佐藤郁哉のレビュー一覧
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論文の量産が目的化しがちな現代の学術界において、研究者としての知的な誠実さを再考するために、本書は既存研究の不足を補う「ギャップ・スポッティング」を越え、理論の前提を問い直す「問題化」の手法を提示している。
前提を疑う姿勢は学問の基本だが、その実践は困難を伴う。本書の有用性は、抽象的な思考プロセスを具体的な手順として定式化した点にある。これは、形式的な整合性の追求に傾倒する研究のあり方に対し、本質的な問いを構築するための実用的な指針となり得る。
ただし、本書を検討する際には、確立された地位にある著者と、厳しい制約下にある若手研究者の立場の相違を考慮しなければならない。安定した立場からの提言 -
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学術研究において重要であるものの、イマイチ何かわからないリサーチクエスチョンについて、初学者向けにわかりやすく解説した本。
筋の良い研究は、確実にこの問いの部分が非常に良い。私の指導教官も、個別具体の方法ではなく、常にその問いは筋が良い/悪いといった点を重視していた。だからこそ私も常にその筋の良い問いとは何か?と考えてきた。
本書によくまとめられているものの、筋の良い問いとは、以下の3つの要素を満たす。
①意義:答えを求めることに何かしらの学術的ないし実践的な意義がある
②実証可能性:実証データにもとづいて一定の答えを出すことが出来る
③実行可能性:調査に使える資源などの現実的な制約の範囲 -
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学部生や大学院生向けに書かれた論文作成の入門書です。しかし、ITコンサルタントとして働く中で、本書の内容はビジネス課題の整理にも応用可能だと感じました。
現場では、手段が目的化する場面をよく見かけます。特に、DX推進の名のもとに新しいツールを導入するものの、その必要性や目的が不明確なケースは少なくありません。
システム導入には多くのコストがかかります。維持・運用の負担も含め、導入の目的が曖昧だと投資が無駄になります。だからこそ、「何が課題なのか」「なぜそれを解決するのか」という問いを明確にしなければなりません。
本書では、そうした問いを立て、深めていくための思考法が丁寧に解説されています。課 -
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面白かった。リサーチ・クエスチョンの育て方について、社会科学系の学問を専攻する初学者向けに、ここまで丁寧に解説した本はないのではないだろうか?
個人的な印象では、リサーチ・クエスチョンは「必ず一度は聞くけど、それ自体問われることはない」言葉と言える。なぜなら、リサーチ・クエスチョンそのものが「問い」なのだから、それ自体を問うということは意味がわからないことだからだ。
けれども、著者は曖昧に使用されてきたリサーチ・クエスチョンに真摯に向き合い、定義を与え、分類を行い、育て上げ方の解説を行った。
社会科学系の学問を専攻する初学者は、本書を読むことで得られるものは大きいと思う。
ただし、最後 -
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ようやく読み終わった。何度も途中で読み返したり、また最初からに戻ったりしながら読んだので、妙な達成感がある。
しかし、著者もあとがきで書いているとおり、これはページ数も価格も反則だ(笑)
昨年の某学会での佐藤先生の基調講演が強烈だったと知人から聞いたのが、これを手にしたきっかけだが、非常に読み応えがあり、かつ同じ考えと納得できる点も多く、また新たに学んだことも多かった。
主張されていることは現実問題として荒唐無稽とかではなく、逆に真っ当なことなのだが、これが奇妙なことと扱われるのが現在の大学教育をとりまく行政、政策のもっとも大きな問題なのだろうということは実感する。とは言え、何ともならなそうな -
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<目次>
序章 論文のペテン≪詐術≫から学ぶリサーチ・クエスチョンの育て方
第1章 定義する~リサーチ・クエスチョンとは何か?
第2章 問いの内容を見きわめる~何について問うのか?
第3章 問いの目的について確認する~そもそも何のために問うのか?
