高水裕一のレビュー一覧
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BLUE BACKSって理数系のレーベルなのに、こんな怪しいタイトルの本あるの⁉︎と思って手に取りました。中身を見るとタイトルにも納得しました。
サブタイトルに「全宇宙で共通の教養を身につけよう」とあるように、宇宙に住む我々「宇宙人」としての教養が学べる本です。
物語内で登場人物が説明してくれたり、途中で著者が解説を挟んだりして進みます。物語があるので楽しんで読めました。
筆者の独断と偏見による「宇宙偏差値」なるものがあり、時々巻末のテェックボックスに印をつけながら読みました。読むと15上がるらしいです。私は読む前の状態で51.5でした。
私のお気に入り本トップ3に入る本です。 -
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高水裕一
一九八〇年東京生まれ。早稲田大学理工学部物理学科卒業。早稲田大学大学院博士課程修了、理学博士。東京大学大学院理学系研究科ビッグバンセンター特任研究員、京都大学基礎物理学研究所PD学振特別研究員を経て、二〇一三年より英国ケンブリッジ大学応用数学・理論物理学科理論宇宙論センターに所属し、所長を務めるスティーヴン・ホーキング博士に師事。現在、筑波大学計算科学研究センター研究員を務める。専門は宇宙論。近年は機械学習を用いた医学物理学の研究にも取り組んでいる。著書に『知らなきゃよかった宇宙の話』(主婦の友社)、『時間は逆戻りするのか』『宇宙人と出会う前に読む本』(ともに講談社ブルーバックス)、『物理学者、SF映画にハマる』(光文社新書)。
「まず、宇宙は現在3つの形状にかぎられることが数学的に示されています。 これは、観測できる宇宙の情報が、どうも「一様等方」であるという事実に基づいています。 一様等方とは、ざっくりいうと、宇宙のどの方角をみても、ほぼ同様な構造(銀河や銀河団といったもの)が観測できるということです。もちろん詳細にみていくとみる方角によって、ムラがあり違いがあります。でももっとも簡単な宇宙モデルでは、「宇宙はほぼ一様等方である」として、仮定して話を進めます。これを「宇宙原理」といいます。宇宙原理とは、簡単に言うと、宇宙には特別な中心がないことをいっています。私たちから遠方であっても、基本的には(小さい差は無視すると)、どの方角にもほぼ同質の時空構造をとっているという近似です。観測的には、宇宙の温度がどこもほぼ 2・ 7 K(ケルビン/摂氏マイナス 270・ 5度)であるという事実と、温度のムラ(これは構造を温度的に表したものです)が 10のマイナス 5乗という、きわめて小さいもので、この平均値はほぼ場所によりません。これらの観測事実からも、宇宙原理はただの空想ではなく、観測的支持を得た確定的なものです。」
—『面白くて眠れなくなる宇宙』高水 裕一著
「化学の授業でもおなじみの「元素」は、宇宙を理解するうえでも大切な要素です。「スイヘーリーベ……」で暗証した周期表は、宇宙で共通する元素ができあがった順番であり、宇宙の歴史そのものです。ですから、化学のテストのいやな思い出だけで嫌いにならないで、ぜひもう一度教科書の周期表を見直してもらいたいと思います。」
—『面白くて眠れなくなる宇宙』高水 裕一著
「 また順番が、整数であるのに対して、数学的にはより基礎になるのは素数であるという考え方もあります。素数とはそれ自身と 1以外で割ることができない数のことです。 たとえば 4は 2で割れてしまうので素数ではないですが、 2は素数です。 2という素数を獲得すると、偶数の数はもはや従属的な、ある意味不要の数とみなせるのです。 詳しくは拙著『宇宙人と出会う前に読む本』をみていただきたいのですが、宇宙人が、このような素数をベースにした新しい数学を用いているほうが自然かもしれません。」
—『面白くて眠れなくなる宇宙』高水 裕一著
「話は脱線しましたが、そんな植物界の代表的な色といえば、やはり緑色ですよね。そうこれも太陽の真の色、緑と関係しています。 一見、植物は、太陽の光の愛を一番うけたいので、緑色になっていると思われそうですが、これも逆です。植物は、緑の光を使わないので、それを反射させて捨てています。 逆に、赤や青い光を好んで吸収し、光合成で大気中の二酸化炭素を酸素に変えています。 みなさん、太陽の立場で考えてみましょう。もし太陽が先生だったら、一番手がかかる反抗的な生徒が気になると思います。それと同じで、太陽からすると、自分の一番のお気に入りの色を、「いらん」といって突き返してくる、問題児こそ、一番太陽が気になっているかわいくいとおしい生徒なのです。ちょっぴり反抗期の困った学生、それが緑色の植物たちなのかもしれません。」
—『面白くて眠れなくなる宇宙』高水 裕一著
「 そもそも色とは実在しません。今、見えている色という概念は、あなたの網膜にある視覚をつかさどる神経が、光の信号をとらえて、それを脳内で勝手に像としてイメージさせているだけです。赤に見えるリンゴも、元来その表面に赤い何かがあるわけではなく、光がその表面で反射した際に、もっとも強い光の波長が赤のあたりにあるだけです。」
—『面白くて眠れなくなる宇宙』高水 裕一著
