竹田円のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
フィリピン人ジャーナリストである著者が、フェイスブック等のテックを活用し偽情報を流すことで、ナラティブを支配しようとする権力者に立ち向かう自叙伝。
ジャーナリズムに必要なのは、「透明性」「説明責任」「一貫性」であり、その目的は「民主主義が機能するために必要な、より多くの情報を手にした市民を作り出すこと」であると高い志を掲げる著者が、真偽不明な偽情報により民意が意図的に作り上げられる様を嘆き、結果その刃が自らに向かってもなお立ち向かい戦い続ける様は心にズシンと響いた。
snsで流れてくる情報は軽々と信じてはいけないと思いつつも、おそらくわたしも誰かが意図的に作り上げた民意の片棒を担いでいるの -
Posted by ブクログ
ドゥテルテ前大統領がInternational Criminal Courtの発付した逮捕状により逮捕されたニュースを受けて、長らく読みたい本リストに入っていた本書を読んでみることにした。
序文を書いているアマル・クルーニーは、本文中にも登場するが、ジョージ・クルーニーの妻であり、弁護士をしているらしい。ジョージ・クルーニーがアメリカ民主党のパトロンであるのは有名な話だが、迫害されているジャーナリストの支援をしていることは知らなかった。
本文は著者の生い立ちから始まる。やや退屈にも思える記述が続くが、著者の人生経験により形成された価値観やパーソナリティがドゥテルテ側の者たちとの闘いにも影響し -
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【周囲の世界に対するアメリカの無関心ぶりには、長く、立派な前科があるのです】(文中より引用)
冷戦期のインドネシアやブラジルで起きた「反共産主義」に対する大規模な弾圧事件を指弾するとともに、丹念に証言と資料を集めることにより、当時の人々の経験を読者に呼び起こす作品。著者は、「ワシントン・ポスト」等で勤務をした経験を持つヴィンセント・ベヴィンス。訳者は、スラブ文学を専攻する竹田円。原題は、『The Jakarta Method: Washington's Anticommunist Crusade and the Mass Murder Program That Shaped Our -
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本書の第1章「あらたなアメリカの時代」でアメリカが介入したイタリアの選挙について、1度だけ参考文献として挙げられているウィリアム・ブルム著『アメリカ侵略全史』(作品社、2018)は、世界各地でのアメリカの蛮行の数々を、いわば時系列上の点として描き出した画期的な書だった。
本書は、『アメリカ侵略全史』でも取り上げられていたグアテマラで、多くの民衆の支持を集めていた比較的穏健な政権を、アメリカがCIAや、クオリティ・ペーパーとして有名なタイム、ニューズウィークなどを使って大々的なキャンペーンを行い、失脚させていった様子を記述している。
グアテマラの政権の行く末を、インドネシア共産党(PKI)の機関 -
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ネタバレ以前からメディアに不信感を抱いていて、表紙を見てふと気になったから買ってみた。どちらかというと洗脳的な情報操作はテレビのメディアで起こっていて、インターネットやSNSは情報を選べるという点で、もう少し偏りのない情報を得られると思っていたが、大間違い。自分では取捨選択をしているつもりだったが、確かにアルゴリズムの影響を受けて偏った政治的思想になりつつあった気がする。ハッとさせられた本だった。でも何が起こっているかは理解できたが、ユーザーとしての私たちは?どうしたらいい?という一般ユーザーの対策の部分がもう少し詳しく書かれていたらよかったなと思った。
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マリア・レッサはフィリピンのジャーナリスト。フィリピン政府がSNS(主にフェイスブック)をはじめ、ネットメディアによる偽情報を流し政権の維持を目論む。それに対して、マリア・レッサはジャーナリストとして真の情報を提供することで、フィリピン国民に真実を伝える戦いに挑む。
■目次
序章:透明な原子爆弾
第Ⅰ部
- 第1章:黄金律
- 第2章:倫理規定(オナーコード)
- 第3章:信頼の速度
- 第4章:ジャーナリズムの使命
第Ⅱ部
- 第5章:ネットワーク効果
- 第6章:変化の波を起こす
- 第7章:友達の友達が民主主義を駄目にした
- 第8章:法の支配が内部から崩れる仕組み
第Ⅲ部
- 第9章 -
Posted by ブクログ
ネタバレいろいろと驚いた、というか、考えさせられた本だった。
まず、思ったのは、インターネットの出現は、現代のありとあらゆるものの在り方を変えたけれど、「悪の帝王」の在り方までも変えたんだなぁ、ということ。
この本の原題は「The Mastermind」、日本語にすると「黒幕」とか「首謀者」という意味で、通常、犯罪組織のマスターマインドというと、私はゴッドファーザー的なマフィアのボスを思い浮かべたりするんだけど、この事件の首謀者ポール・ル・ルーは、そういうマッチョで父性の強いタイプとは全然違う。外に出ずに自分の部屋で過ごすのが好きな「オタク」タイプ!
人間にはまったく興味がなく、携帯電話とネットを