寿楽浩太のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
科学技術の失敗・事故に対してどのように考えるべきか、どのように考えられてきたのか、その考え方の変遷の概要を体系的に教えてくれる一冊。
失敗から新たな科学的知見を得ることで再発防止ができた時代から、科学技術が進歩することで再発防止が困難な事故が現れ始め、事故を防ぐことは不可能だという考えの登場、大事故が起こるまでのシナリオに関するモデルの登場(スイスチーズモデル)、原因究明vs責任追及の二律背反が生まれてくること、さらには「レジリエンス・エンジニアリング」という新たな考え方が生まれてくるところまで、概観的に記述されている。さらには、今後「科学技術の失敗から学ぶ」ためにはどのような心構えで臨むべきか、筆者の理にかなった主張がなされている。この分野の知識が無い人にとって、入門として非常に優れている本だと感じる。
個人的にこれまで、科学技術の失敗は技術力を高めることが唯一の解決策だと考えていた。一方で、科学技術が複雑になるにつれて、技術力だけではなくて人や組織の在り方を考えなければ失敗は防げないということを本書から学んだ。さらには人の感情にまで寄り添わなければ、失敗を克服することが出来ない、ということまでこの本は教えてくれた。そのような考えは肝に銘じておきたい。 -
Posted by ブクログ
科学技術の失敗を、丁寧に分析・分類し、わかりやすく、読みやすくまとめた本です。
「失敗学」を提唱した畑村洋太郎は、工学系の人ですが、畑村洋太郎の成果を踏まえつつ、社会学的な観点から科学技術の失敗を捉えるのが、著者の立ち位置のようです。
その分、過度に技術寄りの話にはなっておらず、妙に高度な概念も必要としないためか、一般の人にも、とっつきやすい説明になっていると思います。
科学技術に深く関わる仕事をしているかしていないかにかかわらず、現代社会を生きる者としては、科学技術の失敗に関する素養は必須だと思いますし、そもそも、科学技術に限らず、人間には失敗がつきものなので、失敗に関する知見は、現代人に不可欠だと思います。
本書は、そんな現代人にとって、失敗リテラシーを底上げしてくれる、良書だと思います。 -
Posted by ブクログ
【気付いたら地球が核のゴミ屋敷になっていた件】
・小手鞠るい『わたしが戦場にいる』
・平井美津子『原爆孤児しあわせのうたが聞こえ
る』
・村田喜代子『新古事記』
・伊与原新『翠雨の人』
そして本書、ドキュメンタリー『核のゴミをどうするか?』。
核と戦争を巡る物語を順繰りに読み進める中で、最終的に行き着いたのが「第二の核施設」ともいわれている原子力発電所のドキュメンタリーだ。
日本の原発は稼働当初からなんともずさんな計画でスタート。
核のゴミも何とかなるだろうくらいの軽い考えで何の処理もされず60年放置され続けた。
最終処分方法が決まらないまま、稼働した分だけ増えていく状態。「高レベル放射性廃棄物」のガラス固化体は、最終的に2万6000本以上に達する見込みだ。あと数年で原発内の貯蔵プールは満杯になり、近づくだけで人間が即死するほどの強烈な放射線を放つ。安全なレベルになるまで1万年〜10万年かかるというから驚きだ。現実的な処理方法がない危険な代物を、将来の世代に負担させてよいはずがない。人の手に負えないものに、なぜ手を出してしまったのだろう。
深堀りして自分で調べていくとさらに驚愕の事実を知った!
