行為は意志の前に脳で無意識に起動する、
つまり人間に自由な選択はないのではないか、そうなれば責任は生ぜず、
行為の責任に対する応報は問えないのではないか、、、
深い。
この議論が続く。終わりはない。
この本で取り上げなかったのが「赦し」
これも深いテーマだ。
応えは出なかったが、脳に心地よい汗をかくことができた。
-
Posted by ブクログ
とても当然のことだが、論理の流れを掴むことがあらゆることを理解するのに重要な点であることに気付かされた。
前提があって結論がある。
まずはその前提が正しいかを疑う、前提から結論へ至る論理プロセスを疑う。その疑いの姿勢によって、本当にそのロジックが正しいと言えるかを判定できて、その主張を体得できる。疑いが晴れないのであれば、その批判的な意見、思考も自分の血肉ともなる。大学院における研究において、他者(もちろん自分自身もだが)の研究発表などを聞いていて、深く理解できるか?筋のいい疑問が浮かぶか?はこのプロセスを正しく追えているかが重要となると気づいた。
さらに、それはそのような相手の主張やディスカッションに限らず、あらゆる学習活動においても通底すると気付いた。思考プロセスをいかに真剣に辿れるか?そのプロセスにおいてひっかかったこと、分からないことは調べたり、質問することで腹落ちさせる。そんな単純なようで難しいことが必要である。
難しい本をどうやったら読み解けるかのヒントを知りたいなぁ、というライトな気持ちで手に取った本が意外にも、論理や学習の土台とは何かを気付かせてくれた。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ読むきっかけとなったのは2つ。凪良ゆうの『流浪の月』を読んで、人が人を罰することは本当にできるのか?という疑問。2つ目はSNS上における“私刑”の過剰化から1の疑問が、さらに言えば事件に関係のない第三者が罰することに疑問を覚えたから。
罰することは生のフレームワークに組み込まれていて、それを否定することは抜本的にできないという結論。
特に『道徳的要求/道徳的期待が裏切られると、たとえ他人であったとしても、対“人”に対して義憤というネガティブな感情が生まれる』という部分が疑問を考える上で役に立った。
人が人を罰することから逃れられないの同時に、罰すること自体への責任も持たなければいけないことが分かった。
...では罰することへの責任はどう取るのか?第三者の意見・反論が刑罰へ影響することはあってもいいのか?良いとしたら度合いは?などなど...読むことで疑問が増えたし何よりとっても難しかったけど、思考が整理できて少しスッキリした! -
Posted by ブクログ
人は自由意志を持ち、過ちを犯した者は咎められ、罰される。それが共同体における基本ルールと考えられていた。
一方で、自由の存在を否定し、刑罰は無意味だとする神経学者や社会倫理学者の立場もある。
はたして、人間とは自由な選択主体なのか。人が人を罰する事に意味はあるのか。
人を「責める事」及び「罰する事」に主題を置いた自由と責任に関する哲学書です。
刑罰の意味からはじまり、人間の自由意志否定論、責任虚構論などを紹介・解説したうえで、その矛盾や盲点を解説するという内容になっています。
「責める事」「罰する事」は人間の生のフレームワークに含まれているという結論を聞くと、優しく穏やかな世界というものが訪れる事は永遠になさそうだと、作者さんが言うように地球の行く末についてペシミスティックになりそう。
けれど、それを法なり理性なりで抑制し、是正し、許すことが出来るのもまた人間かなあ。
内容はちょっと難しい……んですが、どの章でも、まず1節目で前章までの要約や議論の要点、その章の流れや結論を先に説明してから本題に入るので、主題が分かりやすくて助かりました。
