市橋伯一のレビュー一覧
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耳蓋もない人間論と言えば、かつての竹内久美子が思い出されるが、本書はその流れに進化論的な淘汰・適者生存・「増える」という原理を持ち込んで、人間の現在と未来のあり様をクールに描いてみせている。論理もここまで振り切ると清々しいが、そのまま物理的必然からの安易な決定論に陥ることなく、かえって人間の本能や社会の道徳観念を、個々人としては、過大視・絶対視する必要はないと説き、意外に、よく出来た「お悩み相談」になってもいる。それだけに、最後あたりに「希少価値」とか「ミーム」とかを持ち出しての議論は、それまでの議論のシャープさをやや曇らせた感はある。
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生物は、協力することで進化した。
分子同士が協力して細菌に。
細菌同士が協力して、真核生物へ。
血縁関係にある個体同士が協力して社会性動物へ。
人は、さらに血縁関係にない個体同士が協力して
より大きな社会を作っている。
下に行くほど複雑な生物であるが、その分個体数は少なくなっていく。
従って、決して、生物学的な観点からの勝者ではない。単純な生物とは戦いのルールを変えることで、生きられるようになった弱い存在なのかもしれない。
協力のポイントは、分業。
個々がスペシャリストになることで、全体としてより複雑なことができるようになる。
分業するにあたり、裏切り者の存在が邪魔になる。
裏切り者は、 -
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進化生物学者により生物の性質について書かれた本。人類を含め、生物の性質は「増える」ことであり、そのメカニズムについて説明している。その観点から生物は、「多産多死」か「少産少死」に分かれ、人類は後者に属する。少産少死の生物は進化を続け、より死なないようになっているが、それが現代では本来の目的である「増える」ことからかけ離れ、「悩み」などの弊害をもたらしていると言う。今までに聞いたことがあることが多かったが、わかりやすく体系的に纏められているので、明確に再認識できた。面白い。
「脳で幸せを感じるしくみは、幸福感をつかさどるニューロンに信号が伝わるからですが、ニューロンというものはあまり頻繁に信 -
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自分の存在についての悩み「なぜ生きているのか」という問いに対して、「なぜ死にたくないのか」「なぜ他の人とかかわらなければならないのか」「なぜ異性がきになるのか」という観点に分けて、それぞれ進化論の観点で説明している。
特に自分を含め現存の生物は、増えることに注力してきた祖先の末裔であることから、そのための特性が残っていることによるものであることを述べている。
また現在の生き方自体がそれらの特性に合致していないことも説明しており、昔は必要だった特性も、今や今後の社会や科学では必ずしも必要でないことも述べている。
最終章では、それらを含め、著者の考える「生きている理由」を述べているが、まぁ科学者ら -
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章ごとにまとめると次のように..
原始地球で生まれた「増えて遺伝するもの」が進化していった果てが人間を含む生物。その本質は①増えること②形質を次世代に伝えること③ただし変異をすること。①②③を繰り返しながら「増える」ことに有利なものが生き残り、変異の蓄積が進化。
増えるための作戦として「多産多死」(細菌やアメーバ)と「少産少死」(多細胞生物から人間)があり、「少産少死」派の成功の末に人間がある。少産少死では繁殖できるまで時間がかかるので「命」を守ること(=長命)が必要。ただし、本来は繁殖できなくなったら死んでいたが、さまざまな要素で死ななくなりますます少産少死が進行。
社会性の獲得、利他 -
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増殖するという特性に着目した生物の進化について
自己を複製する物理現象こそが生物の本質
増えるために有利な形質が遺伝的に残る
というのはまぁ理解できる
増える戦略の多産多死と少産少死の軸
少産少死だからこそ命が大事になる
他者も含めて命を奪わないという方向へのシフト
ヒトの場合、他者との関わりにより社会全体の生存率を上げるという戦略が発達している
食料も人工物が増えるという予測
増えるという意味では枷になる性別の意義
多様性を生み出すため
個で発生した形質を次世代に残せる
環境の変化に集団として適応しやすい
遺伝子だけでなく、ミームという概念
生きる意味とは?
生物学的に間違って -
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地球外生命も含めてNASAでは「生命」を「自律的で進化する能力を持つ複製システム」と定義しているという。現時点でわかっている範囲で、地球の「生命」はすべてDNA/RNAを持ち、そのシステムの中で特定のアミノ酸を使って作られている。これはそのシステムが生命の定義を満たすということであり、それ以外のシステムが地球にはないことは、生命の定義を満たすシステムは、そうは簡単にはできあがらないということも示している。
著者は、この生命の誕生から、その後の進化、人の心まで含めて生命の進化は「協力」という共通のパターンにしたがっているという。具体的には、①分子間の協力による最近の進化、②細菌同士の協力による真 -
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ネタバレ人間がもつ悩みは、生存や繁殖といったいわゆる本能的な欲求に起因している。とはいえ、今日では文明のおかげで生存が脅かされる事態は相対的に少ないし、繁殖は必ずしも生きる目的ではなくなった。だから、本能的な欲求に基づく悩みを必ずしも持ち続ける必要はないし、それらを理性によって乗り越えていこう。
・・・といったことを言っている本だと思う。
ただ、理屈でどうこうなるなら悩んでないよなあ、とも思う。
書名からは生物一般のことを書いている、むしろ生命の興りに関する進化について書いているような印象を受けたけれど、実際には人間に関する記述が多い。というか、人間の考え方とか社会の在り方とかを、進化の観点から見直