【感想・ネタバレ】椿説弓張月5のレビュー

あらすじ

絶体絶命の危機を脱出した為朝と寧王女は巴麻島へと渡り、神仙の導きで舜天丸と家来の紀平治と再会する。また鶴と亀は因縁の敵である託女、阿公を天孫廟で討ちとる。こうして為朝と舜天丸はふたたび首里を攻めて曚雲と雌雄を決する。その後為朝は八頭山にのぼって神仙と出会い、また残った舜天丸はついに琉球王となる。登場人物それぞれの因縁、生前と死後のことなどがすべて明かされる最終巻。全5巻完結!

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Posted by ブクログ

最終巻も人物紹介から始めよう。

 白縫王女 琉球国の正嫡寧王女に、亡き白縫(為朝の正妻)の魂が憑き、みずから白縫王女と称する。

なんだかすっかり合体ロボになってしまったと感じるのは私だけか。寧王女~(オリンピックで有名な、原田選手の「ふなき~」風に)。

 八丁礫紀平治 為朝の腹心。石の礫をもって獲物を仕留め、百発百中の腕前をもつ。

舗装された道路ばかりの現代社会では、武器が一つも見つからず、無敵どころか、渡る世間は敵ばかり。とりあえずそこら中に石礫のある源平合戦の世界では、為朝の息子を守り通した忠義の臣下。

 福禄寿仙 頭が長く、身体の半分ほどある老翁。

ラストに再登場する福禄寿。なるほど、妖かしまで登場したフィクション世界をまとめるのは、神しかおるまい。美白は無敵。

 神を出したことで、作品全体のご都合主義が認められる。明らかに数の上で劣勢の為朝と白縫王女は絶体絶命の危機を脱出して巴麻島へと渡り、神仙の導きで息子舜天丸と家来の紀平治と再会。鶴と亀は因縁の敵である託女、阿公を天孫廟で仇討ちを果たす。為朝と舜天丸はふたたび首里を攻めてラスボス曚雲と対決し、舜天丸はついに琉球王に。悪しき者は滅び、善き者は栄える。めでたしめでたし。

 ちなみにゴースト含むトライアングル・ラブだが、件の如く乗っ取られたため、トライアングルにもならなかった。嫌がっていた為朝も、説き伏せられて夫婦になったら、ぴったりとくっついた、とか。何が?とか聞かないように、野暮だから。そうか馬琴、君は細君とラブラブか、よきよき。

 しかし、ここに至るまで、どれほどの犠牲があったことか。為朝は、今でいうところの内地人(ウチナンチュー)ではなく、外からやってきた、本土の人、まれびとだ。彼がいなければ琉球王朝は腐敗臭を放って滅びただろう。しかし、劇画調、もとい、劇薬為朝の投入で、あっという間に片がついた。しかし、その代償は大きい。命を捧げても惜しくない英雄・為朝のために、山雄、野風、真鶴、白縫、寧王女、琉球の人々も、他の人々も亡くなった。この事実は、源平合戦のはるか先、江戸時代からもはるか先の、二十世紀のど真ん中の、ある戦いを、思い起こさせずにはおかない。琉球=沖縄こそ、その戦争の激戦地であった。

 のちの自身の失明も、長男を亡くす不幸も、見通せていたはずはない。しかし、別の未来だけは、見通せていたのだろうか。稀有な作家・馬琴ならば、そういうこともあろうか。

 戦い済んで、日が暮れて、全ての人々に鎮魂の祈りを捧ぐ。

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2026年01月18日

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