あらすじ
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「覆水盆に返らず」起こってしまった結果から未来を考えよう!!
本当に科学技術の失敗から学べているのか。もしうまくいっていない部分があるとしたらそれはなぜなのか。そういう問題点を乗り越える方法はないのか。
科学技術の社会学を専門とする筆者は、工学と社会科学の間を往来しながら、工科系の大学の授業で、そうした問いに取り組んできました。
本書はその経験を踏まえて、現実に起きた事件を通して、これらの問いについてできる
だけ平易に、しかし同時に深く考え、答えを試みようとするものです。
はじめに
第1章 タコマ橋とコメット「失敗から学ぶ」サクセスストーリー
第2章 機体が言うことを聞かない!何が最新鋭機を墜落させたのか(1)
第3章 高度がおかしいぞ!何が最新鋭機を墜落させたのか(2)
第4章 「チャイナ・シンドローム」巨大技術の事故は防げないのか
第5章 スペースシャトル・チャレンジャーの悲劇 誰がシャトルを打ち上げさせたのか
第6章 ディープウォーター・ホライズン 大企業はなぜ失敗を繰り返すのか
第7章 日航機乱高下事故と機長の裁判 原因究明か、責任追及か
第8章 通勤電車の大事故は誰のせいなのか 組織の責任を問う難しさ
第9章 3・11複合災害の衝撃 レジリエンス・エンジニアリング論とは
第10章 これからの「科学技術の失敗からの学び」のために
あとがき
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Posted by ブクログ
科学技術の失敗・事故に対してどのように考えるべきか、どのように考えられてきたのか、その考え方の変遷の概要を体系的に教えてくれる一冊。
失敗から新たな科学的知見を得ることで再発防止ができた時代から、科学技術が進歩することで再発防止が困難な事故が現れ始め、事故を防ぐことは不可能だという考えの登場、大事故が起こるまでのシナリオに関するモデルの登場(スイスチーズモデル)、原因究明vs責任追及の二律背反が生まれてくること、さらには「レジリエンス・エンジニアリング」という新たな考え方が生まれてくるところまで、概観的に記述されている。さらには、今後「科学技術の失敗から学ぶ」ためにはどのような心構えで臨むべきか、筆者の理にかなった主張がなされている。この分野の知識が無い人にとって、入門として非常に優れている本だと感じる。
個人的にこれまで、科学技術の失敗は技術力を高めることが唯一の解決策だと考えていた。一方で、科学技術が複雑になるにつれて、技術力だけではなくて人や組織の在り方を考えなければ失敗は防げないということを本書から学んだ。さらには人の感情にまで寄り添わなければ、失敗を克服することが出来ない、ということまでこの本は教えてくれた。そのような考えは肝に銘じておきたい。
Posted by ブクログ
科学技術の失敗を、丁寧に分析・分類し、わかりやすく、読みやすくまとめた本です。
「失敗学」を提唱した畑村洋太郎は、工学系の人ですが、畑村洋太郎の成果を踏まえつつ、社会学的な観点から科学技術の失敗を捉えるのが、著者の立ち位置のようです。
その分、過度に技術寄りの話にはなっておらず、妙に高度な概念も必要としないためか、一般の人にも、とっつきやすい説明になっていると思います。
科学技術に深く関わる仕事をしているかしていないかにかかわらず、現代社会を生きる者としては、科学技術の失敗に関する素養は必須だと思いますし、そもそも、科学技術に限らず、人間には失敗がつきものなので、失敗に関する知見は、現代人に不可欠だと思います。
本書は、そんな現代人にとって、失敗リテラシーを底上げしてくれる、良書だと思います。
Posted by ブクログ
「構造的な秘密性」
専門化し長い経緯を持つため部外者にはその問題点がわからない
良い人がみんなで起こす
→「外部の目」実作業の現場のレベルでの意見
「平穏無事に潜む危険」
原因「深層防御」性質の異なる様々な防御を何重にも講じる
スイスチーズモデル 小さな穴=問題点があっても他の防御壁で補われる
どんな問題が潜んでいるか把握できなくなる
「レジリエンス」
ある程度の機能損失は承知の上で、大崩れして何もできなくなることを避ける
個別の要素の損失ではなく、機能に着目
第一種安全:逸脱を検知し想定通りにふるまう→自発的工夫を抑え込んでしまう
第二種安全:できるだけ多くのことが正しい方向に向かうよう、し続ける
「2.5人称の視点」 自分が当事者であったなら・・・答えは自分で出す