藤井保文のレビュー一覧
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中国などでの事例をもとに、オンラインとオフラインの主従が逆転する「アフターデジタル」という世界観とその世界における思考法である「OMO(Online Merges with Offline)」を紹介し、日本の現状に警鐘を鳴らすとともに、世界潮流から見たDXの方法論を提示。アフターデジタルの世界では、データ×エクスペリエンスの切り口が大事であると指摘。
DXと聞いて思っていたことの想像を超える目から鱗というか、刺激的な内容だったが、自分の思考回路が本書でいう「ビフォアデジタル」に染まっているようで、本書の内容を十分に理解できたとは言い難い。なんとなくはわかるのだが、具体的なイメージがまだまだ持てていない状態である。
オンラインとオフラインが連動した店舗展開をしているネットスーパー「フーマー」など、本書では中国のアフターデジタル型ビジネスがいろいろ紹介されていて、興味深かった。しかし、日本でこういうことをしようとするのは、良い悪いは別にして、個人情報に関する制度や意識の壁のため、かなり困難があるように感じた。
あと、本書では横文字を多用しすぎているように感じ、すっと頭に入ってこないきらいがあったところはちょっと残念だった。 -
Posted by ブクログ
■ニールセン・ノーマングループにおけるUXの定義
ユーザーエクスペリエンスとは、エンドユーザーと、企業およびそのサービスや製品とのインタラクションにおける、あらゆる状況を包括したものである。典型的なユーザーエクスペリエンスの第一要件は、いら立ちや面倒なく、顧客のニーズを正確に満たすことである。次に、所有や利用の喜びをもたらすプロダクトを生み出すような、シンプルさと気品が求められる。真のユーザーエクスペリエンスとは、単に顧客が欲しいと言ったものを提供したり、顧客が期待した機能のリストをただ提供したりするようなことよりもはるか先を行く。企業が質の高いユーザーエクスペリエンスを実現するには、多くの専門分野、例えばエンジニアリング、マーケティング、グラフィックデザイン、工業デザイン、インターフェースデザインなどをシームレスに統合することが必要である。
■DXとは
「デジタル技術を活用し、提供するユーザー体験および従業員体験を成長・進化させることによって、ユーザーとしての人々と、従業員としての人々の双方の生活に新たな成功をもたらす存在へと企業が変化・変身すること」
■人間の行動と選択は
「人間の心・深層心理(価値観、性格、信念、潜在ニーズ)」のみによって決まるのではなく、実際には「その瞬間に人間が置かれている状況・文脈」に極めて大きな影響を受ける
■「メカニズム解明型」のUX企画立案プロセス
「(1)ユーザーが成功を目指す道のりの中で遭遇しているペインポイント(=不自由や貧しさを感じる瞬間)を特定し、(2)そのペインポイントを発生させているメカニズムを解明すれば、UX企画の立案につながるインサイトを得られる」
■「既存サービスを抜本改善するUX企画」を立案する方法論
STEP1:行動フローの特定
STEP2:ペインポイントの抽出・構造化
STEP3:ペインポイントの発生メカニズムを理解
STEP4:UX企画の立案
STEP5:UX企画の評価・選別
STEP6:UX企画の統合・ジャーニー設計
■「既存サービスを抜本改善するUX企画」を検証・精緻化する方法論
STEP1:プロトタイプへの落とし込み
「コンセプトシート」を作成する
作業のコツ①ユーザー体験の解釈の余地をなくす
作業のコツ②UXの品質を担保できる根拠を明記する
作業のコツ③利用コストを明記する
作業のコツ④分業しない
STEP2:ユーザー調査
WHYを尋ねるのではなく、メカニズム探求型の枠組みにそって事実を集める
作業のコツ①事前の仮説を高い解像度で把握してからインタビューに臨む
作業のコツ②1日当たりのインタビュー人数は少なくする
STEP3:調査結果の分析・解釈
STEP4:UX企画のアップデート
■UX改善を着実に積み重ねるには
ポイント①設定した行動フローにおけるユーザーの行動の流れをデータで明らかにする
ポイント②明らかにしたユーザーの行動の流れを、ユーザーの立場に立って主観的に追体験する
■シーケンス分析
ポイント①現状のUX理解に絶対的な正解を求めない
ポイント②客観的な裏付けが必要な場合は、シーケンスの発生量を算出する
ポイント③新たにUX改善業務を構築せず、現行の業務サイクルに当てはめる
■行動ギャップの発見・要因分析
STEP1:シーケンスデータの観察・行動ギャップの発見