「 誤解しやすいのでいっておきますが、すべての星は、誰かの太陽です。 もしその付近に、惑星があり、そこに生命がいれば、その原動力となる天体が太陽であり、星のことです。 夜空に見える星座も、その1つひとつをクローズアップすると、その付近に存在する生命、知的であれば、「宇宙人」というものが、日々感謝をして暮らしている、そんな地球と同じような、でもどこか異なる別の太陽を中心とした王国があり、彼らの日常があるのです。」
—『面白くて眠れなくなる宇宙』高水 裕一著
「先述のとおり、宇宙には、大別すると、星には、7つの色のタイプがあります。緑色の太陽も、そのうちの1つです。宇宙標準では、青白い色がもっとも多いタイプです。これら7つの太陽たちは、どこかでは、カップルとなって、あるいは、 3人以上で家族となって、存在しています。 現在見つかっている、人数最多の集団は、6つの太陽たちが、お互いのまわりを回りあっているというグループです。大家族のようなにぎやかな家庭のようです。 太陽同士が、ひかれあう理由は単純明快です。それはひとえに、いかに重いかだけです。人間の場合は、お見合いしても、年収、外見などなど気になる項目だらけですが、星の場合は、その相手が、いかに質量が大きいか。見た目の大きさと言い換えてもいいかも。大きなものがもっともモテる世界、それが星の世界です。 ひかれあった星同士は、まるで優雅な求愛のように、お互いのまわりをいつまでも、いつまでも回り続けます。すぐに近づいて合体なんてことにはなりません。」
—『面白くて眠れなくなる宇宙』高水 裕一著
「太陽同士が、ひかれあう理由は単純明快です。それはひとえに、いかに重いかだけです。人間の場合は、お見合いしても、年収、外見などなど気になる項目だらけですが、星の場合は、その相手が、いかに質量が大きいか。見た目の大きさと言い換えてもいいかも。大きなものがもっともモテる世界、それが星の世界です。 ひかれあった星同士は、まるで優雅な求愛のように、お互いのまわりをいつまでも、いつまでも回り続けます。」
—『面白くて眠れなくなる宇宙』高水 裕一著
「相手の動きをよんで、全体のバランスをとって動くとは、まるで太陽それ自体に意思があるようなイメージをもつかもしれませんが、そうではなく、すべてのものの運動に普遍的な物理の法則にしたがっているだけです。 私たちも自然な重力現象として、リンゴを手から落下させることがあります。 これを自由落下といいますが、このときのリンゴの運動も、一見、法則なんて関係ないようにみえて、裏ではきちんとそのルールにのっとって動いているのです。 こういった自重を感じて落下する運動は、さっきの太陽同士の回転運動も同じことです。 つまり、太陽同士もずっとダンスをしているとも、ずっとお互いに距離を縮められず、落下し続けている悲しい動きともいえます。でもきっと星の立場からすると、自重を感じて落下し続けている、絶叫しながらも乗ってしまうジェットコースターのような興奮があるのかなぁと想像をふくらませてしまいます。」
—『面白くて眠れなくなる宇宙』高水 裕一著
「まずは英語の習得度。これがコミュニケーションツールとして、一番必要といっても過言ではありません。宇宙で一人黙々と作業というわけにはいきません。常に、同じ危険と隣り合わせで不安で閉鎖的な無重力空間という特殊な環境で、ともに時間を過ごすクルーたちと日々を円満にやっていくためにこれはもっとも大事だといえます。正直、じつは宇宙飛行士に、特殊技能は求められていません。地球の管制官の指示に適切に対処できるかどうかが大切で、独自に何かを編み出すようなアイデアマンは宇宙に実際にでる宇宙飛行士には適さないかもしれません。」
—『面白くて眠れなくなる宇宙』高水 裕一著
「 無重力は究極のバリアフリー環境であり、本当にあらゆるものが平等になる世界なのです。そこでは、きっと地球では考えつかないような、新しいユニバーサルデザイン、つまり一方の腕(または足)だけで、押し出すためのグリップのようなものがついた壁さえつくってしまえば、どちらの立場の人も同じように自由に移動できる、そんなデザインが未来では実現しているかもしれません。」
—『面白くて眠れなくなる宇宙』高水 裕一著
「では、リアルで会えたとしたら、どのように会話をするのでしょう。言語の問題以上に、まず大気問題が大きい障害です。そもそも地球の大気成分、窒素:酸素が 4: 1というのも、宇宙では決して一般的ではないはずです。地球の歴史でいえば、過去シアノバクテリア(藍藻)などが支配し、大酸素化した結果として、このように酸素の比率が異様に高い大気となっています。 窒素をもっと有用に活用している生命が進化している世界があってもいいでしょうし、そんな宇宙人もどこかにいるでしょう。 そんな彼らと直接交流することをリアルに考えると、まずどちらの大気下で会うのかが最大の問題になります。片方にとって、それは命がけのリスクをともなう行為です。」
—『面白くて眠れなくなる宇宙』高水 裕一著
「少し現実的にコンタクトを想定しましたが、そういったことがすべてクリアになったら、あなたなら何を聞いてみたいでしょうか。 私は個人的に、「あなたの目的は何?」ではないかと思っています。もちろん侵略に来たのであれば、正直に答えないことも前提で。それでもこの質問をなげかけ、さぐらないことには安心して会話は進まない気がします。まずこちらの世界に来れたという事実だけで、科学技術的に脅威を感じてしまうからです。それほど宇宙はお互い距離が圧倒的に離れており、それを超えて飛来する生命体があるとすると、その時点で勝敗が決まっているほどの科学力の差があると察してしまいます。」
