メアリロビネットコワルのレビュー一覧
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改変歴史を描くSF「レディ・アストロノート」第三弾。月面で連続する危機的状況の中、過激派の犯人を探すが……。
ニコール・ウォーギンは50歳を超えた女性だが、魅力ある主人公だ。これは前作との類似点、つまり閉鎖空間での危機的状況、夫婦や仲間との絆、心理的な弱点との戦い、といった複合的な要素によって、ニコールの心理が緻密に描かれているからだろうか。
すべての人を疑わなければならない状況の中で、前作主人公エルマと最も仲の良かったメンバーたちが友愛を深め、次第に団結していく姿が美しい。月面で繰り広げられるサスペンス・ミステリーは、中盤やや冗長にも思える長さではあるものの、犯人がわからなければ全員が危 -
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『宇宙へ』『火星へ』に続く改変歴史SF第三弾。火星探検隊が道半ばに達するころ、ニコールが月へ行くことに。
前作のヨーク夫妻から今度はウォーギン夫妻へと主人公を変えて、地球と月での物語が展開。すでに月面での経験のある宇宙飛行士であり、カンザス州知事夫人でもあるニコール・ウォーギンが、地球で謎の事故が頻発するなか、月へ向かい、過激派の工作員を探すことに。
月面基地という閉ざされた世界の中で、宇宙船の事故、停電から感染症など、次々と発生する危機。犯人は仲間たちの中にいる?SFとしての緻密なディティールはそのままに、今作はミステリー調で進んでいく。早く犯人を見つけなければ月面では皆が生き残れないた -
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ついに旅立った火星探検隊。クルー間で孤立するエルマは、火災や感染症など次々に発生する困難に立ち向かうが……。
果たして無事に火星にたどり着けるのか?が全体の筋のはずだが、宇宙に出て新たな意識に覚醒……することもなく、結局これ人権がテーマなの?と思うほど、宇宙飛行士どうしでの醜い争いが発生する。地上から引きずってきた性差別と人種差別が火種である。人間関係の軋轢に加えて、宇宙飛行上の物理的トラブルも多発するなか、ついに最悪の事態が……。
EVA(宇宙船外活動)の緊張感は宇宙飛行ものならでは。次々と襲い来る宇宙でのトラブルはドラマを盛り上げる。人的トラブルも多くは結論が出ない人権問題で、エルマの -
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ヒューゴー賞/ネビュラ賞/ローカス賞。宇宙飛行士を目指す女性科学者・パイロットの姿を描いた歴史改変SF。
ハードSFの難解さはなく、サイエンス部分があまり理解できなくても人間ドラマとして楽しめる本作。
後半に入り、自らの弱点との戦いや宿敵パーカーとの対立が深化し、宇宙飛行士への思いがさらに強まっていく。
様々な困難のなかで、夫婦の絆やパイロット仲間たちとの関係が深まっていく姿は感動的だ。
ロケットの打ち上げや軍用ジェット機発進の描写は迫力があり、これは本物の宇宙飛行士やパイロットの助力があるという。また本作では、計算者をフィーチャーするため、IBM機の性能が低く見積もられているのも面白いと -
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その時、エルマとナサニエルの夫婦は、忙しい仕事から逃れて待望の休暇を取って、ナサニエルが父親から相続した山荘にいた。1953年3月3日、午前9時53分。外界がまばゆい光に包まれたのだった。とっさに二人は、ワシントンD.C.に核爆発があったと考えた。しかしラジオからはそのまま音楽が流れ続けている。ということは、電磁インパルスが発生していないということだ。核爆発じゃない。それならなんだろうか。音はまだ届かない。あれほど眩かったのに。ということはとてつもない大きさの爆発だということだ。流星体が落下したのかも…。元WASP(Women's Airforce Service Pilots)で物
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ソ連よりも先に米国が人工衛星を(複数)上げている世界での1952年、巨大隕石が突如、ワシントンD.C.近海に落下し、衝撃波と津波によりアメリカ東海岸は壊滅。
そしてエルマ博士の計算により、隕石で加速された温暖化の影響で(一時的な隕石の冬のあと)温暖化が飛躍的に加速し、人類が地球上で生存できなくなることが判明し、1950年代前半から本気で人類が宇宙開発にいそしむ(ただし、隕石の冬の影響でソビエトはその間に崩壊しているw)というロシア抜きの宇宙開発モノ。と言うか、これこそ、誤訳でなく正しい意味での「女性計算者達の宇宙開発」なのだが、ここまで(奇跡的に?)順調に来ていたロケットの打ち上げが失敗したと -