現在米露にある12000発超の核兵器と日本にある「核のゴミ」の総量・体積を比べると日本の原発ゴミの方がはるかに巨大。
ゴミを安全に保管するための施設全体の広さは、「ディズニーランドが何個も入る巨大な地下要塞」にする必要があるとか。しかも現在進行形で脱原発どころか新しい原発を導入して輸出しようとまでしているようだ。
さらに原発ゴミには2011年の福島第一原発事故によって生じた放射性廃棄物(汚染土など)が東京ドーム11個分という想像を絶する量がある。
政府はこれを甘い特例基準を設け、全国のインフラ、公共事業に混ぜて再利用し汚染土をばら撒こうとしている。一般的な安全基準(100ベクレル)に下がるまで約170年〜300年以上もかかるのに国が定めた再利用基準は8,000ベクレル以下と通常の80倍も緩い。
本当に怖いのは人体や環境への影響だ。
台風、豪雨、地震、経年劣化によって雨水や粉塵となった汚染土が近くの河川、海、そして周囲の畑に流れ込む。それが食を通して人体に蓄積され内部被爆を引き起こすことが容易に予想される。子供や孫、将来の世代にそんな負の遺産を背負わせても良いのだろうか。
日本は、世界で唯一の戦争被爆国でありながら「平和利用」という大義名分のもとに原子力に依存してしまうのはどうかと思う。
事故が起きれば、新たな被爆者や環境汚染での自然、食への影響、風評被害。兵器であれ発電であれ、すべてを破滅させる「核の力」の本質は何も変わらない。猿橋さんや山口勇子さん、笹森恵子さん、佐々木禎子さんらの命を懸けて紡いできた平和への努力が水の泡になってしまう。
2011年の福島第一原子力発電所の大事故や再び「核の抑止力」に傾倒しつつある現代の世界情勢を見て、「人類は歴史から一体何を学んだのだろう」と残念でならない。
かなりの長文になってしまいましたが多くの人に知ってもらいたいと思い書きました。
ジュニア新書と侮るなかれ、大人が今こそ読むべき、未来への警告書です。 -
Posted by ブクログ
「失敗から学ぶ」に関する本はこれが3冊目。この手の本には共感し、また学ぶことが多い。
本書では、少し古い話ではあるが、スペースシャトル爆発事故、日航機墜落事故、JR福知山線脱線事故等、人命に関わる重大インシデントを例にして、何が問題だったのか、そこから学ぶことは何なのかを考えさせてくれる。そしてこのように人命に関わる事故の再発防止策は、人間工学的に考えなければならない。なぜなら、いわゆるヒューマンエラーや思い違いは常にあることであり、そのために何百人の命が被性になる訳にはいかないのだから。
そこには答えはなく、最悪の事態を考えることが必要なのだろう。
2.5人称の視点、何かが起きる前の安全対策
AI等に頼るようになると、複雑系が否が応にも世の中を席巻するようになるだろう。ブラックボックスを出来るだけ見えるようにし、安全対策を講じる必要性を感じた。 -
Posted by ブクログ
のごみ問題は、長期的な原発計画策定の際、最もプライオリティの高い問題だと思うが、マスコミも野党も大きな問題にせず歯がゆいばかリだ。
本書は 問題の本質を総論的に解説しており、とても勉強になった。
・海外の状況
フィンランド 地層処分場の建設がすすんでいる
スウェーデン フォルスマルクに地層処分場決定
フランス 地層処分前提にピュール県に決定を申請中
可逆性(未来に変更が可能な処分方法)を担保
カナダ オンタリオが候補で適応性のある段階的管理を進める
(60年保管、その後も240年は人間の管理下に)
アメリカ 混乱(ネバダ州のユッカマウンテンは凍結)
ドイツ 脱原子力は決まったが処分方法は混乱
イギリス 地層処分で4つの自治体を調査中
政府から独立な組織が議論を主導
日本 地層処分で北海道の2つの自治体を文献調査中
NUMO(電力会社)と政府が主導
・筆者の提案
現在の科学技術能力の限界を認識(永久保管の安全性は不明)し
50年の地上での暫定保管(その間に技術開発を推進)
核廃棄物の総量管理(保管できる分しか使わない)
答えのない問題の答えを出す責任を社会全体で認知し議論する枠組みが必要
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Posted by ブクログ
「構造的な秘密性」
専門化し長い経緯を持つため部外者にはその問題点がわからない
良い人がみんなで起こす
→「外部の目」実作業の現場のレベルでの意見
「平穏無事に潜む危険」
原因「深層防御」性質の異なる様々な防御を何重にも講じる
スイスチーズモデル 小さな穴=問題点があっても他の防御壁で補われる
どんな問題が潜んでいるか把握できなくなる
「レジリエンス」
ある程度の機能損失は承知の上で、大崩れして何もできなくなることを避ける
個別の要素の損失ではなく、機能に着目
第一種安全:逸脱を検知し想定通りにふるまう→自発的工夫を抑え込んでしまう
第二種安全:できるだけ多くのことが正しい方向に向かうよう、し続ける
「2.5人称の視点」 自分が当事者であったなら・・・答えは自分で出す