岸本聡子のレビュー一覧
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この本を手に取ったきっかけは、情報番組で「自民党がなぜ強いかをデータで分析している」「選挙とは何かを座談会形式で考えている」と紹介されていた点に惹かれたからである。
本書によれば、自民党が強い理由としては、①小選挙区制において効率的に議席を獲得できる制度構造、②公明党との選挙協力、③野党が候補者を統一できず票が分散すること、④非都市部で組織団体や保護政策を通じて基盤を固めていること、⑤政治に不満を抱えながらも与党に投票する層が一定数いること、などが挙げられている。
また、(本書の説明を踏まえつつ私の理解を交えて言えば)投票率の低さも自民党に有利に働いている。特に「選挙に行かない層の中には野党支持者が多い」とするデータも紹介されており、この点をどう評価するかは読者に委ねられている。
最終章の哲学対話では、「選挙とは何か」「選挙活動の開始をいつとみなすのか」「有権者はいつから政治家を注目すべきか」といった問いが提示される。有権者として、選挙期間中だけ政治家を評価すれば良いのか、それとももっと長いスパンで考えるべきかという問題提起には共感を覚えた。
総じて、本書は前半でデータ分析を通じて自民党の強さの構図を明らかにし、後半で哲学的な問いを通じて選挙の本質を考えさせる構成となっている。結論を押しつけず、読者に思考を促す点で、選挙への関心を深めるきっかけとなる一冊である。 -
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インフラの老朽化に危機感を感じる今日この頃ですが、財政難とはいえ水道という公共の財=コモンを民営化すると利益優先になり危うくなる。
それをコモンとして取り戻そうとする欧州の市民運動の手法がとても理知的だなと思った。したたかに、民主主義の仕組みを変えていく躍動感を感じた。
欧州では水道事業の民営化により、本来共有物であるはずの水道が、利益の対象となり、管理も杜撰になってしまった。
PPP/PFIと呼ばれる官民連携の全てが悪いとは思わないけど、本来公共の財であるべきもの、利益の対象とすべきでないものの見極めは重要だなと思った。
水道事業を通じて、本来の民主主義を捉え直すことが出来てなかなか面白かったです。 -
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とても素敵な本。「自治」の実際が語られていて,なんか,やる気が出るような来ます。著者によっては,少し難解な部分もあるのですが…。
最後の斎藤幸平さんの「「自治」の力を耕す〈コモン〉の現場」より,今の教育現場にも通じる話を引用します。
…労働問題に取り組むNPO法人POSSEの代表である今野晴貴さんは,次のように指摘します。
ブラック企業問題が解決しない原因は,労働法が存在しないからではない。むちゃくちゃな働かせ方を取りしまう法律自体は日本にもある。あるけれども,労働組合が弱体化した日本では,企業のほうが圧倒的に強く,労働者には力がない。そのせいで,法律の運用が形骸化し,「違法労働」がまかり通ってしまうのだ,と。(本書245ぺ)
斎藤氏は,このように引用した上で,マルクスの主張を取り上げて次のように述べています。
…私が専門としているカール・マルクスは,トップダウン型の法制度改革を「法学的幻想」だと批判し,「下から」の変革を重視しました。具体的には,マルクスは,「自治」を育むボトムアップ型の組織を「アソシエーション」と呼び,このアソシエーションを広げていくことが,社会を変えていくための基礎だと考えたのです。(本書246ペ)
今ある労働組合をどうするのかも大切なことですが,今一度,現場の教員にとって大切にしたいものはなんなのかを話し合い,それを実現するために,どんな風にボトムアップしていくのか,どのように仕掛けていくのか,下からのしたたかな自治を作り出していくことが必要ですね。
言うは易く行うは難し…ですが,諦めないで,ときには,子どもの人権に関わることが明らかならば,現場で闘うしかないでしょう。
その積み重ねが,職場の過ごしやすさにつながると思います。
既存の労働組合の「とにかく数だけを守る闘い」からの脱却が必要なのでは。 -
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「当事者意識を持つこと」の重要性を実感しました。
「自治」というテーマのもと、様々な分野における「自治」のあり方について論じられていました。
特に、現代社会における「上から」の改革の限界を指摘し、真の社会変革は、一人ひとりが「当事者」となることから始まることを強調していました。
この著書における「市民科学」の例は、この「当事者意識」の重要性を感じられます。専門家だけに任せるのではなく、市民自身が社会問題の解決に向けて積極的に行動を起こす「市民科学」の動きは、従来の「上からの」改革ではカバーしきれない問題に取り組む、新しい可能性を感じられました。
p125~武器としての市民科学を (木村あや)
このような当事者意識を持つことの重要性を、様々な角度から浮き彫りにしています。 「上から」の改革に依存するのではなく、一人ひとりが「当事者」として社会に関わっていくことの重要性を、再認識することができると思います。 -
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みんなの共有財、コモンについての話の前に、今の現状は新自由主義によって生まれた資本主義はどう出来上がってきたか、白井聡さんの説明から始まります。
60s-70s学生運動から始まったとされ、その中の日大紛争がまさか最近の日大理事長田中氏につながるとはびっくりですね。それに、反共産主義の統一教会、東大駒場寮や早稲田学生会館を取り壊した経緯、段々と学生運動は衰退しやっぱり綺麗な大学が魅力的になり、そして今では学食プリペで家族にも安心など、学生を孤立化させ、安心安全の無菌室へと誘導することで国の指示通りが一番安心だと信じ込ませた現在。なるほど、本当の自由がなくなっているのに、これだと気づかれにくいですね。こうして自治は衰退してしまったという。
