郡司芽久のレビュー一覧
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冒頭から身が引き締まる。キリンの解剖が最優先事項。連絡が入ったら、なにをおいても、すぐに駆けつけなければならない。しかも解剖はすぐには終わらない。1週間かかることもある。頭も使うが、それ以上に体力と気力の勝負だ。
ふつうの本なら、キリンがどういう生き物かから入るはずなのに、この本はいきなり解剖の話から(解剖刀、メス、ピンセットの図まである)。読む側は、冒頭の緊張を保ったまま、本文に引き込まれてゆく。気が付くと、筆者の立場に身をおいて、東大の1年生になっている。遠藤先生とのめぐりあいも、亡くなったキリンたちとのめぐりあいも、そして動物園や博物館の人びと、遺体を移送する人々とのめぐりあいにも参加し -
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「キリンを研究したい」と思いついたものの、それがどんな学問分野を専攻すればできるのかすら分からなかった大学1年生の著者が、解剖学と出会う。いざキリンを研究しようと思ったものの、研究テーマが見つからなかった著者が、様々な人との出会い、研究テーマを見つけ、それを深めて成長していく様がドキュメンタリーのように読める。
ほんの一例ではあるが、なるほど、理系の「研究者」って、こんなことをしているのか、と面白く読んだ。
ページの下段には専門用語だけでなく、「弄ぶ」「うなじ」「礎」「苦渋の決断」のように、小中学生程度がつまずきそうな語句の意味も解説してあり、親切。また、「動物にかかわる仕事」の対談も挟まれて -
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キリンの研究者が、どうやって研究を進めてきたのか。キリンの何を研究しようかを決め、仮説を立てて証明していく過程が書かれている。サクセスストーリーのようだけど、裏にはたくさんの苦労、失敗、進む道が見えない苦悩などがあったのだろうと推測する。学問の楽しさもまた伝わってきて、そのルーツが母親なのかもというのも素敵な話。お母様は専業主婦で研究者ではないが、趣味を極め職業にしていった方。
キリンから学んだことに、『「大切なのは手段ではなく目的だよ」と言われている気がしてくる。』というのも面白い。キリンが生き延びるという目的のために、体が変化した。手持ちのカードをうまく使った。『自分の力ではどうしても変え -
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キリンの解剖記というだけで興味がそそられる。一番初めの解剖では教科書に記載された筋肉を探すものの、何一つ見つけられず焦っていた著者。二度目の解剖を一緒に行った人物から、名称は分からなくてもいいから目の前にある筋肉を詳細にスケッチすればいい、とアドバイスをもらい開眼するシーンは、読み手のこちらも思わず膝を打った。本書を読んでキリンに少し詳しくなり、キリンと剥製を好きになった。
以下、本書よりお気に入りの箇所を抜粋。
「筋肉や骨の名前は、理解するためにあるのではない。目の前にあるものを理解した後、誰かに説明する際に使う「道具」である。そして解剖の目的は、名前を特定することではない。生き物の体の -
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生き物を解剖することで解るのは“違い”。
構造の違い、進化の過程で変化した違い。見た目も違う。
だが、同じ哺乳類である共通点も存在する。
「からだ」を題材にした動物の解剖学エッセイ。
・はじめに――解剖からひも解く生き物の進化
第1章 肺 第2章 手足 第3章 首 第4章 皮膚 第5章 角
第6章 消化器官 第7章 心臓 第8章 腎臓 第9章 呼吸器
第10章 進化とは妥協点を探ること
・あとがき――自分の体を知ることは
column、参考文献有り。
キリン博士が語る生き物の進化論は「からだ」が題材。
見た目は違うけど、同じ哺乳類である共通点があったり、
魚類など異なる種族にも痕跡が残ってい -
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キリン博士の歩みは、地道な解剖。
不可思議な身体構造を持つキリンへの、想い溢れる
研究の日々と解体&解剖を綴った、研究者エッセイ。
・はじめに
第1章 キリンを解剖するには 第2章 キリン研究者への道
第3章 キリンの「解剖」
第4章 キリンの「何」を研究するのか?
第5章 第一胸椎を動かす筋肉を探して
第6章 胸椎なのに動くのか?
第7章 キリンの8番目の「首の骨」
第8章 キリンから広がる世界
・おわりに
コラム、参考文献有り。
幼少時のキリンとの出会い。
そう、子供の頃から好きだった。
そんな子供の心を残しての「キリンの研究がしたいんです」
そして始まるキリン博士への道のり。
初めての -
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ネタバレ読んでいてワクワクすると共に、相当の苦労もしただろうが、それでもこうやって機会に恵まれて仕事として成り立っている生き方が凄く羨ましい。
賢い人間はこうやって選択肢を与えられて、そこも上手くいけば研究者へはそうやって繋がっていくのかという解像度が増した。
キリンの8番目の骨の存在を解剖して発見し、発表したのが今作一番の盛り上がり。
冒頭のキリンと人間の骨を比較してこんなにも似てるんだよという話や、3回生の時にその元ネタとなる論文が遠藤教授から送られてきた時は読んでみてもあまりよく分からなかったのが、勉強しまくって4回生になって改めて読んでみると面白いと感じるほど内容が分かった、論文は知識があっ -
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多分世界一キリンの首を解剖しているだろうというキリンの研究者による研究過程をつづったエッセイ。
どんな風に興味を持ちどのように調べてどんな発見をしたか一般向けの読みやすさで語る。
キリンにも学術にも興味を持たせてくれてワクワクする良書。入口として最適。
「はじめに」にこの本は研究や自分の話であるだけでなくキリンたちの死後の物語でもある、とあった。
解剖の予定が入ることを素材の入手ではなく訃報と表現したりもする。
著者は知るために解剖のチャンスをガンガン取りに行くけどキリンをただモノとして見るわけじゃない。敬意を持って研究する姿勢がとても良かった。
この本自体はずっとキリンの首の構造だけを話