STEP2:行動理由の推察
STEP3:10人分繰り返し
【期待】ユーザーが( )と思っている中で
【顧客接点】現状の顧客接点が( )という作り・見せ方になっているため
【反応】ユーザーが( )と感じて/反応して
【行動】このような想定外の行動に至ったのではないか -
Posted by ブクログ
最適なタイミング、コンテンツ、コミュニケーションを捉えて価値提供するには、ユーザーの置かれた状況(ペインポイントや成したい自己実現)を把握してそれに対する解決策や便益を提供し、ユーザーと定常的な接点をなるべく高頻度に持つ必要があります。これは商品販売型のビジネスでは実現が難しく、「体験提供型ビジネス」に優位性が移行していくことを示しています。
NIO、NIU、ズールーは、いずれも商品に関わるペインポイントを解決するだけでなく、ユーザーにより良い生活スタイルを提案する形で、定常的に顧客との接点を持てる「体験提供型」のサービスに変化させています。これにより、商品販売型では提供できなかった顧客との新たな関係を作り出し、これを新たな優位性としながら、いつでも顧客の状態を知ることができています。前著に事例として挙げた「平安グッドドクター」はまさにこうしたモデルの先駆者であるわけですが、「売ること」「成約させること」にフォーカスするのではなく、顧客にずっと寄り添うことを重視することで、他社を圧倒し、人が人を連れてくるというモデルが、多方面に成立し始めているのです。
■第2章まとめ
(1)最上位に来る決済プラットフォーマーは、「決済機能を提供する」という考え方ではなく、それぞれの企業ミッションと元来のケイパビリティを生かして普及させていった。
(2)購入後に接点を持ちにくいメーカーや成約型ビジネスは、「ペインポイントを解決する便利系サービス」と「ライフスタイルに新しい意味をもたらすサービス」の双方に拡大し、顧客との定常的な接点を持つバリュージャーニーに変化している。
(3)これにより、「何かを購入する」という行動がサービスに埋め込まれ、サービスへのロイヤルティーやその利便性の中で「ついでに購入する」ような行動が当たり前になりつつある。これを「コマースの偏在化」と呼んでいる。
(4)上記のようにメーカーもサービサー化する中、その潮流を捉え、サービサー向けの支援を提供するtoB向けプラットフォームビジネスも生まれている。
■O2Oとは異なる
「先日、新宿を歩いていたら、近くにあるショッピングモールからメッセージが飛んできて、キャンペーンの情報を受け取ったのですが、これってOMOでしょうか」
…
私は質問してきた人に、まず聞いてみました。
「ユーザーとしてそれが便利だとか、自分に合ったうれしい情報だと感じましたか?」
するとその方は
「うーん、あまり便利とは思いませんでした。通知が送られただけなので」
とおっしゃるので、私は
「じゃあ、OMOではないですね。まったく顧客目線ではないですから」と回答しました。ただ単にオンラインとオフラインを融合させればよいという考え方は、結局のところアフターデジタル時代に必要な視点に転換していないので、本質を失った「単なるオンラインとオフラインの連携」と言わざるを得ません。
■データのマネタイズの3パターン
(1)マーケティング・広告に活用する
「この人はどのあたりで何をいつ頃買ってくる」という情報から、マーケティングソリューションを企業向けに提供して、そのソリューションフィーで稼ぐことができます。例えばアリババは、ECのシェアを半分以上押さえているため、ウェブ上での購買行動データも潤沢に持っています。モバイルペイメントのシェアも半分以上持っています。「リアルで消費された行動」の方をより参考にしたいという企業もあるので、リアルとデジタル双方を合わせた消費行動を基にマーケティングしたい、という企業にはより高いソリューションを販売できます。
(2)金融に活用する
どれくらいの支払い能力があり、どのような消費行動を取るのかが分かることで、主に個人向け融資の与信管理効率が良くなります。これによって明らかになった「信用度」を別の企業に展開して活用することで、他社もそれに依拠してサービス展開できる「信用スコアプラットフォーム」になり、ソリューションとしてのマネタイズも可能になります。
(3)インフラに活用する
人の動きのデータを活用し、交通や医療の効率を向上させることで、それ自体でのマネタイズは難しいが、スマートシティに対する投資や管理費用として、国、自治体、エンタープライズからのマネタイズが可能になります。
■データを持つ幻想と現実
【幻想】保持しているデータそのものが財産だと思っている。