松村圭一郎さんはわたしたちが思い込んでいる自治と自由とは「税という対価を払って後は専門家にお任せする」という意味になってしまっているようです。
その新自由主義マーケットをどう変えていくかが課題で、そこに古着屋とライブハウスの例え話しは素敵なエピソードでした。わたしも個人経営のショップや居酒屋、カフェなどに行って無駄話したりして楽しみながら貢献したいです。
コモンと同時にケアも含めて考える杉並区長の岸本聡子さんはアムステルダム、チリ、バルセロナなど海外の事例をもとにフェミナイゼーションで自治を変えたいと熱弁。
コラムでは斎藤幸平さんの神宮外苑再開発問題で、元々住んでいた方々のお話しの中で考えることが大前提だと納得できるお話しでした。
藤原辰史さんは、権藤成卿という思想家の失敗から自治を考え、人間にとって最も重要な「食」こそ、未来の自治ではないかと考えます。
社会を良くするために、反対運動の座り込みやデモで反抗しても失敗の歴史を見ればよくわかるという。
そこで最後に斎藤幸平さんが今までの国家から考えるトップダウン型ではなく、そこで暮らす身近な地域から課題を上げていく、ボトムアップ型で解決できないかをまとめていました。
リーダーは一人ではなく何人ものリーダーを交えて、アントレプレナーの能力を養っていくそんなイメージでした。
国家は大企業がたくさん税金を納めている以上資本主義的な政策ばかりで富裕層のための政策はこれからも続くと思います。そんな世の中ではいつまでも一般庶民は変わらないままですね。本当に良くするための具体的な対策が描かれた大事な内容でした。人任せにせず自分で考え判断して協力していきたいと思います。
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水道事業の民営化問題にとどまらず、グローバル企業に抗する自治体の取り組みなどが紹介されていて、とても興味深い。
民営化によって水道料金が高騰したり、サービスや品質が低下したり、事業や財務状況の監督が困難になったりする。イングランドとウェールズの水道会社10社は、必要のない借り入れを繰り返して借入金を膨らませ、税金の支払いを少なくし、株主への配当を確保し、必要なインフラ整備を行わない口実としていた。民営化は株主優先、企業利益優先というビジネスルールによって、公共が解体されるプロセスであった。
スペインでは、2008年の世界経済危機を受けて、EUの財政規律を守るために福祉や教育などの公共サービスの予算を大幅に減らし、若年層の失業率はピーク時に55%にも達した。2011年の統一地方選の際に若者たちが各地で草の根の政治集会を開き、各都市で抗議活動が行われた(15-M運動)。各地でシルクロと呼ばれる草の根の政治グループが結成され、2015年の地方選では6つの自治体で反緊縮を掲げる左派政権が誕生した。バルセロナでは市民活動家が市長に就任し、民泊事業の増加による住宅問題への対応や水道事業の再公営化を進めた。また、15-M運動は左派政党のポデモスを誕生させ、2019年には社会労働党との連立政権を樹立させた。
地域のことは地域の人々が集まって議論し、自律的に決めようという取り組みは「ミュニシパリズム」と呼ばれるようになり、世界各地に広がっている。利益や市場のルールに基づく新自由主義を脱却して、公益とコモンの価値を中心に置いて市民の社会的権利を拡大することを目指す。
国民国家を巻き込みながら展開する新自由主義に対抗するために、自治体間で国際的に協力するミュニシパリズムは、「フィアレス・シティズ」という運動へ発展した。2020年時点で、欧米を中心に77か所が参加している。競争、排除、対立などの男性的な価値観から、共生、包摂、協力といった女性的価値観で人間にやさしい政治を実現しようとする政治のフェミナイゼーションには共感する。
水道事業が民間企業から公的事業に取り戻した事例は、2019年時点で311件。電力、地域交通、ごみ収集、教育、健康・福祉サービス、自治体サービス、通信サービスの分野を加えると、1408件。
著者は、民間の水道事業者が欧州で市場を失った結果、日本が新しい市場として狙われたと推測している。この動きは、1990年代の外国産タバコや昨今の農薬の動きなどとよく似ていると思った。
世界各国で、水道事業を民営化することにより、運営権を売却して得た資金を債務返済に回す事例が多い。日本では、財政再建団体指定を免れたいという動機があるほか、PPP/PFI導入を拒否した場合に政府からその理由の説明を求められることにもなった。
公共調達において地元企業を優先し、地元の経済を回す取り組みも紹介されているが、税金の使い方としても合理的だと思う。
水や食料などに対して一部の者が利益を得る仕組みを導入することがおかしいと感じた。水や食料などの生存に欠かせないものには、資本主義を導入しないという思想が必要なのではないかと思った。
ヨーロッパでは政治活動を広場で行うことには、民主主義の歴史を感じた。建物内の閉じられた空間で行うよりも多くの人が参加でき、関心も持ってもらえるので、日本人が学ぶべき点だと思った。
岸本さんが杉並区長に当選したことを知って読んだが、このような経験を持った人が日本の自治体の首長に選ばれる時代になったんだな、と感慨深い思いを抱いた。 -
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麻生氏が当時の副総理大臣だった時の、海外に向けた日本の水道の公営化の発言から本文が始まっている。
著者は海外の水道事業のうち、民営化されたものが再度公営化された例を研究や情報収集している。
パリから始まった水道の再公営化の波は少しずつではあるが着実に広がっている。その理由は外資系水企業における、不当な利益や情報が表に出ない形での財務体質など。
再び公営化すれは全てが解決するわけではない。契約期間内での解約であれば膨大な違約金が地域の住民に降りかかる。またそこから公営化のシステム作りにも多額の税金がかかってくる。
多くの物は失ってからそのありがたさが分かる。あまりにも当たり前に