—『面白くて眠れなくなる宇宙』高水 裕一著
「宇宙人を知的生命と定義すると、知的とはいったいどの程度の知性なのかと、だんだんとわからないテーマになってきますが、少なくとも会話や文明らしいものをもっているものをそう呼ぶとすると、これらがすでに太陽系のどこかの惑星にいる可能性はきわめて低いでしょう。もしそうならとっくに相手から地球という特殊で宝のような生命環境が見つかっているためです。宇宙飛行士は、誰しも宇宙から眺めた地球の圧倒的なきれいさ、すばらしさに心を奪われるといいます。漆黒の闇にうかぶ、青くみずみずしい私たちの惑星のよさを日々実感できたら、環境問題や地球規模の紛争にももっと真剣になれるのかもしれませんね。」
—『面白くて眠れなくなる宇宙』高水 裕一著
「 宇宙人を知的生命と定義すると、知的とはいったいどの程度の知性なのかと、だんだんとわからないテーマになってきますが、少なくとも会話や文明らしいものをもっているものをそう呼ぶとすると、これらがすでに太陽系のどこかの惑星にいる可能性はきわめて低いでしょう。もしそうならとっくに相手から地球という特殊で宝のような生命環境が見つかっているためです。」
—『面白くて眠れなくなる宇宙』高水 裕一著
「 私が考える生命を宿す条件は、水、火山、リズムです。最後のリズムとは、月といった太陽とは違う第二の天体の影響が生命にとって大変重要であったという点をあげています。地球にとって月はあまりに都合がよい距離感にいます。」
—『面白くて眠れなくなる宇宙』高水 裕一著
「日食は古代人にとって一大イベントでした。宗教的にこれを利用した記録も人類の歴史ではたくさん残されています。しかし、よく考えてみると不思議で、月より 400倍も大きい太陽と、ちょうど同じくらいに見える位置に、今の月が太陽との距離 1 A Uに対して、 400倍も近い位置(約 40万 km)にいるから、文明を営んでいる生命期間に「互いが同じくらいの大きさで重なる」現象を目撃するのです。」
—『面白くて眠れなくなる宇宙』高水 裕一著
「優れた想像力は研究者だけのものではありません。 SF映画は想像力が一番の肝です。人間の想像力はときに科学にも大きな影響を与えることさえあるのです。「スター・ウォーズ」シリーズでは、2つの太陽が登場するシーンが 1980年にスクリーンに映し出されています。当時は、太陽系以外の惑星系すら見つかっていない時代です。現在は、 5000を超える系外惑星が見つかっており、その半数は太陽が複数あるものが占めています。人間の想像力が先をいって、あとから科学で明らかになるというケースも多々あるのです。」
—『面白くて眠れなくなる宇宙』高水 裕一著
「しかしその後、制御が不能となったようです。ふつうは役目を終えたロケットは制御しながら海に落下させるのですが、制御できないと、どこに落ちるのか不明でリスクが高まります。世界的にはデブリ(残骸)の扱いで中国は過去にも非難されることが多く、今回もそうなりました。いずれにしても、中国独自の宇宙ステーションは完成へとまた一歩近づいたようです。今後、月の土地、資源をめぐる世界各国の動向も気になり、ますます中国、アメリカの二大国の宇宙競争が過熱してくるはずです。」
—『面白くて眠れなくなる宇宙』高水 裕一著
「シュメール人という謎の民族です。このメソポタミア文明を根本から築いて、突如として歴史の舞台から姿を消します。彼らは民族、人種の系統的にいったいどこから来たのか? そしてどこへ行ってしまったのか? じつは彼らこそ宇宙人であったなんて説まであります。それくらい人類の文明に決定的でミステリアスな存在なのです。 どう決定的かというと、暦や数学に関することはほとんどこの時代の予熱で今もやっているようなものなんです。 たとえば 60進法も彼らの発案。円を 360度に分割して 1度を定義したことは、太陽のまわりを公転する(地球が動き公転していることはもっとあとのコペルニクスの時代)日数と深く関係します。 1年が 365日であることも観測で彼らがつきとめました。この2つの数値を近いとみて、 5日をある意味切り捨てて、円を 360分割しようと考えたわけです。」
—『面白くて眠れなくなる宇宙』高水 裕一著
高水裕一本面白い
「ペンローズ博士は、イギリス・オックスフォード大学の教授で、昔はケンブリッジ大学のホーキング博士とともにイギリスを代表する物理学研究の二大スターという感じでした。 2人は、特異点定理とよばれるブラックホールの中心部分で形成される特異点に関する論文で共同研究し、それ以降もさまざま局面で研究や、対談を交わし、両者熱い意見交換を生涯繰り返してきた、いわば盟友です。 76歳で先にこの世を去ったホーキング博士は、ペンローズ博士よりも年下です。ペンローズ博士は、今年で 91歳、もしホーキング博士が生きていたら 80歳でした。ブラックホールの理論的貢献ということでしたが、おそらく、ペンローズ博士の業績でいえば特異点定理が一番大きな貢献だと思います。 物理学者でしたが、どちらかというと数学者に近い立ち位置の彼は、ホーキング博士とともに、一般相対性理論において、いかに一般的に特異点が形成するかということを、きちんとした数学的条件として整備し、定理として確立しました。 これまでは、単に均一な球型の時空でのみ形成されると考えられていた特異点ですが、より一般的に形成される数学的条件を導いたということです。この特異点での物理が、前に触れた4つの力の大統一理論の予言能力のカギとなるお話や、特異点が見えないように、必ずブラックホールで囲まれているとした「宇宙検閲官仮説」の話題も、まさにこのテーマに直結しています。 ですから、亡くなったホーキング博士が、空の上から、ペンローズ博士の 2020年のノーベル物理学賞受賞をじつに羨ましがったのではないかと、つい想像してしまいます。」
