葛飾北斎のレビュー一覧

  • 椿説弓張月1

    Posted by ブクログ

    こんなに面白いと思わなかった。
    為朝がとにかくかっこよく、なによりヒロインの白縫が心だけでなく物理的に強く、そして美しい女性である設定が新鮮だった。
    出てくるキャラクターが全てとても良い。
    2巻以降も楽しみ!

    0
    2026年02月21日
  • 椿説弓張月4

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    琉球での三つ巴の戦いとあるが、実質的には利勇との勝負の巻で、相当盛り上がる。いかにも利雄は悪者っぽくて、ここぞとばかりの描写が続くし、ここにきて物語が勧善懲悪的に進んでいくので、この巻は楽しく、あっという間に読めた。馬琴の創造の筆は素晴らしく、北斎の絵と併せて何度読んでも味わい深く、娯楽のほとんど無かった当時の市民の熱狂ぶりが想像できる。次はとうとう最終巻。大団円に至るまでとても楽しみ。この調子で八犬伝も読んでいけたらと思う。

    0
    2026年02月16日
  • 椿説弓張月3

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    3巻は琉球編。馬琴の筆が冴えわたり、もうめちゃくちゃ面白い。この巻で為朝一行は早々と海難でいったん退場、以後は主に琉球の暗愚な王の下での王政簒奪行為が描かれる。その勧悪懲善!の素晴らしい叙述に感激した。寧王女のもとで、本来善であるべき支援者や縁者が、悪人集団の奸計と禍獣の暴虐により次々と殺害される展開は、当時の読者の腹立たしさが思い返され、M的な痛快さ。馬琴先生の面目躍如といったところだと思う。最後に為朝が窮地を救うところで次の巻となる。里見八犬伝と並ぶ名作と評されているが、その真価を強く感じる編だった。

    0
    2026年01月16日
  • 椿説弓張月5

    Posted by ブクログ

    最終巻も人物紹介から始めよう。

     白縫王女 琉球国の正嫡寧王女に、亡き白縫(為朝の正妻)の魂が憑き、みずから白縫王女と称する。

    なんだかすっかり合体ロボになってしまったと感じるのは私だけか。寧王女~(オリンピックで有名な、原田選手の「ふなき~」風に)。

     八丁礫紀平治 為朝の腹心。石の礫をもって獲物を仕留め、百発百中の腕前をもつ。

    舗装された道路ばかりの現代社会では、武器が一つも見つからず、無敵どころか、渡る世間は敵ばかり。とりあえずそこら中に石礫のある源平合戦の世界では、為朝の息子を守り通した忠義の臣下。

     福禄寿仙 頭が長く、身体の半分ほどある老翁。

    ラストに再登場する福禄寿。なるほど、妖かしまで登場したフィクション世界をまとめるのは、神しかおるまい。美白は無敵。

     神を出したことで、作品全体のご都合主義が認められる。明らかに数の上で劣勢の為朝と白縫王女は絶体絶命の危機を脱出して巴麻島へと渡り、神仙の導きで息子舜天丸と家来の紀平治と再会。鶴と亀は因縁の敵である託女、阿公を天孫廟で仇討ちを果たす。為朝と舜天丸はふたたび首里を攻めてラスボス曚雲と対決し、舜天丸はついに琉球王に。悪しき者は滅び、善き者は栄える。めでたしめでたし。

     ちなみにゴースト含むトライアングル・ラブだが、件の如く乗っ取られたため、トライアングルにもならなかった。嫌がっていた為朝も、説き伏せられて夫婦になったら、ぴったりとくっついた、とか。何が?とか聞かないように、野暮だから。そうか馬琴、君は細君とラブラブか、よきよき。

     しかし、ここに至るまで、どれほどの犠牲があったことか。為朝は、今でいうところの内地人(ウチナンチュー)ではなく、外からやってきた、本土の人、まれびとだ。彼がいなければ琉球王朝は腐敗臭を放って滅びただろう。しかし、劇画調、もとい、劇薬為朝の投入で、あっという間に片がついた。しかし、その代償は大きい。命を捧げても惜しくない英雄・為朝のために、山雄、野風、真鶴、白縫、寧王女、琉球の人々も、他の人々も亡くなった。この事実は、源平合戦のはるか先、江戸時代からもはるか先の、二十世紀のど真ん中の、ある戦いを、思い起こさせずにはおかない。琉球=沖縄こそ、その戦争の激戦地であった。