【現実】ソリューション化して活用できないと、持っていても意味がない(漏洩リスクと管理コストのみが発生する)。
【幻想】社会レベルでの共有、または、他社とのエコシステムによってビッグデータ活用できると思っている。
【現実】データ突合には「目的設定の主導権争いとコストの壁」が立ちはだかり、1社が目的を持って主導しないと実現は難しい
【幻想】ペイメントデータさえ取れれば勝ちだと考える。
【現実】ペイメントデータで直接的にマネタイズする方法は限られ、ビジネスとビジョンに基づいた目的設定が重要である。
■アフターデジタルで提唱している「あるべきDX」
「デジタルとリアルが融合することで膨大で高頻度な行動データを使い、企業競争の原理が商品販売型から体験提供型になる、つまりバリュージャーニーを作って運用していくことを踏まえ、新たな顧客との関係性とはどのようなものであり、どのような体験を提供する存在になるべきかを考える活動である」
■第3章まとめ
(1)データエコシステムやデータ売買を中心に置いた「実現性の見えない大きな絵」ばかりを描かないように、データ活用や共有の幻想を解く必要がある。
(2)「デジタル」という手段にとらわれ過ぎず、デジタルとリアルの強みと弱みを正しく捉え、つなぎ合わせることで顧客との新たな関係を作っていくことにOMOの本質がある。
(3)「広範囲なデータでいかにマネタイズできるか」ではなく、「個社で取得できる行動データをいかにUXに活用するか」が鍵となる。
■「役に立つ」から「意味がある」へ
「役に立つ」=機能的便益の有無
「意味がある」=自己実現的便益の有無
■肝に銘ずべきこと
・「ユーザーが置かれている状況」に関する仮説を持つ。
・実ユーザーや消費者に当たってそれを検証する。
・「その不幸せな状況をどう改善するか、どのような幸せな状況にするか」という仮説を持つ。
・「幸せな状況」の企画が受け入れられるかを検証する。
■第4章まとめ
(1)デジタルとリアルが融合し、オンライン前提となったアフターデジタル社会は、UXとテクノロジーを使うことで1つの企業がアーキテクチャを作ることが可能になった。
(2)その分、データを悪用したり、ユーザーを監視・管理・コントロールしたりすることも可能で、こちらに進むと社会発展が止まるため、断固として防ぐ意志が必要になる。
(3)DX・UXに携わるすべてのビジネスパーソンは、ユーザーに不義理を働かず、在りたい自己実現ができる世界観や、心の底から共感する世界観を提供しているUX(バリュージャーニー)があふれ、UXの善さを競う環境になることで、ディストピアではない「多様な自由が調和するアフターデジタル社会」を目指すべき。
AI・データをはじめとするテクノロジー前提・オンライン前提社会において、企業から発信する新しい自由の在り方(アップデート)を示し、これに挑戦し、ディストピアを防ぐ勇気を持とう、というのが前提となる精神です。
これを持った上で、その実現(つまりバリュージャーニーを作って運用すること)において最も重要なケイパビリティが「UX企画力」であり、すべてに通底するのは「ユーザーの置かれた状況を捉える」ことです。これには「ビジネスを構築するためのUX企画力」と「グロースチーム運用のためのUX企画力」の2つがあります。
この2つを行うことでバリュージャーニーが実現されますが、これはアフターデジタル社会にとって「UX選択の自由における選択肢の1つ」としてのUXを提供しており、こうした「今まで以上の自己実現を可能にする、自由の選択肢」を皆さんとたくさん作り、それがあふれる社会にしたい、という願いと方法論が、本省のメッセージとなります。
■第5章まとめ
(1)社内の意識変革や説得を通して、どのように会社全体で話を通りやすくするのか。
【地盤固め】DXの必要性と目的の認識をそろえる。
【目指す絵の確認】事業そのものだけでなく、ケイパビリティ取得や、高LTVモデルへの転換といった大義設定を行う。
【まずは体験する】失敗を恐れずなるべく早く開始してラーニングし、より具体的な成功への道筋を示すことで社内全体を巻き込む。
(2)ケイパビリティをいかに調達するのか。
【対話型組織】上からの情報共有が十分行われ、かつ下も上も横も一緒に対話と議論ができる組織を作り、自ら価値を考えて動ける文化を作る。
【オンオフの補完関係】オンラインとオフライン、双方のプレイヤーにおいてケイパビリティを補完したいと考えているため、「目指す世界が近い企業」と補い合うべし。 -
Posted by ブクログ
■「バリューチェーンからバリュージャーニーへ」
「顧客接点データを多く持ち、それをエクスペリエンスの良さに還元する」という新たな改善ループをいかに高速で回せるか。これが新しい競争原理です。