—『面白くて眠れなくなる宇宙』高水 裕一著
「 私たちが知っている物質は宇宙において、 5%未満というのを知っていますか。 まだまだ未解明なもので 9割以上満たされているのが宇宙なのです。 そのうち、およそ 3割がダークマターという光と反応しない物質。残りの大部分は、ダークエネルギーという物質なのかさえわからない未知のエネルギーで満たされていることが、宇宙衛星の観測によりここ 10年でわかった事実です。」
—『面白くて眠れなくなる宇宙』高水 裕一著
「この本は私にとって、とても感慨深いものです。 PHP研究所は、松下幸之助さんの哲学、思想を世に発信するために設立されたと聞いています。 もちろん、私も彼の思想、考え方に共感して、何冊も書籍を読みました。 また実をいうと、個人的なつながりも大きいのです。 祖父は松下幸之助さんに気に入られ、今のパナソニックの前身である松下電器産業とつながりのある企業の会長を長年していました。 おじいちゃん子であった私にとって、幸之助さんのお話は毎年のように小さい頃からまるで絵本を読み聞かせるかのように、肌に染みついていました。 祖父の家に飾られている、幸之助さんの書、「青春」については、正月に親戚が集まるたび心の中で復唱していたほどです。」
—『面白くて眠れなくなる宇宙』高水 裕一著
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Posted by ブクログ
「惑星際宇宙ステーション」という架空の場所を舞台にしたフィクション。でも、主人公と相手(宇宙人)との会話はきちんとノンフィクション。
文章が柔らかく、わかりやすい→
言葉で書かれているので、理系知識ゼロの私でもすっごく楽しめた!!
これ、シリーズ化して欲しい。マジで。
主人公がいい人なんだよなぁ。あと、土産物屋のヨーダ(仮名)が好き。
宇宙での太陽の位置や、地球人が何でできているかなど、普段の暮らしでは考えないだろうなぁってことを→
考えるの、すごく楽しかった。普段使ってない部分の脳みそを使った気分。
きちんとラストはハピエンだったし、ぜひ!続編を!ブルーバックスさんお願いしますー!!! -
Posted by ブクログ
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高水裕一
一九八〇年東京生まれ。早稲田大学理工学部物理学科卒業。早稲田大学大学院博士課程修了、理学博士。東京大学大学院理学系研究科ビッグバンセンター特任研究員、京都大学基礎物理学研究所PD学振特別研究員を経て、二〇一三年より英国ケンブリッジ大学応用数学・理論物理学科理論宇宙論センターに所属し、所長を務めるスティーヴン・ホーキング博士に師事。現在、筑波大学計算科学研究センター研究員を務める。専門は宇宙論。近年は機械学習を用いた医学物理学の研究にも取り組んでいる。著書に『知らなきゃよかった宇宙の話』(主婦の友社)、『時間は逆戻りするのか』『宇宙人と出会う前に読む本』(ともに講談社ブルーバックス)、『物理学者、SF映画にハマる』(光文社新書)。
数式のすばらしさは、見た目のシンプルさと奥深さにあります。本書で登場するアインシュタイン方程式は、宇宙を支配している数式の代表例です。たった1行のこの文字列の中に、ブラックホール、重力波、さらに宇宙全体のことまで実にさまざまな対象が含まれ、数式自体がそれらの豊富な情報を、まるで語り部のように我々に「語りかけて」くれます。2章のルイ・ド・ブロイという学者の数式では、たった3文字で自然界の真理を語っている。
さて、このフリードマン方程式と似たような宇宙膨張を表す数式として、レイチャウデューリ方程式があります(図1-2-2)。すごい名前ですが、インドの物理学者の名前です。
この式の名前、ポアソンは、フランスの数学者・物理学者のシメオン・ドニ・ポアソン博士に由来します。父には医学の道を勧められましたが、不器用であったことから数学の道に進んだといわれています。惑星の運動などに強い関心があったようです。ここでは重力に関するポアソン方程式だけでしたが、電磁気学におけるポアソン方程式もあります。ほかにも流体を扱う流体力学でも重要な意味をもっている広いクラスの一般式の名称です。
このテーマは、量子論の確率解釈という、現在も最終的には解決されていない謎を含んでいます。量子論に精通した物理学者であっても、このような深い量子論の神髄を最終的に理解している人はいないといっていいと思います。 現在は、数式にしたがってどのように計算すれば、素粒子のふるまいが説明できるという仕組みがあるだけで、このステージの裏でいったい、本当は何が起こっているのか、究極的にはブラックボックスの部分が残っているということです。 理解できるようでいて、量子論の本当の奥深い不思議さと神秘性が、依然として消えないことだけ頭に入れてもらえれば十分です。直感で理解しようとすればするほどドツボにはまっていく、そんな世界なのです。