     のちの自身の失明も、長男を亡くす不幸も、見通せていたはずはない。しかし、別の未来だけは、見通せていたのだろうか。稀有な作家・馬琴ならば、そういうこともあろうか。

     戦い済んで、日が暮れて、全ての人々に鎮魂の祈りを捧ぐ。

    0
    2026年01月18日
  • 椿説弓張月3

    Posted by ブクログ

     さて、本巻の人物紹介は割合簡単。善と悪がはっきりしている。愚昧な尚寧王、佞臣利勇によろめく寵妃中婦君、可憐な寧王女、佞臣利勇(大事な事なので、二度言う)と対立する忠臣毛国鼎とその幼き息子たち鶴と亀(が滑った、と書きそうになるじゃないか!どうしてくれる)、という、人間関係がドロドロ、ぐちゃぐちゃの琉球王朝に、少年誌から飛び出してきた豪傑為朝が参入してくる構図である。山風要素も欠かせない。妖術使いの曚雲国師とタッグを組む高名な巫女阿公。寧王女を庇う叔母真鶴と、忠義のため彼女と交際ゼロ日婚を果たした松寿。

     平清盛を討とうと九州から上洛中の海上で、為朝親子と主従は暴風雨に遭い遭難。その過程で元長刀ガール白縫は、皆を救うために海に身を投げる。

     女性が海に身を投げて荒ぶる海を鎮めるパターンは、古事記でも語られている。馬琴も王道を踏襲したわけだ。愛する妻を失った傷心の為朝は、それでも先を急ぐ。そうだ為朝先へ行け。本巻ラストに驚く出会いがあるぞ。いちおう、失うからこそ得られるものもある、的な。

     琉球王朝のグダグダ加減は、呆れるばかり、良薬は口に苦しを知らんのか。自分にとってためになる人を遠ざけ、近づけるのはその逆の人種ばかり。『新世紀エヴァンゲリオン』のヒロイン、惣流・アスカ・ラングレーの口癖を、何度言いたくなったことか。そんな体たらくだから佞臣につけこまれるんだ。

     いやあ、それにしてもいいな妖術に、伝説上の化け物・禍獣(わざわい)。いや、わざわいって馬琴、それ、当て字か、直接的というか。ネーミングライツは有効に使った方がいいよ馬琴。

    0
    2026年01月08日
  • 椿説弓張月4

    Posted by ブクログ

     はて?しばらく見ないうちに、白縫が大変なことに。人物紹介いってみよう。

     海路で遭難した際、為朝たちの命を救うため犠牲となって海に身を投げた。

    えええええ!なんでいつの間にか弟橘媛みたいなことになってんの。

     鶴と亀 国王の忠臣、毛国鼎の子供。長男が鶴、次男が亀。

    なんだその単にめでたいものとりあえずつけとけ感は。忠臣の息子といったら高位の子なのに、ひと文字か。為朝と白縫の息子舜天丸(すてまる)は三文字で、丸ついてる丸。丸、だいじ。なになにの助とか、だいじ。

     そんなこんなで元長刀ガールの妻白縫を失った為朝の前に、なんと!彼女の魂が憑いた寧王女が現れる。寧王女は、琉球王尚寧王の第一王女だ。曚雲国師の妖術に惑わされた暗愚な尚寧王のもと、寧王女の母・廉夫人、忠臣毛国鼎らは命を落とした。彼女の婿は、王位を狙える。王位継承をめぐる争いが、当然起こる。王女を乗っ取った白縫が語ることには
    「恥ずかしながら、姿こそ三十歳ながら、まだ男の肌を知らない王女ですけれど、操は誰が知らないことがありましょうか」

    と、マージナルな立場を利用して自己?紹介。しかしその情報開示は、果たして、本当の寧王女にとってはOKなのか。更に続ける白縫。
    「幾晩も寝覚めを共に慰めた私白縫との契りをお忘れになっていなければ、夫婦としてともに我が子のゆくえを見定め、乱れたこの世を平定してください。」

