【感想・ネタバレ】偽情報と独裁者 SNS時代の危機に立ち向かうのレビュー

あらすじ

ノーベル平和賞のジャーナリストがついに語る、闘いの記録! SNS時代の情報戦争にいかに立ち向かうか? フェイクや憎悪から世界を救うための熱き提言! 序文:アマル・クルーニー。

「私の国で起きていることは、いずれ世界のほかの国でも起きる」
ノーベル賞ジャーナリストの警告!!


●本文より
「ノーベル賞授賞式から三か月も経たないうちに、ロシアがウクライナを侵略した。二〇一四年にクリミア半島に侵攻し、ウクライナからこれを奪って併合し、傀儡政府をねじ込んで以来、オンラインでばらまいてきたメタナラティブを利用して。その戦術とは? 情報を隠蔽して、噓と交換する。(中略)ロシアは、架空のネットアカウントを作り、ボット軍団を展開し、ソーシャルメディア・プラットフォームの脆弱性につけ込んで生身の人間を欺いた。世界のあらたな情報の門番(ゲートキーパー)となった、アメリカ人が所有するプラットフォームにとって、こうした活動はさらに多くのエンゲージメントを作り出し、さらに多くの金をもたらした。門番と偽情報工作員の目標が合致した。
このときはじめて、私たちは情報戦争の戦術に気づいた。その戦術はすぐに世界中で展開されるようになる。フィリピンのドゥテルテ、イギリスのEU離脱、カタルーニャ州の独立運動、「選挙泥棒を止めろ(ストップ・ザ・スティール)」。八年後の二〇二二年二月二四日、クリミアを併合したときと同じ手口、同じメタナラティブを使って、ウラジーミル・プーチンはウクライナそのものを侵略した。このように偽情報は、ボトムアップとトップダウンで、まったくあたらしい現実を製造できる」


●各界著名人・各紙誌絶賛!

「私の個人的なヒーロー」
――ヒラリー・クリントン

「じつに卓越していて、変革をもたらしてくれる」
――ショシャナ・ズボフ(ハーバード・ビジネススクール名誉教授、『監視資本主義』著者)

「レッサは私たちすべての支えを必要としている」
――英国『ガーディアン』紙

「彼女には未来が見えていた」
――英国『オブザーバー』紙


●原題
How to Stand Up to a Dictator: The Fight for Our Future(2022年刊)

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Posted by ブクログ

フィリピン人ジャーナリストである著者が、フェイスブック等のテックを活用し偽情報を流すことで、ナラティブを支配しようとする権力者に立ち向かう自叙伝。

ジャーナリズムに必要なのは、「透明性」「説明責任」「一貫性」であり、その目的は「民主主義が機能するために必要な、より多くの情報を手にした市民を作り出すこと」であると高い志を掲げる著者が、真偽不明な偽情報により民意が意図的に作り上げられる様を嘆き、結果その刃が自らに向かってもなお立ち向かい戦い続ける様は心にズシンと響いた。

snsで流れてくる情報は軽々と信じてはいけないと思いつつも、おそらくわたしも誰かが意図的に作り上げた民意の片棒を担いでいるのだろうなと言う気がしてならない。

情報の出処には常に気をつけ、偽情報の拡散に加担しないようにしたい。そしてこの本は子どもにも読ませたい。

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2025年12月02日

Posted by ブクログ

ドゥテルテ前大統領がInternational Criminal Courtの発付した逮捕状により逮捕されたニュースを受けて、長らく読みたい本リストに入っていた本書を読んでみることにした。