そんな革命的な式によって量子論の世界を切り開いたシュレディンガーですが、私生活でも実に興味深いものがあります。ネットで写真を調べてみると、一見めちゃくちゃハンサムというわけではありませんが、シュッとした顔立ちと少しアンニュイで魅惑的な瞳をしています。
物理以外にも、東洋哲学にも強い関心をもっており、ヒンズー教のヴェーダーンタ哲学にも強い影響を受け、量子力学の根底にもこのような東洋哲学の諸原理が見受けられると『精神と物質』で語っています。ほかにも『生命とは何か』という本では生物と物理という遠い世界をつないでみるなど、実にその好奇心は幅広く、人間的魅力にあふれています。
かのアインシュタインも実にお盛んであったという噂があったり、リチャード・ファインマンというアメリカのノーベル賞受賞物理学者も、毎週のように別の彼女がいたという色を好む性格だったようです。科学者とは善なる人という教育的側面があるので、あまりこういった面を掘り下げるような資料がありませんが、考えてみれば、好奇心の固まりである彼らが、数式以外に心が惹かれないわけがないでしょう。むしろ人間味があって、私はかっこいいとも思ってしまいます。実に魅力的なシュレディンガー、興味がわいた方は、ぜひ彼の写真をもう一度眺めてみています。
なぜそのような形にすることにこだわったのかというと、学術的理由もあるのですが、彼の美的センスも大きかったように思うのです。彼の座右の銘として、「法則は数学的に美しくなければならない」というものがあります。
結果的に、この方程式から自然にスピンが導かれ、さらにおまけとして、負のエネルギーをもつ反粒子も出てきます。またこの反粒子が時間を逆向きに進むと解釈できることが後にわかります。ディラックはこの負のエネルギーをもつ粒子がこの世に存在していないことの理由として、「ディラックの海」という概念を導入します。真空がこの負のエネルギーをもつ粒子で満たされているという考えです。 「ディラックの海」は「エヴァンゲリオン」シリーズにも、主人公が捕らわれた空間として登場します。現在では、このディラックの海は、概念として用いられておらず、場の量子論の完成によって過去のものになっています。
しかしこの反粒子は、のちに陽電子として見つかることになります。勝手に式から出てきたものが、実在の世界に突如現れたのです。それは式の発見者、ディラックさえ全く予想しない形で。数式が、発見者の意図も超えて世の新たな真理を勝手に語っているさまが、垣間見えたでしょう。
物理学と数学も関わりは、常に相補的です。ときには先行している新しい数学を使って、物理学の理論体系の基礎に用いる場合、またあるときは物理学が先にある概念を提唱し、その数学的整備のために後づけで理論体系を強化するときに用いる場合があります。今回は、まさに後者に近い立ち位置です。
似たような数学と物理の例が、量子論にもあります。 量子論も概念が先行し、基礎方程式ができあがりますが、あとからそれを展開する数学的空間が整備されました。それが、「ヒルベルト空間」というものです。今度はヒルベルトの手づくりチョコ告白か! と期待しますが、少し状況が違いです。
相対論の父はもちろんアインシュタインですが、相対論の母くらいに貢献した人物です。あのアインシュタインに、「彼は私個人にとって、これまで人生で出会った、もっとも重要な人物です」と言わせてしまう人、それがローレンツなのです。 電磁気、相対論以外にも、彼は流体力学、固体物理学、熱力学と実に幅広く研究を行っていました。これを機会に、左手であの形をとるときにはフレミングだけでなく、ぜひローレンツの名前をあわせて思い出してあげてください。
マクスウェル博士の研究は実に多岐にわたります。電磁気で有名な彼ですが、熱力学でも「マクスウェルの悪魔」や、気体の分子運動論の「マクスウェル・ボルツマン分布」でも有名です。また虹の研究も熱心に行っており、はては土星の環の研究までと、興味の幅の広さがすさまじいです。 これほど偉大な物理学者でしたが、ノーベル賞は受賞していません。というのも、ノーベルの遺言によりこの賞が設立されたのは1901年のこと。彼が亡くなった1879年のもう少しあとだからです。 アルフレッド・ノーベルが亡くなったのが1896年なので、同時期といったところでしょうか。ノーベル賞があと少しでも早くはじまっていたら、間違いなく彼が第1号であったはずです。ちなみに第1号の物理学賞は、レントゲンで有名なヴィルヘルム・レントゲン博士です。第2号が、あのローレンツ博士とその弟子ゼーマンでした。
私も教員として実際に学生に熱力学を教える立場になって、自分で再度この分野の学習をしたことで初めてその真意の深さを味わい、奥深さを痛感しました。勉強とは、まさに何度も読むべき小説のような味わいがあります。
この数式に限らず、数学者ガウスの発見のドラマは、数冊の書物にできるほど膨大です。1人の人物がいくつの業績を人生で成し遂げられたかのランキングをつけたとしたら、おそらく彼がトップ5に入るのは間違いないでしょう。 改めて、本名、ヨハン・カール・フリードリヒ・ガウスの人生における業績をざっくりと振り返ってみましょう。ドイツで1777年に生まれたガウスは、年少の頃から並外れた神童っぷりを発揮しています。 言葉をきちんと話す年齢になる前に、すでに誰から学ぶことなく計算を行っていたということです。家業はレンガ職人であり、両親とも学問とは無縁であったので、まさに数学の神様が送り込んだ神童といえます。
