ベルンハルト・シュリンクのレビュー一覧

  • 別れの色彩

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     何かの書評での紹介を見て興味を持って読み始めた。短編集だが、言葉が極めて多い、読み続けるのに難儀する類の本だった。様々な人と人との出会いや別れが描かれていているが、日常の細々した出来事というより、季節の流れや長い歴史を持つ小都市の街並みを背景として描きながら、ひたすら回顧したり思索したりする話だった。人物が抱える困難な状況や哀しみも、複雑で一筋縄ではいかないものばかりだった。ヨーロッパやアメリカの小都市の街並みや郊外の自然に馴染みがないのでイメージが膨らまないというのは、鑑賞する上で障害になった。また、なかなかアイロニカルな展開や結末が、新鮮だが共感しづらく、普段読む日本の短編集と違っていて

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    2025年09月27日
  • 朗読者(新潮文庫)

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    ネタバレ

    第二章からグンっと重いテーマになった。

    2人だけの物語であれば、もっと違う結果になった気がするけど、ハンナの過去を考えると本の結末が妥当な気がする。主人公は手紙を書かなかったけど、きっと、書いたところでこの結末は変わらなくて、
    やっぱり重い。

    重いし、もっと違う結末を望むけど、読んで良かったと思える作品。

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    2025年04月04日
  • 朗読者(新潮文庫)

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    僕からみた市電の乗務員、過去ナチの女看守をしていたハンナ。裁判を通してハンナの過去を知る。僕はあの頃の楽しかった時のハンナを追っていただけ、何年も経って少しずつ裏切ってしまう。心がしんとする考えてしまう。

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    2024年07月31日
  • 朗読者(新潮文庫)

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    ナチ強制収容所の看守であり、同じドイツ人から有罪の判決を受ける。文盲であることが結果的に重罪となったが、育った環境、好んで看守になったわけではないことは想像できる。頑なにそれを弁明にしなかったことは、恥辱を受けることを避けること、表面的にわかっても深くは理解してもらえないであろう諦めも交じったものに感じる。主人公は、付き合っているうちにそうした彼女に気づく。主人公の苦悩は、戦犯者を身内に持ったとしたらどう考えるかと読者は投げかけられる。戦争はなぜ起こるのか、過去の歴史をどう活かすのか、の問いでもある。2024.5.12

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    2024年05月12日
  • 別れの色彩

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    感想。ベルンハルト・シュリンクは「朗読者」の著者。そんな事忘れていたけれど。9つの短編集なんだけれどどの話も年老いた人々が何かしらの「別れ」に遭遇した時の話。亡くなった人に対するもの、随分昔に別れた恋人にまた出会うもの、ご近所の幼い頃から見守り続けていた少女の死にで会うもの。そんな別れの時に脳裏に浮かぶのは思い出で、その思い出も明るさがあるだけではなく、後ろめたさや自己欺瞞、焦燥、そんな向き合いたくないものをちょっぴり混ぜ合わせながらつらつらと脳は過去を浮かび上がらせる。そんな別れの一つ一つが身に染みるのは私もそんな歳に近づいていっているのがわかっているからなのだろう。

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    2024年01月05日
  • 別れの色彩

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    年老いた男たちの振る舞いに、少しギョッとした話もあった。枯れきっていてもおかしくないような年齢の男たちの心を思いがけず覗いてしまったような、ヒヤリとするような気持ちに。
    もう少し私自身が歳を重ねたら味わいも変わるんだろうか。

    難しいテーマも多いが、それぞれの別れの受け取り方や傷を、読者も受け取って自分なりに味わえる、短編ならではの余韻も読み心地も好きだった。
    訳も素晴らしかった。

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    2023年11月11日
  • 別れの色彩

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    別れの形態を様々な事例から検証している短編が9本.舞台はアメリカとドイツだが、普通の人たちの生活が事細かに描写されており、日本との違いを実感した.どの話も楽しめたが「愛娘」でLGBTQ+の実態をのぞき見できた感じがした.女性同士の結婚を周囲が問題なく受け入れていること、当事者らが妊活に励むこと など日本の状況と大きく違った空気を感じた.義理の娘との行為の結果もある意味で起こりうるものだと思った.