序文を書いているアマル・クルーニーは、本文中にも登場するが、ジョージ・クルーニーの妻であり、弁護士をしているらしい。ジョージ・クルーニーがアメリカ民主党のパトロンであるのは有名な話だが、迫害されているジャーナリストの支援をしていることは知らなかった。
本文は著者の生い立ちから始まる。やや退屈にも思える記述が続くが、著者の人生経験により形成された価値観やパーソナリティがドゥテルテ側の者たちとの闘いにも影響しているので、ここは必要な記述であるということだろう。
7章くらいからドゥテルテとの戦いに入っていく。近時の日本でもX(旧Twitter)などを発信源とする比較的新しい政治的事象が見られるが、これは既に2016年頃からフィリピンで起こっていることだった。本書を読むと、日本の自称愛国者たちの使うレトリックやナラティブは、フィリピンでのそれらと酷似していることが分かる。恐らくアメリカ大統領選挙でも似たようなことが起きていたのだろう。
そのアメリカではXのオーナーが政府の高官に取り立てられるまでに至った。それにもかかわらず、Xが政治的に中立な情報プラットフォームであると信じている人がいるとすれば、それこそ能天気というものであろう。
野放図に流通する偽情報を規制するために、事実の真贋をAIに確認させるというアイディアはどうであろうか。これと似たアイディアは藤井太洋氏の「マン・カインド」に登場するのだが、そこでもアルゴリズムや裏付け資料をどこに求めるかによって真贋の判定が揺らぐ危険性が描かれていた。現状のリアルワールドを前提とすると、主にオンラインから情報を収集するAIが、その情報の真贋を的確に判断するのは難しそうである。むしろ、偽情報の拡散を促進する可能性すらある。
隘路に入り込んでしまった感のある民主主義であるが、希望は本書の著者のようなジャーナリストに求めるしかないのであろうか。しかし、事実を尊重して公益に尽くし、権力とも戦うファイティングスピリッツを具備するジャーナリストという存在は希少であり、それだからこそ、この著者にノーベル平和賞が授与されたといえる。これを支持する層を含めてあまり大きな勢力になることは期待できず(本書でも述べられているように、人は情動に働きかける言説に容易に釣られてしまう。)、未来は楽観できない。
かくして、情報化社会の下では、テック企業と結び付いた政治勢力が流す偽情報に民主主義が翻弄されるばかりであるように思われる。
他方、日本でそこまで状況が進んでいないのは、皮肉にも社会の情報化が遅れているからではなかろうか。

最後に一つ。
SOFT BALLETというバンドが第一次湾岸戦争の時に製作した曲があり、本書を読んでいて、同曲の一節が頭に浮かんで仕方なかった。

  か弱き民衆 この手をかざせば
  まどろむ群衆 疑う者なし
  高まる歓声 思いのままに

政治勢力が仕掛ける情報戦が主としてオンライン上で繰り広げられている現状を鑑みると、同曲の"VIRTUAL WAR"というタイトルは、予見的であったといえよう。

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2025年03月23日

Posted by ブクログ

著者マリア・レッサはフィリピンのジャーナリスト、2021年ノーベル平和賞受賞者。

ドゥテルテ大統領の様々な妨害・迫害(訴訟・逮捕等)を受けながら、ジャーナリズムの本旨を貫くとともに、フェイスブック・ザッカーバーグの欺瞞を知らしめた。
志の高さに驚嘆する。

「私の国で起きていることは、いずれ世界のほかの国でも起きる」
「あきらめてしまったら、私たちの世界の破滅に手を貸すことになる。あなたの子どもたちは操られ、彼らの価値観は破壊され、地球は荒廃するだろう。いまこのときに地球の未来が懸かっている。」

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2023年08月19日

Posted by ブクログ

SNSの台頭による、デマやプロパガンダと戦うジャーナリスト、マリア・レッサの本。思うのは、日本にはそもそも彼女の様に限りなく事実を取材して伝えようとするジャーナリストなんていないんじゃないかということ。

根底に「国を想う」という気持ちがあるからこそ、いくつもの裁判を抱えながらも体制側と戦う道を選べる強さにつながるんだと感じる。

ドゥテルテ大統領やトランプ大統領がいかに国民を扇動し、そこにSNSが関わってきたかがわかる、まさに現在進行系で読むべき本だ。

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2025年06月09日

Posted by ブクログ

ネタバレ

以前からメディアに不信感を抱いていて、表紙を見てふと気になったから買ってみた。どちらかというと洗脳的な情報操作はテレビのメディアで起こっていて、インターネットやSNSは情報を選べるという点で、もう少し偏りのない情報を得られると思っていたが、大間違い。自分では取捨選択をしているつもりだったが、確かにアルゴリズムの影響を受けて偏った政治的思想になりつつあった気がする。ハッとさせられた本だった。でも何が起こっているかは理解できたが、ユーザーとしての私たちは?どうしたらいい?という一般ユーザーの対策の部分がもう少し詳しく書かれていたらよかったなと思った。

