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物質には反物質があり、力には作用と反作用があるように、この世のすべてのものは、ほんのわずかな破れはあったとしても、対称性を持っています。ところが時間の進み方だけは対称ではなく、宇宙ができたときから現在まで、一方向だけに進んでいると考えられています。このことを「気持ち悪い」と感じている物理学者は少なからずいるようです。筆者もその一人です。
本当に時間は一方向だけなのか。宇宙は逆戻りしないのか。じつは時間も宇宙も、反復し、逆戻りしているのではないのか。一見、荒唐無稽なこの疑問を大真面目に検討してみることで、宇宙や時間についての新しい見方を呈示しようという狙いです。
量子重力理論研究の期待の新鋭にして、日本人としては最後の「ホーキングの弟子」ともいわれる著者が、量子論的な視点を突破口にして、「反復する時間」の可能性をわかりやすい言葉で探っていきます。
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Posted by ブクログ
私たちは知らぬうちに同様のことを考えていると言うことである。例えば人間関係の悩みで言えば、恋愛などどこかで連続した要素として捉えているだろう。何かがあれば次に何かが、というように。しかし、もしやすればそれは断片的に捉えるべきかもしれないと言うことだ。
「時を戻そう」、
お笑い芸人ぺこぱがネタ中に用いるフレーズで、まさにひみつ道具のようなものだ。
このフレーズ自体、割と時を戻すかそれ以上の効果を彼らにもたらしているようにも思える。
さて実現可能性はさておいて、「時を戻したい」と考えたことのある人はどれほどいるだろうか。巻き戻す、逆戻りするというと少しイメージと離れるかもしれない、「あの時に戻りたい」と考えたことのある人は五万といるだろう。
この作品はそんな「時を戻す」が本当に可能か、その可能性について物理学や量子力学の観点から思索を続けることが主題である。
一様に時を戻すと言っても、ワンフレーズで戻せるほど、単純明快なものでないことがわかる。
時間という存在を人類が生み出した歴史、相対性理論により歪む時空、量子力学という全ての物質の根本となる要素と時間の関係、混沌や広がりを続けるエントロピーの存在、時間の次元や量子重力理論、宇宙は膨張と収斂を繰り返すというサイクリック宇宙論、そして物理学を超えた認知学における時間など、扱われるテーマは非常に広域だ。
著者も記すように、専門用語を用いず初学者でもわかりやすいように執筆がなされており、読み進めること自体は容易いが、その分詳細な説明が省かれている部分も多く、それについては本作に直接関係のない要素も多いことから、読む上で障壁とはならないが、何せ扱う範囲の広さゆえ、前提として必要となる理系的知識の基礎体力が求められることとなる。またタイトルにあるテーマと、章ごとの接続を読み解いていく上でもそれらの体力を求められることとなり、私自身はそうした点から個々の内容について理解はできるが、通した内容としての認識が難点であった。
しかし本書を通し、物理学というテーマに関心を持てたことは間違えのないことである。それだけでも本書が与える効力は大きいと思われ、時間というテーマを物理学として扱うためには宇宙が関わり、力学が関わり、それらには重力やブラックホールが付随するなど、時間というテーマから物理学を横断した本書の功績は大きい。これらの知識に触れてから本書に再度触れることで一層の気づきをもたらしてくれるだろう。
現段階で私として印象に残った部分を紹介したい。物理学において、学者の思想に基づいて理論が構築されることがあるという点である。
少し誇張した表現ではあるが、アインシュタインが「光」を独裁者として、絶対的な要素として捉えたことで相対性理論を構築したこと、あるいはそんなアインシュタインが対称性を好み、量子力学に否定的な見解を示したり、この宇宙は静寂であり、可変しないと考えた「宇宙項」と呼ばれる概念を生み出したこと。
結果として前者は今にも引き継がれる偉大な大発見であり、後者は的中せず、しかし後世の学者たちによりそれがブラックマターと呼ばれる宇宙において斥力のみを持つ、まさにエントロピーの増大そのものを起因する要素であったことが発見されている。
アインシュタインでも間違えがあり、のちの人々がフォローすることがある、また前述のように物理学者たちが意外にもその研究に沿うように彼ら自身の思想を持ち合わせていたという点が非常に興味深い。
アインシュタインがキリスト教を嫌い、「光あれ」とした宇宙の創世に類似した「ビックバン理論」を好まなかったことや、ホーキングが神を疑い、同様に宇宙の始まりを虚数を用いることで0からのスタートとはしなかったことなど、未知の領域が大きいことから宗教と科学がどこかで接続があるという点について、本書でも指摘があったが、その接続は幾重にもなるものだと感じた。
またエントロピーに関する記述、
要は時間の一方向、「時間の矢」を決めているのはコーヒーにミルクを注ぐようなもので、時間を追うごとにそれらは混ざり、つまりは混沌としていくこと、それこそが時間が一方向である所以で、混沌としていくことがエントロピーの増大そのものであるとする考え。作中、「マクスウェルの悪魔」と呼ばれる思考実験が登場する。これは、簡素的に示せば混沌が段々と規律の取れたものになっていくというもので、時間の矢と逆行する、つまりは時を戻せるのでは、という考えだ。これはその後否定されるが、要は規律から混沌が時間の流れであり、混沌から規律は時間に反するという考え、これに基づいて本作は時間が戻せるかを思索し続けている。