■「平安グッドドクターアプリ」
・2018年1月時点で1億9700万人の利用者
・医師のネットワークと協力関係を結び、アプリ上で開業医に無料で問診できる機能
・アプリでの病院予約機能
・ユーザーが歩くだけでたまるポイントシステム
ユーザーは1日が終わる前に1度アプリを開き、「歩いた分を換金する」というボタンを押さないと、歩数がリセットされてしまうという仕組み。
■行動データは最強の営業ツール
・「顧客体験による価値提供でユーザーを集める場を作る」という新たな広告投資の姿が見えています。
・企業にとって、「営業ツール」になる
→デジタルと行動データを駆使して最適なタイミングで最適なコミュニケーションを取れるようになり、全体的な営業工数や負担はむしろ減り、効率化されます。
【ビフォアデジタル】リアル(店や人)でいつも会えるお客様が、たまにデジタルにも来てくれる。
【アフターデジタル】デジタルで絶えず接点があり、たまにデジタルを活用したリアル(店や人)にも来てくれる。
■OMO
オンラインとオフラインが融合し、一体のものとして捉えた上で、これをオンラインにおける戦い方や競争原理として捉える考え方
・4つの発生条件
①スマートフォンおよびモバイルネットワークの普及
②モバイル決済浸透率の上昇
③幅広い種類のセンサーが高品質で安価に手に入り、偏在する。
④自動化されたロボット、人工知能の普及。
「なぜ企業側がそこまでデータを収集しなくてはいけないのかというと、これからのビジネスはデータをできる限り集め、そのデータをフル活用し、プロダクトとUX(顧客体験、ユーザーエクスペリエンス)をいかに高速で改善できるかどうかが競争原理になるからです」
・重要な考え方
①「チャネルの自由な行き来」
②「データをUXとプロダクトに返すこと」
③「リアルも含めた高速改善」
・OMO型で成功しているビジネスの多くに存在する共通点として「ゲーム的にインセンティブ獲得が設計されている」という点が挙げられます。
※「デイデイ」
以下の3種類のデータを取得することで、タクシーの運転品質を評価
①早く配車リクエストに答えたか
②早く顧客をピックアップできたか
③適正なスピード、安全な運転、正しいルートで送り届けられたか
→
・都度スコアリングされて経験値がたまる
・グレードアップの昇格試験でレベルを上げる
・アプリ内のマップ情報には宿屋(ガソリンスタンド、EVスタンドやトイレ)が表示される
・運転中の出来事をシェアして他の人と盛り上がれる
※「Vitality」
歩数やランニングの距離など、ゲーム的にタスクが与えられ、それらを達成すると例えばスターバックスの1杯無料券がリワードとしてもらえたり、「健康になった」と評価されることで加入している保険の保険料が安くなったりします。
■UED大学のUXの5段階
第0段階(2006~2008):デザインシンキングチームがビジュアルデザインやUIなどといったデザイン分野しか担当していなかった
第1段階(2009~2010)ペネトレーション:デザインとテクノロジーとビジネスを等しくデザインシンキングが包括するような形に捉え直すようにした
第2段階(2012~2015)ディフュージョン:デザイン、ビジネス、テクノロジーにおける、ビジネスオペレーション側のエクスペリエンスデザインを磨きこんだ段階。
第3段階(2015~2017)エボリューション:ニューリテール。ECやオンラインサービスの方法論を、小売業のような既存ビジネスに応用して再構築して新たな価値を提供。オンラインを軸にすると近しいビジネスと連結可能。→エコシステム
第4段階(2015~2017)データドリブン:このようなエコシステムができると、リアル接点でのデータもたまるようになるので、膨大なデータが獲得できるようになる。これを社会貢献や新しい技術開発に活用し、さらなるデータエコシステムを作る。
第5段階(2015~2017)ホリスティック・エクスペリエンス:トレンド、オペレーション、パフォーマンス、データ、機能、競合優位性、世論において、バランスの取れた体験。各ステークホルダーのバランスが取れている。NPSをあらゆるステークホルダーの指標として活用。
「無人化」というとどんどんサービスが機械化していく印象がありますが、実際には従業員とよりコミュニケーションを取り、より人間的な温かいサービスを提供するプレイヤーが生き残っています。
■リッツカールトンのクレド
「ミスティーク」お客様自身も気づいていないようなニーズに対応するといった、感動体験の源泉