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2025年05月02日

Posted by ブクログ

オレンジ色の表紙に挑発的日本語タイトル。著者は熱血女。一番の悪役はフェイスブックだが、どう悪いのかは本書ではわかりにくかった。

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2025年04月03日

Posted by ブクログ

マリア・レッサはフィリピンのジャーナリスト。フィリピン政府がSNS(主にフェイスブック)をはじめ、ネットメディアによる偽情報を流し政権の維持を目論む。それに対して、マリア・レッサはジャーナリストとして真の情報を提供することで、フィリピン国民に真実を伝える戦いに挑む。

■目次
序章:透明な原子爆弾
第Ⅰ部
- 第1章:黄金律
- 第2章:倫理規定(オナーコード)
- 第3章:信頼の速度
- 第4章:ジャーナリズムの使命
第Ⅱ部
- 第5章:ネットワーク効果
- 第6章:変化の波を起こす
- 第7章:友達の友達が民主主義を駄目にした
- 第8章:法の支配が内部から崩れる仕組み
第Ⅲ部
- 第9章:無数の傷を生き延びて
- 第10章:モンスターと戦うためにモンスターになるな
- 第11章:一線を死守する
- 第12章:なぜファシズムが勝利をおさめつつあるのか
エピローグ

■読んだきっかけ
・とあるyoutubeチャンネルで紹介されていたのを見て興味を持った。
・いつもと違うジャンルを読みたかった(普段はビジネス書が多い)

■気になったポイント(#は感想)

①人生のなかでどうやって意味を築いていくか
人生を何に捧げるか、誰を愛するか、どんな価値観を大切にするか、といった選択を通じて築いていくのだ。

#愛すべきは家族。私にはこれしかない。人生を捧げられるものは今まではなかったが、本書を通じて思ったのは何か教育に携われる仕事ではないかということ。

②教育への投資が実を結ぶには一世代かかる
教育が、国の生産性、労働力の質、投資、最終的には国内総生産(GDP)を決定する。

#納得感をすごい感じた。政府による情報操作によりメディアに混乱を招くが、ジャーナリストによる真実を伝える情報発信だけでは足りず、やはり国民が情報の取捨選択を正しくできるようになることが必要と感じた。それができるようになる為にも教育の充実により国民一人一人の能力の底上げが必要ではないかと思う。GDPが改善されると国が豊かになり、国民の心も豊かになる。

③自己検閲
周囲の反応により、自分の意見の表明を控える事(Wikipedia)
政府内しかり、マリアレッサの周囲しかり、自己検閲が散見され、間違いの指摘や意見の表明が出来ない空気感になっている。

#私の職場でも自己検閲だらけと改めて感じた。「自己検閲による波風を立てないことが大人」という風潮すら感じる。自己検閲が組織を駄目にしていくのだと思う。

■まとめ

先日の参院選でもSNSによる政治活動が活発になっていると報じられていた。本書で語られているフィリピンと同じことが日本でも起こらないのかと思う。SNSによる情報発信は強力で、匿名の利用者の何気ない一言がバズることで印象操作に繋がることもあると思う。政府側についてはSNSがなかった時代でも新聞やテレビなどのメディアを通して情報発信をしてきたので大きく変わらないと思うが、SNSで国民と簡単に接触できるところに何となく不安を感じる。昨今は政府へのバッシングが過剰ではないかと思っているが、国民一人一人が政府に人生の行方を委ねるのではなく、自分自身で人生についてしっかりと考えられるようになることが必要だと思う。そのためには教育制度の充実は欠かせないのではないか…。

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2025年07月23日

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