2021年10月になって急激にコロナ感染者数が減少してきて、普通の生活になりつつあります。やはりワクチンを2回接種した人が全国民の7割以上となったからでしょうか。
この本にはワクチンがなぜ作られてきたのかの歴史、今回のワクチンがなぜ短期間で開発できたのか、さらに将来のワクチンはどうなっていくのかつ
...続きを読むいてまで解説されています。
今回のワクチンは治験期間が短期間で将来に身体の変化を及ぼしかねない等の情報が流れていますが、この本を読んで少し安心できた感じがしました。また、日本ではなぜワクチンが義務化できないのかについての解説もあり参考になりました。
以下は気になったポイントです。
・ウィルスや細菌を「生きた」まま摂取する生ワクチンは、その病気にかかった時のような症状が出ることがあるので、生きたままではなく「殺して」接種すれば良いという考えから生まれたのが「不活化ワクチン」、生ワクチンによる感染問題が生じないのが不活化ワクチンの良い点である。実際に感染が起こるわけではないので、免疫の反応が若干弱いという欠点があるので、免疫への刺激を強くするために「アジュバント」という補助剤が加えられている。激しい感染が起きていると体に勘違いさせるような働きをする、自然感染や生ワクチンを接種した場合に比べて、抗体価が上りにくいし、一旦上がった抗体価も容易に下がってしまうので追加接種が必要となる、インフルエンザワクチンのように(p30)
・コンポーネントワクチンは、病原体の一部だけをワクチンとして使うもの、免疫系の反応は弱いが副反応は比較的怒りにくいのが特徴である(p32)
・病気の治療薬には「副作用」が出ることがある、病気を治したり症状を抑えたりするのが主作用で、本来の目的以外の作用が副作用である。副作用と言わず「副反応」というのは、免疫をつけて感染を予防したり、重症化を防いだりするのがワクチン接種による「主反応」であり、そうした本来の目的以外の反応を「副反応」と読んでいる、ワクチンを投与した後に生じた好ましくない症状は「有害事象」と呼ぶ(p34)
・ワクチン開発の歴史は副反応克服の歴史であった、世界初の天然痘ワクチン(1976)に始まって、コレラ、炭疽菌、狂犬病、ペスト(1897)、百日咳、結核(1927)、黄熱病、発疹チフス、インフルエンザ(1945)、ポリオ、日本脳炎(1954)、麻疹、風疹(1970)、水痘(1974)、ロタウィルス(2006)である(p37)
・ワクチンの成分は、主成分(抗原)、緩衝材(PH保つ)、安定剤(抗原の損傷を防ぐ:グルタミン酸ナトリウムなど)、不活化剤(病原体を不活化:ホルマリン)、抗菌薬(不要な細菌などを防ぐ)、保存剤(長持ちさせる)である(p41)
・一度かかると二度かからない感染症があるという現象から、人類は感染症を克服するための2つの方法を考え出した、1)ワクチンによって感染症を予防する、2)感染症を治療するための血清療法である、北里柴三郎は抗体による免疫反応を発見(1890)した、破傷風菌が病気を起こすのは、感染した菌が毒素を出すためだが、その毒素を投与されても生き残った動物は、毒素に抵抗性を持つようになる、抵抗性を発揮する因子が血清中に存在することを発見した、この因子は「抗体」である。毒素を動物に投与して抗体を作らせ、動物の血液から血清を取り出し、それを患者に投与するという治療法である(p53)
・日本では1992年に種痘後脳炎の訴訟で国が敗訴、1993年には副反応の影響でMMRワクチンが接種中止となった、少なくとも800人に一人が脳炎を起こして死亡者も出てしまった、これがきっかけとなり、1994年に予防接種法が改正されて「集団接種・義務接種」から「個別接種・努力義務」へと大きく舵が切られた。こうして日本の予防接種は他国から大きな遅れをとることになった(p58)
・4種混合ワクチンは、ジフテリア(致死率:5-10%)・百日咳(10%)・破傷風(5-10%)・ポリオ(10-20%)に対応したワクチンである、生後3ヶ月から1歳までに4回接種する。(p73)
・1962-1979年生まれの男性は、風疹ワクチンの予防接種・集団接種の対象外であった、1962年までは自然感染多数であったので、接種はなかった。(p77)
・最近になって、水痘ワクチンは帯状疱疹の発症を抑えるのにも効果があることがわかってきたので、50歳以上の人も接種を受けることができる(p78)
・人に感染するコロナウィルスは6種類知られていて、今回7番目として新型コロナウィルス(SARS -CoV-2)が加わった(p105)
・今回のワクチン開発では、1)ウィルスベクターワクチン(害のないウィルスを運び屋=ベクターとして利用して、DNAを人の細胞内まで運んで、そこでタンパク質を作らせる)、2)拡酸ワクチン(DNAやRNAを直接送り込む)がある、特に早く開発できたのが、mRNAワクチン(ファイザー、モデルナ)と、ウィルスベクターワクチン(アストラゼネカ)であった(p108)
・新型コロナウィルスが認められたのは、2020年1月9日であるが、その翌日にはウィルスのゲノムが解読されて公表された、そこからワクチン開発のレースがスタートした、モデルナは2月7日には製造、同24日には第一相臨床試験を開始、ファイザーも4月22日に臨床試験を開始した(p110)
・ウィルスベクターワクチンを打った人は、運び屋に対する抗体ができてしまうので、ブースター接種はmRNAワクチンなどを接種することになりそうである(p114)
・遺伝情報を載せたmRNAは非常に不安定で壊れやすいので、そのまま投与できない、そこで脂質でカプセルのように包むことにした、こうして人の細胞まで届けられるようにした、これはアームストロング船長が月面に足跡を残したことと同じような快挙である、この開発によって将来の医薬品開発に大きな影響を及ぼすことになる(p120)
・インフルエンザのような呼吸器感染症では、ウィルスは鼻や喉の粘膜に付着することで感染し、全身をめぐる血流にはのらないまま、粘膜の細胞などで増殖してしまう。(p136)その対策として、点鼻薬で鼻の粘膜にワクチンを接種する「経鼻ワクチン」の研究が進められている(p136)
・現在の最先端のワクチン(mRNA)の先をいくのが、レプリコンワクチンである、自ら増殖するmRNAを使ったワクチンで、レプリコンワクチンの自ら増殖するmRNAが人の細胞に入ると、RNAを増やすタンパク質をまず作り、mRNAがどんどん増殖する(p138)
2021年11月23日作成