「機能性」ユーザーから見れば「とにかく便利で嫌な体験がまったくないこと」であり、ホテルから見れば「顧客データの保管と感動体験のベースになる情報(宿泊回数や誕生日、同行者の情報など)が活用できる状態にあること」
…顧客の体験を1回のみの単一接点で終わらせず、ずっと継続し、高速で改善できる時代になったのです。「顧客に接する」部署だけでなく、1回限りの接点を超えて、連携して顧客体験を生み出していくことが重要です。「モノからコトへ」ではなく、「モノから寄り添いへ」といった意識に変えたほうがよいのではないかと思います。
【要点のおさらい】
■アフターデジタルの到来
・デジタルが至るところに浸透し、常時接続が当たり前になると、これまでオフラインだった行動も含めて、すべての行動データがオンラインデータになり、IDにひも付けられるようになります。
・人々の感覚としても、デジタル世界に住んでいるような状態になり、オンラインとオフラインを区別しないようになります。
■ビジネス形態の変化
・大量にデータが出るようになりOMOで思考できるようになると、企業体のできることが変わってきます。
・小売りの場合、フーマーはその膨大な行動データから、主要な対象顧客が住んでいるのかどうかを把握した上で出店しています。オンラインの利便性と、 オフラインの「確かめられる安心」を連動させて顧客を魅了し、欲しいものが欲しい方法で、欲しい時に得られるようにしているのです。さらに、オンラインとオフラインの双方の購買および閲覧データを使って、予測を含めた在庫や仕入れを管理することも可能です。
・医療の場合、平安保険は、従来ほとんどユーザーとの接点がありませんでした。接点が無ければデータを得ることはできないので、スマホのアプリを開発し、そうした状況を変えました。医師による年中無休の無料問診や予約というキラーコンテンツと、ヘルスケア情報の閲覧および「歩くだけでたまるポイントプログラム」という頻度の高い機能をアプリ上で融合させ、顧客との接点を作ったのです。そして、顧客の利用履歴から把握した「属性、好み、状況」の情報を使って、営業員やマーケター、コールセンターと連動し、ベストなタイミングで顧客に新しい提案をすることが可能になりました。
・移動の場合、ディディは、運転と接客の品質をスコアで可視化し、さらにそのスコアをインセンティブにすることでより高い運転品質での移動体験を可能にしました。ユーザーとドライバーの相互評価にもなっているので、ユーザー側もキャンセルし続けたり態度を悪くしたりしにくく、かつ良いユーザー (および良い配車案件)と良いドライバーがマッチングされる構造になっています。
これらの事例を踏まえると、アフターデジタル時代のビジネス原理 は、次の2つにまとめることができます。
(1) 高頻度接点による行動データとエクスペリエンス品質のループを回すこと。
(2) ターゲットだけでなく、最適なタイミングで、最適なコンテンツを、最適なコミュニケーション形態で提供すること。←行動データに基づいた「顧客理解」と「即時性」の重要性が高まる
平安保険がリアルタイムに個別化対応したサービスを提供できるのは、サービスを支える仕組みに秘訣があります。顧客との接触履歴を一元的に管理する社内用データプラットフォーム「LCCH(Life Customer Contact History)」があり、顧客ごとに過去に発生した様々なやり取りの記録を収集し、顧客一人ひとりのサービスカルテを作成しているのです。カルテの中では、これまで提供したサービス、まだ提供していないサービスを管理し、またその顧客がどのようなサービスを好むのかも予測されています。データを集めて顧客のニーズを深く理解できるようになったため、専門的かつ顧客の状況に寄り添ったサービスの提供を可能にしています。
「LTV型のビジネスにして、顧客IDとそのリアルタイムの行動が分かるようにしないと、デジタル起点の時代では生き残れない」…寄り添い続け、顧客を知り続けるからこそ、その顧客に良い体験が提供できるという意味で同じ考えを共有する同志と捉えています。
■モーメント分析
状況指向の時代、および「行動データ×エクスペリエンス」の時代において、分析や企画をする際には一人ひとりの「人」よりも、もっと細かい「モーメント」単位で見ていく必要があり、この分析を「モーメント分析」と読んでいます。
モーメントとは、「人々に特定の状況が発生し、そこから派生した行動が終わるまでのこと」を指しています。グーグルの提唱する「マイクロモーメント」よりも少し長い概念です。例えば「家の冷蔵庫にある牛乳が切れてしまって補充しなければいけない」という状況が発生したら、「どこで買おうかと考え、近くのコンビニでいいやと思い、その購買が終わるまで」を1つのモーメントとしています。
