メアリロビネットコワルのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
『宇宙〈そら〉へ』の続編。火星有人ミッションに選ばれた宇宙飛行士のエルマは、家族や仲間との間で煩悶する。
史実では1969年にアポロ11号が有人月面着陸に成功したのち、アポロ17号で計画は終了し、以来50年を経てもいまだに火星まで宇宙飛行士が行くという話は聞かない。その後のスペースシャトル計画を経て、2022年始動のアルテミス計画でようやく再び月には行くことになったらしいが、火星への夢はまだ遠い。詳しくは知らないが、宇宙開発があまり進んでいるように見えないのは、お金がかかりすぎるのが大きいのだろうか?
本作では1962年に第一次火星探検隊が火星へ旅立つという設定になっており、もし早い時期から宇宙開発にもっと多くのリソースを割いていたらどうなっていたか、一つの思考実験として非常に興味深い歴史改変SFだと思う。
エルマは前作で獲得した女性宇宙飛行士としての華々しいポジションを演じる一方、依然として女性蔑視、黒人の人権問題は大きなファクターをしめていて、パーカーやデビエルといった象徴的なライバルとの軋轢がドラマを盛り上げる。
さらに3年は会えなくなる家族との関係やキャリアプランの問題で深く悩みつつも、あきらめられない宇宙飛行への想いが彼女を突き動かす。
このあたりの女性らしい心の流れが鮮明に描かれていることと、宇宙飛行にまつわるディティールが本作の魅力。また、結婚して12年も経っているのにラブラブすぎるヨーク夫妻の絆の深まりを追っていくのも読みどころのひとつだ。火星への旅で何が起こるか、下巻が楽しみ。 -
Posted by ブクログ
1952年、巨大隕石の落下により絶滅の危機が迫る人類は、宇宙開発に希望をつなげるが……。歴史改変SF。
落下してくるものを阻止しようというアルマゲドンやディープ・インパクトとは逆で、最初に隕石が落ちてしまってからの顛末。1952年の設定で、実在の人物も登場するが、歴史は現実とは大きく異なるものとなっていく。
隕石落下の影響で、人類の存続が危ぶまれるのだが……。
あれ?序盤のパニック的な危機感はどこへやら。宇宙開発のさなかで、女性の社会進出問題や黒人とかユダヤ人の人権問題、人間関係のあれこれや自身の弱点との戦いで物語は進んでいく。なんだか、肩すかしをくらったような感じを抱きながらも、主人公の心理描写がうまく、複合的な問題が逆に「宇宙飛行士」という目標に収束していく展開に、感情移入してしまう魅力がある。才知も欠点もある女性が奮闘する物語にどこか共感を覚えつつ、多様な要素を含むディティールに感嘆。 -
Posted by ブクログ
アメリカ主要SF3賞受賞作。1950年代のアメリカが舞台。恐竜を絶滅させたのと似た規模の隕石衝突があり、近い将来居住不可能になる地球から脱出すべく宇宙開発を進めなくてはならないという歴史のifを考えるSF。主要なテーマは宇宙開発そのものよりも、女性差別や人種差別、そして宇宙飛行士を目指す女性主人公がパニック障害の性質も持っているという形で、差別や多様性が軸となっており非常に現代的。「地球の限界」を社会や私たちが一律に一丸となっては受け止めないのではという点は現代への風刺とも取れるし、緊迫した場面の描写もうまく、コンピュータの発展前なので計算者などの改変歴史ならではの職業による味付けが程良いことや、差別という理不尽に向き合う精神的なハードさを主人公とパートナーの関係性や会話が中和してくれるので楽しく読み進められる。エンタメとして3賞受賞も納得の仕上がり。続編『火星へ』も楽しみ。
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Posted by ブクログ
ネタバレ巨大隕石が落下したことによって温暖化が起こり、地球は人類が住めない星になる。
そうなる前に人類は宇宙に移住先を探し、コロニーの建設をしなければいけない。
という背景は、この下巻では随分薄まっていて、ひたすら主人公のエルマが宇宙飛行士を目指す話に終始してしまった。
それというのも、解説によればこれは、エルマを主人公にしたシリーズ物というか、年代記なのだ。
翻訳された作品が少ないのが難だけど、既にエルマが火星に行った作品もあるらしい。
その中でこの作品は、宇宙飛行士を目指す女性として、能力を訓練しつつ、世間の偏見と闘うところに特化したものとなっている。
まず、女性には閉じられていた宇宙飛行士という狭き門。
どんなに飛行機のパイロットとして経験を積んでいても、飛行機とロケットは別物としてその経験は考慮されない。(だとしたら逆に、男性宇宙飛行士は何を考慮されて選ばれたのだろう?Y染色体一択?)