    いい事いっているようにも見えるが、よく考えたらホラーでは。そうなのか馬琴。ゴーストラブを書きたいのか。どうする為朝。
    「お前は王女に憑いたとしても、いま見る姿は白縫ではない。それを私に妻と呼び、夫と呼ばれたならば、淫奔野合との謗りを免れることができない。ことが成就して夫婦と呼ばれることもあろう。無情なこととうらむのではないぞ。寝床はともにはするまい」

    よく言った為朝。英雄はそうでなくちゃ。

     為朝は、曚雲を討つべく南風原へと赴き、琉球国の高官で、曚雲打倒に燃える利勇と対面。しかしなにぶんにも身一つできたものだから、社会的信用度ゼロ。利勇が為朝にミッション・インポッシブルを課す。三つのタスクを三日で終えたら雇うけど、一つでも仕損じたら、城に来るな!

     現代社会においても、結果をまず出して、雇うかどうかはそれから、というのは、当然。利勇、まともだ。為朝どう倍返す。

     毛国鼎の子、鶴と亀は、タイムリーな2025年の今年の漢字でもある熊と鷲のバトルに遭遇しつつも、因縁の敵である阿公と対決。曚雲、利勇、為朝、三つ巴の戦いの結果や、いかに。そして、知りたいのか、知りたくないのか、微妙ながら、為朝と寧王女(魂は白縫)の、トライアングル・ゴースト・ラブの行方や、いかに。

    0
    2026年01月10日
  • 椿説弓張月2

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    本編の後半だが、完結せず続編(第3巻)につながっていく。われらが為朝が大島流罪となって伊豆諸島を制覇したり仇敵から征伐を下されたりする様子が描かれるが、史実はここまで。ドラマティックな死に別れの後の四国、九州への旅、そして白縫との再会等を経て、清盛討伐への出発、馬琴の伝承・想像の世界への旅立ちがさえわたるところまでがこの第2巻。読本の面白さ、当時の江戸の人たちの熱狂ぶりが想像できる。それにしても相変わらず北斎の挿絵が逸品で素晴らしい。光文社古典新訳文庫の面目躍如といったところだろうか。凄いとしか言えない。

    0
    2025年12月23日
  • 椿説弓張月1

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    5か月刊行が完了したので読み始めた。源為朝の伝承の冒険ものの読本で、第1巻は九州追放、保元の乱、平治の乱、伊豆追放と史実に沿って物語が展開されるので、まずは導入として楽しく読める。馬琴は子供向けの八犬伝を読んだきりで、原文には手を出す気はなかったので、こういった翻訳が出るのはとても助かる。二巻以降は荒唐無稽な内容になっていくと思うけど、読み進めると当時の読み手のわくわく感がそのまま伝わってきそう。この文庫シリーズでは葛飾北斎の挿絵が随所にちりばめられ、そのすばらしさと精緻さに圧倒される。読んで2度楽しい。

    0
    2025年12月15日
  • 椿説弓張月1

    Posted by ブクログ

    さて、物語は崇徳院と後白河天皇(後に法皇となり絶大な権力を持ち大天狗と綽名される)の対立から始まる。この二人、父親は同じ鳥羽法皇である。しかし鳥羽法皇は、祖父白河法皇に寵愛される崇徳院を煙たく思っており、自身が院政を敷いて後、崇徳院に速攻で譲位を迫り、わずか3歳の近衛帝を即位させた。近衛帝が17歳で病死した後、崇徳院は、当然自分の息子が帝位につくと期待していた。ところが、次の天皇についたのは、お気楽三昧で暮らしていた後白河帝だった。後白河帝の乳母だったのが、信西。乳母子が帝位につき、我が世の春を謳歌していた信西を、快く思っていなかった少年為朝。信西が弓の名手として挙げた清盛と頼政を一蹴。
    博学ながら依怙贔屓にして私の決断も多い

    と信西を批判。自分に向けて放った矢を見事止めて見せると豪語し、有限実行。父為義はやんちゃな息子を頼もしくも感じていたが、帝をはじめ高位の方たちの前で、こうも見事なるKY宣言をされてはと、やむなく世渡り下手な息子を遠方へ。

