かんのゆうこさんの「四季ねこ」シリーズの、春バージョンは、これまで読んできた、「あきねこ」や「ふゆねこ」とも共通するものとして、その季節でしか味わえない雰囲気を、五感で見事に体感させてくれた、絵本ならではの、色鮮やかに柔らかく匂い立つような、暖かい春を楽しめる作品です。
また、これまでの、ねこが何かをしてあげる物語とは対照的に、ねこが子どもに助けてもらう物語には、春の到来と重ね合わせた、希望の到来を叶うことが出来るのが、まるで純粋無垢な子どもであるようにも思われた、そんな前向きで健気な明るさが、爽やかな春の到来と見事に呼応しているようで、心地好く感じられると共に、それを叶えるための鍵が子どもの折り紙である点も、とても印象に残ります。
折り紙には、子どもが自らの創造力と手で新しい何かを生み出すイメージがあり、私が子どもの頃、初めて鶴を折り上げた時の喜びが忘れられないように、その過程には、まるで命を吹き込んでいるような特別な気持ちを抱いていた、そんな子どもにとって、夢のあるものからは、もしかしたら、いろんな春も折り上げることが出来るかもしれないねといった、素敵な気持ちにさせられる展開が、まさに子どもにとって、春を心待ちにするだけでなく、自分で呼び寄せたくなる心境にさせてくれるような、そんなワクワク感があり、しかもそれが春の象徴でもある、はるねこにとっての喜びにもなることには、まるで子どもと春に共通点があるような様に、人と自然が共存するあり方を教えてくれるようです。
そして、そんな子どもの無垢な気持ちを後押ししてくれるのが、松成真理子さんの、まるで子どもが描いたような夢の中の心象風景に近い、素朴でメルヘンチックな感覚の中に、色鮮やかで立体的な五感を心地好く刺激してくれる水彩画であり、表紙の絵こそ少し怖いイメージがあったものの、物語の展開を追っていく内に、それも次第に消えていき、そこには、女の子「あや」とはるねこが一緒に楽しみながら、春を作り上げてゆく過程を知ることで、絵も優しいものに感じられていった、そんな二人の純粋無垢な思いと、かんのさんの文章と松成さんの絵とが、こんなにも見事に結実した一体感は、淡い水色の空と、桃色と黄色の花々と、たくさんの動物たちに囲まれた中を吹き抜ける、春一番の風からも実感させてくれた、春の持つ、明るく爽やかな希望の力を、改めて教えてくれます。