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    2023年09月15日
  • 別れの色彩

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    この作者の作品はなんだかんだで読んでいるのだけれど、いつもあまりピンと来ない。『朗読者』でさえもそうだった。合わないのかもな。
    今回のこれは"老い"が時にコミカルで、なんかちょっと面白かった。

    若干ドタバタかなと思う『愛娘』がクスッと笑えてしまって、後味も悪くなく印象に残った。『島で過ごした夏』もありがちな”過ぎた青春の夏”もの?だけれど、最後の母のセリフに思わずジンとしてしまう。

    年をとったからこそわかる、しみじみする話が多かった。

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    2023年04月30日
  • 朗読者(新潮文庫)

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    かえりみちさんの選書

    ドイツ文学だけどとても読みやすく訳されている。
    自分の愛した人が戦争犯罪者だったらどうするか。
    自分たちの世代ではないのに、ナチ時代の過去を負の遺産として背負わされるとまどい。
    戦争が過去のことではなくなった今、より考えさせられる、哀しくも美しい本でした。

    ”愛を読む人”で映画化されているのでぜひ近いうちに観たいなぁ。(しかもケイトウィンスレットが主演女優賞を受賞されてる)

    _φ(・_・
    ”幸せな歳月だと思うと同時に語れるような思い出がない”
    ”思い出に別れを告げたものの、けっしてそれを精算したわけではない”

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    2023年03月20日
  • 朗読者(新潮文庫)

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    わかりやすく丁寧な翻訳で、細やかな心情描写が印象的だった。
    ハンナの存在に無言の圧力というか、凄みを感じたが、その印象も再読すると変わって感じるかもしれない。
    刑務所から出て、はじめて生身のまま罰を受ける気持ちになるのかと想像した。
    今後もこの本は、誰かの拠り所になったり、自分を見つめ直したり、責めたりするのに使われるのだろうなと思った。

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    2023年03月04日
  • 朗読者(新潮文庫)

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    ネタバレ

    感想がまとまらない…
    ドイツに、ドイツ国内で戦争犯罪を犯した人たちを裁いた時代があることを初めて知った。
    戦争は経験していないけど、二度と繰り返してはならない罪の歴史として教育された、親や愛した人が戦争の当事者でありえた世代の人たちは、身近な人が犯罪者であることに、どれだけたくさんのことを考えたんだろう…
    ヨーロッパの真ん中にあるドイツが負の歴史を抱えていることが、ヨーロッパの人たちにとって、どんなに身近な出来事で、記憶や文化として残っているのか、ナチズムを扱った本を読むたびに考える。
    日本も決して蚊帳の外の話ではなく、かつて戦争の時代を生きた人がいて、その子どもの世代があって、今がある…戦争

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    2023年02月11日
  • 朗読者(新潮文庫)

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    わぁ、こういう本だったのか。
    第一章を読んでいるときには、まさかこんな展開になるとは思ってもいなかった。

    めちゃくちゃに重いテーマ。
    ・時代や状況が違ったあとで、過去の事柄を裁くことができるのか。
    ・大切な人を守るために、その大切な人の守りたい秘密をつまびらかにしてしまう権利はあるのか。

    そして第三章、ハンナの選んだ選択肢

    ドイツ文学を読んだことが今までなかったけれど、これはドイツ人であるが故に書けるテーマ。

    戦時を生き抜いてきた親世代を子世代が軽蔑する権利はあるのか。口先だけで生きてはいけない。
    もちろん、命が無意味に奪われていいわけがない。

    人類は色々な経験をしているのに、後に活

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    2023年02月01日
  • オルガ

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    ネタバレ

    オルガの愛情深さに尊敬。自立心に共感。
    愛する幸福を愛される幸福より上におくゲーテに対しての、愛されている保証のうちに生きている人はそんな詩が書けるというオルガの感想が好き。
    死んだ人は貴族も農民も関係なく平等だから墓地を歩くのが好きなオルガが好き。
    中盤から散りばめられた謎が気になって、深夜まで一気読みしてしまった。
    後半の手紙はただただ切ない。
    オルガの揺れ動く心情がものすごく伝わってきて涙が止まらない。
    元の文章自体読めないけれど、翻訳者の人が上手な気がする。するする読める。
    そして改めてつくづく戦争は滑稽だと思う。
    これまでの歴史がすべてを物語っている。
    戦争反対。

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    2022年03月20日
  • 朗読者(新潮文庫)

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    再読。
    15歳の少年が、母親ほど年上の女性に恋をする。
    彼女が、隠していたのは、文盲だということ。
    どうしても言えない…その気持ちがなんとも切ない。
    朗読してもらうという、そのことに喜びを感じていたのか。
    別れ、出会いは、裁判所。
    やはり、何度読んでも救われない。
    残酷な愛…と感じてしまう。