■UXイノベーション
UXイノベーションの本質は、人々がずっとその新たな接点を使ってくれるのかどうかにあります。つまりは「顧客の置かれた状況の発見と、それをより幸せにするようなコア体験をいかに作るか」にあります。
このコア体験を作り出すのは難易度の高い職人芸ですが、いくつか要点をあげると、以下のポイントがあげられます。
・体験の連続性
・行動観察
・デザインシンキング
「体験の連続性」とは、事業のドメイン選定とほぼ同義です。新しい顧客接点を作る場合、他の接点との連続性がないと顧客は使いません。突然カーメーカーがお酒を造り始めても、顧客から見たら血迷ったようにしか見えないでしょう。参考になるのは平安グッドドクター アプリです。「問診と病院予約」というコア体験を軸に、健康情報の発信、医薬品や健康食品の販売、歩くともらえるポイントによる健康習慣といった体験が隣接している領域をつなぎ合わせることで、ユーザーはこれらを使ってくれるのです。
「行動観察」は、ミルクシェイクの事例で説明したような「ユーザーの行動を観察して発見点を得ること」ですが、同時に「人の発言を信用してはならない」ということを意味しています。人は、嘘をつくつもりはなくても、自分のニーズや本当にやりたいこと、欲しいものを言葉にできるとは限りませんし、気を使ったり空気を読んだりして本心を話してくれないことも往々にしてあります。こうした属人的な問題を外して考えるには、「人の行動を観察し、そこから発見点を得る」方法が最も有効です。 これは、モーメントを見ることと実はほぼ同義なのですが、ことUXイノベーションにおいては「新しい状況」を発見する必要があるので、デジタル上ではなく、街に出たり現場に出たりして観察する手法が引き続き重視されています。
最後に「デザインシンキング」です。デザインシンキング自体は広い概念ですが、ここでは主に「プロトタイプを使った試行錯誤」を意味しています。人は自分のニーズを正しく話すことはできませんが、 目の前に商品やアプリを差し出されて、それを使ってみた結果「こんなものがあったらどう思いますか?」と聞かれると、よりリアルかつ正しいフィードバックを得ることができます。思いついたアイデアはなるべく早く、簡単でいいので具現化して、対象のユーザーに想定している状況で利用してもらうのです。そうすれば、サービスや商品が本当に使われ続け得るものかどうかが分かります。 -
ネタバレ 購入済み
DXって何をすればいいの?に
データーを制するものがビジネスを制する、わけでは無いことが明確に説明されており、モヤモヤが晴れました。さらにUXの大切さとそこから生まれてくるトランスフォーメーションこそがDXであること、それをきちんと成し遂げるには正しい思想が必要と続き、目指すべき姿のひとつを示しています。
後半のケースの説明でほカタカナ用語が多く一読では理解が追いつかなかったので、星は4つとしました。 -
Posted by ブクログ
ネタバレアフターデジタルに共感するものとして、実装文脈の書籍である有用書と期待して読書。プロセスを丁寧に紐解き、プロセスごとの留意点まで丁寧に解説した良著。
人の心理、属性ベースではなく、デジタルを活用した状況ベースで分類・検証を勧めていこうという発想がおもしろかった。なるほどと。
メモ
・UX型のDXを実現するために必要な2つのこと
トップダウン型 バリュージャーニー型への転換と更新
ボトムアップ型 顧客体験を継続的に成長させて行く体制の構築と発展
・バリューチェーンからバリュージャーニーへ。
いつでもどこでも顧客とつながりを持てるようになり、企業は顧客が大きな成功に至るまでの行動フローをジャーニー横断的に支援できるように。
・プラットフォーマーは集客・プロモーションを代替する存在
連携することで機能提供者は良質な機能提供に特化可能
・デジタル先進企業のDXはユーザーの生活視点、日本企業は企業の活動起点
・ジャーニーコンセプトが抜本的に転換されていないとデジタルをおまけと扱うままであるため失敗する。リアルはおまけと考えるくらいの発想。
・獲得すべきUX企画力
新たなUXをゼロから想像具体化する能力
既存のUXをスピーディーに改善する能力
・利用文脈ごとのUX改善を積み重ねる
・トップダウン型UXグロースチーム。全社変革を推進するチーム。事業変革を推進するチーム。
・ボトムアップ型UXグロースチーム
高速改善のUX企画チーム。抜本改善のUX企画チーム
・WHYを訪ねて人間心理を探求するのではなく、事実を集めてメカニズムを解明する。
・抜本改善のUX企画プロセス