ちなみに、作中の「応報」の説明ににシーラッハの『犯罪』『罪悪』の中の事件が例として取り上げられているので、あわせて読むのもお勧めです。 -
Posted by ブクログ
難解な本を読むことに「必勝法」はないが、「正攻法」はある、というスタンスのもと、読解する上の指針になる着眼点を紹介している本である。文章全体が何を伝えようとしているのか。それを知るために一つ一つの章や節、文といった部分部分と全体を繰り返し読み直す(「解釈学的循環」をする)こと。そして、文章全体が伝えたいことを捉えて、その主張を表すキーセンテンスを見つけること。この二つを基本的な原理として、そのための具体的な方針が説明される構成になっている。
読解の方法について一番印象に残っていているのは、第六章「その文章のどこが重要なのか?」という部分だ。
有名な本を読んでも、何がすごいのかが分からない。文章の意味は分かるけど、いまいちただ読んだ、というだけな感じがする。こうしたことは、しばしば経験したことがあるけれど、この感覚をとても分かりやすく説明してくれていた。自分は、文章の意味が分かっただけで、その時代、その人が「どうしてわざわざこんなことを言うのか」が理解できてなかったのだと思う。文章を読むうえで、その文章で言いたいことを理解するだけでなくて、その言いたいことを言うのはなぜなのか、という文脈を汲み取ることは大切だと思う。
具体例を挙げることで理解が深まる、という話も面白かった。具体例を考える方法を教えるのではなく、具体例を考えていくうえで、その良し悪しを自分で判断する基準を説明しているところにも、「必勝法」でなく、「正攻法」を教えるスタンスが貫かれている。
絶対に上手くいく方法ではなく、今自分がやっていることが、正しい方向に進んでいるのかどうかをチェックするための着眼点を説明する、という発想は、大切だと思った。
-
Posted by ブクログ
難しい本を読むための正攻法が書かれている。
まず、全体と部分を循環してキーセンスを見つけるのが原理となる。
次に、前提と結論を分けて話の流れを掴む、であったり、抽象的な主張には具体例を考えて理解を深めるなど、方法論が紹介されている(前者は例えば批判するときは前提を批判するのか、前庭から結論の過程を批判するのかといった反論にも役立つ。後者は本の内容を自分の中に取り入れる作業となる)。
最後は、上記をブラッシュアップさせるために、読書会を薦めている。
哲学中心だが、他の本の文章を例題に、正攻法や、方法論が述べられており、理解しやすい内容になっている。 -
Posted by ブクログ
文系ですが、学生時代は現代文が苦手でした。
本書では読解の技法として「具体例をあげる」ことが指摘されていた。
多分当時の自分は具体例にたどり着くほど経験が足りていなかったんだと、今は思う。
振り返ると昔の自分は読解の「必勝法」を求めて失敗していたんじゃなかったかと。
代ゼミの酒井先生や出口さんの参考書を求めては難解な文章を理解できず、挫折をしていたものだった。
この本を読んで、難しい本の読解とは文章に人生まるごとでぶつかる営為ではないかと思った。
だからこそ読書会を催す必然性もあるのだろう。
外堀を埋めるばかりだが、本書の一番の肝は恐らく「部分の積み重ねで全体を理解する」と同時に「全体が部分の意味を定める」という解釈学的循環=グルグル回りにうまく入り込むと云うことだ。
これを誤ると、2003年イラク派兵時の憲法前文の「誤読」(わざとかもしれないが)のような事態がおきてしまうのかなあと思った。
併せて読みたい
「サブカルチャー反戦論」 大塚英志 -
Posted by ブクログ
0 どんな本?
部分と全体を行ったり来たりしながら齟齬を最小
限に抑える読み方を正攻法として提示する本。解釈
学的循環がキーコンセプト。必勝法では無く正攻法
と言う地道にして確実に前に進む読書法を教えてく
れる1冊。
1 何で読んだの?