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    2022年02月15日
  • 朗読者(新潮文庫)

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    ハンナを理解することは難しい。戦時はナチの看守として勤務し、移送中の事故の折にはとらわれていた人たちを見殺しにした。その後、ふとしたきっかけで出会った15歳の少年と関係を持ったというと、道徳心のない人物のようだけど、実際のハンナは激しやすくやや不安定とはいえ、普通の人に見える。「あの時私はどうしたらよかったの?あなたならどうしましたか?」という問いかけは切実だ。また罪が重くなることより文盲が知られることが彼女にとって耐えられなかったこと、恩赦を前に死を選んだこと、理由は想像できるが…。幸せいっぱいではないかもしれないけど、静かな余生を送ることもできたのに。理解が難しい。

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    2021年10月14日
  • オルガ

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    第一次大戦前のドイツ、祖母に引き取られたオルガは、農園主の息子ヘルベルトと仲良くなるが、農園主に反対される。ヘルベルトは英雄を夢見て北極圏の冒険に出かけるが、音信不通になってしまう。オルガは、祖母の反対を押し切り師範学校へ行き教師になる。行方のわからないヘルベルトに局留めの手紙を書きながら、オルガは第二次世界大戦を迎える。

    第一部は、オルガとヘルベルトの若い日々と、ヘルベルトがいなくなったあとのオルガの日々をオルガが語る。
    第二部は、大戦後オルガが親しくし家で裁縫をしていた家庭の息子フェルディナンドが、年老いたオルガを語る。
    第三部は、オルガの死後フェルディナンドが手に入れたオルガのヘルベル

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    2021年07月15日
  • オルガ

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    "墓地を歩くのが好きな理由は、ここではすべての人が対等だから、とのことだった。強者も弱者も、貧者も富者も、愛された者も心にかけてもらえなかった者も、成功した者も、破滅した者も。霊廟や天使の像や大きな墓石も関係ない。みんな同じように死んでいて、もはや偉大であることもできないし、偉大すぎることなんてぜんぜんない。"(p.102)


    "沈黙は学べるのだ――沈黙に含まれる、待機の姿勢によって。"(p.119)

    "要求は出さず、期待もせず、一番いいのは、言葉では何も言わないことです。"(p.170)



    "雪や氷、武器や戦争――

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    2024年06月13日
  • オルガ

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    遠く離れて時折にしか会えない人を、どうやって思い続け心を通い合わせることが出来るのだろう。そして会うことも叶わなくなった亡き人を。
    静かで強い。既読がつかなかったり返信がないだけで一喜一憂するような現代からは遠い強さ。多分、相手や相手との関係というより、自分自身の強さなのだろうな。

    オルガにも不安や悲しみや眠れない夜はたくさんあったはずで、そしてそれはその時代の女性たちには珍しいことではなかったはず、とも思う。
    我が身を問われる思い。

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    2020年07月22日
  • オルガ

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    格調高い文学の香りに包まれました。一生ヘルベルトへの愛を貫いたオルガは幸せですね。手紙一通一通から熱い思いが伝わります。腹を立て喧嘩するからこそパートナー、、オルガに教えられました。夫とはしっかりパートナーだったんだな。戦争を絡めて人の強い意志をあぶり出す、朗読者でも感じたことです。久しぶりにシュリンク氏の著作を読み、久しぶりにその魅力に浸れました。しばらく強く生きられそうです。

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    2020年06月26日
  • オルガ

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    個人の葛藤と世代的トラウマが折り重なる。

    苦痛と困難の時代。

    世界大戦、戦間期、再びの大戦、戦後。

    近代から現代へ急速な変貌、それはオルガにとっても、彼女の世代にとっても苦痛と喪失を伴うものだった。

    この物語に言うべき言葉はあまり見つからない。

    喪失を乗り越えるために必死に生き、届くはずのない手紙を送るオルガ。

    歴史は語られるものであって、読み解かれるものになる。

    翻訳あとがき(松永美穂氏)の引用『「シュリンクは不愉快な問いを投げかけることを忘れない」』

    まさしく、葛藤とは直面化したくないものだ。
    しかし、その葛藤から洞察を得たいと思うのも健全な人間の文化だとも思う。

    物語の

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    2020年06月10日