郡司芽久のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
「自ら理論立てて考える人でなければ、優れた観察者にはなれない(チャールズ・ダーウィン)」
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世界一キリンを解剖している(かもしれない)著者による、キリン解剖記なる本。
しかし、最初から順調な解剖が出来たわけでは、もちろんない。
はじめは「解剖」ではなく「解体」だ。極端に言えば、バラして肉を削ぎ落としていくのが解体で、知識と技術を持って行うのが解剖だ。そして、はじめての「解剖」にいどんだキリンが、(僕にとって何か因縁があるが、本書の流れではそうでもない)僕も見たことのある、地元浜松動物園のキリン、ニーナなのであった。
ところが著者は、このキリン解剖を、一人で初めて行った故か、解剖という名の破壊行為で終えてしまう。この無力感が著者を襲う。けれど、さらにまた(僕にとって何か因縁のある)浜松市のキリン・シロが運ばれてくる。そう、立て続けに死んじゃったんだよね、浜松のキリン。夫婦が後を追うように。
シロの解剖には他の人も参加しているし、はじめてではない。不明な筋肉を教えてもらおうと思ったら「うーん、わからないなあ。まあ、筋肉の名前は、とりあえずそんなに気にしなくてもいいんじゃない?」と。
名前は名前。誰かのつけた名前に振り回されず、自分がわかればいい、ということだ。
別の解剖学者も「ノミナ(名前のラテン語)を忘れよ」と念を押す。
知っている、ということと、理解するということの違いだろう。ドキリ。僕はいろいろなことをまあまあ知っているような気がしていたが、理解しているか、考えたことがあるか、最近凹むことが多い。また凹んだ。
その後も著者はキリン(オカピも含む)道をひたはしり、おそらくキリン解剖の第一人者になる。
キリンの解剖で食っている人などいない、先達に頼れない、全て自分でやる必要がある。だったらどこでやっても同じ…という指導教官の言葉が、キリン道の覚悟を決めさせたようだ。
著者の覚悟とバイタリティの極みが愉快な本であり、またキリンの頚椎についての知的探求も面白い。
さて、生き物の本につきものといえる、変態的な突き抜け方が、実は著者からはそれほど強く感じない(たぶん、十分あるはずなのに)。なぜか。それは、指導教官たる遠藤秀紀氏(遠藤先生)の存在だ。遠藤先生が突き抜けた人と描かれているので、著者はこれだけのことをやっても、なにか常識的なところにいるように見えてしまう。いや、そのことで本書の価値はまったくおちませんけどね。遠藤先生の本も読むしか無い、と思った次第。 -
Posted by ブクログ
観察が上手い人は「ノミナを忘れよ」をやっている
キリンの解剖に青春を捧げた女子大生の研究ストーリー。この本以降、研究者が研究史と自伝を重ね合わせて語るエッセイが多数出版されていることからして、バカ売れしたんだと思う。
ストーリーも面白いし、学びもたくさんあって、中でも自分が一番印象的だったのは「ノミナを忘れよ」という言葉が出てくる場面。
著者が希少なキリンの遺体解剖で、どの部分がなんという名前の筋肉かわからず、ただバラバラにしてしまっただけで何の成果も得られなかったという苦しい局面で、先輩研究者から言われて救いになったのがこの言葉だという(ここら辺うろ覚え)
ノミナはラテン語で「名前」。つまり、解剖をするときには先人がつけた名前なんか忘れて、目の前の事実に虚心坦懐で向き合えということ。
個人的にはすごくよくある話だと思ってて、解剖だけじゃなくてより広く観察一般で知識を現実に当てはめようとすると、十中八九失敗するのよね。これ、名前がついてるから、現実も名前みたいにきっぱり分けられてると思って観察を怠ってしまうからだと思う。現実は無限のグラデーションなのに、名前という覆いで細部が隠されてしまうんよね。
じゃあどうすればいいか。
それが、「ノミナを忘れよ」を忘れないこと。そして、目的のフィルターで現実を見てみること。なぜ、この筋肉はここにくっついているのかという、目的を考えることだけが観察においては指針になる。
観察が上手い人は、名前という過去にとらわれない。常に目的という現在と未来の関係性を観ているじゃないかな。
でもこの目的もフィルターってことを忘れちゃダメで、目的因とかを考え出すと、アリストテレスですら陥った罠にハマってしまう。石は地面に落ちたいから落ちるわけじゃないですからね、、、
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Posted by ブクログ
キリン解剖がとても面白く、著者のファンになったのでとても楽しみに読みました。
解剖学を通じてキリンを研究されている著者が、体内の各器官(肺、心臓、皮膚、腎臓など)について、器官ごとに章でまとめて、人や他の動物での働きの違いを比較したり、その進化の過程をひもといていく構成。
おそらく研究者になるまでに膨大な勉強をして得た知識の一部なのだろうと、改めて研究者の方々に対し敬意を感じる。当たり前だけどキリンの研究するためにはキリン以外の知識も必要なんですよね。
織り交ぜられる豆知識(キリンがむちゃ高血圧。サメの肉はなぜアンモニア臭いのか。鳥類のおしっこの秘密など。。)も興味深いし解説がわかりやすく納得。いざという時?理由付きで披露できそう(笑)。
前作と同じくわかりやすい解説に読みやすい文章。中学生でも理解できるし楽しめる一冊と思う。 -
Posted by ブクログ
筆者は、キリンを専門にする比較解剖学の先生。ので、キリンが出てるんだな。
個々の生物のパーツを比較することで、進化を考察する。色々と面白い。草食動物は自分が消化できないセルロースを分解するのに微生物を飼っているが、それを、胃に住まわせてるのと、大腸に住まわせてるのがあるんだって。質をとるか量を取るか、そんなところでも変わっていく。
一般向けのエッセイみたいなもんで読みやすく面白かった。
淘汰とか適応とかいうけど、要は、絶滅するほどのハンデではないってことか。
キリンの首が長いのも、ツノも、自然淘汰でどう説明するかっていうのは定説ないらしいが、性的選択から、ようは、メスがそれを好んだだけなんじゃないかという気もする。首が長い方が、モテたんだよ、きっと。