その中で生物や星というものが、断片的に考察すると、エントロピーの減少を成しているという指摘がある。生物は、太陽エネルギーを光合成により得る植物やその植物を得てエネルギーを獲得、生成する動物を取り入れることで生命活動を持続させている。また星は、核融合反応を繰り返し、自身の引力により星が縮小しないようにその連続した活動を続けている。これらは確かに混沌から規律であり、生物で言えばRNAやDNAの生成とはまさにエントロピーの減少、逆行なのである。
これらに付随して指摘されていた認知学との関連が興味深い。この生物が持ち合わせた逆方向の矢には時間を巻き戻す要素が残されているというもの、また我々ホモ・サピエンスの脳の仕組みから、「連続」という要素をどう捉えているか、また「記憶」という要素への懐疑などが指摘されている。まず「連続」については「臨界融合頻度」という言葉が用いられる。つまり人間で言えば、1秒間に60回同様の動きが繰り返されるとそれをひとつひとつの要素として動きとして、ではなく連続したものとして認識してしまうというもの。俗に言う、「早すぎて止まって見える」というやつ。これは意外にもハトやハチよりも人間の方が捉える力に劣っているようだが、そもそもをもう少し拡大してみても面白いと思う。作中においては、要は私たちが連続して考えている時間も、本当は異常な速度で断絶された要素の連なりでしかない、つまり本当に「過去」から「未来」への動きであるのか、それ自体は脳がそう認識しているからであって、決してそれが真実とは限らないと言うものである。
私が考察したのは、その拡大であって、私たちは知らぬうちに同様のことを考えていると言うことである。例えば人間関係の悩みで言えば、恋愛などどこかで連続した要素として捉えているだろう。何かがあれば次に何かが、というように。しかし、もしやすればそれは断片的に捉えるべきかもしれないと言うことだ。第一印象や相手の印象は出会ってから数秒、数分で決まると言う論がある。これは心理学的な指摘であり、事実なのであろう。それを考慮すれば、人間関係に進展などはなく、それらは極めて断片的で、結果というものは毎回ほとんど変わらないのではないか、と思うのだ。その他、人間関係の悩みでも変わらない。結局のところ、人というものが本性的には非常に変わりにくいものであると考えられると、考察する。
また古代の人々の慧眼には感服せざるを得ない。時間を生み出したシュメール人、時空という考えを指摘していた古代中華民族、世界の根本には1匹の亀がいて、その上に3匹の象がいて、そして世界があり我々がいる。
そんなアイデアは現在の普遍的な宇宙論と接続がある、なんたるや古代文明、なんたるや人智と思う。
そして最後に著者やホーキングが私達に伝えてくれたこと、それは難解な要素や宇宙の根源を教授することはもちろんだが、それ以上に知的好奇心を持ち続けろということだろう。
突拍子のない発想が後世において方程式を用いられ証明されるかもしれない、そんな博打を掛けたっていい、そうした行為こそが自然を理解し、愛そうとすること。
ーもし宇宙に愛するひとがいなければ、それは大した宇宙ではないー
ホーキングの言葉を胸に、探究し知の接続をこれからも続けていきたい。
Posted by ブクログ
最新の最新を追うならまたいくらかの進展が見られるものかとも思うが
いくらか触れてきた時間論や宇宙の存在論でも見知らぬままだった新たな概念に触れる機会となった。
時間を概念として捉える学究は思弁的なものに過ぎなくなりそうなものだが、より鳥瞰的に捉えるとそれは存在やそれが依拠する宇宙というフィールドへの探索も兼ねる壮大なものとなるのだろう。
本著においては難解な数式を扱うでもなく、適宜図解もされていて、古代から連綿と続けられてきた時間と存在への探求は現代科学のもとではこのような段階に至っているのだと端緒としては手に取りやすいものとなっている。
Posted by ブクログ
時間というテーマに対して様々な理論を用いて考察をしている一冊。
難しい言葉が少ないので物理学に明るくない人でも読める、と言いたいところだが、難解な理論を扱っているため理解が及ばないところもあるし、時間への複数の解釈について思考を巡らす必要がある。
私は「TENET」という映画を見て時間遡行について興味が湧いたので読んでみたのだが、予想以上に話が複雑で宇宙という専門家でも意見が分かれる得体の知れないものをどう捉えていくか考えると頭がパンクしそうになる。
しかしながら、本書を読んだことにより名前だけ知っていた量子力学やエントロピーについて触れることができたし、サイクリック宇宙や人間原理など面白そうなトピックをさらに知ることができたので満足している。
知識をもう少し付けてから再度読むのも面白そうだなあと思った。
(捕捉)
確かに本書は簡単な読み物ではないが、著者と編集者の手によって読みやすい本となっていることも記しておく。興味を持って本書を手に取ったなら時間を忘れて読み進めることができるはずだ。
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