あらすじ
問いを立て、調査・分析して報告する。その営みにおいて最初の関門である「問いを立てる」ことはそう簡単なものではない。それは立てれば終わりというわけではないからである。研究を進めていくなかで、当初の問いとは異なる形に問いを磨き「育てる」必要がある。そうした過程を経て、研究としてのセレンディピティが生まれるのだ。これまで語られてこなかった新しいリサーチ・クエスチョンとの向きあい方がわかる。
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
リサーチクエスチョンの考え方について可能な限り解きほぐそうとしている著作です。研究を構想するのに悩んでいる人たちにとっては大変役に立つと思います。
自分は博士論文の研究計画を検討している時に読み、考えるべきことがクリアになりました。
Posted by ブクログ
リサーチ・クエスチョンという言葉は研究をするものにとっては日常語のようなもので、自分自身も学生に対して「リサーチ・クエスチョンをしっかり立てなさい」とよく言うが、実際にはリサーチ・クエスチョンとは何かという問い自体に明確に答えるのは難しい。
本書は、社会調査研究に長年携わり、教育してきた著者による入門書である。
一般書ではないが、これから社会科学分野で卒論を書こうとする学部学生と修士課程の大学院生にとって必読の本だろう。
Posted by ブクログ
面白かった。リサーチ・クエスチョンの育て方について、社会科学系の学問を専攻する初学者向けに、ここまで丁寧に解説した本はないのではないだろうか?
個人的な印象では、リサーチ・クエスチョンは「必ず一度は聞くけど、それ自体問われることはない」言葉と言える。なぜなら、リサーチ・クエスチョンそのものが「問い」なのだから、それ自体を問うということは意味がわからないことだからだ。
けれども、著者は曖昧に使用されてきたリサーチ・クエスチョンに真摯に向き合い、定義を与え、分類を行い、育て上げ方の解説を行った。
社会科学系の学問を専攻する初学者は、本書を読むことで得られるものは大きいと思う。
ただし、最後の第6章が、若干物足りなさを感じた。単に書き疲れたのか、あるいはまだ十分に考えがまとまらない中で書いたのかはわからないが、もし解説する機会があるならば、第6章に焦点を当てた本も書いて欲しい。
Posted by ブクログ
単純なようでわかりにくい、リサーチ・クエスチョン。論者や学問分野によって少しずつ扱いや定義が異なるからなのだが、この本では「社会科学系の実証研究のさまざまな段階で設定される研究上の問いを疑問文形式の簡潔な文章で表現したもの」(p29)と定義した上で、仮説はリサーチ・クエスチョンに対して平叙文で対応するものとされたり(pp59−63)、リサーチ・クエスチョンが実際には何度も見直され、完成した時の論文の構成におけるものが現実に行われた研究当初のものとは異なっていたとしても構わないのだ、その方が読者にとってわかりやすいのだから(pp170-173)とか、臨床研究をしているなかでなんとなく気になっていたことを丁寧に説明してくれていて、非常に助かった。
Posted by ブクログ
最初に立てた問いが一直線に進んで結論まで進んでいくように論文では書かれているが、実際には問いは何度も修正されブラッシュアップされている。問いを立て、調査をし、問いを修正し、それが何度も繰り返される。良い問いを立てることが大切であるとよく言われるが、その問いはどのように立てればよいのか知りたいと思って本を読んでいるが、一発で良い問いを立てることはできない。言われてみればもっともですね。著者によると修士研究者向けの入門書だそうです。
Posted by ブクログ
<目次>
序章 論文のペテン≪詐術≫から学ぶリサーチ・クエスチョンの育て方
第1章 定義する~リサーチ・クエスチョンとは何か?
第2章 問いの内容を見きわめる~何について問うのか?
第3章 問いの目的について確認する~そもそも何のために問うのか?
第4章 「ペテン」のからくりを解き明かす~なぜ、実際の調査と論文のあいだにはギャップがあるのか?
第5章 問いを絞り込む~どうすれば、より明確な答えが求められるようになるか?
第6章 枠を超えていく~もう一歩先へ進んでいくためには?
<内容>
大学生、修士レベルの論文を書くための問い=「リサーチ・クエスチョン」の立て方から論文を書いていくにあたっての考え方=「リサーチ・クエスチョン」の深化(進化)の流れを具体例を交えながら解いていく。ややくどい気もするが、わかりやすい本であった。
Posted by ブクログ
社会科学分野におけるリサーチ・クエスチョンの立て方にまつわる本。あくまで社会科学分野についての話なので、他の分野には適用できない。
研究を行う上では問いが必要だが、問いにもいろんな段階やレベルがある。良い問いを立てることが研究遂行には重要で、そのための色んな指標が世の中にはある。
とはいえ、問いは結局は良い研究のためだとすれば、問いの立て方や形式にこだわりすぎるのは本末転倒という気がする。本書ではリサーチ・クエスチョンの色んな条件が示されるが、ちょっと話が細かすぎるという印象。なぜそれが良いクエスチョンなのか、という部分の説明が乏しく、じゃあ別にその問いの立て方じゃなくてもいいんじゃない?と思った。
Posted by ブクログ
リサーチクエスチョン=疑問文形式の簡単な文章で表現した社会調査で設定される研究上の課題・問い
⇔テーマ・課題などの名詞との違い:研究の基本的な方向性・明確な回答の明示を想定して進めることを明示
⇔平叙文(仮説)との違い:実証研究が問いに対する答えを探す活動だと明示する。
2W1H:実態を明らかにする・因果関係を解明する問いで問題の本質に迫る
→改善策・問題解決のための処方箋の問い
⇔5W1H:タイプが異なる複数のリサーチクエスチョンについてはそぐわない。
リサーチクエスチョンの3条件
・意義:学術的 or 実証的な意義がある
・実証可能性:データに基づいて答えを出すことが出来る
・実行可能性:調査に使える資源・制約の範囲で答えを求めることが出来る
絞り込み型のサブクエスチョン:
リサーチクエスチョンを比較的明確な答えが出るサブクエスチョンに落とし込む
→具体的な調査項目の形に翻訳する。
⇔拡張型のサブクエスチョン:試行錯誤の一環でリサーチクエスチョンを再構築
or 新たな調査研究による新たなリサーチクエスチョンの構築