デビッド・ロブソンのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
知性をどう定義するかによるけれども、いわゆるIQ(一般知能)が高いことを「頭がいい」と定義すると、なかなかおかしなことになる。
IQって車で言うとエンジンのようなもので、高いとそれだけ速く走れるわけなんだけど、IQが高い人は当然、変な方向にも誰より速く走れてしまう。しかも、自分が言ったことの辻褄を合わせるのも他の人より優れているせいで、間違った方向に行ったとしても、それを自ら認識するのが難しいんですよね。そもそも、他の人に比べて自分の速度(回転の速さ)が速いことははっきり自覚できるはずなので、それが「他の人が正しく、自分が間違っている」と認めるハードルをさらに上げてしまう。そんなこんなで、IQがただ高いだけでは頭がいいとは言い切れないんじゃないかな、と思うわけです。
思うに、権力がある人がそうでない人よりも慎重に行動せざるを得ないように、一般知能が高い人もそうでない人に比べて、よりよく情報を検証する「知的謙虚さ」を持つ必要があるんだと思う。
まあ、一般知能が平均かそれ以下の私も、知的謙虚さや独善的にならない姿勢は持った方がいいんでしょうけどね。そう考えると結局のところ、誰しもこの本の2章にも書いてありましたが、「決して分かったとは言わない」という姿勢が大事なんじゃないかなと思ったりします。
3章では「日本式の教育がこの本の主張と合っている」という記載がありましたが、日本人としてはちょっと首をかしげるところもありました。個人的には取り入れていきたい内容ではあるんですけどね。
第4章の内容は、最近読んだ『集団浅慮』や『失敗の本質』なんかにも書かれているような「優秀な人が集まる集団はなぜ失敗するのか」というテーマが綺麗にまとまっており、なかなか読みごたえがありました。まあ、組織人としては一部、胃が痛くなりましたね。 -
Posted by ブクログ
ノーベル賞受賞者が陰謀論に傾いたり、天才と呼ばれた子供たちが凡庸な人生を歩んだり、オカルトにのめりこんだりする。この本はアメリカを舞台にした話であるが、日本でも「神童も20歳過ぎればただの人」という諺があったり、旧帝大卒の秀才がカルト宗教にはまったりする。
なぜ、知能(IQ)で最高峰の能力・才覚を持つ彼らが、そのような愚行を犯してしまうのか?
という問いから始まった本書。
4部構成となっており、
1部:知能の落とし穴
IQテストの限界、他の知性の可能性、天才だから陥りやすい罠について解説する。
2部:賢いあなたが気を付けるべきこと
ベンジャミンフランクリンを例に、ならどうなればよいかを考察する。
3部:実りある学習法
1.2.部を踏まえて、我々がそれに近づくための具体的な実践論を提示する。
4部:知性ある組織の作り方
今までの知見を組織論にまで拡張し、超優秀な人を揃えるからこそ発生する失敗と克服法を考察する。
1.2.4.はよかったが、3.部は少々拙速に過ぎているかと思う。2.部で論じるような知性を獲得するには世界観、道徳観、倫理観すべてに波及せねばならず、小手先のチェックリストで済むような話ではない。
よって、具体的な提言についてはちょっとなーと思ったが、1.2.部で紹介された高知能者の失敗とその対比は、学ぶものが多かった。
個人的に最も良い収穫だと思ったのが、第4部の提言で、仕事にもろに直結できると思った。
特に人事系の人にはお勧めしたい内容だと思う。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ<目次>
第1部 知能の落とし穴~高IQ、教育、専門知識がバカを増幅する
第2部 賢いあなたがきをつけるべきこと
第3部 実りある学習法~「根拠に基づく知恵」が記憶の質を高める
第4部 知性ある組織の作り方
<内容>