15 歳の頃の逸話として、彼は素数に強い関心をもち、その出現確率を求めました。素数とは、それ自身と1以外で割ることができない数です。2、3、5、7と続き、100までの素数は全部で 25 個です。さらに1000までの素数となると、その個数は168個しかありません。 彼は、素数がどのような分布をしているかに非常に関心があったということです。これは100年後に証明される素数定理になっています。中学生くらいの少年が100年後の数論の難問を立ててしまうスケールのデカさに驚かされます。
ガウス自身が生涯の自分の業績の中で、もっとも関心が高かったのは、この数論であったと語っています。 24 歳のとき、天文台で働いていた彼は、計算によって軌道から小惑星ケレスを見つけ出します。
そんな彼の輝かしい業績の歴史ですが、本当に幸運だったのは、彼が 77 歳という当時として十分すぎるほど長生きができたことです。多くの天才が若くして亡くなっていることを思うと、彼のような大天才が1秒でも長くこの世にいてくれたことが、のちの人類にとってラッキーであったといえます。数学の申し子のような天才のドラマに興味があれば、ぜひ別の本でご覧になってます。
数学に携わる研究者が、1つだけ好きな数式を選んでくださいと聞かれたら、おそらくランキング1位になるであろう数式です。「自然科学において、もっとも美しい数式」と称されています。
数学界の2大巨頭が、 19 世紀のガウスと、 18 世紀のこのオイラーであるというお話をしました。彼は数学者であり、天文学者、物理学者でもあります。幅広さは、ガウスに引けをとりません。 もっとも驚くべきは、 76 歳までの生涯に残した業績の多さです。解析学、幾何学、整数論をはじめ、多くの分野で業績を残しその数が群を抜いている偉人です。晩年は右目が見えなくなっても、脳内で執筆した論文を口述筆記によって世に残していました。「どこかのドラマで見たことのある、空中に数式を描くガリレオ先生さながら」
数学史上もっとも業績を残した人物として有名なエピソードとして、没後100年以上経った1911年に彼の全集が刊行されましたが、刊行開始後100年以上たった現在でも、それがいまだに完結されていないというとんでもない状況です。 今も日々、オイラーの論文から新しい発見がなされており、考古学ならエジプトのピラミッドさながらの偉大さです。
彼はおそらく人類史上、もっとも異質な天才だからです。 それは神様にお祈りをささげることで、数式を脳内に描くことができる能力者だからです。もはや、科学の視点で書く本で扱ういい方ではない気がしますが、事実だから仕方ありません。インドに生まれた彼は、熱心なヒンズー教徒であるとともに、数式の魅力にとりつかれていました。美しい数式を見つけては、それを地面に書き記し眺めていました。 彼の波乱のドラマは、映像としてぜひ映画『奇蹟がくれた数式』をご覧になることをお勧めします。いくつも美しい数式をノートいっぱいに書き連ねて、それをイギリス・ケンブリッジ大学に送ります。 ここで注目すべきは、彼は自分が見出した数式を、自分で一切証明することができないという奇妙さです。ふつう、数学を研究している人なら当然知っているべき証明方法を彼は知らなかったのです。自分で示すことができて初めて意味のある数式が完成します。しかし彼の場合は、神様が教えてくれることで先に答えがふってくるのです。なんじゃそりゃと突っ込みたくなりますが、それほどぶっ飛んだ天才だということです。 この本で紹介している、「美しい数式を書いて眺めてみよう」を地で行い、地球上で唯一神様に選ばれ、ご利益を授かっていた人物なのです。 そんなただの落書きと同じ数式なんて、ふつうは誰も見向きもしません。しかしこれも運命的なもので、ケンブリッジ大学の数学者ハーディ教授の目にだけは、強烈な光を放って輝いて見えたのです。「これはただ者ではないぞ」と瞬時に感じとってしまいます。
神様がこの宇宙を創造し支配しているとすれば、数式とは、森羅万象をもっとも正確に記述することができる、まさに神様の言語といえます。人類がいかに優れた知性をもっていたとしても、この先それら数式を完全な形で1つの数式にまとめ上げることはできないでしょう。本書で登場する数式も、それぞれさまざまな現象を記述できる圧倒的な力をもっていますが、1つが表現できるのは、自然現象のあくまで一部だけだからです。
実は数式アイドルの魅力を語るための本を書くにあたって、乃木坂 46 さんの番組を視聴しはじめました。すると不思議なことに、重力なら古典的な力だから昔からいる人、ブラックホールなら万能で安定感のある人、量子論ならミステリアスな人と、具体的に一人一人に数式が当てはまっていきました。 -
Posted by ブクログ
宇宙にある物質(物質じゃないモノも含むが)を擬人化し、最も強いモノを決める一冊。
最初は星同士の争いだったが、最後はあまりにも強大なエネルギーの登場で一瞬で勝敗が決してしまう。
本書を手に取る方は、決定戦を行うまでもなく、某エネルギーが頂点だと理解しているはずだ。そのため、高水氏の試みはやや空回りしてしまったように感じる。
しかし、宇宙の構成を学びたい方には非常に有用である。特に、最終章で語られる「時間が巻き戻る原理」を本書以上に簡明に解説することは困難ではないだろうか。
本書の設定に慣れるまでは読みにくさがあるが、後半になるにつれ加速度的にページをめくる手が速まった。 -
