三好長慶と松永久秀の話を読みたくて購入。
タイトルは三好長慶となっているが、作中で長慶が活躍する箇所はあまり多くない。むしろ三好長慶を中心とした、彼を取り巻く人々の話と言っていい気がする。
中でも久秀は、主役であるはずの長慶を食ってしまうくらいよく出てくる。あくまで長慶が中心に来ている分久秀の黒い所もよく出ているので、そういう彼を見たい人にはいい本だと思う。
長慶は初めこそ大志を抱いているし周囲にも只者ではないと言われていたが、割と早々に野心を失い享楽に耽ってしまう。なので長慶の物語、格好いい長慶が見たいという人には物足りないかもしれない。
話は長慶死亡で終了となる。その為久秀の最も活躍した時期~最期は書かれていない。
(ちなみに元の題名は「妖雲」らしい。ああだからこういう内容で久秀はこれだけ活躍するし、長慶もこういう書かれ方をするんだなと納得)
序盤は長慶周辺の情勢や人物を説明する為のエピソードが多く、億劫に感じる所もあった。またこういった箇所で人物や情勢等の情報が一度に出てくるので、三好周辺のことをあらかじめ知っていないと若干付いて行くのが難しいかもしれない。
中盤からは長慶を中心に久秀や長慶の弟などが活躍しだして、ようやく本番に入ったという感じに。この辺りからしっかりと物語になっているので、面白く読んでいけた。
その後はもう久秀の独壇場。次は何をしてくれるのかと期待したくなる楽しい展開だった。
個人的な読後の感想としては、今一歩深みが足りないという印象。また気にならない人は気にならないのかもしれないが、個人的に「~~誰々であった(である)」という文のテンポの悪さが引っかかった。話はコンパクトに収まっているので、二人の関係、野心を現実にしていく久秀をさらっと読んでいくにはいいかと思う。
それにしても長慶と久秀は本当にギリギリの最終盤まで、表面上だけかも知れないが円満な主従だった。長慶は久秀を疑わなかったし、久秀も表向きは長慶をないがしろにしていない。それが最後の最後に壊れてしまうのには唐突感もあれど、どこか物悲しく感じられた。