昔から言われてきたことだが、賢いヤツほど実はバカ。世界の例がたくさん載っているが、日本でも「オウム真理教」などが最たる例だろう。第2部でそうならないための知恵が、またかゆいところに手が届くように、第4部では個人ではなく、組織になるとバカになる例が載っていて、それへの対処法(こちらが一番難しいかもしれないが)が載っている。頭の良さだけではなく、組織内の人間関係が影響されるからだ。こちらは特に日本がヤバいかも。東日本大震災の際の東京電力などがそうだろう。いつになってもなくならないこうした話。世界どこでもあることだとわかった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ1. 「知性」は必ずしも賢明な判断に結びつかない
・高いIQ、教育、専門知識を持つ人が、逆に誤った判断や愚かな決断をすることがある。
・実際に、IQ190以上の天才でも平凡な人生を歩んだり、専門家が陰謀論や非科学的な信念に陥ったりする事例が紹介されている。
2. 主な認知バイアス:「動機づけられた推論(マイサイド・バイアス)」
・知識や知性がある人ほど、自分の信念を正当化するために知能を使いがちで、都合の良い情報だけを選び取る傾向がある。
・専門家には「獲得されたドグマ主義」(acquired dogmatism)や「知識の呪い」が存在し、自分の専門分野以外を過小評価したり、新しい視点を受け入れにくくなることがある。
3. 愚行を避けるための処方箋
・知的謙虚さと思い込みに対する自覚:「自らの知識の限界と不確実さを認識する」姿勢が重要。
・自己の距離化(視点の転換)により、一歩引いた見方を持つことで判断ミスを防ぐ。
・感情の自己認識を高め、感情に判断を支配されないようにすることが大切。
・また、外国語で考えることで論理的思考力が向上し、情緒が介在しづらくなるという工夫も紹介されている。
4. 賢明な思考を育てる学習法(第3部に詳しい)
・「努力に勝る天才なし」という考えのもと、記憶の定着や理解度向上のために「望ましい困難(desirable difficulties)」を取り入れた学習戦略を推奨。
・具体的な方法としては以下のようなものが紹介されている:
-学習を分散して行う
-難易度の高い教材を使い、複数の解き方を考える
-自習後に自分にテストを行う
-同じ場所で学ばない、内容を他者に説明する、複数分野を交えて学ぶ、間違いの原因を分析する など。
5. 知性ある組織の成立(第4部で展開)
・頭の良い人ばかりを集めたチームが必ずしも生産性が高いとは限らず、「天才チームは生産性が低下する」ケースも存在する。
・組織が陥る「機能的愚鈍(functional stupidity)」の問題も論じられており、組織全体で偏った思考に陥ると、衰退や失敗を招く可能性がある。
まとめ:本書の主張を簡潔に言うと…
「単に頭が良いだけでは十分ではない。真の知性とは、自己のバイアスや感情に気づき、謙虚に思考し、他者や異なる視点を積極的に取り入れて学ぶ姿勢にこそ宿る。」 -
Posted by ブクログ
ネタバレ優れた知性と優れた洞察力は同じではない。キャリー・マリス、ポール・フランプトン、アーサー・コナン・ドイルなど。
知能水準が高い人は、他人のアドバイスを受け入れず、自らの判断を正当化する主張が得意。その結果自分の見解に固執する。医療現場では深刻。
「ジャックはアンを見ており、アンはジョージを見ている。ジャックは既婚だが、ジョージは違う」一人の既婚者が一人の未婚者を見ているのか。
認知反射を測定するもの。陰謀論、フェイクニュースに騙されやすい。
大抵の人はモノを考えているつもりで、先入観を組み替えているに過ぎない。
フリン効果=年々IQが上昇し続ける問題。教育が進化して低年齢化しているから。
心の知能指数=EQ。有効とはいえないという批判もある。
分析的知能、創造的知能、実務的知能に分類できる。それぞれを測定する必要があるが、2つ以上にわたる能力が必要な場合もある。
CQ=文化的知能。=文化的規範に対する感受性を測る。
P57 -
Posted by ブクログ
なぜ賢い人ほど愚かな決断を下すのか
デビットロブソン 日本経済新聞
ひたすら愛に憧れながら
なぜ物質次元に執着し続けるのだろうか?