Posted by ブクログ
SF映画は大好きですが、細かいところが気になってしまうこともあります。
例えば、こんな事が気になります。大好きな映画の一つ「エイリアン」は、宇宙船ノストロモ号の中での出来事ですが、あたかも重力があるかの如く、皆さん普通に歩いて生活しています。どんな仕組みなのかが、気になるのです。(スター・ウォーズもそんな世界ですよね。)こんな些細なことは気にならないくらい、映画本編は面白い作品なので些細なことは忘れてしまいます。本書にはそんな私の疑問に答えてくれるようなものは登場しませんでした。
本書を読んでの一番の発見は、ISS(国際宇宙ステーション)がなぜ無重力に近い環境になっているのかということを知ることができたことです。
私は、単純に宇宙空間にある施設なので、無重力なのかと思っていました。
そんな単純なことではないことが、本書で学ぶ事ができます。
ISSは地上から約400kmの距離に浮かんでいます。この距離での重力を計算すると地表の重力に対して88%程になるそうです。では、なぜISSは無重力状態になっているかお分かりになりますか?知りたい人は、本書をぜひ読んでください。私は思わず膝を打ちました。もちろん、すでにご存知の方もいらっしゃるかとは思います。そんな方も楽しめるネタが本書には詰まっています。タイムトラベル、宇宙人との接触、ブラックホール、など映画の展開に合わせて解説してくれます。ここで紹介されている映画をご覧になってから本書をお読みになることをお勧めします。
本書で登場する映画は以下の通りです。
バック・トゥ・ザ・フューチャー
デジャヴ
TENET
ターミネーター
HEROES(テレビシリーズ)
ゼロ・グラビティ
ファースト・マン
オデッセイ
インターステラー
スター・ウォーズ
メッセージ
V(テレビシリーズ)
さぁ、傑作SF作品ばかりです。映画も楽しみ、本書も楽しんでください。笑 -
Posted by ブクログ
他の惑星は、太陽や月が複数あって、日の出と日没の時間が短かったり,長かったりするかもしれない。
青色の波長の太陽と赤い波長の太陽の連星のある惑星では、夕焼けの色がピンクだったり、火星では大気が地球より薄く、塵が赤を散乱させやすいから、昼が赤色で夕焼けが青色になる。
月が3つある惑星では、夜はミッキーマウスのような月が見えるのかもしれない。
普段、地球にいると当たり前なことが、宇宙だと違うかもしれないという話にワクワクした。
他にも、惑星は太陽を追いかけるようにらせん上にジェットコースターのように秒速240キロ(10秒で日本縦断の速度)で動いていること。
138億年前にビッグバンの3000年後に発生した世界最古の光CMBの解析を研究している人たちがいること。(この解析が進めば,宇宙の始まりの解明に近づき、インフレーション理論が証明されるらしい)
など、スケールの大きな宇宙の豆知識を楽しめた。
文系の私には所々難しい箇所もありましたが、分からないところサッと流して興味のあるところを読み進めました。 -
Posted by ブクログ
私たちは知らぬうちに同様のことを考えていると言うことである。例えば人間関係の悩みで言えば、恋愛などどこかで連続した要素として捉えているだろう。何かがあれば次に何かが、というように。しかし、もしやすればそれは断片的に捉えるべきかもしれないと言うことだ。
「時を戻そう」、
お笑い芸人ぺこぱがネタ中に用いるフレーズで、まさにひみつ道具のようなものだ。
このフレーズ自体、割と時を戻すかそれ以上の効果を彼らにもたらしているようにも思える。
さて実現可能性はさておいて、「時を戻したい」と考えたことのある人はどれほどいるだろうか。巻き戻す、逆戻りするというと少しイメージと離れるかもしれない、「あの時に戻りたい」と考えたことのある人は五万といるだろう。
この作品はそんな「時を戻す」が本当に可能か、その可能性について物理学や量子力学の観点から思索を続けることが主題である。
一様に時を戻すと言っても、ワンフレーズで戻せるほど、単純明快なものでないことがわかる。
時間という存在を人類が生み出した歴史、相対性理論により歪む時空、量子力学という全ての物質の根本となる要素と時間の関係、混沌や広がりを続けるエントロピーの存在、時間の次元や量子重力理論、宇宙は膨張と収斂を繰り返すというサイクリック宇宙論、そして物理学を超えた認知学における時間など、扱われるテーマは非常に広域だ。
著者も記すように、専門用語を用いず初学者でもわかりやすいように執筆がなされており、読み進めること自体は容易いが、その分詳細な説明が省かれている部分も多く、それについては本作に直接関係のない要素も多いことから、読む上で障壁とはならないが、何せ扱う範囲の広さゆえ、前提として必要となる理系的知識の基礎体力が求められることとなる。またタイトルにあるテーマと、章ごとの接続を読み解いていく上でもそれらの体力を求められることとなり、私自身はそうした点から個々の内容について理解はできるが、通した内容としての認識が難点であった。
しかし本書を通し、物理学というテーマに関心を持てたことは間違えのないことである。それだけでも本書が与える効力は大きいと思われ、時間というテーマを物理学として扱うためには宇宙が関わり、力学が関わり、それらには重力やブラックホールが付随するなど、時間というテーマから物理学を横断した本書の功績は大きい。これらの知識に触れてから本書に再度触れることで一層の気づきをもたらしてくれるだろう。