行動フロー特定→ペインポイント抽出・構造化→ペインポイント発生メカニズム理解→UX企画立案→UX企画の評価選別→UX企画の総合ジャーニー設計
・高速改善のUX企画のコア
UX改善テーマの設定→現状UX理解→UX改善案の企画
・シーケンス分析により、行動を軸に仮設を構築できる
現状のUX理解に絶対の正解を求めない。肌感、想像につなげれば十分
客観裏付け必要な際は切り口をずらしてシーケンス発生量を算出
新たにUX改善業務構築せず、現行業務にあてはめる。要因分析改善企画に活用
・想定行動の言語化、施策や機能の意図を書き出す。想定する行動の流れを書き出す
・構造改善のUX企画チームに必要な7つのスキル
UX改善テーマ設定力
データ定義力・データ抽出力
現状UX理解力
ユーザー憑依力・メカニズム分析力
UX改善案企画力
シナリオ構築力・ソリューション構築力・具現化力
・UX起点で事業戦略を立案し、バリュージャーニー全体構想を設計した上でトップダウンで実行に移していく
・事業部レベルのバリュージャーニー全体構想を設計する方法論
ターゲット行動フロー特定→ペインポイント調査実施→フォーカスするペインポイント特定→ペインポイント発生メカニズム理解→UX企画立案→UX企画評価選別→UX企画の統合ジャーニー設計
・人間ユーザーでなく、シーン・行動フローに対してターゲティングを定める
・全社変革チームの活動
全社DXコンセプトの定義
全社バリュージャーニーの企画
全社への落とし込み
・全社UX型DXを推進する際に決めるべきこと
実現したいライフスタイル
全社DXコンセプト
各事業が提供する体験の仮設定 -
Posted by ブクログ
オンラインとオフラインが融合する世界を、中国の事例を紹介しながら紹介した前作は刺激的で面白かった。
続編の本作では、中国のビジネスのアップデートに加え、日本で実際にOMOビジネスを企画導入する際の考え方、進め方が解説されている。
UXが全てであるという指摘には納得感がある。データを集めても、UXに具体的に活用できないデータ収集は無意味であるということにも同意できる。
鋭い指摘が多いのだが、やや、OMOの世界を理論化しようとしすぎるあまり、解説が少し上滑りしている印象も受けた。日本でOMOの事例が増えてくると、これらの理論にも腹落ちしやすくなっていくのだろうけれど。
ともあれ、これからのサービス設計には、OMOの発想は欠かせない。Consumer向けビジネスに携わる人には特に、一読をお勧めしたい。 -
Posted by ブクログ
顧客情報を状況レベルで理解している企業が強い
アフターデジタルのビジネスモデルは顧客との接点をさまざまなところで持ち、顧客の自己実現に寄り添うバリュージャーニー
アリババとテンセントは類似したサービスを提供しているものもあるが、ミッションが異なるので方向性が違う
ロイヤルティが高まることで、他のものと比較せずそのブランドのものを買ってしまうようになる
サービスの利便性や世界観が優位性を持ち、商品の購買がサービスのジャーニーの中に埋め込まれていく
=コマースの偏在化
OMOは顧客にとって嬉しいものであったかが重要。ただ単にオンラインとオフラインを融合させてもそれはOMOではない。→目的を決める。現象を理解する
DXはUXを提供するためにやる
(手段の目的化状態に陥ってしまっている) -
Posted by ブクログ
中国で日系企業のデジタル化を支援している著者による、デジタルを学ぶための1冊。
コロナ影響も踏まえつつ、「UX」の観点を分かりやすく掘り下げており、『アフターデジタル』よりも実務的には刺激を受けたかも。どちらも良著ですが、人に薦めるならこっちかなぁ。
さて本著、ビジネス、サービスにおいて「どう世の中が変わりつつあるのか?」を、主に中国の最先端事例を通じて解説しているのですが、図も充実していてわかりやすいです。
加えてより実戦度を高めているのが、「第5章 日本企業への処方箋」で、日本企業における例や、あるべき考え方/進め方が示されていて、読んでいて非常にワクワクします。
ただ、ビジネスを離れた個人としては、企業がデータを大量収集する社会に対する著者のスタンスは、少し企業寄りだなぁと感じました。
企業がビッグ・ブラザーになってしまうことへの懸念について、著者は下記のような考え方を示しているのですが・・・
「AI・データをはじめとするテクノロジー前提・オンライン前提社会において、企業から発信する新しい自由の在り方(アップデート)を示し、これに挑戦し、ディストピアを防ぐ勇気を持とう」
これは、結果的にユーザにとってメリットがある体験を提案できるなら、ユーザの情報を収集/分析しても構わないという自己肯定に繋がるような気がします。