     さて、第一巻から為朝愛され伝説は止まらない。鹿を巡って争っていた二匹の狼を、空手チョップならぬ弓矢チョップで止め、狼はその場で心服。山雄と野風という名前を与えられる。山雄は、人間を襲うと首を斬られるも、その首が人間を本当に襲おうとしていた大蛇の首を引きちぎる。大蛇の中には貴重な珠があり、それを狙って龍が霹靂を飛ばしてやってくるが、為朝の乳母子須藤重季は、感電しながら珠を為朝のもとへ。その珠が為朝を新たな縁へ繋ぐ。

     二巻で登場した白縫は、最強弓ガールならぬ長刀ガール。自分の婿になる男は、自分より強い男でなくては、と為朝を待ち受けるが、一瞬でフォーリンラブ。為朝愛はすさまじく、この後保元の乱で為朝が奸計により捕らえられた事を知ると、ハニートラップでその相手武藤太を捕えて、それはもうえげつない拷問で死に至らしめる。その様子を知りたければ、ぜひ本巻を。しかし白縫、初登場時はそこまで残虐な事をやるキャラに見えなかったが。為朝愛がそうさせるのか。

     第一巻ラストは大河ドラマ『平清盛』でもお馴染みの、崇徳帝怨霊変化。

    0
    2025年10月19日
  • 椿説弓張月2

    Posted by ブクログ

    滝沢(曲亭)馬琴は、映画にもなった里見八犬伝の原作『南総里見八犬伝』で知られるが、最初のヒット作はこちらだ。当時は『八犬伝』の馬琴ではなく『椿説弓張月』の馬琴だった。そしてテッパン葛飾北斎とのコンビ作である。

     主人公は源為朝。源為義の八男で、頼朝の父・義朝の弟にあたる。大河ドラマ『平清盛』では橋本さとしさんが演じていた。乱暴者で父の為義に持てあまされ、九州に追放されたが、手下を集めて暴れまわり、一帯を制覇して鎮西八郎を名乗る。そのため、鎮西八郎為朝ともいう。

     保元の乱では、父・為義と共に、崇徳上皇方につき、強弓と特製の太矢で大奮戦するが敗れ、伊豆大島へ流される。配流先でも国司に従わず、大暴れして伊豆諸島を事実上支配したことから、追討を受け自害。

     …とあるが、義経ら英雄の宿命として、死んだとされても“実は生きていた”伝説が各地に流布する。為朝も同様で、八丈島、さらに琉球(沖縄県)に渡ったという伝説が生まれる。

     冒頭は登場人物紹介である。為朝は史実では死んだとされたので、その身代わりになった鬼夜叉。為朝を愛した女性白縫と三郎長女。そして福禄寿。えっ福禄寿?

     美女に心を動かされず、博学。100歳を越えているのに、お肌ツヤツヤで童顔。いいね!おや、頭が体の半分?でか!まっすぐ歩けるのか?

     おや、でかいヤマネコまで出てきたぞ!灰色毛で短足、120センチの体長。さすが南方!なんでもよく育つ!いや、そういう問題じゃない!

     さて、物語は保元の乱の終わりから。崇徳院方が敗北し、父為義も斬首。妻白縫姫も消息が知れず、亡くなったと思われる。崇徳院も讃岐の国で崩御。一人生き残った為朝は、大島の島守として生きる。武勇が知れ渡っている為朝は、なぜか女性と男性が分かれて住んでいる島を訪れ、同居を主張。女護島の三郎長女を妻として、あっという間に二人の男子をもうける。悪い代官を懲らしめたことで讒言を受け、大勢が攻めかかってくる。皆、為朝を逃がすために知恵を絞るが。

     いやあ、皆、死ぬ。がんがん死ぬ。自分の筋を通すため、人のために死ぬ。死ななくていい所で死ぬ。大河ドラマを見ているため、実際には、赤穂浪士以来、切った張ったは起きていない。忠義のために死ぬ必要も、誰かを助けるために死ぬ必要も、ない。そんな時代の武士が、本書を読んで狂喜乱舞したのは、現代において、戦闘ものRPGが受ける理由と共通する。あり得ないから、ウケる。自分がやらないから、ウケる。

     流れ流れて南下してきた為朝。僕の後ろに道はできる、ではなく、彼の後ろに死屍累々。それでも豪傑為朝は今日もゆく!

    0
    2025年09月21日