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最高に面白かった。
SFを読んでいて2度も涙したのは初めてかもしれない。
本作はメアリ・ロビネット・コワル女史による歴史改変SFエンターテインメント。前作の『宇宙へ』の続編である。
1950年代にアメリカ東海岸に隕石が落下し、急激に地球環境が悪化、地球を捨て宇宙へ飛び出さざるを得なくなった状況を描いた前作『宇宙へ』から数年後。
月に探査機地を作った人類はいよいよ新たな居住地として火星を目指すこととなる。
本シリーズの主人公『レディ・アストロノーツ』ことエルマ・ヨーク博士が前作では宇宙飛行士を目指していたが、本作では火星探査チームの一人として選ばれ、火星を目指すこととなる。火星探査チームの -
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なるほど~。こういうお話だったのですね。
隕石の墜落から始まるので、パニック小説系のお話かと思ったら、歴史改変ものの女性宇宙飛行士誕生物語でした。
この『宇宙へ』は著者の『レディ・アストロノーツ』の前日譚ということで、これからこのシリーズがどんどん発刊されていくのでしょ。
本書の内容としては非常に興味深かったですね。
1950年代、実際のアポロ計画が終了せずに、もし人間を宇宙へ送る必然性があった場合、宇宙開発はどのように進んでいっただろうかということを史実とできるだけ合わせながらリアルに描いています。
黒人差別や女性蔑視が当たり前だった時代。
このような時代にもし女性たちが真剣に宇宙飛行 -
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歴史改変もののSF。
もし1950年代に巨大隕石が地球に落下し、アメリカの東海岸が全滅したら・・・というお話。
1950年代というと、米ソが宇宙競争をしている状況であるが、本書ではまだアポロ計画にのっとった月への到達がなさ得れていないという状況である。
本書では、元女性パイロットの天才数学者の女性が主人公であり、コンピューターが未だ発達していない状況で、「計算者」として、それこそ「人間コンピューター」として働く物語である。
話はSFであるが、1950年代当時のアメリカをリアルに映し出し、黒人差別、女性蔑視等が激しい時代の状況を克明に反映させている。
巨大隕石による気候変動のため、地球か -
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シンプルで素朴なSFだからこそ面白くて、考えさせる事も多い。
隕石の衝突と人類滅亡という、オールドファッションな題材を、1950年代というオールドファッションドな舞台で語られる。
科学は未だ素朴であって、大量生産・大量消費というway of life の時代。
科学はまだ手の届く範囲にあって、最新技術がIBM(パンチカード式計算機)だった時代だ。
科学者は皆、暗算か筆算で計算するのが主だった。
軌道計算も手計算がメインで計算機はサブに過ぎない。
思えば実際の歴史でもよくこんな時代に宇宙開発なんてものに手を出したなぁという驚愕と共に、科学と科学者たちの苦労、アイデアがいまの時代につな -
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ネタバレソ連が1950年代に消滅されている歴史改変の世界でも、人種差別や女性差別は変わっていないという設定。米国主導の宇宙計画が継続して進んだ世界の1950~60年代の黎明期の物語。女性差別がひどい宇宙パイロットの門に切り込んでいく主人公始め女性たちの力強い物語だった。重要な計算業務に女性が果たした役割は変わらないし、そこからの成り上がり物語は楽しいし、科学知識も最低限に抑えられてるし、あっという間に読める。女性差別のひどさが語られるかというと意外にそうでもないから、嫌な思いになることも少ない。
主人公はパニック障害による投薬治療が続いており、その弱さは少し気になったけど、そのあたりは緩やかなゴールが -
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『宇宙〈そら〉へ』の続編。火星有人ミッションに選ばれた宇宙飛行士のエルマは、家族や仲間との間で煩悶する。
史実では1969年にアポロ11号が有人月面着陸に成功したのち、アポロ17号で計画は終了し、以来50年を経てもいまだに火星まで宇宙飛行士が行くという話は聞かない。その後のスペースシャトル計画を経て、2022年始動のアルテミス計画でようやく再び月には行くことになったらしいが、火星への夢はまだ遠い。詳しくは知らないが、宇宙開発があまり進んでいるように見えないのは、お金がかかりすぎるのが大きいのだろうか?
本作では1962年に第一次火星探検隊が火星へ旅立つという設定になっており、もし早い時期から