(1) 日々の読書力を上げたくて。
(2) 具体的な読書の方法が知りたい。
(3) 読書の仕方が変わった状態になりたい。
2 構 成
全9章263頁
必勝法では無く正攻法と言う本のコンセプトから始
まり書籍や読書会への感謝で終わる。とてもわかり
易い構成で各章節毎に哲学者の著作を引用して説明
して行く。とても分かり易い。
3 著者の問題提起
書籍や論文の理解に必勝法はないあるのは正攻法
だ。
4 命題に至った理由
書くと言う行為は自由であるので、自由に書かれ
たものを確実に理解する方法など無いと言う事実。
5 著者の解
部分と全体を往復して解釈学的循環を進めること
が必勝法では無いが正攻法である。
6 重要な語句・文
(1) 読む事とはいったん疑った上で自分のわかる形
にまとめる事。
(2) 前提と結論に腑分けする。
(3) どの段階か意識する。(話の流れを抑えた上
で)
(4) 重要な箇所を指摘することが重要
(5) 主張を自分ごとにする。
(6) バッチリな具体例を見つける。
(7) マルティン・ブバー「汝と我」
(8) キーセンテンス
(9) 解釈学的循環
7 感 想
読んでいて次の読書に活かしたい気持ちになっ
た。部分と全体を循環したい。刺さったのは読む事
とは〜。ただ読めば理解できるわけじゃ無いらしい。
深く知りたい事は具体例の見つけ方。人に勧めるな
ら解釈学的循環。循環の図があって分かり易いが無
くても良いと感じた。タイトルは「読書の正攻法」
がピッタリだと感じた。
気になっていた哲学者のマルティンバッチリブバ
ーの引用も有ったし、とても有意義な一冊だったけ
ど、読書会の尺が長いので星4つになります。
8 todo
(1) 次の一冊から循環読書
ア アウトラインを書く。
イ キーセンテンスを書く。
ウ 重要な箇所を書き出す。
エ 主張を自分毎にする。
オ どの段階かアウトラインと照らし合わせる。
カ 前提と結論に腑分けする。
(2) マルティンブバー「汝と我」の購入
9 問 い
理解とは?
10 答 え
具体と抽象の往復の果て(達する事は無いか、達
するが変化を続けるもの)
-
Posted by ブクログ
難しい本を読むために意識、実践するべきことを哲学者の文章を実際に読んでみることを通じて説明していく内容です。難しい内容の本を読むことが苦手な人は、論理的に読むために必要なことを構築でき、そうでない人にとっても改めて自分の中で理論を整理し、明確にする手助けになるのではないでしょうか。
タイトルに対するネタバレになりますが、筆者がこの本で何度も述べているように、難しい本を読むために「正攻法」はあれども「必勝法」はありません。人によって持っている背景知識や読む文章との相性も違います。文章の内容も書き手によって様々であるため、万人が必ず正しく読むことができる方法などは当然ありません。しかし、難しい文章に対してはやみくもに読むよりは、ある程度の型みたいなものが存在することを意識して読むことによって、理解を促す手助けになるというのはまさしくその通りだと思います。
方法的な部分に関してはネタバレになるのでここでは書きませんが、この本の終わりで筆者はこのように述べています。
「書き手が自分の言いたいことが最もよく伝わるよう臨機応変に工夫する以上、読み手の側も臨機応変に対応する以外に道はないのです。」(p.262)
他者が練りに練った深い内容を読むため、私たちは主体的に試行錯誤しながら読まなければ理解は促されません。お手軽に本を読むという方法は無いのですから、すぐに理解できなくても挫けずに時間をかけて読むことが一番の正しい道なのだと思います。 -
Posted by ブクログ
難しい本を読む「必勝法」はないが押さえるべき「正攻法」がある、という、変な煽りのない素直な序文に好印象。
読書好きな人は無意識にできている読解法が丁寧に説明されており、わかりやすい言語化にスッキリした。
キーセンテンスを掴むとか、相手の意見を理解するのは賛同するのとは違う、みたいなことって、Twitterでのすれ違い論争を見ていると意外と皆できていないよね、というポイントだと思う。
「難しい本」のサンプルとして日本の哲学書を使っているのも面白かった。一部を紹介されて続きが気になる、というのは国語の教科書での経験を思い出す。懐かしい。
読書法を紹介した後に読書会のススメという展開は物珍しかったが、こちらも奇をてらうことなく、素直で実直なノウハウ説明で良かった。