現れ方の違いだけで、ヤラれているコト自体は変わらない気がしていて、このユーザにとっての心地良い体験が連続していった先に、本当のディストピアが待っている可能性だってある訳です。
営利企業な訳ですから、経営危機に陥った際にユーザを脅しつけるマーケティングをしない保証があるのか。大昔の例ですが、Googleだって広告ビジネスを始めたんですし。
…と言いつつ、企業に勤める自分としては、本著の内容はメッチャ有益で、この考え方をこう活用したら面白いコトできるんじゃないか…なんて考えてしまっています。
何と言うか、非常に複雑な気持ちにさせられる1冊でもありました。 -
Posted by ブクログ
i felt a big dilemma for investment to DX in internally at big private company.
we have to make UX story before planning its business model.
then we have a difficulty to get a investment for building up it platform or DX from stakeholders before indicate them its business model.
thus we cannot start making UX stories internally.
so we need to communicate with outside of startup UX story makers and discuss with them about how to integrate to our data or products or services .
if this book provides solution to this i could give 5 star. -
Posted by ブクログ
UXは、デザインそのものだ。
これからは、販売型バリューチェーンではなく、価値体験型バリュージャーニーが価値創造の軸となる。
その為には、当然、製品サービス、及び自社のパーパスを一貫して表現する世界観があり、その上で、ジャーニーボードを設計する。
そこで集められるデータは、また、UXに還元し、常にカスタマー体験を刷新し続ける仕組みを作ることが重要。
そこには、リアルとサイバーの隔たりない世界、OMOてあったり、更にはSociety5.0につながっていくものと思われる。
これは、単にカスタマーに限った話ではなく、Employee(従業員、パートナー含むサービス提供側)、Industry(産業、業界そのもの)、Social(社会)、the Earth(地球)の全てが対象になる。
このスコープでのUXを考えること自体が、デザイン経営ではないか。
中国が、何故デジタル先進国になったかも記載あり、勉強になった。
自由には、二つあり、負・不から解き放たれる、利便性を追求する自由(freedom)と意味性を追求する自由(liberty)があり、中国は前者が顕著だった為に、デジタルの恩恵を受ける層が広かった為、UXを伴う形で社会へのデジタル実装が進んだ。 -
Posted by ブクログ
世界観を見せるデータとバリューのジャーニー
■概要
前回のアフターデジタルの誤解をふまえ大幅にアップデート、より企業の姿勢に着目している。データ偏重のDXの限界を解き、DXとはUXと言わんばかりにUXの大切さを主張。
・文脈に依存するUX
WeChatペイとアリペイのように、同じに見えるサービスでも世界観や企業のミッションによって変わる。
・データの価値
- ソリューションとして活用してはじめて価値がある
- エコシステムは幻想に終わることが多い、個社データをいかに上手く使えるか
・バリューチェーンではなく、バリュージャーニーを描け
データをいかにUXに還元していくかのサイクルを描く
■所感
内容は素晴らしいが…
前回は粒々の事例が多く読みづらかった。今回は事例は減ったけど内容が冗長だし、若干精神論にろも見えて心が折れかけた。おそらく企業の姿勢が大切だと言いたいんだろうが、それにしても読みづらかったというのが第一の感想。
内容はそのとおりだし、UIレベルのUXではなく、世界観を含めて顧客の体験とデータをデザインするUXの大切さと要諦をまとめてくれているのありがたい。
世界観推しなのは、ややD2Cに影響されすぎな気もしたが、それだけD2Cで解かれた内容が芯を食っているのだろう。
疲れはしたが、読んで得られるものは大きいので★4つとしました。