永田希のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
(01)
さしあたり最新の読書論として愉しく読むことができる.書店で購入した後,積んでおくことなく,即,読んでしまった.
本書で用いられる隠喩(*02)のひとつに建築的な言い回しがある.同様に建築的に譬えるのであれば,本書は,間口は広く,奥行が深い構成をもっている.タイトルに読書「術」としてあるように,読むことや積むことの技術のほかに書物がもつ魔術性についても触れているが,ハウ・ツーの体裁をもって読者に広い間口を通じて呼びかけ(*03)てくる.
しかし,広い間口に誘われ,この書物に入り込んだところで,それなりの奥行の深さがあることに気が付き,嬉しくなる.書物の害悪をめぐってソクラテスとプラトン -
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Posted by ブクログ
「書物と貨幣の五千年史」とあるが、タイトル通りの書物や貨幣についての歴史の本ではない。
著者はブラックボックス(不可視化されたもの)について一冊を通して歴史をたどり説明していて、その代表として書物や貨幣を挙げている。
経済、社会、文学、マンガ、物理などさまざまな分野から人類史とブラックボックスについて語られている本書は本論がわかりにくく理解する難易度はかなり高いと感じた。
個人的に情報(書物やデータなど)はものごとを可視化してわかりやすくするものという認識だったが、そもそも「数」や「文字」がブラックボックスでありそれによって表されるものもブラックボックス(=不可視)になっていると筆者は主張 -
Posted by ブクログ
# 積読とは世界に一つだけのブックマーク群であり、情報テリトリーである
## 面白かったところ
- 積読の期限や歴史、名著からの引用を元にした論理展開は凄まじかった
## 微妙だったところ
- 各章の話の飛び方が尋常じゃなく、例えも高尚なものばかりで小難しい
- 積読に対するとてもわかり易い、後ろめたい感情の1つが「身銭を切って購入したものだから」というものがあると思うが、論及がなかった点
## 感想
「情報の濁流」という表現をなされていたように、我々は堰が切られた直後の流れような時代を生きている。
情報の良し悪しを選別し、自分だけの確かな情報リソース群(ビオトープ)を作成・管 -
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Posted by ブクログ
永田希(1979年~)氏は、米国コネチカット州生まれの著述家・書評家。書評サイト「Book News」を主宰し、「週刊金曜日」、「週刊読書人」、「図書新聞」、「HONZ」等でも執筆している。
本書は、『積読こそが完全な読書術である』(2020年)の続編とも言えるものであるが、『積読~』の主張は、(私なりに要約すると)「読書において最も重要なのは、世の中にある本を手当たり次第に読むことではなく、自分なりのテーマや基準で選択し、常に中身(関係性含め)を確認しつつ入れ替えなどのメンテナンスも行う蔵書(=ビオトープ的積読環境)を持つことであり、本を読むという行為はその延長線上にあるべき」というものであ -
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Posted by ブクログ
電子決済は現金のやり取りを、電子書籍の普及は書店で本を買うという行為を不可視化しました。現代に至るまで、技術の進歩は多くのことをブラックボックス(BB)化してきました。BB化した社会をどのように捉えて生きていくかということを論じた(哲学的な)本です。
BBを逆に辿って解体していき(リバースエンジニアリングの手法)起源を解き明かしていく態度が正しいのか、BB化され便利になった環境をそのまま受け入れて生きていくのがいいのか、正解はわかりませんし正解はあるのでしょうか。
超大企業の中で働いているけど自分の労働の理由がわからずクソ仕事だと思って仕方なく働いている(=ブルシットジョブの)人たちがBB -
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Posted by ブクログ
現代人の行動や身の回りの物や手続きがブラックボックスと化していることを考察している一冊。
書名にある書物や貨幣はブラックボックスについての取っ掛かりとして電子書籍と電子決済を例に扱われ、その後はブラックボックス全体の話に移り変わっていきます。
書物と貨幣の歴史書かと思い手に取りましたが、内容の趣向が違っていたようです。
前半は歴史的変遷を、後半はSF小説や漫画・アニメを取り上げて話を進めていきます。
現代社会の仕組み全体は、大きなブラックボックスと小さなブラックボックスによる入れ子構造となっています。
ブラックボックス一つを構成している組織や個人は複雑で、どこかでエラーや欠損が起きた場合の修復 -
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Posted by ブクログ
ずっと気になってはいたけど、積読しまくっている自分がこの本を読むのは自己弁護っぽすぎないか…?と思ってチラ見するに留めていたが、ついに読んだ。
積読を2通りに大別すると、1つは大量の本、映画、動画コンテンツ、ゲーム、メール、サブスク…など「情報の濁流」に揉まれ、インプットしたいものが次から次へとあるにも関わらずそれを消化しきれない状況。2つはそうした情報の濁流の中で独立性を保った自前の積読環境を作る「ビオトープ的積読環境」。
本書では積読について古今東西あらゆる著者の読書術から検討を進めているが、日頃から特別に意識せずともやっていることと重複する部分も多かった。
ほぼ毎日本屋へ行く