【感想・ネタバレ】ジャカルタ・メソッド 反共産主義十字軍と世界をつくりかえた虐殺作戦のレビュー

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Posted by ブクログ

【周囲の世界に対するアメリカの無関心ぶりには、長く、立派な前科があるのです】(文中より引用)

冷戦期のインドネシアやブラジルで起きた「反共産主義」に対する大規模な弾圧事件を指弾するとともに、丹念に証言と資料を集めることにより、当時の人々の経験を読者に呼び起こす作品。著者は、「ワシントン・ポスト」等で勤務をした経験を持つヴィンセント・ベヴィンス。訳者は、スラブ文学を専攻する竹田円。原題は、『The Jakarta Method: Washington's Anticommunist Crusade and the Mass Murder Program That Shaped Our Wolrd』。

この作品で伝えられること一つひとつが心に重くのしかかってくる一冊。また、冷戦という時代をどのように認識するかにつき、アメリカ発でこのような「贖い」に近い見方が出てきて、しかもその作品が欧米で高評価を得ているというのも非常に興味深く思えました。

『アクト・オブ・キリング』を観賞した方には特にオススメ☆5つ

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2023年01月26日

Posted by ブクログ

本書の第1章「あらたなアメリカの時代」でアメリカが介入したイタリアの選挙について、1度だけ参考文献として挙げられているウィリアム・ブルム著『アメリカ侵略全史』(作品社、2018)は、世界各地でのアメリカの蛮行の数々を、いわば時系列上の点として描き出した画期的な書だった。
本書は、『アメリカ侵略全史』でも取り上げられていたグアテマラで、多くの民衆の支持を集めていた比較的穏健な政権を、アメリカがCIAや、クオリティ・ペーパーとして有名なタイム、ニューズウィークなどを使って大々的なキャンペーンを行い、失脚させていった様子を記述している。
グアテマラの政権の行く末を、インドネシア共産党(PKI)の機関紙「人民日報」は注視し、記事にしていた。著者ベヴィンスは本書執筆時点で、アメリカの当時のマスコミの記事と人民日報の記事を比較して、後者の方が遥かに正確だったと断言している。
こうして、中南米と東南アジアを線で結び、インドネシアのスカルノに焦点を当てる。著者が重視するのは「第三世界」という言葉に実体を伴う潮流を生んだ、1955年インドネシア・バンドンで開催されたアジア・アフリカ会議である。
この会議の開会の挨拶を行ったスカルノの考えを、本書はこう要約している。
 「世界経済システムのなかで、よりよい条件が得られるように自分たちが団結して力を合わせれば、富裕な国が第三世界の商品にかけている関税を引き下げさせる一方、あらたに独立した国々は関税を自国の開発費にあてることができる、と」
極めて真っ当な考え方というべきだろう。スカルノは自らインドネシア国民党(PNI)を結党したが、第二世界であるソ連との提携を望んでいたにもかかわらず、PKIはこの会議を称賛する。
そして10年後の1965年、スカルノはクーデタにより失脚し、ソ連、中国に次いで300万人規模の正式党員を抱えていたPKIは、インドネシアから一掃された。50万人とも100万人とも言われる虐殺によって遺棄された死体の山となって。
ベトナム戦争やポルポト政権下のカンボジアと比べて、ジャカルタ・メソッドにより、アメリカの意に沿う国に生まれ変わったインドネシアの歴史は、日本ではあまり知られていなかったを思われる。
かつて日本が、東亜協同体論や大東亜共栄圏構想で欧米帝国主義からの解放を目指していた地域である。欺瞞的な思想であったことは敗戦によって明らかになった。本書の初めの方でも、著者が取材した女性が子供の頃、侵攻してきた日本軍を、彼女の父親が「解放軍」として歓迎しようとしたエピソードが紹介されている。もちろん彼女は幻想に過ぎないことに、すぐに気づく。兵隊は父親を乱暴に扱い、同胞やオランダ人女性を従軍慰安婦とした。
これらの国々のどこよりもアメリカに従順な属国と化した同盟国という名の日本が、自らの過去と真摯に向き合い、もう一度目を向けるべきところが東南アジアではないか。
本書はその重要なヒントを与えてくれると思う。

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2022年08月07日

Posted by ブクログ

とさっせ新聞の書評に引かれて読むことにしたのだが、アメリカの非道な外交政策が、延々と書かれていて、唖然とさせられる。インドネシアと中南米の傷は消し難いだろうと感じた。ロシアがウクライナにしていることはひどいが、アメリカは縁故資本主義の国とテロを一貫して支持する国であるという点で、アメリカには道徳的にはロシアを非難できないのではないかという思いを抱かせる。翻訳は悪くない。

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2022年07月12日

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