あらすじ
――サイバー麻薬王が築き上げた恐るべき犯罪帝国の全貌とは?―― それは、数億ドル規模の米オンライン薬局事業から始まった…。海を渡る北朝鮮の覚せい剤とコロンビアのコカイン、金の延べ棒がうなる香港の隠れ家、イランとの武器取引、ソマリアの傭兵軍団、フィリピンの暗殺者たち、アメリカ政府でも破れない高度な暗号化プログラム…。すべての背後で糸を引く「魔王」の正体は?〈MCU〉のルッソ兄弟がドラマ化を即決した、想像を超える犯罪ノンフィクションの新時代を告げる一冊。
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Posted by ブクログ
南アフリカ人 ル・ルー。。この本はとても面白い!途轍もないスケールの現実。とあるシーンで、「ナルコス」か「ブレイキングバッド」のポスターが飾ってあった。という箇所があったw こんな現実があるのかと。。日本にいるだけでは、味わえない世界。
Posted by ブクログ
裏世界のIT長者ルルーさんの話。関係者への取材を通して、ルルーさんの残虐性・異常性について書かれている。本人が実際何を思って、裏社会にのめり込んでいったのか非常に気になる。筆者の翻訳があまり宜しくなく読みづらい点が多く、苦労した。
Posted by ブクログ
プログラマーがオンライン違法薬局から初めて麻薬、武器商人になり、フィリピンの無法情勢を利用しのし上がっていき、最後は欲をかいて逮捕される様を映画のように描写。
Posted by ブクログ
クライムサスペンスドキュメンタリーという分野があるかは知らないけれど、私はそういうのは興味ないんだなと読みながら思った。
なので、最初の方と最後しか読んでない。力作だとは思う。
法律が機能しない社会は、法律が機能しないことを目当てにした悪党に蹂躙されて、社会は荒廃する。
Posted by ブクログ
いろいろと驚いた、というか、考えさせられた本だった。
まず、思ったのは、インターネットの出現は、現代のありとあらゆるものの在り方を変えたけれど、「悪の帝王」の在り方までも変えたんだなぁ、ということ。
この本の原題は「The Mastermind」、日本語にすると「黒幕」とか「首謀者」という意味で、通常、犯罪組織のマスターマインドというと、私はゴッドファーザー的なマフィアのボスを思い浮かべたりするんだけど、この事件の首謀者ポール・ル・ルーは、そういうマッチョで父性の強いタイプとは全然違う。外に出ずに自分の部屋で過ごすのが好きな「オタク」タイプ!
人間にはまったく興味がなく、携帯電話とネットを使ってすべてをコントロールし、プログラミングの腕と頭脳で悪の帝国を築きあげる。
今後はこういったタイプのインドア派の悪の帝王も増えていくんだろうなぁ、とこの本を読んでいて思った。法や捜査の目をごまかすためには、筋肉ではなくIT知識の方がますます重要になっていくだろうから。
著者は元ITエンジニアで、ル・ルーと同世代。
インターネット発展期にその可能性に魅了された世代で、ル・ルーのたどってきた道には非常に共通点が多いと言う。そして、自分や、同じく同世代のIT長者たち(イーロン・マスクやザッカーバーグなど)と、ル・ルーの道はいったいどこで分岐してしまったのだろうか、と考える。
もちろん、TVドラマと違って、現実の物語なので、明確な答えはないんだけれど。
私は子供の頃に見たアニメや漫画を思い出した。
悪の帝王が洞窟みたいなところにいて「世界制覇まであと一歩じゃー! フハハハ」などと言っているシーン。
「世界制覇て・・・そんなアホな夢を見ている奴は実際はおらんだろう」と子供心に思ったものだが、ル・ルーという男は、そういう子供じみた古典的とも言える野望を本気で抱いていたように思える。そこが、著者やイーロン・マスクと決定的に違うところのような気がする。
とても信じがたい話だけど。
金もうけだけが目的だったなら、グレーゾーンで荒稼ぎすることで、死ぬまで成功者でいられたのではないだろうか。(それはそれで嫌な話だけど、そんな輩は世界中に死ぬほどいると思う)
何年かあとに、ある国際組織が「サステナブルな漁業開発」として提案したソマリアでの事業プランが、ル・ルーの考えていたことと酷似していた、というあたりを読んで、「世界制覇」とかいう意味不明な野望さえなければ、彼もその地の功労者くらいにはなってたかもなぁ、とも思った。実態はただの金もうけ目的だったとしても。
しかしこの人物、スケールが大きいんだか小さいんだか分からなくて笑えた。
社員には出張時のホテル代の上限が80ドルというルールを課していたとかで、殺人や暴力担当の傭兵たちもそれを守っているのには笑った。超えるとすごく怒られるからなんだけど、微妙な値段すぎて笑える!
ほかにも、麻薬の取引をまとめるために泊まったホテルで、シャツのクリーニング代が2ドルなんて高い!と文句を言っていたり。
傭兵たちを悩ませていたというエクセルの報告書フォーマットの話も、想像するとかなりおもしろい。めちゃくちゃ細かかったらしい。
自分はとんでもない悪事を働いているというのに、部下には限りなく忠実かつ正直さを求めている。勤勉さも。なんなんだろう。意味が分からない。
ちなみに、意味不明だったのはル・ルーだけではなかった。
ル・ルーが逮捕されてからのアメリカの各機関の対応も、私には意味不明に思えた。
ノンフィクションだから、ドラマみたいにポエティック・ジャスティスがなされてスッキリ!てなわけにいかないのは当然なんだけど、それにしても、彼の手先として働かされていた人ばかりが起訴されて、彼は逮捕されたことすら伏せられてPC触ったりしているなんて、読んでいて歯がゆくてストレスがたまった。
著者は、当局が「イラン」あるいは「北朝鮮」を手に入れようとして、ル・ルーの起訴を保留にしていたというようなことをほのめかしていたが、そんなウソの餌(あるいはハッタリ)に踊らされたおかげで、ル・ルーはすぐに裁かれもせず、刑期を終えた後の人生設計を練ったりしているなんて、ちょっと許せないと思ってしまった。もっと大物を釣り上げたいと思う気持ちはもちろん分かるから、彼らを責めることもできないんだけど。
著者の仕事ぶり(事実をすべて検証して、憶測は極力排除する)はとても素晴らしかったけれど、読後は全然すっきりしない本だった。読み終わってしばらくたつけど、いまだモヤモヤ。
少なくとも今後の結果(ル・ルーの起訴内容と判決)くらいはいつか知りたいと思う。スッキリする結果だといいのだけど。