宇宙飛行士の訓練生に選ばれたときも、ロケット開発の広告塔としての役割しか与えられず、訓練はおざなり、でもスタイリストは付く、という状況。
この段階で、黒人やアジア系の女性は軒並み落とされる。
その反面基準に満たなくてもコネがあれば合格できる。(ただし白人)
外的要因と闘うのは当たり前として、エルマには幼いころの経験により、人前に立つというような極度の緊張を強いられると、呼吸困難や嘔吐などの症状が出るという問題を抱えている。
「病気ではないので、病院にかかる必要はない」と頑なに本人が拒むので、とりあえず精神安定剤を服用しながら症状を抑えているが…。
1950年代という時代はそうだったのだろうとはわかるけど、そのような状態で宇宙飛行士を目指すのは余りに危険。
些細な違和が大きな事故を起こす可能性の大きな宇宙飛行で、いくら宇宙飛行士になりたいからって、ちょっと世間に対してフェアじゃないと思う。
エルマはユダヤ人で、その設定の意味が最後にわかる。
ユダヤ人蔑視の発言を受けるエルマ。
差別はここにもあったのだ。
エルマが亡き母に言われ続けた「他人にどう見えるかを考えて行動しなさい」という言葉も、もしかしたらユダヤ的なバックボーンがあるのかもしれない。日本人的でもあるけれど。
母親はもちろんエルマのためを思って言った言葉だけれど、呪いの言葉のようにエルマの言動を封じ込めているのが見ていて辛い。
才能ある女性なのに目立たないように息を殺して生きてきたエルマが、どうしても叶えたかった夢――宇宙飛行士になること。
1950年当時、電子計算機がまだデカいだけのポンコツだったころ、宇宙飛行に関する計算をやってのけたのは「計算機(コンピュータ」と呼ばれた女性たちだった。
この辺は映画『ドリーム』に詳しい。 -
Posted by ブクログ
ネタバレそもそもこの本が目に留まったのはタイトル『宇宙(そら)へ』
竹宮惠子の絵が、ダ・カーポの歌声が、瞬時にして脳内で再生されたわけよ。
『地球(テラ)へ…』
よく考えたら、方向逆だけどね。
巨大隕石が地球に落下。
地球に到達するまで気づけなかったの?
ミサイルか何かで隕石のルートを変更させるとか、粉々にするとか、できなかったの?
って思ったのですが、舞台は1950年代のアメリカなのでした。
つまりアポロ計画の前なのです。
IBM(つまりコンピュータ)がないわけではないのですが、巨大すぎるしそもそも使える人がほとんどいない状況で、難しい計算は、人が計算尺を使って計算していた時代です。
でも、隕石落下の影響で、地球は数年寒波に覆われたあと、人類が生きていけない程の温暖化に見舞われることが計算で明らかになり、人類は宇宙を目指すことになる。
ここで、1950年代が効いてくる。
この時代のアメリカは、人種差別、男女差別がまかり通るというか、一体何の問題が?ってな時代だ。
避難民が運ばれてくる飛行機から次々に降りてくるのは白人ばかり。
作品中には出てこなかったが、津波が起こったということは、海沿い川沿いの低湿地帯にしか居住を認められていなかった南部の黒人たちは、真っ先に流されていっただろう。
主人公は元従軍パイロットであるにもかかわらず、宇宙への移住に先立つロケットに乗り込むことができない。
女性が宇宙飛行士?ダメ、ダメ。
女は非力だし、知能も男より低いし、何よりヒステリーだから。
という、男性側のヒステリックな論調により。
主人公はロケットの軌道を計算するかたわら、女性にもチャンスを!と声をあげるのだけど、彼女にも問題がある。
幼いころから優秀だった彼女は、飛び級をするたびに男性たちから嫌がらせを受けたり無視されたり心無い言葉を浴びせられたりし続けた。
だから、人前に立つと震えが来て、吐き気がする。
精神科の受診を進められるが、「私は病気ではない!」と頑なに受診を拒み続けるのもまた、現在の読者の目から見たら病的である。
でも、そういう時代だったんだよね。
航空ショーを見た少女たちは、主人公・エルマに憧れ、女性でもパイロットに、宇宙飛行士に、博士になれるのだと夢を語る。
そんな少女たちの後押しもあって、エルマたちは女性も宇宙飛行士にさせろと運動する。
「だって、移住した先の宇宙で子どもを産むのは女なのよ」
ところが、宇宙なんぞに関わるまえに被災地の復興が大事じゃないかという声も高まりつつあり、不穏な空気のまま下巻に続く。 -
Posted by ブクログ
帯に色々章を取ったと書かれていたので購入。面白かった!隕石ってミーティアライトっていうのか~ 知らなかったな。
1950年代(だったかな)に隕石が落ちたという設定も面白い。第二次世界大戦が終わって、アポロが月に降りる前辺りのNASAが盛り上がっていた頃に、人類が宇宙に進出する必要性がある、と持ってくるのは上手いなぁと思いました。
今でこそ男女対等などと言われていますが(今も言われているということは実際対等ではないという事の証左だと思いますけど)50年代のアメリカでも女性の扱いというのはこんな感じだったのかな~と思いながら読みました。日本は今でも医大の入試に男子学生にゲタ履かせるなんてやってるんだからなぁ…昔はもっと悲惨な状況だったんだろうな。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ19世紀初頭の英国。音楽や絵画と並んで魔術は女性のたしなみとして日常を幻で飾っている。魔術を使う時の表現が魅力的。だが、予想以上にロマンティックな展開だった。
結婚せずに地道に生きようと決めているジェーンは芸術に絡んだ豊かな愛情を受け入れるが結局は古典的な幸せの形なのね、と思った。
舞台設定の時代からいけば当然なのだけれど、女ってばかよね〜とか男ってどうしようもないよね〜とか、読んでいてしんどい。
ジェーンと家族の関係性も辛い。
魔術師の再登場は予想通りの形。どうせなら魔術でいかつく見せてたけど実は絶世の美青年くらいやっても良かったのでは。