第4章 「ペテン」のからくりを解き明かす~なぜ、実際の調査と論文のあいだにはギャップがあるのか?
第5章 問いを絞り込む~どうすれば、より明確な答えが求められるようになるか?
第6章 枠を超えていく~もう一歩先へ進んでいくためには?
<内容>
大学生、修士レベルの論文を書くための問い=「リサーチ・クエスチョン」の立て方から論文を書 -
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30年におよぼうとする大学改革の掛け声にもかかわらず、いっこうにその実があがらないようにも見える大学改革について、その実態を批判的な観点から明らかにしている本です。
シラバスやPDCAサイクルの導入などの実例について検討をおこない、それらが「改革ごっこ」や「経営ごっこ」にすぎないということが、ていねいに説明されています。こうした著者の議論を読み進めていくと、「どっちを向いても茶番」という気持ちになってくるのですが、本書の後半で著者は、オーリン・クラップという社会学者による、社会を舞台に上演されるドラマの登場人物が「英雄」「悪漢」「馬鹿」の三種類に分類されるという説を紹介して、わかりやすい悪役 -
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実に精緻なデータの分析によって、いかに日本の高度教育が「大人の事情(=無理が通れば道理がひっこむ)」によって、さらには大学側の面従腹背によって混迷を極めてきたのかが語られ、本書が正に行なっているEBPM(Evidence-Based Policy Making)、そして過去の失敗から学ぶことの重要性が指摘される。
過去の失敗から学ぶには公文書の丹念な精査も必要となるわけだが、それが改竄されてしまうのがこの国の力量なわけで、暗い気分となる。
後書きでは新島襄の言葉が紹介される。
一国を維持するは、決して二三英雄の力に非す、実に一国を組織する教育あり、智識あり、品行ある人民の力に依らざる可か -
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シラバスの煩雑化、「PDCAサイクル」の乱立、「おつき合い」的に形式と体裁を整えるためだけの業務の激増、「エビデンス」という名のデータの恣意的なつまみ食い……。本書の話柄は、大学に籍を置き、日常の業務に従事している者なら誰もが体感的に熟知していることばかりである。
しかし、できれば目を背け続けたいそれらを逐一問題化し、検証していく記述から受ける、圧倒的な徒労感と「死屍累々」感は何なのか。旧日本軍の「失敗」どころではない。もはや喜劇にもならない壮大な人的・時間的な無駄遣いがくり返されてきたことが、改めて読者に突きつけられる。たぶん政界と財界は、大学と教員に「知」的組織としての本来業務をおこな -
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ネタバレ文科省が実施する「教育内容等の改革状況について」調査結果に見るように、大半の大学が数字の上では改革を進めている実態が覗える。しかし一方、大学がよくなったという話は寡聞にして聞かない。高等教育界は教育の本質や現場を知らない経済界(様々な利害団体の代表)に踊らされ、日本の景気減速の責任までも押しつけられる。批判は年々厳しさを増す。許認可権や各補助金対象事業の決定権を握る政府・行政に対し、表立って異議を唱えることもできず、昨今の「言っても無駄」風潮も手伝う。「異を唱えさせない」ガバナンス構造を、大学教職員の隅々まで徹底させたのが「学校教育法」の改正(2014年)であった。
大学改革を迷走させている -
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2020年1月で大学入試センター試験の幕引きとなった。2021年からは大学入試「改革」として、センター試験に替わり「大学共通テスト」が新たに導入されることになっている。
大学はこれまで、監督官庁である(現)文部科学省の旗振りの下に「改革」を求められ続けてきた。しかし、その「改革」がうまくいっているという話はあまり聴かない。若手研究者への支援が不十分だから今後の日本人ノーベル賞受賞者は減っていくだろう、世界大学ランキングで中国の大学が躍進する中、東大をはじめとした日本の大学の存在感が低下している、企業のニーズにあった学生教育がなされていない等々。
松岡亮二「教育格差」でも指摘されていたが、教