先日読んだNEXASlも同じようなことを上下巻にもわたる本で繰り返し述べているが
なぜ競争世界を卒業して切磋琢磨による相乗効果を目指さないのか?
この世は調和を理解するために物質と言う重力場における摩擦界を作り出して相対し合う関係から学ぶことを選んだのではないのか?
勝ち抜くことにのみかまけて
誤諾を並べても何も始まらない
部分感にまみれたこの世で果てしなく堂々巡りせずに
勇気を出して反面教師に学ぶ場なのだと気づくべきなのだ -
Posted by ブクログ
この本の中で一番覚えておきたいことは
「動機づけられた推論」
確証バイアスの複合的なもので、本書の用語解説によると、
「結論があらかじめ想定していた目標と合致している場合のみ、頭を使う無意識の傾向。」
とある。
人は、
自分が正しいと信じていることにしか思考ぜず、
正しくない、信用しないと思っていることは検討しようとしない。
人間である以上、バイアスからは逃れなられないので、
「バイアスに陥らないようにする」よりも、
「バイアスに陥っていることに気づく」を狙う方が現実的だと本書を読んでつくづく感じた。
自分とは違う意見や自分への批判もちょっと聞いてみたい(その方がいい判断ができるから)と少し思える勇気が出てくる本でした。 -
Posted by ブクログ
書名に惹かれて読んだ。第1部は書名の通り「なぜインテリが愚行を犯すのか」にフォーカスしているが、第2部以降は「マインドフルネス」のような単語に代表される様なビジネス自己啓発書。自己啓発書は苦手だが、面白く読めた。特に第9章「天才ばかりのチームは生産性が下がる」で述べられる、相互依存性の高いバスケットやサッカーのチームでは一流選手の割合が6割を超えるとパフォーマンスは逆に低下する、という現象は非常に興味深い。集団が優れたパフォーマンスを発揮できるかは、私たちが他社と比べて自らの才能をどう認識するかによって決まるらしい。
天才はなぜエセ科学を信じるのか
・教育水準や知能の高さは、自分の政治的、社会的、宗教的アイデンティティと合致する信念を正当化することにしか使われない。「動機づけられた推論」が働くと、反対意見を拒絶するだけでなく、結果として立場がさらに頑なになる。
信念はまず感情的な必然性から生まれ、それがどれほどおかしなものであっても、知識は後付けで正当化する。
・科学者もひとたび自らの専門領域を離れてしまえば、どこにでもいる頑固で理屈の通じない人間に過ぎない。その人並外れて高い知能は、その偏った思考を一層危険なものにするだけである。
・知能が高い人々が愚かな行動に走る3つの主な原因、①人生で起こる問題に対処するために不可欠な、創造的知能や実務的知能が欠けていること②合理性障害があり、偏った直感的判断を下してしまうこと③動機づけられた推論により、自らの立場と矛盾する証拠を否定するために優れた知能を使ってしまうこと。
専門家が判断ミスを犯す根本理由(インテリジェント・トラップ)
・計画を実行したり、自らの行動から悪影響を回避したりするのに不可欠な、「暗黙知」と「反事実的思考」が欠けている。
・「合理性障害」「動機づけられた推論」「認知の死角」を抱え、そのために自らの思考の欠陥に気づかず、いつまでも過ちを正当化する理屈を考え続ける可能性がある。これは入手可能な証拠をすべて検討することなく、自らの信念の周囲に「理屈で固めた小部屋を作る」ことに他ならない。
・「獲得されたドグマチズム」によって、自らの判断に過剰な自信を抱くようになる。それによって自らの限界を認識できなくなり、手に負えない状況に陥る。
・専門知識があるために、凝り固まった考えや身意識の行動をとるようになる。この「専門知識の逆襲」によって大惨事が迫っているという明らかな警告サインが目に入らなくなり、バイアスの影響を受けやすくなる。