ベルンハルト・シュリンクのレビュー一覧
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いい本だった。
読むと分かるけど、この本には確実に伝えたい事がある。でもそれをオブラートに包むどころか、殆ど匂わないように封じ込めて、年の差カップルの恋愛としてお話が始まる。
第一部は、恋愛の行く末。私は女性だけど、主人公と一緒にハンナに恋をする。
第二部は、法学部教授である作者の本領発揮どころ。法学を学ぶ人が読むと、感じることが違うのではないだろうかとい思わせる内容。黒と白の狭間で揺れる主人公。
第三部は、ハンナとの穏やかな関係と意外な終焉。
ドイツというと、、、という話を想像したが、逆の立場からの話で私にはその方が共感できる。人は弱い生き物で、よく考えもせずマスコミに煽られ、現在の -
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親子ほどの歳が離れた二人の情愛と突然の別れ、そして戦争の影を伴う再会のお話
以下、公式のあらすじ
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過去に犯した罪をどのように裁き、どのように受け入れるか――。
数々の賛辞に迎えられて、ドイツでの刊行後5年間に25カ国で翻訳され、
アメリカでは200万部を超えるベストセラーに。
15歳のぼくは、母親といってもおかしくないほど年上の女性と恋に落ちた。「なにか朗読してよ、坊や!」──ハンナは、なぜかいつも本を朗読して聞かせて欲しいと求める。人知れず逢瀬を重ねる二人。だが、ハンナは突然失踪してしまう。彼女の隠していた秘密とは何か。二人の愛に、終わ -
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前半の青年の妄想小説のような展開はなかなかインパクトがあるが、中盤以降、ムードは打って変わり、過去の隠された事実、ハンナを取り巻く悍ましい事実が明らかになる。前半が濃密な生の時間だとすれば、裁判以降の章は死の時間のような。時間は前に進んでいるはずなのに、主人公の意識は後ろへ後ろへと遡り続けている。ハンナを愛することは、先代の大きな過ちを肯定することになるのか?次代の子は過去にどのように対峙すればよいのか?もはや歳の差恋愛の物語にはとうに収まらず、加害の歴史をその直接の経験がない世代はいかに受け止めることができるかという、歴史認識のあり方を読者に問う物語だった。この問いは、日本人にも投げかけ考え
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赦しと別れ
癒しと別れ
目覚めと別れ
裏切りと別れ
若い時に絡まった糸は、歳をとってからでも解すことはできる。それはまるで、深いところにしまってあったものをもう一度表に出すように、別れ、離れていく。
死は別れのプロセスの終着点
その時点で別れられなかった事は、もうずっと離れない。
作者の淡麗でどこか妖艶な文章が彩る九つの物語は、確かに男目線である事は否定できないし、歳を取っても男性なんだなぁ。
自分が歳を取ってしまうと、老齢期を描いた物語は、古い日記を覗き見されたような妙な生々しさが伴ってしまう。
なんともいえず恥ずかしい。
でも、「老いたるがゆえのシミ」……現実では、こんな結末は滅 -
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ネタバレ主人公はほぼ全員男性だったが、読み進めるにつれて、それを意識させられる本だなと思った。もし女性目線の「別れの色彩」だったら、これほど昔の恋人や妻を振り返り、そこに湿っぽさを感じることはないように思ったけれど、どうなのだろう。
短編にも関わらず、どれも人生がきゅっと凝縮されているところはすごいと思った。
お気に入りは、自分のせいで障害者となった弟を持つ姉とその姉に恋をしていた主人公が再会する「姉弟の音楽」、夫婦で自殺した兄と兄ともてなかった繋がりに折り合いをつけようとする弟の心境を描いた「ダニエル・マイブラザー」。
(幼少期、病弱だったゆえに親戚の家に預けられていた兄。「クリスは別れを告げな -
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【読み終わって感じたこと】
悲しく切ない物語だと思った。私にはハンナのプライドも、ミヒャエルの行動も全て理解できるわけではない。それでも、ハンナの生涯を思うと辛い気持ちになった。歴史について、教育について、愛について考えさせられる本だった。
【印象に残ったシーン】
ホテルでハンナが激怒したシーン。全てが明らかになってから考えると、本当に悲しいなと思った。どうして自分の秘密を打ち明けられなかったのだろう? それさえできていれば、結末は変わっていたかもしれないのに。
【好きなセリフ】
「苦しい結末を迎えてしまうと、思い出もその幸福を忠実には伝えないのか? 幸せというのは、それが永久に続く場合に -
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まず、題名がこれはなんだろうと思わせる。
それはあっと驚くこと、ミステリーではないけどここでは言えない。
15歳の少年ミヒャエルと36歳の女性ハンナとの恋愛。
なんだか新聞沙汰のようでしっくりしないんだけど、そんなこともあるかと読み進むほどに嫌な気はしない。
不思議なことに、彼女の家で逢うごとに「オデュセイア」や「戦争と平和」などを読んでとせがまれ、読みつづける。
そうして逢瀬を重ね、落第しそうな彼に「勉強しなさい!しないなら来ないで!」という。
『バカだって?バカってのがどういうことだかわかってないのね』という彼女の悲痛な叫び。
彼は勉強も頑張り、落第はしないが別れは来る。
7年後 -
Posted by ブクログ
オルガというポーランド系ドイツ人女性の人生を、第一部では主人公にして物語られ、次に彼女と親しくなった「ぼく」がその後のオルガとのかかわりを描き、第三部で、オルガ自身の書簡によって彼女の心の声を聴くことができます。戻ってはこない恋人にあてた手紙を、オルガの本当の人生を垣間見るよう気持ちで、主人公と共に次々と封を切って読みました。貧しい農村の生まれでありながら、誰にも頼らず一人で生き、第二次世界大戦を得ても自分の信念を曲げずに強く生きた女性。なんて強い人なんでしょう。最後の書簡ですべての謎が解ける仕組みに引き込まれて、飽きることなく読めました。心に残る作品です。