現段階で私として印象に残った部分を紹介したい。物理学において、学者の思想に基づいて理論が構築されることがあるという点である。
少し誇張した表現ではあるが、アインシュタインが「光」を独裁者として、絶対的な要素として捉えたことで相対性理論を構築したこと、あるいはそんなアインシュタインが対称性を好み、量子力学に否定的な見解を示したり、この宇宙は静寂であり、可変しないと考えた「宇宙項」と呼ばれる概念を生み出したこと。
結果として前者は今にも引き継がれる偉大な大発見であり、後者は的中せず、しかし後世の学者たちによりそれがブラックマターと呼ばれる宇宙において斥力のみを持つ、まさにエントロピーの増大そのものを起因する要素であったことが発見されている。
アインシュタインでも間違えがあり、のちの人々がフォローすることがある、また前述のように物理学者たちが意外にもその研究に沿うように彼ら自身の思想を持ち合わせていたという点が非常に興味深い。
アインシュタインがキリスト教を嫌い、「光あれ」とした宇宙の創世に類似した「ビックバン理論」を好まなかったことや、ホーキングが神を疑い、同様に宇宙の始まりを虚数を用いることで0からのスタートとはしなかったことなど、未知の領域が大きいことから宗教と科学がどこかで接続があるという点について、本書でも指摘があったが、その接続は幾重にもなるものだと感じた。
またエントロピーに関する記述、
要は時間の一方向、「時間の矢」を決めているのはコーヒーにミルクを注ぐようなもので、時間を追うごとにそれらは混ざり、つまりは混沌としていくこと、それこそが時間が一方向である所以で、混沌としていくことがエントロピーの増大そのものであるとする考え。作中、「マクスウェルの悪魔」と呼ばれる思考実験が登場する。これは、簡素的に示せば混沌が段々と規律の取れたものになっていくというもので、時間の矢と逆行する、つまりは時を戻せるのでは、という考えだ。これはその後否定されるが、要は規律から混沌が時間の流れであり、混沌から規律は時間に反するという考え、これに基づいて本作は時間が戻せるかを思索し続けている。
その中で生物や星というものが、断片的に考察すると、エントロピーの減少を成しているという指摘がある。生物は、太陽エネルギーを光合成により得る植物やその植物を得てエネルギーを獲得、生成する動物を取り入れることで生命活動を持続させている。また星は、核融合反応を繰り返し、自身の引力により星が縮小しないようにその連続した活動を続けている。これらは確かに混沌から規律であり、生物で言えばRNAやDNAの生成とはまさにエントロピーの減少、逆行なのである。
これらに付随して指摘されていた認知学との関連が興味深い。この生物が持ち合わせた逆方向の矢には時間を巻き戻す要素が残されているというもの、また我々ホモ・サピエンスの脳の仕組みから、「連続」という要素をどう捉えているか、また「記憶」という要素への懐疑などが指摘されている。まず「連続」については「臨界融合頻度」という言葉が用いられる。つまり人間で言えば、1秒間に60回同様の動きが繰り返されるとそれをひとつひとつの要素として動きとして、ではなく連続したものとして認識してしまうというもの。俗に言う、「早すぎて止まって見える」というやつ。これは意外にもハトやハチよりも人間の方が捉える力に劣っているようだが、そもそもをもう少し拡大してみても面白いと思う。作中においては、要は私たちが連続して考えている時間も、本当は異常な速度で断絶された要素の連なりでしかない、つまり本当に「過去」から「未来」への動きであるのか、それ自体は脳がそう認識しているからであって、決してそれが真実とは限らないと言うものである。
私が考察したのは、その拡大であって、私たちは知らぬうちに同様のことを考えていると言うことである。例えば人間関係の悩みで言えば、恋愛などどこかで連続した要素として捉えているだろう。何かがあれば次に何かが、というように。しかし、もしやすればそれは断片的に捉えるべきかもしれないと言うことだ。第一印象や相手の印象は出会ってから数秒、数分で決まると言う論がある。これは心理学的な指摘であり、事実なのであろう。それを考慮すれば、人間関係に進展などはなく、それらは極めて断片的で、結果というものは毎回ほとんど変わらないのではないか、と思うのだ。その他、人間関係の悩みでも変わらない。結局のところ、人というものが本性的には非常に変わりにくいものであると考えられると、考察する。
また古代の人々の慧眼には感服せざるを得ない。時間を生み出したシュメール人、時空という考えを指摘していた古代中華民族、世界の根本には1匹の亀がいて、その上に3匹の象がいて、そして世界があり我々がいる。
そんなアイデアは現在の普遍的な宇宙論と接続がある、なんたるや古代文明、なんたるや人智と思う。
そして最後に著者やホーキングが私達に伝えてくれたこと、それは難解な要素や宇宙の根源を教授することはもちろんだが、それ以上に知的好奇心を持ち続けろということだろう。
突拍子のない発想が後世において方程式を用いられ証明されるかもしれない、そんな博打を掛けたっていい、そうした行為こそが自然を理解し、愛そうとすること。
ーもし宇宙に愛するひとがいなければ、それは大した宇宙ではないー
ホーキングの言葉を胸に、探究し知の接続をこれからも続けていきたい。